やはり俺が高校球児なのは間違っている。   作:Nabucco

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【人物紹介】
戸塚彩加
  在籍校/仙泉学園
   学年/2年
ポジション/二塁手
  利き腕/右投げ左打ち

・仙泉学園のレギュラー二塁手
・春市枠。天使
・巧打と守備力がウリの小兵タイプの選手
・リトルリーグ時代から八幡と材木座と知り合う
・八幡のことをチームの誰よりも信頼している


轟雷蔵は、緊急事態に悩まされる。

 二回ウラの攻撃は真田の好投で3人で攻撃を終え、俺達は思いのほか早く監督のボヤキから解放された。その後、3回オモテ、3回ウラを両投手が三者凡退に抑えた。

 片や3回投げて失点1自責点1、片や3回無失点で与えたランナーは初回の死球のみ。

試合が動かなくなり始め、続く4回オモテも3番小林を三振、4番大田をショート正面の

ライナーに抑え、この試合で唯一ヒットを打っている男に打順が回る。

 

──4回オモテ 2アウト 薬師高校の攻撃 5番ピッチャー 真田

 

 第一打席でアウトローの直球を右中間に持っていかれたことから、ストレートに強い打者だとなんとなく当たりを付けた俺と八木は、今度は変化球で投球を組み立てることにした。

 初球の入りはカーブ、外角低めに外れてボール。2球目は一巡するまでは投げていなかったシンカーを放るが、やや高めに浮いた。

 

(甘……!)

 

(ヤベッ!)

 

((やられる……!))

 

 そんなバッテリーの予想を裏切り、ブンッ!とバットが空を切る。完全にストレートに的を絞っていたためかタイミングが合わなかったのだろう。そんなわかりやすい反応をされれば、

変化球攻めをしたくなる。3球目もシンカーを続け、低めに決まり見逃しのストライク。

1ボール2ストライクと、相手を追い詰める形を作った。真田はタイムをとり、一旦バッターボックスを外す。

 

「ヤベー……」

 

 真田俊平は自身のストレート狙いがバレたことを感じとり、追い込まれて小さく呟いた。だが、追い込まれたからとはいえ、狙い球をここでは変えない、と開き直り、バッターボックスに入り、バットを構える。

 

「プレイ!」

 

 審判のコールを受けた後、八木のサインに頷き、ボールを投じた。ストレート狙いの打者のタイミングを外せるように、カーブを選択した。内寄り、低めのコースに落ちていくボールに対応しきれず、打者のバットが空を切る。

 

「ットライーク!バッターアウト!チェンジ!」

 

「っし!」

 

「ナイスピー比企谷!」

 

「八幡、ナイスピッチ!」

 

「おう!」

 

「モハハハハハハハ、よくやったぞはっちまーん!」

 

「……」

 

「無視!?」

 

 うるさい、戸塚(天使)の癒し系ボイスに割り込むんじゃない。これでも神経使いながら投球した身なのに、いつもの監督のボヤキが待っているんだ。うるさい男のうるさい声を聞いてると心労が溜まるんだ、俺の精神を労わってくれ。あとそろそろ点が欲しい。これ以上真田のノーノーピッチングが続くと俺も心が折れてしまう。むしろすでに折れているまである。 オデノカラダ()ハボドボドダ!

 そのあとの4回ウラ、5回オモテもお互いランナーは出ず、監督が虚空に向かってボヤキ初める。八幡近寄りたくない。この回の攻撃も、もう2アウト。ネクストバッターズサークルには材木座。

 

──5回ウラ 2アウト 仙泉学園の攻撃 7番ファースト 材木座

 

「ムハハハハ、炎ノ打撃(ファイヤーインパクト)!!」

 

「……ット、ライーク!」

 

 すかん、と間抜けな音が聞こえそうな空振りの後、材木座は腰砕けになり、すってんと転ぶ。材木座の顔が赤く染まる。心なしか審判のコールが震えてて、こっちが恥ずかしい。というかなんだその技名は、エーモンドの丸パクリだろ。超野球外伝だろ。ひみつ道具使えないよ?

 材木座が小学校から自分のバッティングに恥ずかしい名前を付けるのは相変わらずで、独創性もなく「羆落とし(犠牲フライ)」やら「世界(ザ・ワールド)(タイムの要求、当然認められず)」などパクりすぎである。でも実際のプロ野球選手でも「ドラゴンシュート」や「ザ・フォール」と名付けた選手もいるし、ま、多少はね?

 

「ッ──、タイム」

 

「タイム!」

 

 投球直後に真田がタイムを要求し、タイムが認められ試合中断。何かトラブルがあったのか、ひざ裏、もしくはふくらはぎの辺りを気にしているのか、ずっとその箇所に手を当てていた。すかさず向こうの監督がマウンドに行き、鵜飼監督もそれに続いてマウンドに向かう。

 

(左のふくらはぎか。足がつっただけならいいが、肉離れなんてことになったら……)

 

 薬師高校監督の轟雷蔵は、エース真田の突然の故障に動揺していた。選手に動揺を伝播させないために平静を装って入るものの、隠しきれてはおらず、苦い表情を見せていた。

 

「大丈夫か?」

 

「いやぁ……ちょっとキツイっす」

 

「増田、森山、肩貸してくれ」

 

「「はい!」」

 

 これから真田は薬師高校野球部の部長の付き添いで病院に行き、検査を受けるだろう。球威を増すために左足で地面を引っ掻くようにして投げる投球フォーム、そのツケがここで出てしまった。

 真田は、控え野手の増田と森山の肩を借りてマウンドから降りる。彼は雷蔵に頭を下げた。

 

「すいません……、いやマジで。──すいません」

 

 その謝罪にはチームに迷惑をかけたことや、これからのチームの先行きを不安にさせたことに対する責任感がこもっていた。悔しさがにじみ出ていた。

 

「轟監督、試合……どないしますか?」

 

「ええ……続てもらってもよろしいですか?」

 

「そら構わへんけど……、ええんですか?」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

【選手交代】

 

4   福田

9   山内

6→3 小林→三島

8→5 大田→轟

1→7 真田→秋葉

3→1 三野

2   渡辺

7→8 平畠

5→6 米原

 

 両監督が戻り審判が選手交代を告げ、投球練習が終わり、試合が再開される。状況は2アウトランナーなしで材木座。カウントは0ボール1ストライク。

 ピッチャー三野が振りかぶって投げる。緊急登板のためか、もともと制球に自信がないのか、来た球は絶好球。それを振りぬく材木座。カッキィン!と打球音が鳴り、打ったボールはレフト方向に大きく伸びる、伸びる、伸びる。そしてフェンスを越え、三塁塁審が手を回す。ホームランで1─1、試合を振り出しに戻す。

 

仙泉1─1薬師

 

「……!……!」

 

 相手投手が故障した手前、珍しく自重しているのか、色々ありすぎて頭の中が整理できてないのか、無言でガッツポーズをとりながら塁を回る材木座。いつもと違う態度が気持ち悪いが、ホームランはホームランである。本塁を踏み、打席に向かう八木とタッチし、次に俺とタッチする。そしてベンチに戻り周りに暖かく出迎えられる。

 

「よう打ったやないか、エラーした分もっと打つんやで?」

 

「フッ……、フハハハh「早よう返事せんかい」……!」

 

 せっかくホームランを打ったのに締まらない材木座であった。

 その後、8番の八木がセンター前ヒット、続く俺がバットを振ることなく四球を選び、戸塚がショート頭上を越えるヒットでもう1点を加え、逆転に成功する。

 

仙泉2─1薬師

 

 なおも2アウト1,2塁。その次は2番打者の大沼先輩。彼も痛烈な打球を三遊間に放った、が──、

 

「カハハハハ!」

 

 この回交代した三塁手が打球に飛びつき、ボールを捕球した。俺はその反応の速さ驚かされた。これで3アウト。そう分かっていながらも俺は3塁へ走る。三塁手は素早く立ち上がり、ボールをトスした。もう一度言おう、トスした。しかも、何故かファーストではなく無人のサードへ。

 コーン、と投げたボールが俺のヘルメットに当たり、ファールゾーンに転がっていく。それを見てそれぞれのランナーが次の塁を目指し、オールセーフ。頭痛てぇ。

 

仙泉3─1薬師

 

「…………」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「カハ、カハハハハ……」

 

「何やってんだ雷市ぃ!」

 

「今のはどう考えても三塁(みっつ)無理だろ!死ね!」

 

「ちゃんとやれよ!」

 

 味方にフルボッコにされるライチとやらに材木座と同じようなニオイを感じつつベンチへ戻る俺。送球が弱かったので怪我の心配はないが。3塁上の戸塚の心配そうな視線が見えたので、オーバーに腕を振って平気だと答える。そうすると戸塚が安心した表情を見せてくれた。とつかわいい。

 

「フン……、草野球やないかい」

 

 そうボヤキながら監督はサインを送る。次の打者の先輩Aはサード方向へのセーフティバント。ミスした選手を攻めたてるなんとも監督らしい作戦である。絶妙に転がった打球だったが、三塁手は素早くダッシュし、1塁に送球して3アウト。この回の攻撃が終わった。

 

「雷市ー!ナイスマグレ!」

 

「ナイスマグレ!」

 

「カハハ!」

 

「……あの打球アウトにできんのに、状況判断はできないんかい。無茶苦茶やな」

 

 今回ばかりは監督のボヤキに同意するしかない。あのずば抜けた身体能力から素人のようなミスをするあの三塁手は一体何者なのだろう。そう思いつつ6回のマウンドへ向かった。

 その後の6回オモテは2アウトから高いバウンドの内野安打でランナーを1人出しながらも抑え、6回ウラにも1アウト2塁から先輩Dのタイムリーで1点を加える。

 

仙4─1薬

 

 その次の7回オモテでも2アウトから3番三島にレフト線ツーベースを打たれ、ピンチを背負う。

 

──7回オモテ 2アウト2塁 薬師高校の攻撃 4番サード 轟

 

 轟雷蔵は今日の練習試合でと息子の雷市、三島、秋葉を温存するつもりでいたが、同時に控えのメンバーで勝つつもりでもいた。西東京大会ベスト8常連校を相手に雷市達3人抜きで現状どこまでやれるかを見る狙いがあったのだが、途中で真田にアクシデントが起こってしまった。試合の中止も考えた。雷蔵は相当悩んだ末、雷市ら3人を温存する当初の予定を崩して試合を続行した。

 なぜそうしたのか。その答えは、今マウンドに立っている仙泉学園のエース、比企谷八幡にあった。自分が手塩にかけて育ててきた選手が打ちあぐね、7回途中をヒット3本、失点もタイムリーエラーの1点に抑ているこの小僧にこのまま抑えられたらどうなる?稲城実業の成宮鳴や市大三高の真中要、青道高校の丹波光一郎といった各強豪校のエースに向かっていけるのか?最悪、投手の軸である真田抜きで挑まなければならないこの状況で?

 そうした不安は選手にも伝わる。それを取り除くには言葉よりも結果が欲しい。なんとしてでも収穫が欲しい。

 

(雷市……。このチームは甲子園にいくチームだって知らしめてこい、お前のバットで──)

 

「クカカカ……」

 

「頼むぞ雷市!」

 

「お前が打て~!」

 

「……」

 

「比企谷、2アウト!」

 

「バックには我らがついてるぞぅ、八幡!」

 

「そうだよ八幡!バッター集中!」

 

 2回以来の得点圏のランナーを背負い、対するバッターは素人のようなエラーをやらかした男、轟。ただ、気になるのは、あの高い身体能力と、奴への声援にチームの期待を込められていること。この打者には何かがあるのかもしれない。ないかもしれない。

 得体のしれない相手に対し、八木のサインは外のストレート。サインに頷いてセットポジションから投じた初球は、見逃してストライク。

 

「アウトロー一杯に、下から浮き上がるように……!カハハハ……」

 

(……めっちゃ怖いんですけど)

 

 まず一つストライクを取った。2球目はカーブ、インコースに外れボール。3球目もカーブ、ワンバウンドしてボール。4球目のサインはアウトローのストレート。八木はカウントを悪くしたくないと考え、俺はその考えに乗った。2塁ランナーを目で牽制してから4球目を投じる。そして──、

 ガキン!と金属を思いっきり打ちつけた音とともに低い弾道でボールが飛び、レフトポールに打球が直撃した。

 

仙4─3薬




途中まで八幡TUEEEEEE展開。
春先痛めた真田のふくらはぎの話を捏造。夏までには原作通り投げられます。
ポジションをたらいまわしにされる平畠、お前は泣いていい。
高校入学してすぐの雷市の守備力はボロボロ。
雷蔵パパが最初の方針を曲げる。ここらへんは性格改悪かも。
八幡、飛翔。
次で練習試合はラスト。
その次でやっとヒロインが書けます。
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