東方覚深記   作:大豆御飯

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第六章三話 異端の戦い

 パチュリーを中心に生み出された弾幕が空気を叩いた。

 ドン!! と連続して叩かれた空気は周囲の木々を叩き、その葉を無慈悲にも飛ばしていく。

 

「木符『シルフィホルン』」

 

 弾幕だけではない、現実の物体として存在する木の葉は鋭利な刃として魔理沙とアリスを襲う。全方位、何処を見ても完全にその嵐の渦の中、抵抗しなければ服を着ただけの脆い体は残酷過ぎる程のダメージを受けてしまう。

 だからこそ魔理沙は叫んだ。

 光や炎、その様な派手な魔法を扱う人間の魔法使いは、その木の葉の弾幕を火力で吹き飛ばしにかかる。

 

「恋符『マスタースパーク』」

 

 出し惜しみはしない。手を抜いたその瞬間が最期となるから。

 爆ぜた。

 人間として出せる中でもトップクラスの一撃は辺りの空気を更にかき乱し、舞い散る木の葉の動きを完全に殺し、遠ざける。

 それでいて、その一撃は正確にパチュリーを狙う。

 

「日符『ロイヤルフレア』」

 

 それに、彼女もまた火力で答えた。生み出された爆発的な光は真正面からマスタースパークと絡み合い、互いに霧散していく。

 けれど、魔理沙は一人ではない。控えていたアリスが声を上げる。

 

「呪符『ストロードールカミカゼ』」

 

 アリスの手の動きに合わせ、森の木の中から不意に現れたのは数多の藁人形。その禍々しい大集団は、一直線に二つの光が絡み合うその中心に向かっていく。

 そして、その中に飛び込んだ人形は全て炎を纏った。

 これもまた、魔法を越えた物理攻撃。見かけは単純だが、魔法に慣れるものに一瞬でも隙を作るには十分だと思ったのだ。

 しかし、

 

「水符『プリンセスウンディネ』」

 

 パチュリーは冷静だった。

 淡々と唱えられたその魔法。直ぐに数多の水玉が空中に浮かび上がり、炎の藁人形を真正面から包み込み、無力化される。

 それだけではない。その量は藁人形の比ではないのだ。

 水の圧力、それは量に比例する暴力。押し潰されればそれは建物の下敷きにも等しい衝撃となる。

 分かった上で、パチュリーはそれを魔理沙とアリスに差し向けた。

 回避するスペースは限りなく少ない。木々に触れ、割れた水玉は重力に従って落下し、動くだけの幅を制限するからだ。

 それでも必死に間隙を飛ぶ魔理沙は視認する。

 パチュリーは既に次の魔法の詠唱準備をしている。

 

「賭けるしかないか……」

 

 急ブレーキをかけ、パチュリーに背を向けながらミニ八卦炉を構える。

 もう一度、マスタースパークを放つ為に。

 

「彗星『ブレイジングスター』!!」

 

 叫び、背後の水玉には注意を払わずに一気に突撃する。高所から地面に叩き付けられる様な衝撃が何度も襲うが、それを歯を食いしばって堪える。

 そして、今度こそ何か柔らかい物に当たった様な感触が背中に伝わる。それも刹那の間、直後に伝わってきたのは背骨が折れる様な激痛だった。

 

「ほんと、代償が大き過ぎるぜ……!!」

 

 愚痴を漏らし、一瞬背後を確認する。

 突撃を受け、受け身も取れずに吹き飛ばされたパチュリーはそれでも空中で態勢を立て直す。

 

「『グランギニョル座の怪人』」

 

 そこを狙ったのはやはりアリスだった。

 藁人形ではない、木々から出てきた大量の西洋人形が、莫大な量の弾を吐き出す。

 詠唱は追い付かない。致命的な一撃を与えるには十分だろう。

 

 そう思えたのに、

 

「火&土符『ラーヴァクロムレク』」

 

 魔法は一瞬で発動した。

 圧倒的な弾幕を、呼吸でもしているかのように簡単に吹き飛ばし、魔理沙とアリスをも巻き込む。

 

(どういう、こと……!?)

 

 有効打を確信していたアリスは混乱し、慌てて次の魔法に移ろうとする。

 

「馬鹿、まだ止せ!! 態勢を整えろ!!」

 

 そんな魔理沙の声が聞こえた。

 しかし間に合わない。不安定なまま、パチュリーの弾幕に更に飲まれていく。

 一瞬、明確な終わりが頭を過る。

 

 ただ、何かがそれを強引に遮った。

 閉じかけた目を開けてみると、そこに居たのは弾幕を一身に受けてアリスを抱き締める魔理沙だった。

 

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