新たに連載開始した二つの作品が十話を越えるまでは更新しないと言う自分ルールを設けていたため、こんなに遅くなってしまいました。
申し訳ありません。
静寂に包まれた館内はもはや過去のこと。薄暗い館内には今、轟音が連続的に炸裂していた。
人ならぬ妖同士の、想像を超えた死闘。それが、館内全体を震わせているのだ。
その吸血鬼の片側、金髪を揺らす妹は猟奇的に笑う。
「ほらほら、どうしたのお姉様!! そんなになってもまだ弱いのかしら!?」
暴力的な弾幕を撒き散らし、実の姉を追い詰めていく。もはや、その暴挙は周囲のこと等関係無く、無尽蔵の破壊を撒き散らす。そこに善性は微塵も有りはしなかった。
(どうしたものかしら……私の意志で干渉出来ないのが凄く悔やまれるわね……)
意識の中で歯噛みしながら、何とか打開する方法を模索するレミリア。感覚的に彼女自身の全力は発揮されておらず、今この瞬間の闘いはどこか楽しんでいる様だった。
果たして、そのことにフランドールは気付いているのか。レミリアの自問自答の答えは否だった。
つまり、今の操られたレミリアが全力になってしまえば、フランドールは時間なく壊れることを意味する。フランドールは力の制御を知らない為に、今この戦闘でも全力で戦っているに違いないからだ。
(ただ……中途半端に可能性が残されているのよね。悔しいけど、それに賭けるしかない。今の私では、この状況を改善出来ないんだし)
一発の弾が頬を掠めた。それに反応した体は、回避重視の戦い方を切り替える。狂気的な力を得たレミリアの弾幕は、本来の彼女の弾幕の個性と合わさって圧倒的な物量に変貌する。もはや、それは幕ではなく壁に等しかった。
圧倒的、その単語をそのまま表現する攻撃を前にしたフランドールは、
「禁忌『フォーオブアカインド』」
挑発的な笑みを浮かべたまま、その姿が分身する。
量の敗北を一度の発射数で強引に補う作戦に出たフランドールは、分身した後も弾幕を緩めることはしなかった。
既にその場は様々の色の弾に包まれて、状況を確認することすらも難しくなっていた。空気が震え、小さな物音は掻き消され、ただ有るのは常人を拒む戦場だけ。
「さぁ……ここからが本番だよ、お姉様。水入らずの時間、思いっきり楽しまないとね」
笑うフランドールが壊れるのが先か、僅かな希望が生まれるのが先か。
焦るレミリアだが、時間は刻一刻と過ぎていく。そんな、何百個目かの弾が目の前を通り抜けた瞬間のことだった。
「お嬢様ッ!! 妹様ッ!!」
不意に、後方から高い声が響いた。意図していなかった出来事に姉妹の動きが一瞬固まる。
その一瞬さえ有れば、その声の主が二人の間に割って入るには十分だった。
「咲夜!! 何で割って入って来るのさ!! 今お姉様と遊んでたのに!!」
「別に、これが正真正銘の遊びならば手出しはいたしません。けれど、客観的に見てこれは吸血鬼同士の死闘。周りへの被害やお二人自身のことを考えると、止めに入るのが私のすべきことなのは間違いないでしょう」
万が一にも即死する可能性のある場所に立っていながら、咲夜は冷静だった。氷の様に鋭い眼差しを吸血鬼の姉妹へと向けながら、ただその場に佇む。
「即ち、戦いを続けるのであれば、私達はそれ相応の対処を取らせていただきますよ」
「なるほどねぇ。ま、何が出来るかは知らないけど、さッ!!」
少しの間だけ静かだったその空間に、再び轟音が炸裂した。咲夜ごと巻き込み攻撃しようと、再びフランドールは笑う。
けれど、咲夜はその表情を一切崩すことは無かった。何故なら、その後のことがもう分かっていたからだ。
パチン、と細い右手の指を鳴らす。その一泊後に、
「了解でっすよぉ!!」
どこか気楽さの残る声が響いた。隠れる様子の無い声の主は、両手に大きな鍋を掴んだまま一直線に走ってくる。しかし、戦いに熱狂し、咲夜に注目を向けていた吸血鬼の姉妹は僅かに反応が遅れてしまった。
「失礼しまぁす!!」
戦場のド真ん中に割り込んできた乱入者はその鍋の中身をその姉妹に向けて全力で掛けた。
その中身は純粋な水。そして、吸血鬼は流水の中では動くことが出来ない。
つまり、放出されることで流れを得た水は吸血鬼の姉妹を二人同時に無力化させる。
「良い仕事よ美鈴!!」
「いえいえ」
「兎に角、今は撤退するわ。妹様をお願い!!」
「はーい、了解です!!」
全身を濡らし、キョトンとした表情を浮かべるフランドールを美鈴は優しく抱え上げる。
「ちょっと!?」
「少し走るので揺れますよ。しばらく我慢していただけると幸いです」
咲夜に先導で、ひたすらその戦場から離れていく三人。
後に残るのは、大量の破壊跡と濡れた吸血鬼の姉だけだった。
(感謝するわ咲夜、そして美鈴。さて……私が再び動けるようになってから、貴方達がどう動くかを拝見させてもらおうかしら)
シリアスって難しい……