東方覚深記   作:大豆御飯

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今回意味不明です



第五章二話 伝言を辿って

「どうぞ」

「あぁ、すまないね」

「いえいえ、客人を持て成すのは主の役目だもの」

 

 アリスに運ばれてきた紅茶の香りを嗅いだ藍の尻尾が揺れた。そのまま一口飲み、また尻尾が揺れる。部屋の隅、窓際の椅子に座っていた魔理沙の視線が、その尻尾の動きに同期した。

 

「さて……早速本題に入ろうか」

「そうね……のんびりするのも今の雰囲気には合わないでしょうし」

 

 ゆっくりと息を吐いた藍の提案に、霊夢が反応を示した。

 

「まず、被害の状況は……紅魔館が墜ちた」

「な……じゃあ、レミリアや咲夜はどうなったんだ……?」

「揃って永遠亭に行ったらしい。何でも、咲夜が重傷を負ったらしいわ」

「そう……あの咲夜が……」

 

 魔理沙が座る椅子の隣にあるソファに腰掛けたアリスが暗い顔を浮かべて呟く。

 

「紅魔館で……何があったの?」

「当主、レミリアの暴走。解決はした様です」

「そう……良かった」

「そして、後は人里の陥落か。操り人形の様な状態の天狗が大量に徘徊している現状だ」

「大丈夫なの?」

「一応、住民への被害は一人を除いて出ていない。その一人も、先駆けて人里に入ってきた首謀者の一人と交戦した上白沢慧音だけ。結論的に、その天狗達による被害は皆無。恐らく、監視的な役割かもしれないでしょう」

 

 現状の被害は以上になる。そう言った藍はまた紅茶を一口啜った。話を変える意味だったのだろう、静かに藍の話を聞いている三人を見て、再び口を開いた。

 

「今確認が取れている首謀者は二人。浅茅撫子と酸漿棗ね。それぞれ似たような能力だけど、微妙に違うんだ」

「浅茅撫子って誰だ?」

「紅魔館の件の首謀者だ。彼女は『物から始まる世界を生む程度の能力』を自称している」

「どういうことよ」

「詳しくは分からない。こればかりは本人に聞いてみないと、変な誤解を生んでしまったら命取りですから」

「じゃあ、棗の方はどうなんだ?」

「それは分からない。これはあくまで紫様が見た情報だからね。本人が自称していなければ、推測の域に入ってしまうから」

 

 残った紅茶を飲み干した藍はふぅと息を吐いた。それに釣られる様に訪れたのは静寂で、誰も何も話そうとしない。ただ、今提示された情報を飲み込み、自分なりに解釈をしていく。

 その後、長い静寂を断ち切ったのは魔理沙だった。ゆっくりと、一文字ずつ絞り出す様な声で、魔理沙は藍に聞いた。

 

「……なぁ」

「どうした?」

「これから、どうするんだ? 能力は上手く掴めない。そもそも、幻想郷のパワーバランスの一角が墜ちた。私達は、今からどうするんだ?」

「答えは一つしか無いだろう。戦うの」

 

 簡単に、藍は言い切った。

 勿論、魔理沙達三人は棗と交戦しているため、その実力は理解している。魔理沙だけなら彼女を圧倒出来たものの、霊夢とアリスにそれが出来るかは分からない。

 それを分かっている三人は、同様に驚いた様な表情を浮かべる。

 

「戦うって……どうするのよ。文とパチュリーを真正面からねじ伏せる様な奴よ? そんな……」

「それなんだが……紫様の話では、どうも相手に二つのパターンがある」

「何だよそれ」

「単純だ。一つは、純粋に持てる力を最大限に引き出した故に体の制御を失う者。そして、根本的にこの世ならざる方式を扱う者だ」

 

 一度話を止め、藍は三人を見回す。真剣に聞いていることを確認してから、再び話し始めた。

 

「前者は真っ向から立ち向かうしかない。暴走したレミリアもこのタイプだったらしいわ」

「なら、後者はどうするんだよ」

「具体的解決方法は分からないが、このタイプはまだ棗と撫子の二人にしか確認が取れていない。ただ、両者とも対抗できる存在が居た」

「……それが」

「そう、棗には小野塚小町と霧雨魔理沙。撫子に関しては恐らくだが誰でも攻撃を通すことが出来る様ね」

「……でも、おかしくないかしら。この世ならざる方式ってことは、私達が使う公式は当てはまらないってことでしょ。お互いに攻撃が通らないのが普通だと思うけど」

 

 目を細め、藍に聞いたアリス。藍はその質問は予想していた様で、一度頷いてからそれに答える。

 

「まず、棗に関してだが、紫様に聞いた話によると、元々普通の人間だった様子。だけど、何らかの過程を得てこの世ならざる方式に触れ、人と妖の区別が付かない存在になってしまった様だ。故に、この世と別の世の両方の公式を持っているため、向こうの攻撃を強引にこの世の公式に当てはめることで、あのような一方的に攻撃を出来たらしい。ただ、それでも単純な物理的攻撃には弱い様ね」

「じゃあ、何で私の攻撃が通るんだよ」

「魔理沙も向こうの世界に行ったからでしょう。知らぬ内に向こうの方式に触れ、体で覚えたのよ」

 

 じゃあ、小町もそう言うことなのか。

 成る程、と一人納得する魔理沙を横に、アリスは答えの続きを求める。

 

「それで、その撫子とか言うのはどうなのよ」

「撫子は棗と違って向こうの世界の『物』を強引にこちらの世界に当てはめている。力を当てはめた棗とは違ってね。故に、力の流れ自体に影響がある訳じゃないから、ただ壊せない物を生み出すだけ。それさえ注意したら、撫子自身に攻撃は通せる。棗と違ってね。ただ、撫子も人と妖の中間。寧ろ、妖の色が濃くなっているらしい。物理的な手段では限界があるかもしれないわ」

 

 藍がそう言った後、暫くの間静寂が部屋を包んだ。

 正直、説明されても分からない。世界だとか方式だとか公式だとか、そんなものは理解出来ない。

 提示されたのは、対抗できる存在だけ。方法までは分からない。

 

「つまりだ」

 

 それでも、魔理沙は軽く口を開いた。

 

「私が棗をぶっ飛ばして、撫子は誰かに任せて、そして人里も解放する。これだけの単純なことだろ?」

「まぁ……極めて簡単に言えばそうなるわね」

「実行はいつだよ」

「可能なら明日。夜は妖怪も活発になる故に、危険度も高いから」

「なら、私は明日動く。他は知らんが、脅威は一個でも減らすべきだろ」

 

 パン、と。魔理沙は頬を叩いた。心を切り替える様に、魔理沙は続けて息を吐く。

 既に、彼女の心は前向きに切り替わっていた。不安として存在していた要素に、少しだろうとどうであろうと自分が対抗できると分かったから。

 

「……なら、私はその撫子とか言うのを叩く。アリスは人里を任せても良いかしら」

「了解したわ」

「そうだ、人里の事なんだが」

「何よ」

「今、橙や狐を利用して幻想郷の有力者に協力を仰いでいる。何も単騎で挑む必要は無い」

 

 少しだけ、思っていた以上に希望が見えた。

 そう、と僅かな微笑みを浮かべて言った霊夢は、しかし藍にもう一つ質問する。

 

「ところで、当の紫はどうしたのよ」

「『本丸を叩きに行くから、後のことは藍に任せるわ』とだけ言い残してスキマの中に消えて以来、行方は知れません」

 

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