機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第86話

ヴェイガンの宇宙要塞「ラ・グラミス」が火星圏から極秘裏に地球圏へと到着し、ラ・グラミスを中心として地球侵攻作戦のための艦隊が集結していた。

 その中心となっているのは赤く塗装されているゼハートのファ・ゼオスとザナルドの搭乗艦のファ・アークの二隻だ。

 その周囲にもファ・ボーゼ級や戦闘艦が並び、その戦力は地球圏のヴェイガンの総戦力と言ってもいい。

 それだけの戦力を集めえてヴェイガンは地球侵攻作戦を本格的に始動させるつもりなのだ。

 作戦を開始するに当たり、ラ・グラミスのブリーフィングルームに集結した戦艦の司令官などが集められていた。

 ゼハートは辺りを見渡す。

 ザナルドを始めとして司令官クラスとなればある程度は見覚えもあるが、ザナルドの前に立っていたヴァニスに目を止める。

 司令官クラスの中でもゼハートは若いがそれ以上にヴァニスは若く見える。

 更にはあのザナルドが自分の前に立っている事も気になる。

 ゼハートもザナルドが若くしてイゼルカントに目を掛けられている自分の事を良く思っていない事は自覚しており、そのザナルドが自分の前に若く、それも女であるヴァニスが立っている事に何も言わない事は不自然ではあった。

 そして、ヴァニスからは強いXラウンダー能力を感じる。

 これほどのXラウンダーならば、ヴェイガンでも有名になっていてもおかしくはないレベルで、ゼハート自身もどこかでヴァニス同じ感覚を感じた事がある気がするのだが、それがどこなのかまでは思い出せない。 

 そうこう考えているうちにヴァニスが集まっていた将校達の前に出る。

 

「諸君、皆と直接顔を合わせるのは初めてであるが、私はヴァニス・イゼルカントである」

 

 ヴァニスがそういうとブリーフィングルームは騒然となる。

 ゼハートも少なからず驚いている。

 それも当然だ。

 ヴァニスは堂々とイゼルカントの性を名乗ったのだ、ヴェイガンであればその名は指導者であるフェザール・イゼルカントと同じでそれをおいそれと名乗れる物ではないからだ。

 

「静かにしろ! 姫様の御前だぞ」

 

 動揺している将校をザナルドが一喝する。

 その様子からヴァレリがイゼルカントの性を騙っている訳ではないと将校達も気づき、ザナルドがヴァレリを姫様と呼んだ事からイゼルカントの娘と言う事が予測できる。

 

「良い。お前たちが戸惑う事も理解できる。だが、約束しよう。私が我が父、フェザール・イゼルカントより地球侵攻作戦を任された。その任を全うし、諸君らを必ずやエデンへと導いてみせると」

 

 ヴァニスがそう言うと将校達は歓声を上げる。

 その様子をゼハートは冷ややかに見ていた。

 ザナルドが大人しく従っている以上、ヴァニスの素性を疑うつもりはない。

 そして、その力もゼハートは感じている。

 だが、それと同時にヴァニスからは得体の知れない何かも感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作戦のブリーフィングが終わり将校は各戦艦に戻り、作戦の為にビッグリングへと進行していた。

 今までとは規模が違う大艦隊であったが、見えざる傘によってビッグリングの防衛網には引っかかる事がなく、防衛権内にまで侵攻している。

 ヴァニスはゼハートのファ・ゼオスのブリッジでMS隊が展開していく様子を見ている。

 今回の作戦ではザナルドは宇宙に残り衛星軌道上から地球侵攻作戦の全体指揮を執る事になっている為、地球に降下するゼハートのファ・ゼオスに同乗する事になった。

 元々、ゼハートを嫌っているザナルドはヴァニスがファ・ゼオスに移乗する事に難色を示したが、ヴァニスの一声で了承するしかなかった。

 

「MS隊の展開は順調のようだな」

「ええ……予定通り展開を終えてつつあります」

「結構だ。私も出る」

「姫様自らですか?」

 

 ファ・ゼオスにはヴァニス専用機が配備されている。

 だが、ゼハートを始めとしてここに集まった艦隊の誰もがヴァニスの実力を知らない。

 ヴァニスがXラウンダーであることは疑いようもない事実ではあるが、Xラウンダーだからと言って戦場で戦える訳ではない。

 その為、ヴァニス専用機はあくまでも戦場の士気を高める程度の物だと思っていた。

 

「準備をさせろ」

 

 ヴァニスはそういってブリッジを離れていく。

 ゼハートは仕方がなく、格納庫に連絡を入れる。

 

 

 

 ヴァニスはパイロットスーツに着替える事なく、格納庫に到着した。

 ヴァニス専用のパイロットスーツも用意されているのだが、戦闘で機体を損傷しなければパイロットスーツは必要ないという事でドレスのまま戦闘に出るようだ。

 格納庫には予備戦力として残してある、ダナジンやドラドの他にヴァニス専用のMS「ラファール」が置かれている。

 ラファールはクライドが勝手に設計したガンダムレギルスのプロトタイプ機として開発されている。

 機体その物はゼハートのギラーガの予備パーツを流用しているため、良く似ている。

 頭部は脱出装置も兼ねて新設計された物に換装されており、レギルスがガンダムタイプのMSとして設計されいる為、ヴェイガン系のMSの特徴的なスリット状のセンサーではなくツインアイとなっており、額にはセンサーも兼ねているセンサーバルカンが2門装備されている。

 手持ちの火器として右手には大型のビームライフル、左腕では先端に小型ミサイルが内蔵され、中央に拡散ビーム砲が内蔵された専用シールドが装備されている。

 専用シールドは格闘戦で邪魔にならないようにスライド式になっており、通常時は中央の拡散ビーム砲を収納して小さく出来る構造となっている。

 腰にはギラーガ同様に多関節機構の武器であるラファールテイルがつけられており、その他にも掌にビームサーベルを展開できるビームバルカンと胸部にはビームバスターが装備されている。

 全体的に黒一色に塗装されている。

 機体の各部に搭載されている光波推進システムが大型となっており、バックパックには大型の光波推進システムが搭載され、ただでさえ高い機動力を持つギラーガを上回る機動力を得る事に成功した。

 

「姫様、パイロットスーツなしで出るのは危険です!」

 

 ラファールの調整をしていた整備兵はパイロットスーツを着ないでラファールに乗り込んだ事で流石に危険だと止めるが、ヴァニスは意に関する事なく機体のシステムを立ち上げる。

 

「出るぞ」

 

 ヴァニスがコックピットハッチを閉じた事で整備兵はラファールから離れるしかない。

 

「ヴァニス・イゼルカント。ラファール……出るぞ」

 

 ファ・ゼオスからラファールが出撃し、ラファールがMS隊の先陣を切る。

 ヴェイガンの艦隊がビッグリングに接近し、ビッグリングでもようやくヴェイガンの接近を感知し、防衛線を張る。

 ダーウィン級や量産型ディーヴァを中心として、アデルマークⅡやアデルキャノン、クランシェを出撃させてヴェイガンを迎撃する。

 完全に不意を突いた上に大部隊での襲撃、そして連邦軍はノートラムに主力部隊を配置されておりビッグリングの司令官であるフレデリック・アルグレアス提督が不在だった事もあり対応が遅れ、部隊規模で対応するしかなかった。

 先陣を切ったラファールにアデルキャノンや戦艦の砲撃が集中するが、ラファールは圧倒的な機動力を見せつけるかのように回避する。

 

「成程……大した加速だ」

 

 ヴァニスはフルに加速させてラファールの加速性能を確かめる。

 その加速力は従来のMSを上回るが、その反面対G対策はほとんどされていないため、ヴァニスに対するGは普通の人間ならば意識を失う程だが、ヴァニスの体はそれに耐えうる事が出来た。

 ラファールはビームライフルを放つ。

 その一撃をアデルマークⅡを貫いた。

 アデルマークⅡが撃墜され、クランシェやアデルマークⅡがドッズライフルでラファールを狙うが、ラファールは回避して専用シールドの拡散ビーム砲を展開して放つ。

 拡散ビーム砲で周囲のクランシェやアデルマークⅡを一掃する。

 

「悪くない」

 

 ヴァニスはラファールの性能に満足し、笑みすら浮かべている。

 ラファールは量産型ディーヴァの砲撃をかわして、ビームバスターで量産型ディーヴァを撃沈する。

 

「脆い……脆すぎる。この程度の戦力しかないのか」

 

 量産型ディーヴァを撃沈し、ラファールはビームライフルを放ち、クランシェを撃墜する。

 ラファールが暴れた事でビッグリングの防衛戦がズタズタに破壊され、そこをヴェイガンは一気に責め立てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴェイガンの襲撃で劣性となっていた連邦軍だが、戦闘が続く中、連邦軍も体勢を立て直しつつある。

 その中心にはバロノーク級戦艦「バロックス」が健闘していた。

 バロックスはビシディアンの母艦であるバロノークの2番艦として建造された戦艦だ。

 形状そのものはバロノークと同型だが、連邦軍のエンブレムが艦体に描かれており全体的にディーヴァ同様のトリコロールカラーとなっている。

 そのバロックスの艦長席にはかつての特研の保有していた戦艦「グノーシス」の副艦長だったアーノルド・ダウナーが座っている。

 

「手ごわい敵がいるみたいね」

 

 アーノルドの隣にはユーリア・アスノが座っている。

 ユーリアは現在はアスノ大隊の大隊長を務めている。

 

「ですね。データにない新型機をヴェイガンは投入して来ているようです」

「私が出るわ」

 

 ユーリアはそう言ってブリッジを離れていく。

 アーノルドはそれを見送って格納庫に通信をつなぐ。

 

「准将が出撃する。すぐにジェノブレイズの出撃準備をさせろ」

 

 ブリッジを離れたユーリアは専用のパイロットスーツに着替えて格納庫に入って来る。

 すでにバロックスに搭載しているMSは出撃しており、格納庫には被弾して帰還したMSの修理に整備班は大忙しとなっていた。

 その中でユーリア専用機「ジェノブレイズ」が置かれている。

 ジェノブレイズは連邦軍がマッドーナ工房に以来したMSで、生産コストや生産性、整備性などを度外視して機体性能を追及して連邦軍が現在保有しているMSの中でジェノブレイズは最強のMSと言える。

 ピンクと黒のツートンで頭部はヴェイガン系のスリット状のセンサーを採用し、ビームバルカンを2門を搭載し、胸部にビームキャノン、両肩にはツインドッズキャノン、右腕にはグレネードランチャーが内蔵され、右手にはドッズガトリングライフル、左手にはドッズショットライフル、バックパックには6基の改良型ドッズファンネル、腰にはハイパービームサーベルが2基、膝のアーマーには予備のビームサーベル、腰のサイドアーマーには小型ミサイル、左腕には高出力のビームシールド発生装置が搭載されているなど多彩な武装を装備している。

 それらの武装を扱うために新型の高出力ジェネレーターを搭載している。

 多数の武装や新型の高出力ジェネレーターを装備した事で通常のMSよりも一回り大型になっているが、バックパックの大型スラスターと機体の各部に内蔵されたスラスターと疑似斥力システムによって、機動力を無理やり確保している。

 その上、コックピットには全方位モニターやXフレームなどのマッドーナ工房の持ちうる技術のすべて技術がつぎ込まれている。

 胸部にビームキャノン、腹部に高出力ジェネレーターを胴体部に内蔵されているため、コックピットはヴェイガン系のMS同様頭部に設置される事になった。

 

「出るわよ」

 

 ユーリアは機体に乗り込むとすぐに出撃させる。

 出撃したジェノブレイズはツインドッズキャノンをフルパワーで放つ。

 その一撃で射線上の敵機を一掃する。

 その後、ドッズガトリングライフルとドッズショットライフルで次々と敵を撃墜していく。

 

「ファンネル!」

 

 6基の改良型ドッズファンネルが射出され、縦横無尽に動き敵を破壊していく。

 

「あれね」

 

 敵を撃墜しながら、ユーリアは連邦軍のMSを葬っていくヴァニスのラファールを発見する。

 ジェノブレイズはツインドッズキャノンを放ちながら、接近していく。

 

「少しは戦える奴が来たか」

 

 ラファールは攻撃をかわして、ビームライフルを連射して反撃する。

 ジェノブレイズはかわして、改良型ドッズファンネルを差し向ける。

 

「フン。それで私をやれると思うなよ」

 

 ラファールは四方からの攻撃を回避しながら、センサーバルカンで改良型ドッズファンネルの一基を撃墜し、左手からビームサーベルで展開して改良型ドッズファンネルを切り裂き、残りは専用シールドの拡散ビーム砲で破壊する。

 

「その程度か!」

 

 ラファールは左手にビームサーベルを展開して接近して、ジェノブレイズはドッズショットライフルを投げ捨ててハイパービームサーベルを抜いて受け止める。

 ジェノブレイズはラファールを弾き飛ばし、ドッズガトリングライフルを連射する。

 

「当たるものか!」

「早いわね」

 

 ラファールは機動力を活かしてドッズガトリングライフルのビームをかわし、ビームライフルを放つ。

 ジェノブレイズは左腕の高出力ビームシールドで防ぐが、その威力に圧倒されるが、ツインドッズキャノンで反撃する。

 

「だけど……」

 

 ジェノブレイズはハイパービームサーベルで切りかかり、ラファールもビームサーベルで応戦し、二機は激しく切り合う。

 

「本当に厄介な相手ね」

 

 二機は距離を取り、ジェノブレイズはビームキャノンを放ち、ラファールの専用シールドを破壊するが、ラファールは一気に接近してビームサーベルでジェノブレイズの右腕を切り裂く。

 

「まだよ」

 

 ジェノブレイズはツインドッズキャノンの銃身をパージして手持ちのドッズライフルとして放つ。

 ラファールは左腕の電磁装甲で防ぎつつ、ビームライフルを放つ。

 

「姫様。ビッグリングをディグマゼノン砲の射線上に捉えました」

「ちっ……

これからだと言うのに……」

 

 ラファールはジェノブレイズに牽制の攻撃を入れつつもファ・ゼオスに帰還していく。

 

「撤退? でも……まだ何か……」

 

 ラファールが撤退していくがユーリアは嫌な感覚が消えないでいる。

 

「准将! 敵艦隊の後方に強力な熱源を感知しました!」

「この敵の動き……まさか!」

 

 バロックスのアーノルドの報告とヴェイガンの艦隊とMSの動きから敵の狙いが分かる。

 艦隊は二分され中央を開けるように移動をしていく。

 そして、その後方から宇宙要塞「ラ・グラミス」が見えざる傘を解除してその姿を現す。

 

「要塞? いつの間に……そんな事よりもすぐに射線上から部隊を退避させ……」

 

 ユーリアは部隊を退避させようとするが、それよりも早くラ・グラミスのディグマゼノン砲が放たれる。

 その一撃は容赦なく射線上の連邦軍の部隊を消滅させていく、ついには連邦軍の総司令部のビッグリングをも呑み込んで破壊する。

 

「アーノルド、被害状況は?」

 

 運良く、ユーリアはディグマゼノン砲の射線上にいなかった事からディグマゼノン砲の一撃からまのがれ、バロックスも無事のようだった。

 だが、その一撃で連邦軍が大打撃を受けた事は確実であった。

 

「防衛部隊の8割が消滅……それと、ビッグリングが……」

「こんな事が……」

 

 その余りの被害にユーリアは茫然とする。

 今まで不落を誇っていた連邦軍の総司令部ビッグリングが一撃で破壊され、防衛部隊の大半も消滅した。

 もはや、連邦軍に防衛するための戦力もその戦意も失われていた。

 ディグマゼノン砲が放たれる時に退避していたヴェイガンのMSが再び、進行を開始する。

 ディグマゼノン砲の一撃で戦意を失ったMSは次々と撃墜されていく。

 

「動けるMSは後退、全艦はMSを回収しつつ、現宙域を離脱しなさい!」

 

 ジェノブレイズはツインドッズキャノンを放ち、ドラドを撃墜しハイパービームサーベルでダナジンを切り裂く。

 すでにビッグリングは陥落し、戦力の大半を失った以上、すでに戦闘を継続するだけの力は連邦軍には残されていない。

 ユーリアが連邦軍のMSに指示を出すと一斉に宙域から逃げ出す。

 だが、ヴェイガンはそれを見逃すはずもなく、逃げるために背を向けたMSが破壊されていく。

 

「くっ……やらせない」

 

 ジェノブレイズは小型ミサイルを放ち、ビームキャノンを撃つ。

 ジェノブレイズが撤退の支援を行いつつ、バロックスの砲撃でヴェイガンのMSを撃退する。

 ヴェイガンの目的はあくまでも地球侵攻作戦の為に司令部を叩く事で地球に部隊を降下させるための進路を確保する事で撤退していくMSがある程度遠くまで撤退すれば無理に追う事はなかった。

 その為、深追いをする事なくヴェイガンのMSはビッグリングの残骸が残る宙域を横切り地球へと向かっていく。

 

「准将……」

「何も言わないで」

 

 その様子をMSを回収するバロックスなどのディグマゼノン砲の一撃を逃れた戦艦に収容されるMSを守りながら、ユーリアは地球に降下していくヴェイガンの戦艦をただ見送るしかなかった。

 MSを回収した残存艦隊は戦闘宙域から離脱して行き、ヴェイガンは地球へと部隊を降下させて行く。

 この日、連邦軍の総司令部ビッグリングが陥落し、奇しくも今日は天使の落日から64年が経った日で23回目の勇気の日であった。

 

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