この第二章はこの話より試験的に地の文に改良を加えることにしました。
具体的には、今までは第三者からの視線を中心に、たまに登場人物に移入する書き方でしたが、この話からの第二章は完全に一人の登場人物の視点から話を進めていきます。
霧雨魔法店で泣きじゃくって、一致団結したまでは良かった。仲間を失ったことは良くなかったけれど、それでも前を向いて歩き出そうと誓ったのだ。
もう一度言う。そこまでは良かったのだ。
「……で、これからどうするんですか? 何か手掛かりと言えばアリスさんしか居ない現状ですが、肝心のアリスさんは記憶を飛ばしてしまった様子ですし」
「……悪かったわね」
困った様に文が言い、申し訳なさそうにアリスが言った。
そう、今の私達には何の手掛かりも無いのだ。何となく、これは外来人の起こしたものだと思っているが、まさかこの魔法の森だけの出来事とは思えないから、この魔法の森を無闇に探索するのは無駄に思える。
「どうしたものかしらね。霊夢は何か考えがあったりするのかしら?」
「あったら困ってないわよ。気を持ち直したとは言え、そう頭が回転するような気持でもないし……とか言い訳して停滞する時でもないし……」
パチュリーに聞かれて答えてみたものの、本当に何も浮かんでこない。魔理沙の為に動かなければならないのに、こうしている時間がとてももどかしい。刻一刻と時間は過ぎていくのに、私達の時間はずっと止まったままなのだ。
「誰かに協力を仰いだりしたらどうでしょう。もしかしたら芳しい情報を持っている方も居るかもしれませんよ。あまり言いたくありませんが、既に他の被害が出ている可能性も否めない訳ですから」
少し深刻な面持ちで文が口を開いた。
確かに、この異変が何者かの作為的なものであるのならば、第三者が新たな被害者になる可能性は非常に高い。協力を仰いでこの件を広めれば被害を未然に防ぐことも出来るかもしれないし、被害が起こってしまったのなら片っ端から解決していけばいずれ真相に辿り着くことが出来るかもしれない。後者はあまり好ましくないけど。
「そうね。誰かに知らせに行ったりしましょうか」
「だったら、まず紅魔館はどうかしら。今朝私は出掛けるとしか伝えていないから、一から事情を話すことになるけれど」
「問題ないでしょ。パチュリーが居るんだから理解を得るのは簡単でしょうし」
「なら、まずは紅魔館ですか。そうと決まったなら急ぎましょうかね」
そういう訳で、まずは紅魔館に行くことになった。当主であるレミリアは昼間の外出は厳しいため協力を取り付けることは難しいけど、メイド長である咲夜なら何とかなると思う。
「あの、急ぎたいところ失礼するのだけど、今の私は飛べないと思うのよね」
「え、何でよ」
「朝から魔法を使うとすごい疲労に襲われるの。多分、今のまま飛んだりしたら疲労困憊で倒れてしまうわね」
「大丈夫なんですか? さっきは何とも無かった様に見えましたが、まさか演技だったり?」
「演技じゃないわ。霊力を使わない日常動作なら難なくこなせるだけなの」
少し体を小さくして申し訳なさそうに言うアリス。
これは少し痛いかもしれない。時間を争う中、四人で揃って歩いていくのは致命的なタイムロスだから。
「最悪、私は霊力が正常になるまではここで待機しておくけど」
「それは、もう一度襲われる可能性を考慮しているの?」
「それは……」
「もう、この幻想郷に安全な場所は無いと言っても、何も過言は無いの。貴女に口封じが来る可能性は極めて高いのよ」
いつになくパチュリーは真剣だった。ぼんやりとしたいつもと違うその雰囲気に、少しだけ私は圧倒されていたかもしれない。
やっぱり、失うということは心に変化を齎したのだろうか。
「……分かったわ。もうそんなことは言わない。でも、歩きだとかなりの時間が掛かることは確かよ」
「大丈夫ですよ。幻想郷最速である私が負ぶってあげます」
「それはそれで心配ね」
「でも、それしか手段はないのよね。仕方無いけど、アリスには我慢してもらうしかないわ」
「心配なんて冗談よ。文の行為に甘えるとするわ」
話は纏まった。行動指針も決まった。
後は行動を起こすだけだ。これ以上の悲劇はもう見たくない。
けれど、現実は何一つとして甘いものではなかった。聞きたくもない異分子の声が私達四人の耳に突き刺さった。
「あはっ、やっぱり釣れちゃったよね。『博麗の巫女』さん?」
本当の意味で、私達はまだこの異変を理解出来ていなかったのかもしれない。
霊夢、アリス、パチュリーの口調ですが、区別が付きにくいものになってしまいました。申し訳ありません。
自分で口調に明確な区分を付けられる様になったら改良をしていくので、それまでは温かい目で読んでいただけると幸いです。