「それよ。その目よ。私が、私達が見たいのは」
計六本の白い腕を不気味に動かしながら撫子は笑う。
「さぁ、やってみなさい。悪の塊を、その正義の下でね!!」
雄叫びが上がった。
双方が同時に接近する。
その中で、最初に仕掛けたのは妖夢だった。両手で構えた楼観剣を、躊躇なく撫子の首筋を狙って振るう。けれど、撫子は白い腕を使って冷静にそれを防ぐ。柔軟に動いているにもかかわらず、不自然な硬度を持つ腕は、その衝撃を直接妖夢の腕に伝える。
顔を顰めて僅かに動きを止める、その隙を狙って他の白い腕が飛ぶ。
妹紅は妖夢の腰に抱き着き、転がる様に地面に倒した。
妖夢の胸があった虚空を貫いた腕は深々と地面に突き刺さる。
そのまま妖夢の上に覆いかぶさった妹紅は、背中の炎を爆発させた。至近距離に居た撫子は、その熱を直接受け、逃れる様に大きく後ろに下がる。
妹紅はそれを確認してから真上に大きく跳んだ。
撫子から見ると、丁度雲間から射す日光と重なる位置に。
真面に直視して、目が眩む。そこを狙って妹紅は宣言する。
「不死『凱風快晴飛翔蹴』」
その右足に炎が纏わり付く。そのまま、流星の様に撫子に蹴りを放った。
衝撃が辺りを走る。そして、その一撃はそれだけに留まらなかった。着弾点を中心に、炎の柱が吹き上がる。撫子を包み込んで焦がす炎は、辺りを熱風の渦に包み込む。
「……油断はするな」
「分かってますよ」
立ち上がった妖夢と言葉を交わしその渦を見詰める。
直後、その炎の渦は内側から爆発した。撒き散らされた火の粉は辺りの建物に当たり、一瞬の間を置くことも無く消えていく。
「中々良い攻撃ね」
「そりゃどうも」
「ただ、所詮『この世界』での話なのよね」
業火に包まれながら、それでも火傷一つ負わなかった撫子が、その右手を真っ直ぐ横に向ける。刹那、妹紅と妖夢を囲む様に、何百と言う純白の槍が周囲に展開された。
「伏せて!!」
そう言い終わるより早く、妖夢は左手で白楼剣を抜いた。同時、妹紅は何も言わず姿勢を低くし、その槍が一斉に放たれた。
もはや妖夢に迷いは無い。その槍の束を見据えると、構えた両の刀を全力で振り回す。兎に角当てさえすれば良い。そうすれば、連鎖的に穴が開く。
断続的に物がぶつかる音が響く。その音が薄れてきた時、妹紅は刀を振る妖夢を抑え、代わりにまた炎を爆発させる。
爆風に煽られた無数の槍は全方位へ向けて様々な向きで飛ばされる。
けれど、その全ては虚しく建物や地面に当たるだけで、他の何かを捉えはしなかった。
「……逃げたか」
「……そう、ですか」
「ま、悪人にしては妥当か。仕方ないが、奴を仕留めるのは次の機会だな」
その後暫く気配を感じたり、はたまた姿を見せないか待ってはみたものの、その様子はまるでない。
戦いの終わりは呆気ないもので、二人は脱力感と安堵に包まれる。
けれど、
それは長くは続かなかった。
撫子の気配は感じない。しかし、新たに夥しい数の敵意を感じ取った。
「……マズくないか?」
「えぇ、マズいでしょう。恐らく、山の妖怪達でしょうし」
嫌に冷静なまま会話を交わした二人は、一目散に走り出した。
生き返るまでが戦い。兎に角、二人は慧音が運ばれているであろう永遠亭を目指す。
中途半端に感じると思いますが、これにて第四章は終了となります。読んでくださって、ありがとうございました!!
それにしても、やっと前半の終わりが見えてきました。半年以上続けているのに、まだまだこれだけしか話が進んでいないのは、結構恥ずかしい話ですね。(途中サボったりしてるのは言わない約束)
兎に角、夏休み中の完結を目指して頑張りますので、どうかこれからもよろしくお願いします!!