機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第77話

ガンダムAGE-2X改を盾にして大気圏に突入したスラッシュのゼイドラは大気圏内を抜けた後に、AGE-2X改のから振り落とされていた。

 大気圏突入時のの勢いはAGE-2X改が持って行き、ゼイドラは比較的緩やかに地上に降下した。

 それでも相当な勢いは残り、AGE-2X改同様雪山に落ちた。

 

「俺……生きてる」

 

 降下時の衝撃で意識を失っていたスラッシュも意識を取り戻し自分が生きている事を実感する。

 体のところどころが痛むが大きな怪我はしてはいないようだ。

 

「地球に降りられたんだよな?」

 

 モニターは真っ白になり外の様子は分からないが、重力を感じる為、地球に降りた事は間違いない。

 スラッシュは機体のハッチを開けて身を乗り出す。

 

「寒っ!」

 

 機体の外に身を乗り出したスラッシュはそう言う。

 外は吹雪の為、パイロットスーツを着ていようと相当寒い。

 

「これって……雪って奴だよな?」

 

 スラッシュも地球圏に来るに当たり、地球の事は少しは学んでいる。

 火星圏のコロニーでは雪を降らす事など無い為、知識としては知っていたが、雪を見るのは初めての事だった。

 

「思ってたのとは違うが凄いな……」

 

 スラッシュの学んだ地球の知識では雪が積もると絶景だと聞いていたが、実際は絶景と言うよりも壮絶と言った方が良いが、明らかに事前情報を現在の状況に齟齬があるが、初めて見る雪の前にスラッシュは気付く事はない。

 吹雪の中ではあるが、スラッシュは雪の上に降りる。

 状況的に余り悠長なことはしてられないが、初めて地球に降りていると言う興奮でスラッシュは寒さを忘れている。

 雪にはしゃぎ雪に足跡を付けていると何かに躓いて倒れる。

 

「ってて……何だよ」

 

 スラッシュは折角、楽しんでいた事を中断させられ、何に躓いたかを確かめる。

 

「人?」

 

 雪に埋もれているが確かに人がそこに倒れていた。

 

「おい!」

 

 スラッシュは慌てて、雪に埋もれている人に駆け寄る。

 地球にいると言う事は高い確率でヴェイガンではないが、だからと言って流石にすぐに無視することはスラッシュには出来なかった。

 それはスラッシュに地球の人間の血が流れているからなのか、スラッシュ自身の性格なのかは本人も分かってないが、とにかく放っておくことは出来なかった。

 スラッシュはうつ伏せに倒れている人物を抱き起こす。

 

「女……?」

 

 スラッシュの抱き起こした相手は吹雪の中、機体を離れて寒さに倒れたフォルスであった。

 かなりの時間、雪に埋もれていたのか顔色は非常に悪く体温も死んでいるかのように冷たくなっているが微かに胸が上下している事から生きている事は分かる。

 

「このままじゃ不味いだろ!」

 

 スラッシュはフォルスを抱きかかえると、ゼイドラに乗り込む。

 

「とにかく、近くの街まで行かないとな……」

 

 スラッシュは機体を稼働させる。

 このままではフォルスが危ない事は明白だ。

 その為、スラッシュはフォルスが何故、吹雪いている雪山でこんな夏場の様な格好で倒れているか、自分がヴェイガンの人間で運良く街を見つけたとしてもそこの人や医者に拒絶される事など考えもしないで付近の街を探して機体を飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 大気圏に突入したホワイトファングは何とか大気圏を突入する事には成功していた。

 だが、その途中でフォルスのAGE-2X改の識別信号をロストして見失っていた。

 その上で地球に降下する途中にAGE-2X改を追いかける為に移動したこともあり、目的地のアメリカ大陸から大きくそれてユーラシア大陸に降下していた。

 更にその時にホワイトファングは殆ど地上に激突したと言っても過言ではなかった。

 幸い、船体に致命的な損傷を受ける事は無かったが、被害を受けて動けない状態となっていた。

 

「各部署の報告から復旧に数日は掛かると言う事です」

 

 ラウラは降下してすぐに各部署に被害の報告をさせてそれを纏めてウルフに報告している。

 最悪の事態は間逃れはしたが、状況は余り良い物ではないようだ。

 

「それと、ガンダムは降下中に識別信号をロスト、本艦の降下地点もユーラシア大陸のどこかと言う事は分かりました」

 

 その報告を聞き、ウルフはため息をつく。

 元々、スタンドプレーの多かったフォルスだが、ブランベルグからここに来るまでに何度も行方不明になっている。

 今回はフォルスも意図した事で無い事は分かっていてもまたかと思ってしまう。

 初めての時は取り乱したラウラも今ではフォルスの行方不明には慣れきっている為、取り乱すこともない。

 

「ユーラシア大陸ねぇ……どっかって何処だよ」

「申し訳ありません。それは現在の情報では分かりかねます」

「気にすんな。お前のせいじゃねぇよ」

 

 ウルフの投げやりな言い方にまともな報告しか出来なかったラウラは申し訳なさそうにするが、現在の情報ではホワイトファングの現在位置がユーラシア大陸と言う事までしか分からない。

 外は吹雪で視界が悪い上に大気圏に突入した時の影響でセンサー系は殆ど使えない為、復旧中であるので大まかな計算で現在地を計算するしかなく、正確には何処に降下したのかは分からない。

 

「フォルスの捜索をしようにもこの悪天候では……」

「流石に今、フォルスを探す為にMSを出す事は許可出来んな」

 

 外は吹雪いている上に、AGE-2X改は白く塗装している為、肉眼で吹雪の中で見つけ出すのは難しい。

 その上、ホワイトファングもまた白い為、下手をすれば戻るのも一苦労だ。

 そんな中でMSを出してフォルスの捜索するのは許可は出来ない。

 地上が宇宙に比べてヴェイガンやUIEと交戦する確立は低いがそれでもゼロで無い限りは油断は出来ない。

 

「それにアイツも馬鹿じゃ無いんだ。この悪天候の中であの格好でガンダムの外に出て動き回る様なバカな真似はしないだろう」

 

 フォルスがパイロットスーツを着ていない事はウルフも知っている。

 その為、フォルスの格好で吹雪の中で出歩けば流石のフォルスも危険であるのは当然だ。

 MSの中にいれば最低限、寒さからは守られている上にこう言う時の為の携帯食糧は少量だが、MSのコックピットには常備されている。

 外は雪だらけな為、衛生上は良くないかも知れないが、水に困る事はない。

 あの格好でも短時間ならば外に出ても死にはしない筈だ。

 

「アイツはアレでうちのエースだ。そう簡単には死にはしないさ」

「そうですね」

 

 ウルフもラウラもフォルスの無事を信じて今はホワイトファングの修復を優先するが、フォルスがウルフの言う「バカな真似」を行い死にかけている事を夢にも思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 雪山を飛んでいたスラッシュは運良く、街を見つける事が出来た。

 街自体は比較的小さく、見た感じでは連邦軍も駐留はしていそうもない為、スラッシュは街に機体を下す。

 すでに吹雪は止み、ゼイドラが街に降りて来たことで街の住民も何事かと家から出て来る。

 スラッシュは機体を街に下すとフォルスを抱きかかえて機体から降りる。

 

「すぐに医者を連れて来てくれ!」

 

 スラッシュは誰に言った訳ではないが、ゼイドラが降りて来たことで集まった野次馬に叫ぶ。

 野次馬も困惑しているが、すぐに街の代表かと思われる老婆が付き人と共にスラッシュの前に歩いて来る。

 

「お前さんはヴェイガンかの?」

「んな事は今はどうでも良い! 早くこの子を医者に見せろ!」

「まぁ……良かろう。ついて来い」

 

 老婆はそう言い、スラッシュは老婆について行く。

 

「どうなんだよ? 助かるのか?」

「一先ず、処置は終えたが、ここの設備ではこれが限界と言う事じゃ」

 

 老婆に連れられてフォルスを街の病院に運びこんだが、上空から降りる時に街の全体が見渡せたように街の規模は小さい為、そこに在中している医者の腕も一流とは言い難い上に設備も最低限の物で整っている訳ではなかった。

 その為、医師に出来る事は限られている。

 

「後はあの娘次第と言ったところじゃな」

「そうか……」

 

 スラッシュもこれ以上は何も出来ないと言う事は理解出来、一先ずは院内の椅子に座って落ち着く。

 

「それよりも俺がヴェイガンだって分かってたのに何で助けてくれたんだ?」

 

 落ち着いた事でスラッシュは疑問を老婆に投げかける。

 スラッシュが街に降りて来た時に老婆はスラッシュがヴェイガンかどうかを訪ねた。

 スラッシュのゼイドラはどう見ても連邦軍のMSには見えないし、蝙蝠退治戦役の事はヴェイガンのMSを見た事も無い人も少なくないが、今ではヴェイガンのMSを知らない人は殆どいない。

 その為、スラッシュがヴェイガンである事を見抜く事は難しくはない。

 

「何、ワシらの敵はヴェイガンではないと言う事じゃよ」

「それってどう言う……」

「お前さんも疲れたじゃろう。今日のところは休む事じゃな。泊るところくらいは用意させる」

 

 スラッシュは老婆の言葉が気になるが、確かに大気圏を突入して来てまともに休んでもいない為、ここは老婆の言葉に甘える事にした。

 

 

 

 

 それから一週間、フォルスは目覚める事はなかった。

 その間、スラッシュは何だかんだで街に留まっていた。

 フォルスを医者に任せた時点でスラッシュが出来る事はなく、余り街に留まり続けると街の住人に連邦軍に通報される危険もあったが、どう言う訳がそんな事もなく、何事も無かったかのように時間が流れている。

 余り出歩く気分でもないスラッシュは一日の大半をフォルスの病室で過ごすことが多い。

 自分が助けた手前、フォルスをこのまま街において行く訳にも行かず、最低でも連邦軍が来るか、街の住人に追い出されるか、フォルスが目覚めるまではこの街に滞在する事を決めていた。

 その日も特にやる事なく、病室の椅子に座り、ぼんやりとベッドに寝ているフォルスを眺めていた。

 この一週間で顔色は良くなり、医者も後はフォルスが目を覚ますのを待つくらいしかやる事はないと言うくらいに回復していた。

 昨日までと変わらないフォルスであったが、薄らを目を開ける。

 それに気付いたスラッシュはすぐに医者を呼ぶ。

 その後、医者が軽くフォルスを診断して、大丈夫である事を確認すると病室を出て行く。

 医者が出て行った後、病室にはフォルスとスラッシュだけが残されている。

 

「君は……誰だい?(この感じはゼイドラのパイロットか)」

 

 フォルスは感覚的にスラッシュがゼイドラのパイロットであると気がつくが、敢えて気付かないふりをする。

 そして、スラッシュに気付かれないように自分の状態を確認する。

 体温は戻っており、落下時の傷はほぼ完治している為、行動に支障はなく、特に拘束されていない事からヴェイガンの捕虜になっていないと言う事を確認する。

 

「えっと……俺が雪の中倒れていたアンタを見つけてここまで運んだんだよ」

「そう……(私がガンダムのパイロットだと気付いていないのか)」

 

 スラッシュからは自分に対する敵意を感じない事を自分が拘束されていない事からスラッシュが自分がガンダムのパイロットである事に気付いていないと言う事が分かる。

 

「あ……俺、スラッシュ……スラッシュ・ガレット。アンタは?」

「フォルス(スラッシュ・ガレットだと……まさか、ゼイドラのパイロットだったとはな……良かった。もしも、撃墜でもしていたら、ドクターにどやされていた)」

 

 フォルスはその名前を知っていたが、ゼイドラのパイロットである事までは知らなかった為、内心で驚くがそれを顔に出すような事はしない。

 

「それで……ここは何処なんだい?」

「さぁ? 俺も良く分かんない」

 

 この一週間でスラッシュは自分の今いるところなどの情報を全く集めてはいなかった。

 その為、フォルスの質問には答えられない。

 

(使えない)

 

 フォルスはそう思いつつもベッドから降り上がり、ベッドから降りて立ちあがる。

 長時間、寝ていたのか若干筋肉に衰えを感じるが大した問題ではない。

 

「ボクはどれだけ寝ていたんだい?」

「ここに連れて来て一週間だけど」

(一週間か……少し不味いな)

 

 フォルスがここで寝ていた時間は一週間で吹雪の中をどれだけ歩いていたかは正確には分からない為、早いところ薬を飲まなければらなない。

 

(どうしたものかな)

 

 フォルスがまさか、雪山で遭難する事など考えていなかった為、薬を持って来てはいない。

 体力が回復した事で集中して、AGE-2X改の位置をXラウンダー能力で捕捉した上で遠隔操作で自分のところまで動かすしかない。

 フォルスが集中してAGE-2X改の位置を探ろうとしていると地響きが起こる。

 

「何だ?」

 

 スラッシュは病室の窓から外を見ると数機のゼノが街に入って来る。

 

「見た事も無いMSだけど……あれってUIEの奴か?」

「違うよ。あれはエウバのゼノだよ」

 

 スラッシュはゼノ自体が余りにも昔のMSで今は殆ど使われる事が無い為、実際に見た事がないが、フォルスは良く知っている。

 

「エウバ?」

「コロニー国家戦争時の陣営の一つだよ。それにしてもボロイね。あれは戦闘をして来たって感じじゃ無いみたいだ」

 

 フォルスの言う通り、ゼノの状態は余り良い物では無かった。

 装甲の一部がつけられていないのは当たり前で、武器もマシンガンやスピアを持っていればいい方で弾丸が入っていないのか、マシンガンを鈍器の変わりに使う為か、銃身を持っているゼノや腕に装甲板を取りつけて盾の代わりにしている機体もある。

 

「まぁ、ゼノのパーツはもう製造しているところはないからね。良くやるよ。」

 

 すでにゼノやザラムのジラと言ったエウバとザラムの使っていたMSの製造を行っている工房はないと言っても良い。

 その為、部品の一つを手に入れるのも一苦労でそんなMSを買い付けるくらいなら、マッドーナ工房製のシャルドール系の方が全てにおいて勝っている。

 

「さしづめこの街はエウバの街と言ったところかな?」

「その通りじゃ」

 

 フォルスは老婆がいる事に気付いており、老婆にそう言う。

 老婆は医者からフォルスが目覚めた事を聞いて様子を見に来ていた。

 

「となると、敵はザラムってところ?」

 

 老婆は黙って頷き、スラッシュは街に来た時に老婆が自分達の敵がヴェイガンでないと言う事の意味に気付く。

 この街はエウバの末裔の街でエウバの敵はザラムである事はコロニー国家戦争時から続いている因縁だ。

 地球圏の多くでは未だにエウバとザラムが争う事は珍しくない。

 例外的にコロニー「ファーデーン」では50年程前にファーデーンのエウバのリーダー、ラクト・エルファメルとザラムのリーダーのドン・ボヤージがヴェイガン……当時のUEと戦う為に一時的に休戦をしてドン・ボヤージの戦死を期にファーデーンのエウバとザラムはラクトの元纏まっているが、それは一部の例外でしかない。

 

「コロニー国家戦闘は当に終わってるし、今は地球と火星で戦争してるってのにね」

「それは連邦とヴェイガンが勝手に始めた事じゃよ。我らエウバの取っての戦争すべき敵は今も昔もザラムじゃ」

「無意味な戦争だね。いつまでも過去に拘ってさ。今更、ザラムを倒したところで何にもならない」

 

 フォルスにとってはザラムとエウバの戦争など過去の物で今更、決着がついたところでコロニー国家間戦争はすでに終わっている為、この戦いその物が無意味でしかない。

 だが、エウバとザラムにとっては意味がある事なのだろうが、フォルスにはそれを理解する気は毛頭なかった。

 

「意味はある。この土地は先祖代々、我々の物だが奴らはこの土地を奪いに来ておる。卑劣にも吹雪に紛れて仕掛けて来て今回も同胞がやられた」

「だったら、土地を捨てれば良いだけの事じゃないか。ここには雪以外には何もない。同胞の命を犠牲にしてまで守る価値などないよ」

「娘よ。主に守りたい故郷はあるかの?」

「無いね。ボクにそんな物はないし、必要性を感じないね」

 

 フォルスに故郷と呼べる場所はない。

 強いて上げるならクライドに作られたラボだが、そこを故郷と呼び守ろうとは全く思わない。

 その為、老婆やエウバが雪ばかりで何もないこの街を守りたいと言う気持ちもまた理解出来ない。

 

「ならば、言う事はないの」

 

 老婆はそう言って、フォルスを憐れみの目で見ながら病室を出て行く。

 老婆が出て行くと病室に残されたフォルスとスラッシュの間に沈黙が流れる。

 

「俺は分かる気がする……」

 

 スラッシュがそう呟く。

 スラッシュもまた、故郷の為に戦っている。

 火星圏で今も地球への帰還を夢見て過酷な環境で生きている同胞の為にスラッシュは戦っている。

 父、ゼハートもまたその為に戦っていたと聞いているからだ。

 

「なんか……ほっとけないな……俺に出来る事は……」

「余り深く関わらない方が君の為だよ。スラッシュ・ガレット。どの道、ヴェイガンは地球の人間を皆殺しにするんだろ? だったら、何もしないで静観して勝手に殺し合ってくれた方が君たちにとっては好都合だろ?」

「お前……」

 

 スラッシュは自分の名前は名乗ったが、自分がヴェイガンである事までは言っていない為、驚く。

 フォルスにゼイドラを見せた訳でもないし、今はパイロットスーツではなく老婆から借りた服を来ている為、格好からも分からない。

 だが、フォルスは確信を持ってスラッシュをヴェイガンだと言う。

 

「それでも関わろうと、助けになりたいと思うのは母親の血かな? 尤も彼女はそんな事を考える人ではなかった筈だけどね」

「何で……」

 

 スラッシュは余りの事で頭が追いつかない。

 フォルスの言い方ではスラッシュの母の事も知っている口ぶりだ。

 

「知っているよ。マリィ・アスノ……それが君の母の名だ」

「アスノ……」

 

 スラッシュは完全に混乱し、何から処理して落ち着こうか分からない。

 確かにスラッシュの母の名はマリィで間違いない。

 だが、ファミリーネームはアスノであった事まではスラッシュは知らなかった。

 マリィ・アスノ……クライドの娘であるマリィはノートラム防衛戦時にゼイドラと共に大気圏に突入した後、ヴェイガンにゼハートと共にヴェイガンに回収されていた。

 元から連邦軍への帰属意識の殆ど無いマリィはヴェイガンのMSを間近で見る事が出来るならとマリィがそれまでクライドから学んだアスノ家の技術を手土産にヴェイガンの側についた。

 その事はヴェイガンの指導者のイゼルカントが了承している。

 イゼルカントが了承した事で地球の人間であるマリィがヴェイガンの中でもある程度の地位につく事が出来た。

 マリィがアスノ家の人間である事はゼハート以外にはイゼルカント位しか知らない事だったが、フォルスはヴェイガンの動向もある程度掴む事の出来るクライドから聞かされている。

 だからこそ、クライドのもう一人の孫に当たるスラッシュの事も名前だけは知っていた。

 

「驚くのも無理はない。死んだふりはアスノの家芸だからね」

 

 フォルスはそう言うが、すでにアスノ家の中でマリィ以外にもクライドやアセムが社会的には死んだことになってはいるが、実際は生きており独自に動いている事を皮肉ってはいたが、その言葉の真意にスラッシュが気付く余裕はない。

 

「さて……ボクはそろそろ行くよ」

 

 フォルスがそう言うと上空からストライダー形態のAGE-2X改が降りて来る。

 スラッシュや老婆と話している間もフォルスはAGE-2X改の位置を補足して遠隔操作で自分の元に飛ばして来た。

 街に戻って来たゼノ達も何事から構えるが、敵が明確にザラムで無い為、攻撃するかどうかで迷いがある事もあり攻撃は受けなかった。

 

「ガンダム……お前がガンダムのパイロットだったのか?」

 

 驚きの連続でフォルスがガンダムのパイロットである事に驚く事はなく冷静に受け止める事が出来た。

 

「そう言う事だよ。ボクは行くけど、君はどうするかは君の勝手だよ。それと次に会う時は戦場になるだろうけど、その時は殺さないで上げるよ」

 

 直接の面識がなくとも、スラッシュがクライドの孫でアスノ家の血を引いている以上、スラッシュを殺せばクライドが黙っていないだろう。

 スラッシュに尊大な態度を取るが、今までの戦闘でスラッシュのゼイドラを落とす事が出来なくてフォルスは内心ではホッとしていた。

 フォルスはスラッシュに言う事だけ言うと、病室の窓から外に出るとAGE-2X改に乗り込む。

 乗り込んでハッチを閉めるとすぐにピルケースを取りだして薬を飲んだ。

 

「こんな事に関わっている暇はない」

 

 フォルスにとってこの無意味な戦争に関わっている暇はない。

 AGE-2X改は上空に飛び上がる。

 その後、ホワイトファングがいそうな方向へと飛んでいく。

 スラッシュはその様子をただ、見送るしかなかった。

 フォルスの言っていた事が真実かは分からないが、フォルスの言っていた事が頭から離れなかった。

 

 

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