機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第9話

 

「全滅した?」

 

 コロニー「サザーランドポート」から離れた宙域でヴェイガンの戦闘艦のブリッジで連邦の戦艦に差し向けたガフランが全滅したと言う報告をセリアは受けていた。

 

「連邦にガフランを倒せる兵器を完成させたと言う話は聞いてないわね……」

 

 ヴェイガンは機動兵器を始めとして、戦力では圧倒的に連邦軍の優位に立っているが、それでも連邦軍の動きを監視をしている。

 その中でも一部で新兵器の開発の情報を多々耳にするが、それを実戦に配備したと言う話は聞かない上に、メディアの情報にも連邦が自分達に勝利したと言う報道はされていない。

 ヴェイガンが行動を開始し13年が経つが連邦は一度も勝利をしていないため、連邦軍がガフランを全滅させたと言う事なら、それを大々的に報道してもおかしくはない。

 だが、あれから数時間経つが一向にそのような報道がなされる気配は感じられない。

 

「報道管制をするメリットも無いとすると……」

 

 そこから考えれることは一つ、ガフランを全滅させたのは連邦ではなく別の勢力である可能性だ。

 そして、セリアはその可能性が最も高い可能性を持った者を知っている。

 

「ガンダム……」

 

 クライド・アスノが作ったガンダムをもってすれば、ガフランを全滅させるのは訳がない。

 すでに何機ものガフランがガンダムZEROに葬られ、つい先日はヴェイガンの誇る最強クラスのXラウンダーのブラッドを退けている。

 

「彼の仕業だとすれば話は簡単ね」

「如何なさいます?」

 

 黒マントの男の一人がセリアに尋ねる。

 

「そうね……すぐに出せる機体は私のバクト以外に何機ある?」

「ガフランが二機程……」

 

 それではあまりにも戦力が少ない。

 連邦相手ならガフラン二機で十分相手に出来るがクライドのガンダムが相手なら話は別だ。

 連邦相手の機体性能の優位がない上にブラッドと同レベルのXラウンダーもいる以上、戦力不足は否めない。

 

「ブラッドが戻るまではまだかかるわね」

 

 現在、ブラッドは自分の専用機を取りに戻っている。

 それと同時に補給の戦力もつれて来る予定となっている。

 

「だけど……このまま何もしないことも無いわね」

 

 前の戦闘でガンダムZEROは新しいアーマーでゼダスを退けているが、戦闘データの解析でブリーズアーマーの特性は機動力で、攻撃力や防御力を捨てた上で、圧倒的な機動力を確保していると言うのがヴェイガンの技術者の見解である。

 前の戦闘ではガンダムZEROの攻撃力ではセリアのバクトを仕留めるには足りない事も確認済みである為、戦い方次第では十分にバクトでもガンダムZEROに対抗することはあり得る。

 今後の戦いの事を考えれば向こうの戦闘データを集めると言う意味でも戦闘を仕掛けて損はない。

 

「進路をサザーランドポートに向けて、私が出るわ」

 

 戦闘艦は進路をサザーランドポートに向けると、セリアはサザーランドポートに向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……どこだ?」

 

 シャルル・ラファルグはアブディエルの医務室で目を覚ます。

 

「ここは俺達の母艦だよ」

 

 シャルルは声の方を見ると医務室の出入り口にクライドがもたれ掛かり腕を組んでおり、その横にはエリーゼが医務室に入って来る。

 

「気分はどうですか? 一応、大きな怪我はしていないみたいですけど」

「ああ……大丈夫だ。それより君たちは一体……?」

「パラダイスロスト……アンタ達で言うテロリストまたは海賊って事になってはいるが、一応は私設武装組織だと言っておこう」

 

 クライドがそう言うとシャルルは大した反応が無かった。

 クライドとエリーゼはあまりにも反応の無さに違和感を覚える。

 一般的にクライド達パラダイスロストは連邦からテロリストや海賊として見られている。

 連邦軍に属しているシャルルがその名前を聞いて少なからず敵意を持つかと予想していたが、シャルルに敵意は見られなかった。

 

「それよりも俺は君たちの捕虜と言う事なのか?」

 

 シャルルはそう言い、両手にかけられた手錠を二人に見せる。

 例え、怪我人とは言え相手の出方が分からない以上は動きを制限する必要もあり手錠で手の動きは封じている。

 

「悪く思うなよ。アンタは連邦軍の軍人みたいだからな。助けはしたが、艦内を自由に動かせる程俺達はお人よしでもないからな」

「貴方を艦から下すまでは我慢して下さい」

「ああ……分かった」

 

 この状況で自由になるのは流石に無理だとシャルルも分かっているため、素直に応じる。

 その様子に一切の反抗の意思すら感じることが出来ずに、クライドの違和感が強くなる。

 

「それよりも、俺の他に君たちに回収された奴はいるのか?」

 

 シャルルがそう言うとエリーゼは言い難くそうにする。

 

「お前以外は全滅だ」

 

 クライドがはっきりとそう言うとシャルルは目を落とす。

 クライド達が到着した時にはすでにシャルル意外のMSは撃墜されているか、パイロットは助かっていないことが明白なMSしか残っておらず、シャルルのMS意外は回収していない。

 

「そうか……」

「それよりも、俺達はサザーランドポートに向かっているが、アンタもそこで下すが良いな? そこにも連邦軍の基地はあるかな」

「それで構わない。それよりも君たちの名前を聞いても良いかな? 俺はシャルル・ラファルグ、階級は大尉だ」

 

 クライドは始めからシャルルと慣れ合うつもりは無かった為に名乗らず、シャルルの名前を聞く気は無かったが、エリーゼは互いに自己紹介をしていないことに気がついた。

 

「そうね。私はエリーゼ、こっちがクライド、少しの間だけよろしくね」

「ああ、よろしく頼む」

「連邦軍人とよろしくするつもりはないんだけどね」

 

 クライドがそう言っていると、エリーゼは視線でクライドを咎める。

 下手にシャルルに悪印象を与えれば、サザーランドポートで解放した後に連邦軍にパラダイスロストの内部事情などを漏らされる危険性があるから、あえて悪印象を与えないようにしていたのにクライドの態度では悪印象を与えかねなかったからだ。

 クライドはエリーゼの視線の意図に気付き肩をすくめる。

 

「それとアンタが乗っていたジェノアスはコロニーまでの運賃代わりに貰っておくからな」

 

 シャルルが乗っていたジェノアスは大破しているが、解体すればジャンク屋にある程度の値段で売りつけることが出来る。

 クライド達としても連邦軍人を乗せると言う危険を冒している為、ある程度の利益が欲しい。

 

「仕方がないか……」

 

 本来なら、軍のMSでシャルルが個人で所有している訳ではないため、シャルルの一存で決めることは出来ないのだが、この状況ではシャルルに拒否権は無く、受け入れるしかなかった。

 こうしてアブディエルはサザーランドポートに入港する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コロニー「サザーランドポート」

 サマーウォールやウィンターガーデンの様なリゾートコロニーではなく、一般的な居住コロニーである。

 コロニー内には連邦軍の基地もおかれておりヴェイガンの襲撃もなく平和を保っている。

 そのサザーランドポートにアブディエルが入港している。

 そして、その中の連邦軍のサザーランド基地の司令室にエリーゼとアルフレッドは来ていた。

 

「まさか、かの有名なパラダイスロストの代表が貴女の様な若くて美人だとは驚きですな」

 

 基本的にパラダイスロストの代表として会談に出るのはエリーゼの仕事となっている。

 相手が若い女となると、相手は油断したりする場合もある。

 指令室の主でもあるジョセフ・サザーランドがエリーゼを見てそう言う。

 ジョセフはこのサザーランド基地の司令だが、その太った腹などからはとても軍人には見えず、金と権力に汚い政治家の方がお似合いだとエリーゼは内心思っている。

 

「そんなことは無いですわ」

 

 エリーゼはジョセフの舐める様な視線にイラっとするが、ここで揉め事を起こすのは不味い。

 そのため、若干引きずりながらも精一杯の作り笑顔で答える。

 エリーゼはパラダイスロストの代表として来ているが、アルフレッドは護衛として来ている。

 クライドは現在、シャルルとともに艦を降り、ジゼルはレオナールと町に食糧の調達に出ている。

 それ以外でユーリアはMS戦闘ならクライドに次ぐエース級の腕前だが、白兵戦では全く役に立たない7歳の少女である。

 アリスはいざと言う時の工作の為に連れて来る訳にも行かず、消去法でアルフレッドに決まったがアルフレッドは見たまんまで荒事には向いていない形だけの護衛である。

 一応、有事に備えてアリスは工作後にデスドールで待機するように指示を出している。

 アルフレッドもそれを理由に拒もうとするが、エリーゼが女一人で出向くと相手に舐められる恐れがあり形だけでも護衛を付ける事になったが、このジョセフの態度を見る限りでは成功したとは言い難い。

 

「ご謙遜を……」

「それよりも、私達のコロニーへの滞在を認めて頂きありがとうございます」

「いえいえ……それよりも、気を付けて下さいよ。このコロニーは表面上は平和を保っていますが、一部では武装勢力が潜伏していますからね」

「武装勢力ですか……」

 

 エリーゼは武装勢力と言う言葉に喰らいつく。

 事前にコロニーの事は調べているが、コロニー同士の感心が希薄な為、他のコロニーの情報は入り難く、直接コロニー内でしか得られない情報もあるのでこのコロニーに武装勢力が潜伏していることは初耳だった。

 

「ええ……何が不満なのか分かりませんが、度々軍の物資を強奪して行くんですよ。我々も対策を練っているのですが、中々尻尾を出さない物で……貴女方の様な善良な人達が彼らの被害に合うのは大変心苦しいのですよ」

 

 エリーゼには心配そうにするジョセフの態度が白々しく見える。

 ジョセフがエリーゼ達を善良な人達と言ったが、連邦に追われる立場のエリーゼ達が連邦軍の基地に招待されているのは基地にかなりの金額を渡しているからだ。

 それを基地の司令のジョセフが知らない訳も無く、エリーゼ達を「善良」とは言えないことも分かり切っている。

 結局のところ、ジョセフの言う善良な人達と言うのは自分達に金を渡してくれる人の事なのだと、エリーゼはふんでいる。

 だとすれば、その武装勢力はジョセフに対しての不満を募らせた人達が決起しているのだと、同時に当たりを付けている。

 

「ご忠告感謝しますわ」

「何……人として当然の事です。今後とも、貴女方とは良い関係でいたいものです」

 

 ジョセフはそう言い、エリーゼに手を出し、エリーゼは引き攣りそうな顔で必死に笑顔を作り、ジョセフと握手をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ!ムカつくわ!」

 

 基地を後にしたエリーゼはそう怒鳴り、すぐさまジョセフと握手した手を持っていたハンカチで拭いている。

 

「何なのよ!アイツはあれで司令?冗談じゃないわよ!」

 

 アルフレッドは中々見られないエリーゼが本気で切れているのを目の当たりにして、自分に八つ当たりをされないように声をかけないで黙ってエリーゼの後を歩く。

 エリーゼはクライドといる時は良くクライドを怒っているが、あれはクライドがエリーゼをからかった時などで、本気で怒っている訳ではないが、今回は本気で切れているのは分かる。

 

「それにあの目!あの人の体をジロジロと舐めるように見て……気持ち悪いのよ!」

(クライドはこうなることを見越して、僕に押し付けて連邦の彼と出かけたんだな……)

 

 アルフレッドはシャルルと出ることを口実に自分にエリーゼを押しつけたクライドの事を恨めしく思っていた。

 

「……まぁ良いわ。あんな奴の事をいつまでも言っていても気分が悪いわ。それじゃアルフレッド、私はユーリアと合流して買い物するから」

 

 いつの間にかジョセフへの恨みごとを言い終えたエリーゼがアルフレッドの方を向いてそう言う。

 

「確か、ユーリアの日用品とかを買うんだよね」

 

 ユーリアはウィンターガーデンから身一つで出て来た為、日用品やその他諸々は持っていない。

 特に衣類はアブディエルのクルーとでは当然の事ながらサイズが合わないため、ブカブカの服を来ていることが多い。

 

「そうよ。アルフレッドもついて来てよ」

「どうして僕が!」

 

 ようやく解放されると思っていたアルフレッドは予想外の言葉に声を上げる。

 それはアルフレッドにとっては死刑宣告に近い物でもあった。

 

「荷物持ちよ」

「ユーリアの服とかを買うだけだろ? 僕が荷物を持つ必要はないだろ?」

「何言ってんのよ。女の子にはいろいろと必要なのよ」

 

 そんな事を言われても男のアルフレッドに分かる訳もない。

 

「本当なら、クライドに頼むところなんだけどシャルル大尉と出ていていないから、アルフレッドにお願いするのよ」

 

 そこでアルフレッドはクライドの真意に気がつく。

 クライドはコロニーに停泊する時に度々、エリーゼと二人で町に出ることは珍しくない。

 そして、町から戻って来ると、心無しか出る前に比べて疲れた表情をしており、たまに死にそうになっているが、その理由を少し理解した。

 つまりは、女の買い物に付き合わされているからだった。

 体力面では技術者としているとは言え、パイロットをしているクライドの方が当然高く、そのクライドでさえたまに死にそうになる。

 

「さぁ、行くわよ」

 

 主な仕事が事務方であるアルフレッドは体力に自信の無いのでエリーゼの言葉は死刑宣告に聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルフレッドに危機を押しつけたクライドはシャルルとともに車で移動していた。

 サザーランドポートに着いた時、シャルルはクライドについて来て欲しいと頼んだ。

 クライドはエリーゼとユーリアの買い物に付き合いたく無かったために、シャルルについて来ていた。

 道路を走るなか、クライドは横目でサザーランドポートの町並みを眺めている。

 サザーランドポートの町並みはサマーウォールの様な別荘はなく、アパートやビルが並び、道路沿いには緑も見え平和そうに見える。

 だが、町のところどころに連邦軍のジェノアスが配置されていることが気になっていた。

 基地ならともかく民間人の居住区に戦闘用のMSのジェノアスが配置されているのはまともではないからだ。

 下手に市街地のMSを配備すれば、悪戯に市民の危機感や不安を煽ることになり、何処のコロニーでも平時にMSを市街地に配備することはない。

 だが、町の様子を見る限りでは非常時には思えない。

 つまりは、このコロニーでもクライドの知らない問題がある可能性を示唆している。

 クライドは警戒を強めるが一方のシャルルは気にすることなく車を走らせた。

 二人を乗せた車は地下へと入って行く。

 地下に入ってしばらく進むとシャルルは一件の家の前で車を止める。

 

「ここか?」

 

 クライドは周囲を警戒しつつ、車から降りる。

 すると、車が止まった音が聞こえたのか、家から一人の女性が出て来る。

 年は20代後半くらいで茶色い髪を腰の辺りまで延ばしている。

 そして、その女性のお腹は膨れ上がっており妊娠していることがすぐに分かる。

 

「シャルル!」

 

 女性はシャルルを見ると、少し驚くがすぐに涙を浮かべてシャルルの胸に飛びついた。

 その様子からこの女性とシャルルの関係が只ならぬものである事は予想がつく。

 

「生きていたのね……」

「ローザ……心配をかけて済まない」

 

 シャルルはそう言ってローザを呼ばれた女性を抱きしめる。

 事態についていけないクライドは次第にイラついて来るが、ローザがクライドに気がついた。

 

「シャルル、こちらは?」

「ああ……そうだった。彼はクライド、俺の命の恩人さ。クライド、彼女は俺の妻でローザ」

「妻のローザです」

「どうも」

 

 クライドは短くそう言うと今度は扉が派手に開けられてシャルルよりも背の高い男が出て来る。

 

「どうした、ローザ……シャルル!」

 

 男もまたシャルルを見て驚く。

 

「お前の部隊が全滅したと言う噂を聞いていたが、生きていたのか!」

「何とかね。クライド、彼はジャン……俺の親友でローザの兄だよ。ジャン、彼が俺を助けてくれたんだよ」

「おお! そうか! 良く俺の親友を助けてくれた! 礼を言う!」

 

 ジャンはクライドにそう言う。

 クライドはジャンの勢いに圧倒されつつも、さっさと用事を済ませて帰りたくなって来る。

 

「立ち話は何だから、中に入って下さい」

 

 ローザがそう言いクライドは家の中に案内される。

 そして、家に案内されたクライドはローザやジャンに大歓迎されて食事をしている。

 

「それでUEと遭遇してやられるところだったのを、クライドに助けられたって訳さ」

 

 シャルルはローザとジャンに戦いの事を一部を伏せて話す。

 

「となると、クライドはUEを追い返したのか?」

「追い返したんじゃなくて倒したんだよ」

 

 クライドは若干、イラつきながらそう言う。

 訳も分からず、食事になりジャンのテンションも疲れる上にこの雰囲気がクライドにはきつかった。

 シャルルの部隊が全滅し、シャルルの死を覚悟していたが、シャルルは無事に帰って来た。

 家族が生還したことをローザもジャンも凄く喜ぶのは理解できる。

 だが、クライドにとってそれはとても遠く感じた。

 すでにクライドには家族と呼べる存在は居ない。

 6年前のあの日に全て奪われた。

 あの後、アリスの調べで弟のフリットは生きていてどこかのコロニーで生活していると分かっているが、クライド自身はフリットに会いに行くつもりは無かった。

 フリットは兄の自分に良くなつき、優秀だったクライドをとても尊敬していた。

 それ故に復讐の為にアスノ家の技術を使って戦う今の自分をあまり見せたくは無い。

 だから、クライドにとってこの場は苦痛でしかない。

 

「あのUEをか!」

 

 ジャンもローザもクライドの言葉に驚く。

 天使の落日から13年が経つが、その間一度も連邦軍は勝利を収めてないのだから驚くのも当然だ。

 

「まぁね」

「それが事実なら……」

 

 ジョンはそう言い、シャルルに視線をやりシャルルも頷く。

 

「クライド……少し付いて来てくれないか?」

 

 シャルルがそう言い、これ以上この場にいたくないクライドは大人しくシャルルとジャンについて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつは……」

 

 クライドが案内されたのはコロニーの地下の中でも地上からだいぶ離れたところだった。

 そこにはシャルドールが一機に作業用のMSのデスぺラードが数機置かれていたが、どれもマシンガンなどで武装をしており作業用には見えない。

 

「俺達はこれで連邦と戦っている」

「シャルルは連邦軍だろ?」

「このコロニーは連邦に支配されている。奴はUEからの防衛や治安維持の名目に税率を引き上げて俺達から搾取しているが、このコロニーは一度としてUEの襲撃を受けたことがないし、このコロニーの治安も悪くない!」

「成程ね……」

 

 クライドは大体の事情は呑み込めた。

 つまりはここの連邦軍はコロニーを守ると言って金を巻き上げているが、連邦が必要となる事態が起きることもない。

 彼らはそれに不満を持ち、連邦に対して反抗勢力を作って活動していると言う事だ。

 

「その上……それに意見すれば反政府勢力と断定されて殺される! このコロニーは司令とその弟のサザーランド兄弟に支配されてるんだ!」

「典型的な独裁って訳か……」

「そうだ! だから俺達は連邦軍の支配から自由を得るために行動を起こした」

「だけど、俺は出来るだけ武力を使わずに終わらせたかった。だから……連邦を変えるために軍に志願したんだ……だけど、それも無意味だった。連邦は腐りきっている」

 

 シャルルはそう言うが、クライドは過去に連邦に追われて面倒なことを経験している。

 少なくとも、腐っている奴らならあそこまでしつこくは無かったと思っている。

 単にシャルルは配属された部隊が悪かっただけなのかも知れない。

 だが、このコロニーの連邦軍は自分達から金を積まれて見逃している時点でまともとは言えない。

 

「お前たちの事情は分かったが、俺をここに連れて来た理由は?」

 

 クライドにとってはそれが一番重要なことだ。

 パラダイスロストは連邦に金を積んで見逃して貰っている立場にある。

 それを知らずとも無関係のクライドに自分達の事を話すのはリスクが大きい。

 そうなれば、そのリスクを背負ってでもメリットがあることになる。

 

「単刀直入に言う。俺達に力を貸してくれ」

「やだね」

 

 クライドは半ば予想がついていた為、用意していた答えで即答した。

 ガフランを撃墜したと聞いて、この事を話したと言う事はクライド達の力を借りたいと読むのは難しくはない。

 ここの戦力を見る限りでは連邦相手でも戦いにすらならないだろう。

 連邦軍はヴェイガンのMSにこそは無力だが、ここに置かれているMSを相手なら性能でも劣ってはいない。

 それに、彼らの仲間は市民上がりで訓練を受けてはいない。

 その為、正規の訓練を受けている連邦軍に劣るはずだ。

 クライド達のように実戦である程度の経験を積んでいれば、訓練の有無などは埋めることも可能だが、それも期待は出来ないだろう。

 それを埋めるためにジャン達はガフランを撃破するだけの戦力を持つクライド達を仲間に引き入れようとここに連れて来たと言う訳だ。

 

「なぜだ? 君たちも連邦から追われている立場だ?」

「勘違いするなよ。俺達の敵はUEで連邦じゃない。連邦に従う理由がないから場合によっては敵対するだけだ。その結果として俺達はお尋ねものになっただけの話だ。シャルルを助けたのも偶然に過ぎない。アンタ達に力を貸すメリットはない」

 

 話の中でジャン達にもクライド達が連邦軍に追われていることは何となくは分かっていた。

 だがクライドの敵はあくまでもヴェイガンであり、連邦軍と交戦したのはその時の連邦軍が邪魔をした為であって、連邦軍を敵視している訳ではない。

 今回のように金で交戦を避けられる場合は金で解決することは珍しいことではない。

 その上、クライドが彼らに肩入れする理由も無く、下手に手を貸せば更に連邦軍に追われる口実を作ることになる。

 それだけのリスクを背負っても手を貸すメリットがない。

 

「だが……」

「ジャン!大変だ!」

 

 それでも尚、ジャンが喰い下がるがジャンの元に彼らの仲間が声を荒げて走って来る。

 

「どうした?」

「C地区の奴らが連邦の襲撃を受けて壊滅した!」

「くそ……すぐに向かうぞ」

 

 それを聞き、ジャンとシャルルはC地区へと向かい流れからクライドもそれについて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつは……」

 

 C地区につくとそこには撃破されたMSの残骸がいくつも転がり、怪我人が運ばれている。

 

「酷いな……」

 

 シャルルはその光景を見てそう呟く。

 

「良かったじゃないか。この程度で済んで」

 

 クライドがそう言うとジャンはクライドの胸倉を掴む。

 

「この程度だと!これを見て良くそれが言えるな!」

「見たから言えるんだよ」

 

 頭に血が上るジョンに対して、逆にクライドは冷静に答える。

 

「これがUEだったら、この程度では済まなかったぞ」

 

 これがヴェイガンの攻撃ならば、この程度で済まないかも知れなかった。

 過去にコロニー「エンジェル」はヴェイガンの襲撃で崩壊している。

 クライドの故郷のオーヴァンはこの程度じゃ無かったし、被害で言えば、クライド達が暴れたウィンターガーデンでのマーロッソファミリーの方が死者は出ている。

 それに比べれば、怪我人で済んだ者が居るだけマシに思えた。

 

「くそ……連邦の奴ら……」

「どうするんだよ。ジャン……」

「決まっている!仲間の仇を討つ!」

 

 ジャンがそう宣言すると、彼らの仲間たちは一斉に声を上げるのをクライドは冷ややかに見ている。

 

「ジャン、俺も……」

「いや…お前は残っていろ」

 

 ジャンはシャルルにそう言う。

 

「だが……」

「ローザを頼む」

 

 そう言われてしまえば、シャルルに反論は出来ない。

 ジャンはそう言って仲間とともにMSに乗りこんで連邦の基地に向かう。

 

「ジャンの言う通りだ。お前は嫁さんを連れて逃げろ」

「クライド……」

「あいつらは死ぬからな。ここにいても連邦に殺されるぞ」

 

 クライドはそう言い切る。

 ジャン達は頭に血が上り過ぎている為に言わなかった事があった。

 

「なぜ、そう言い切れる? ひょっとしたら生き残る可能性もあるだろう」

「ないな」

 

 シャルルは希望的なことを言うがクライドはやはりそう言い切る。

 クライドには言い切るだけの確証があった。

 

「考えてみろよ。どうしてお前らが今まで無事でいる」

「それは連邦に見つからなかったからで……」

「コロニーの中でか?」

 

 宇宙とは違いコロニーの中は密室な為、どんなに上手く隠れても隠れきるのは不可能に近い。

 ましてやMSを隠しておくのは不可能だ。

 それでも彼らは今まで連邦軍に見つからないでいた、その理由として考えられる可能性の一つが、連邦軍の怠慢だが、この場所を見つけて襲撃していることを考えればその可能性は低い。

 そうなれば可能性は一つしかない。

 

「お前たちは今まで泳がされていたんだよ」

 

 連邦軍はレジスタンスの拠点を把握していたが、敢えて見逃していたと言う可能性だ。

 

「どうして?」

「さっき、ジョンが言っていただろ?治安維持の為だよ。お前たちがテロを起こせば、連中は治安維持の名目で軍備を増強出来るし、そのために税を上げることだって出来る。そのために連邦はお前たちを潰さ無かった。連邦はUEに対しては無力だが、この程度の戦力を潰すのは訳ないからな」

 

 彼らの戦力を見積もっても基地の戦力には勝てない。

 MSの性能や、兵の質、MSの数、どれをとっても連邦に勝てる要素はない。

 そんな彼らに連邦軍にとっての価値があるとすれば、それはテロリストと言う事だ。

 彼らが動けば、連邦軍はそれを口実に軍備の増強のために税金を上げることも予算を司令部に申請することも出来、その税金や予算の幾らかは基地司令の懐に入っているのだろう。 

 更にはテロの抑止の名目で市街地にMSを配備することも出来、連邦軍の支配体制は確立して行く。

 

「そんで、何らかの理由で連邦はお前たちを使っての金儲けの必要がなくなったから、お前たちを潰して反乱分子を鎮圧したって結果を得ることにしたってところか」

 

 そして、その必要がなくなれば潰せば良い。

 連邦軍とレジスタンスの戦力を考えれば、連邦軍はいつでもレジスタンスを潰すことは可能だろう。

 レジスタンスを潰せば、その功績はそのまま連邦軍の物となる。

 下手に反乱を起こせば軍に潰されるとの暗黙のメッセージを市民に与えることも出来て、軍によるコロニーの支配は盤石なものになるだそう。

 クライドは知らなかったが、その何らかの理由とはアブディエルが入港の際に連邦に積んだ金だった。

 その金額は相当な物で、ジョセフはジョン達を泳がすことを止めていた。

 

「後は適当に突っついて、頭に血が上って基地を攻撃したところを待ち伏せして殲滅すれば終わりだ」

 

 殲滅の方法も至って簡単である。

 敵を少し突っついて頭に血を登らせたレジスタンスを基地で待ち伏せをしてれば良い。

 頭に血が上っているレジスタンスが戦術を駆使することなく正面から仕掛けて来るのは容易に想像出来る。

 事実、頭に血が上ったジャン達は総力を挙げて、基地に向かっている。

 このまま行けばすぐに彼らは全滅するだろう。

 

「クライド!君はそれを見抜いていてジャン達を行かせたのか!」

「そうだ。人が動く理由には二つある。一つは自分に対する利益だ。そしてもう一つは感情……前者はそいつにとって何が利益で何が不利益なのかを示せば良いが。後者は厄介だ。感情で動き時は例え自分に不利益があろうと聞きゃしない」

 

 それは感情でヴェイガンと戦っているクライド自身が一番分かっている。

 クライドも幾ら、ヴェイガンと戦う事で起こり得る不利益を説かれようとも、戦いを止める気が毛頭無いのと同じでそれを言ったところで彼らが止まることもないのは明白だ。

 

 

「あいつらには何を言っても無駄だよ」

「それでも……俺は……」

「あいつらと一緒に自殺するか? お前が死んだらローザや生まれて来る子はどうなる?」

 

 ジャンがシャルルを残したのはその為である事はシャルルにも理解は出来る。

 だからと言って、勝ち目のない戦いに仲間を行かせる訳にも行かない。

 シャルルはつい先日にも軍の仲間を失ったばかりである。

 

「でも……俺は見捨てることは出来ない。ここで連邦を討てればコロニーが解放されるかも知れない」

「そのために行くと?」

「ああ……ここは俺の故郷だから……」

 

 シャルルはそう言って走って行く。

 事はそう単純な問題ではないのだが、シャルルにはそれは重要ではなく仲間を救い、故郷を解放する事が最も重要な事だ。

 

「故郷か……」

 

 クライドはそう呟く。

 すでにクライドの故郷は無く、帰る家も無い。

 だからこそ、故郷の為に戦えるシャルルの事を少し羨ましくも思え、それをおいて戦いに身を置くシャルルの事に苛立ってもいた。

 

「……たく……俺も甘いな」

 

 クライドはそう言い携帯端末を出す。

 

「俺だ……少し頼みたい事がある。大至急にだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

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