機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第82話

連邦軍の保有する輸送艦が1隻が航海していた。

 その周囲には3機のアデルマークⅡと2機のアデルキャノンが護衛としてついている。

 護衛ではあるが、周囲に敵影はおろか民間の船すら通りかかっていないことから明らかに油断しきっていた。

 輸送艦は地球行きでこの辺りはヴェイガンやUIEの目撃情報がないことも油断の理由の一つであった。

 だが、アデルマークⅡの一気がビームに撃ち抜かれた。

 

「何だ?」

「敵襲だ!」

 

 今まで油断していた護衛のMSだが、アデルマークⅡが撃墜されたことですぐに警戒態勢に入る。

 護衛のMSのレーダーには一機のMSの反応が移されているがその速度はあまりにも早すぎる。

 接近するMSは護衛のMSに接近するとその姿を現る。

 それは宇宙海賊ビシディアンの保有するガンダムタイプのMS「ガンダムAGE-2 ダークハウンド」に酷似していた。

 そのMSはMS形態に変形する。

 その姿もまた、ダークハウンドに酷似しているが細部が違った。

 両腕はダークハウンドと同じだが、脚部はダブルバレットの物になっており、左腕にはノーマルの小型シールド、右手にはハイパードッズライフルの先端にシグルブレイドがついたハイパードッズライフルSBを持ち、バックパックにはアームにマッドーナ工房で製造されたXラウンダー対応機であるティエルヴァに搭載されたビット兵器「Tビット」がついている。

 胸部には髑髏のレリーフにフラッシュアイを内蔵し、頭部はダークハウンドの様な装飾はないが、機体はダークハウンド同様の黒で統一されている。

 ガンダムAGE-2をベースにアセムのダークハウンドの予備パーツを使いさらにXラウンダー用のカスタムしたガンダムAGE-2 ダークハウンドXだ。

 

「ターゲット補足」

 

 ダークハウンドXのコックピットでパイロットが輸送艦を見てそう言う。

 宇宙海賊ビシディアンのパイロットスーツを身にまとったパイロットは小柄で声から女であることがわかる。

 ヘルメットのバイザーから見えるパイロットは右目が金で左目が碧のオッドアイが特徴的であるフォルスだ。

 クライドの元から飛び出したフォルスは偶然にも宇宙海賊ビシディアンと遭遇した。

 行く当てのないフォルスはそのまま、ビシディアンに居ついたのだった。

 そこでフォルスが乗っていたAGE-2X改をマッドーナ工房で改良したのがダークハウンドXである。

 バイザーから除くフォルスの目は今まで以上に冷たく、その表情もまるで人形のように表情がない。

 クライドに存在理由を否定されたフォルスが出した答えは感情を持ったことで、完全にクライドの開発している最強のガンダムの一部となることができないということであった。

 その為、フォルスは自身のあらゆる感情を捨てた。

 

「攻撃を開始する」

 

 ダークハウンドXは輸送艦に向かう。

 護衛のアデルキャノンはドッズキャノンで迎撃するが、ダークハウンドXはかわしてハイパードッズライフルSBでアデルキャノンを撃ち抜く。

 

「海賊のガンダムが!」

 

 アデルマークⅡがドッズライフルを放ち、アデルキャノンがミサイルを放つが、ダークハウンドXは肩のバインダーについているアンカーショットを手に持ち回転させることでシールドの代わりに使い攻撃を防ぐ。

 

「その程度で私をやれると思うな」

 

 ダークハウンドXはアンカーショットを射出して、アデルマークⅡにアンカーショットを絡ませて電撃を流して、動きが止まったところをハイパードッズライフルSBの先端のシグルブレイドでアデルマークⅡを切り裂いて破壊する。

 

「化け物が!」

 

 残っていたアデルマークⅡとアデルキャノンがダークハウンドXを攻撃するも、ダークハウンドXには当たることはない。

 ダークハウンドXはバックパックのTビットを肩から前方に向けて放ち、アデルキャノンを破壊し、ビームサーベルを抜いてアデルマークⅡを両断する。

 

「行け……ビット」

 

 ダークハウンドXのバックパックから射出されたTビットはアデルマークⅡを挟み込む。

 アデルマークⅡはドッズライフルでTビットを落とそうとするが、素早く動くTビットの動きに対応できずにTビットの攻撃で撃墜される。

 最後のアデルマークⅡを撃墜したTビットはダークハウンドXのバックパックに戻ると、ダークハウンドXは輸送艦の方に向かっていく。

 輸送艦は装備しているビーム砲で迎撃するが、輸送艦の装備などたかが知れている。

 ダークハウンドは輸送艦の攻撃をかわしながら、バインダーのアンカーショットを射出して輸送艦のブリッジを潰した。

 

「任務完了」

 

 輸送艦のブリッジを潰したことで輸送艦の抵抗が沈黙したことを確認すると、ダークハウンドXはストライダー形態に変形すると旋回して離脱する。

 

「何だ。もう終わったのかよ」

 

 ダークハウンドXが来た方向からGエグゼス・ジャックエッジやシャルドール・ローグが向かって来て、Gエグゼス・ジャックエッジのパイロットから通信が送られてくる。

 

「帰投する」

 

 フォルスはそれだけ言うと通信を閉じる。

 後から来たビシディアンのMSは目的である輸送艦に積まれている物資の確保に向かう。

 任務を終えたフォルスはビシディアンの母艦であるバロノークに帰還する。

 機体を格納庫のハンガーに戻すとヘルメットを脱ぐ。

 ヘルメットを取るとコックピットには黒い髪がなびく。

 フォルスは薬を飲むとピルケースをしまい、機体から降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フォルスが帰還して1時間くらいすると、物資を回収して来た部隊が戻って来る。

 そして、談話室で勝利を祝して宴会が始まっていた。

 フォルスはパイロットスーツから着替えることなく、談話室の前を通りかかるとその騒ぎに気が付く。

 だが、フォルスはその宴会を気にする様子もなく立ち去ろうとする。

 

「参加はしないのか?」

 

 そこにブリッジの方を右腕のラドックに任せて、宴会に顔を出しに来たアセムをばったり出くわす。

 

「興味はない」

 

 フォルスはそう言い、アセムの横を抜けようとするが、アセムはフォルスの腕をつかむ。

 

「今回はお前ひとりの戦果のような物だ。少しくらい顔を出しても良いんじゃないのか?」

 

 今回の戦闘はフォルスひとりの戦果であるため、本来はフォルスが宴会の主役だ。

 尤も、彼らは騒ぐ理由が欲しいだけで、フォルスが参加しなくても宴会を辞めることはないだろう。

 

「それは命令か?」

 

 フォルスは腕をつかんでいるアセムを鋭い目つきで見ながらそう言う。

 

「そう言う訳ではないが……」

「ならば、辞退させて貰う」

 

 フォルスはアセムの手を振り払い、談話室から遠のいて行く。

 アセムはフォルスの背中を見ながらため息をついた。

 フォルスがビシディアンに加わることに問題はない。

 もとより、ビシディアンには脛に傷を持つ者がほとんどだ。

 以前に会った時を雰囲気がまるで違うことも本人が言わない限りは詮索するつもりもない。

 フォルスは仕事に関しては指示されたことは機械のような正確さで実行するから特に言うことはない。

 一番の問題は付き合いの悪さだ。

 ビシディアンのメンバーとも必要最低限の関わりしか持つことはない。

 やることは完璧にこなすため、ビシディアンのエースパイロットとして誰も異論はないが、バロノークに乗っている以上はもう少し他の仲間と交流をしてもいいとは思うが、当のフォルスはその気がないようだった。

 仲間と交流することを強要したところで意味がないため、今回は諦めてアセムは宴会に顔を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 連邦軍の輸送艦を襲撃して数時間が経ち、連邦軍と遭遇しないようにバロノークは航海している。

 今はフォルスからの情報でクライドの拠点を一つつづ捜索しているが、フォルスの知る拠点はことごとくクライドが廃棄し、クライドやEXA-DBに繋がる手がかりは残されてはいなかった。

 それでもクライドも人間である以上はどこかでミスをしているかも知れないと言う可能性もゼロではないので、僅かな可能性に賭けて捜索しているがやはり手がかりを得ることはできない。

 小惑星帯でビシディアンは捜索のためにアセムとフォルス、数機のMSとともに小惑星帯を捜索するが、今回も収穫はなくバロノークに帰還した。

 

「マッドーナ工房から連絡があっただと?」

 

 バロノークに帰還して早々、アセムはラドックに言われてブリッジに上がっていた。

 その内容はマッドーナ工房からビシディアンに対して連絡文が送りつけられて来たということだった。

 

「それも、ファーデーンを経由してな」

 

 ファーデーンのザラムとエウバを仕切っているラクト・エルファメルは先代のキャプテンアングラッゾの時代からビシディアンの支援を行っていた。

 ビシディアンの探しているEXA-DBの捜索もアングラッゾの時から情報を集め解析などをしており、クライドとも直接的な面識はほとんどないが、蝙蝠退治戦役ではアンバット攻防戦ではともに戦ったこともあり、クライドの捜索も手伝ってもらっている。

 だが、マッドーナ工房がラクトを経由して通信文を送って来たことは一度もなかった。

 マッドーナ工房も宇宙海賊と繋がりを持っていることは明るみにしたくはないが、蝙蝠退治戦役の時から銀の杯条約に違反して戦闘用MSの発注を受けていたこともあるので明るみになったところでそこまで気にすることはない。

 

「ウイルスの類はなかったみたいだ」

「開いてくれ」

 

 不審な通信文ではあるが、すでにスキャンを終えてバロノークのシステムに浸食して破壊するウイルスなどは検出されてはいない。

 アセムの指示で通信文を開くとそこには一文が書かれていた。

 

『すぐに工房まで来て欲しい』

 

 それだけだった。

 暗号にしてはそれだけで意味が通じるため、その可能性は低い。

 つまり、通信文の通り、マッドーナ工房はビシディアンにすぐに来て欲しいと言うことだった。

 そして、その理由が書かれていないということは通信文には書けないことであると考えられる。

 通信文に書かれていることがどこかで漏れないとも言い切れないからだ。

 となれば、それ相応の用事ということになる。

 

「どうする? キャプテン」

 

 ラドックはマッドーナ工房やラクトが関わっているとは言え、あからさまに怪しい通信文をどう判断するかアセムに委ねる。

 幾ら、馴染みの工房や支援者の名前が出て来ようとも直接本人が出て来た訳でもないため、連邦軍やヴェイガンなどの罠である危険性も考えられる。

 

「そうだな……罠の可能性も考えられるが、その時は突破すれば良いだけだ」

 

 罠である可能性はアセムも考えたが、本当に重要な要件があるのかもしれない。

 その為、無視する訳にもいかないのも事実であった。

 ならば、罠であることを警戒しつつ、マッドーナ工房を目指すというのがアセムの決断であった。

 

「了解だ」

 

 ラドックもアセムの判断ならそれ以上異論はない。

 アセムがマッドーナ工房に向かうことを決めるとバロノークは進路をマッドーナ工房に向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スラッシュのメナスは指示された宙域に到達していた。

 そこにはメナス以外にも戦闘艦が数隻とその中心には重力化での運用も視野に入れた新型の戦闘艦『ファ・ゼオス』が集結していた。

 ファ・ゼオスはメナス同様、赤く塗装されている。

 スラッシュはファ・ゼオスに出向いている。

 ファ・ゼオスの格納庫にはガフランやバクトと言った旧式以外にもドラドやダナジンといった主力機もおかれている。

 その中に一際目立つ真紅のMSが置かれている。

 ティアナのプロトギラーガの戦闘データを反映し、ヴェイガンの持ちうる技術を総動員して製造されたMS「ギラーガ」だ。

 ギラーガは今は最終調整の段階であるのでXトランスミッターがついていないが、格納庫で最も存在感を放っていた。

 ギラーガの頭部のコックピットに技術者が取りついていることが見える。

 その後継からギラーガのコックピットにパイロットがおり、機体の調整をしていると判断したスラッシュは床を軽く蹴り、ギラーガのコックピットに向かう 

 

「親父!」

 

 スラッシュがそう叫ぶと技術者達がスラッシュの方を見てギラーガのコックピットから人が出て来る。

 それはスラッシュの父親であるゼハート・ガレットだ。

 ゼハートは23年前よりも少し背が伸び、仮面で素顔はすべては見えないが雰囲気があの時よりも大人びている。

 

「……スラッシュなのか?」

 

 スラッシュを見たゼハートはそうつぶやく。

 16年ぶりにコールドスリープから目覚めたゼハートはすぐに現代の情報を確認した。

 その中にはゼハートの友にしてライバルでもあったアセム・アスノの戦死と言う情報も記されていた。

 ノートラム攻防戦の後もゼハートはアセムの動向に関しては気にしていた。

 アセムはフリット・アスノの息子でガンダムのパイロットである連邦軍のエースパイロットと言うだけあり、動向を掴むことは難しくはなかった。

 十数年前にアセムがロマリーと結ばれたと言う情報を得たときは自分の立場的には祝福は出来なかったが、心の内で祝福したことは今でも覚えている。

 そのアセムの死を悲しみ悼むと同時にゼハートは心の底で安堵もしていた。

 アセムが戦死したと言う事はもう戦場でアセムと遭遇することはないからだ。

 アセムとは互いに認め合ったライバルではあるが、戦わないで済むならそれに越したことがない。

 だが、ゼハートが戦場から身を引くという事はあり得ない選択肢で、アセムもまた戦場から身を引くことはないため、互いに譲れない物があれば戦うしかなくなる。

 それがなくなったという事でヴェイガンの兵士としてのゼハートの心は軽くなった。

 だが、アセムの友人のゼハートとしてはアセムの死を簡単に受け入れることは出来なかったため、スラッシュのことにまで気を回すことは出来なかった。

 しかし、ゼハートはスラッシュを見た途端に、スラッシュであることが理解できた。

 それは自分に似ているからや、Xラウンダー能力で感じた訳ではなく、ゼハートがスラッシュの父親だからだろう。

 ゼハートは調整を技術者に任せてスラッシュを自分の自室に案内する。

 

「大きくなったな」

 

 ゼハートはそう言って付けていた仮面を外した。

 ギラーガもゼハートのXラウンダー能力を効率良く伝達するためには付けた方が良いと言われていたが、16年ぶりに会う息子に対して仮面を外すことは誰に咎められることができよう。

 仮面を部屋の机の上に置くとゼハートはスラッシュの方を見る。

 16年前は生まれたばかりに赤ん坊であったが、今では大きく成長している。

 その成長の過程を自分で見ることが出来なかったことは悔やまれるが、こうして息子が成長していることは素直に喜ばしいことだった。

 

「俺も16だからな……俺も親父と同じでMSのパイロットになってさ……」

「そうか……」

 

 ゼハートに会ったらいろいろと聞きたいことがあったが、いざ会ってみるとなかなか言葉が出てこなかった。

 それはゼハートも同様で二人の間に沈黙が流れる。

 

「親父、今回の作戦での俺たちの配置のことだけど……」

 

 スラッシュはすぐに出ることは次の作戦のことであった。

 ゼハートはすぐに次の作戦でのメナスの配置を思い出しす。

 

「メナスの配置が戦闘予定宙域から離れているけど……」

「スラッシュ、戦いは常に二手三手先を読むものだ」

 

 作戦のことであればゼハートもスラスラと言葉が出て来る。

 

「今回『私』達が仕掛ける海賊はガンダムタイプのMSを二機所有していると情報が来ている」

 

 今回の作戦は宇宙海賊ビシディアンの殲滅だった。

 ビシディアンが連邦軍の輸送艦を強襲するだけなら、気にすることはなかったが、ビシディアンはヴェイガンと繋がりを持っている部隊が関わっている輸送艦をなぜか強襲している。

 これが一度や二度ならば、偶然で片付けられるが、それでは説明がつかないほど、ピンポイントでヴェイガンと繋がりを持つ部隊が狙われている。

 そこまでくればビシディアンは意図的に狙っていると見た方が良い。

 地球進行作戦が開始される前に、不確定要素であるビシディアンを叩いておきたかった。

 

「相手がガンダムであれば、一切の油断はできない。だから、ジルスべインを五機も配備し、その宙域にメナスを配置した」

 

 すでにビシディアンはガンダムAGE-2の流れを汲むと思われるガンダムタイプのMSを二機も所有していることが判明している。

 そのパイロットがアセムやアスノ家の人間が乗っている訳でもなく、AGEシステムを搭載されているとは思っていないが、ガンダムタイプのMSガンダムタイプのMSはAGEシステムが搭載されていなくとも、高性能のMSであることには変わらない。

 かつて、ゼハートもフリット・アスノの力を読み間違えビッグリング攻略を失敗している。

 それはガンダムの力と言うよりもフリットの力であったが、ゼハートはビシディアンが二機のガンダムを所有しているとの情報から万全の策のためにメナスを今の配置にしていた。

 スラッシュもゼハートが私情や何の考えもなく、自分たちを配置した訳ではないどころが、自分たちを当てにしているという事が分かり、ゼハートに期待されていることを知り、スラッシュは否応なく気合が入る。

 それによってゼハートに聞きたかった母のことなども今はどうでも良くなっていく。

 

「分かった。俺……親父の期待に応えられるようにやってやる」

「その意気だ。だが、スラッシュにまで回すことはしないさ。作戦には俺もギラーガのテストも兼ねて出撃するつもりだからな」

 

 ゼハートの本隊がビシディアンを叩くことに成功すれば、スラッシュの仕事はない。

 ゼハートもまた、息子のスラッシュと初めて共に戦うため、いつも以上に気合が入っていた。

 そうこうしている内にギラーガの調整が終わったため、パイロットであるゼハートに確認して欲しいという連絡が入り、ゼハートは格納庫へと戻り、スラッシュもメナスに戻り作戦の準備に入って行く。

 

 

 

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