東方覚深記   作:大豆御飯

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第六章二話 再び

「……どうしちまったんだよ」

 

 魔理沙の頭は既に疑問ばかりが占めていた。普段から感情をあまり顔に出さないパチュリーだが、今目の前に居る彼女はあまりにも無表情すぎる。それは、人形の様で、話すその言葉にすらまるで意思が感じられない。抑揚が、形だけのものとしか感じられないのだ。

 

「別に、どうもしないわよ」

「なら……!!」

「そんなこと知らない。今はただ、出来る限り消極的に、尚且つ確実な手段で貴方達を地に帰す。それだけ」

 

 そう言って、パチュリーは一冊の魔導書(グリモワール)を取り出した。

 

「……よく分からないけど、もう強行突破するしかないわよね」

「もう正常な状態では無いと見てわかるからね。あたいの能力で抜けるのも一つだけど」

「立ち塞がられた以上、逃げてもいずれ戦う羽目になる。なら、ここで倒すのが良いでしょ」

 

 既に霊夢と小町の二人は戦う手段を選んだ様で、それぞれ鎌とお払い棒を構えている。

 もはや、制止を促したところで戦いは避けられない。魔理沙の脳裏に、あの夜の記憶が蘇ってきた。

 そう、暴走したアリスと死に物狂いで戦ったあの夜が。

 

「……魔理沙?」

 

 気が付けば、ミニ八卦炉を握り締めていた。仲間と思っていた者に、本気で、殺意を持って勝負を挑むのはあれが最初で最後だと思っていた。

 薄々気付いていた筈だ。

 そんな訳ないんだと。

 

「……先に行ってろ」

「ちょっと、それどういうことよ」

「良いから行ってろ」

「何でよ!!」

「パチュリーに時間を取られている場合じゃないだろ。それに、これはお前達が見るべきじゃない」

 

 霊夢と小町、そしてアリスを箒で制しながら、魔理沙は静かに言った。

 

「……それならば、私も一緒に戦うべきじゃないかしら」

 

 そんな魔理沙の方に手を置いて、優しくそう言ったのはアリス。箒を避け、魔理沙の隣に並び、共にパチュリーを見据える。

 

「魔理沙が戦ったのは私。でも、その時の記憶は私には無い。なら、今それを経験したら良いじゃない」

「でも……」

「まさかとは思うけど、負けると分かった上で戦おうとか無謀なことは考えてないでしょうね。今はそういうの、求めてないわ」

 

 アリスも、魔理沙を一人にしたくなかった。もう孤独を味わうのは嫌だった。

 折角もう一度会えたのだから、全て終わった時はまた笑っていたい。無論、パチュリーも含めて。

 

「なら……なら二人にここは任せるわ」

「えぇ。さっさと行きなさい」

「分かった」

 

 背後で霊夢と小町が離れていくのが分かった。

 残されたのは三人のみ。静かすぎる森は、場の緊張を高めていく。

 

「……遺言は終わり?」

「生憎と死ぬ予定は無いわ」

「そう」

「……行くぜ。覚悟しとけ」

 

 幻想郷に住む三人の魔法使い。

 超常を操る戦いが幕を開けた。

 

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