第七話がやってきました。
今俺は試験会場内にいる。すでに紙は配られており、試験担当の合図を待つばかり。
「それでは、これより教員二次試験を始める。」
周りには俺と同じように教師になるためにここに集った強敵たち。
あったこともないし、話すこともない。しかし、各々が自分の夢の為にここに集ったのだ。
「試験開始10秒前!」
9、8、7、6、5・・・
だが負けるわけにはいかない。それは俺だって同じだ。
4、3、2、1・・・
俺だって、教師になるために・・・
「0。始め!!」
今まで頑張ってきたんだから!!!
【始まりの一ページ】
「そこまで!ペンを置いてください。用紙を回収します。」
長かった一時間だった。去年よりクリアになった思考が問題を解いていく。捌き方がわかればスピードがあがり、だんだんテンションが上がっていった。
今回は受かる。そう思ってたんだ。
残り15分前までは。
最後の一門に挑もうとしたとき、解答欄がないことに気付いた。
背中が急に冷たくなる。
どこだ、どこから狂った!?
ずれていた場所はかなり最初のほうだった。
急いで解答欄を訂正する。
ぐちゃぐちゃの頭のまま一心不乱に解答欄を埋め・・・気づいたら試験会場前に立っていた。
そこまでの記憶がなかった。いつ、試験が終わったのか。いつ、会場を出たのか。
ふらふらと歩いた先に見えたのは公園のベンチ。
そこで座り、少ししてから・・・盛大に落ち込んだ。
「はぁぁぁぁ・・。これは今年も厳しいか・・・。」
今回のミスはテンションが上がりすぎたせいだ。
あまりにも問題の答えがわかるため調子に乗っていた。
結果は絶望的だ、くそ・・・みんなに申し訳ない。
「・・・帰ろう。ここにいてもしかたがない。」
立ち上がり歩き出す。足はとても重かった。
――――――――――――――――
「ノックスはどうしてる?」
「部屋にいらっしゃいます。もう一週間も何も食べていません。」
あれから一週間たった。帰ってきた奴の顔は感情が全く見えず、昔に戻ったようだった。
励ましても、喝を入れても、なんの反応もない。
いい加減我慢の限界だった。
「茶々丸、奴を別荘に送れ。」
「しかし、今のノックスさんでは・・・かしこまりました。」
何か言おうとした茶々丸だが一度迷ったように視線を動かし、奴の部屋へと向かう。
私はそれを見送ることもなく別荘へと向かった。
――――――――――――――――
部屋でボーっとしていると茶々丸が入ってきた。
そのまま何も言わずに俺の腕を掴み万力で引っ張っていく。
ロクに抵抗もできず、あのミニチュアの中まで引っ張られ、投げ飛ばされた。
「うおっ!?なんなんだいったい?」
受け身を取り遅れ痛めた背中を撫でながら起き上ると、そこにはエヴァさんがいた。
「どうしたんだエヴァさん。俺にいったい何の「黙れ、その口を閉じろ小僧」ガッ・・・!?」
気づいたら顔を殴られていた。壁にぶつかって一瞬息が止まる。
そのまま倒れそうになるのを何とか踏みとどまるも今度は顎に衝撃が走る。
宙に浮いた状態のまままるでピンボールのように攻撃を受けては吹き飛んでいく体。
最後に地面にたたきつけられ、そのラッシュも終わる。
「カハッ!!な、なんで・・・」
「口を閉じろと言ったはずだ。今の貴様は見るに堪えん。」
腹を踏まれ俺を中心に地面に亀裂が走る。
今までにない攻撃。
この人は俺を殺す気なのか?
「貴様はいつまでそうしている。たかが試験に落ちたくらいで・・・そんなくだらないことでいつまでもグズグズしているなら、私がここで終らせてやる。」
足に力が入る。このまま俺をつぶすのか。それならそれで・・・。
違う、そうじゃない。なんで俺はこんなに悩んでいる。
そうだ。たかが一度落ちただけだ。
警官になったときはもっと落ちた。
自分よりも何歳も年下の人間と同じ試験を受けた。
もっともっと、大変だったはずだ。
なんで、なんでこんなに【足が重い】!?
「ぐっ・・・ふざ・・けるな・・・!!」
いつだ、いつからこんな調子だ!?
考えろ!俺がおかしくなったのはいつだ!?
・・・・・・・・・・・ッ!?
そうだ、試験会場にいたあの時だ!
以上に気分が高揚していた、普段ならありえないくらいに!!
「そうだ、お前はなぜフ抜けている?」
「さ、さぁ・・・だが、関係ない。」
魔力があふれ出し俺の中の何かが砕ける。
その瞬間、今までの沈んだ感覚が完全に消えた。
エヴァさんに無詠唱で氷の1矢を打ち込み避けた瞬間に足から抜け出す。
「気づくのが遅すぎる。どこでやられた?」
「すまない、試験会場内。犯人は恐らく試験担当だ。」
エヴァさんの言葉に淡々と答える。
今まで呪いの類の魔法も受けてきた。
それの解除法も・・しかし、今回は別だ。
魔法も、気も、全く用いない呪術。
一種の麻薬に近いそれは高揚感の後に異常な疲労感を感じた。
そんな力を使う人間なんて、この世界に存在しない。
つまり、俺と同じグランプリの参加者だ。
「そうか、心当たりは?」
「全くだ。麻帆良の魔法使い以外は俺とエヴァさんがここにいるとこを知らない。俺に至っては知っている人間は昔の級友くらいだ。」
ここは嘘をつこう、エヴァさんを撒きこまずに対処できるなら、それにこしたことはない。
「そうか・・・ノックス。」
「なんだいエヴァさ・・・っと。これは?」
エヴァさんから渡されたのは一通の封筒。「開けてみろ」とのことなので開封する。
「・・・ぁ、これは・・。」
「理由は知らんが、お前をつぶすつもりならもっとよくやるべきだったな。」
「・・・あぁ、違いない。」
封筒の中身は、試験の結果だった。
そこにははっきりと【合格】の二文字が記載されている。
「おめでとうノックス。今日は祝おうか。」
「ありがとう・・・エヴァさん。」
思わず泣きそうになるのをこらえてエヴァさんに感謝を告げる。
本当に俺はいい姉を持ったものだ。
「さて、そろそろ再開しようかノックス。」
そういって目に見えるくらいに魔力を込め始めるエヴァさん。あれ、さっきのは呪いに気付かせるためじゃ・・・。
「そんなわけないだろう、馬鹿者。歯を食いしばれノックス!!」
そのあと、ミニチュアのなかで俺という汚い花火が何度も上がった。
――――――――――――――
「なんだ、思ったより簡単に解いたね。」
麻帆良からかなり離れたビジネス街のビルの屋上。光に照らされ輪郭しか見えない人物が一人。
その人物はニコリと笑うと長い杖にまたがり浮遊する。
「次は何をしようか・・・さぁ、君は止められるかな?」
光の中、かすかに見えたのは・・・赤毛の少年だった。
七話終わりました。
次で第八話です。やっと原作タイトル回収できます。
ゆったりとお待ちいただけたらと思います。
それではご意見、ご指摘、ご感想お待ちしております。