遊戯王GX~ノーバディ・レコード~   作:銀猫

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今回はデュエル無しです


Turn98 聖和の塔

―研究所・研究室―

 

 

「これでよし、っと…」

 

 

星光が研究所内のセキュリティシステムを作動させて一先ずの安全を確保した。次の問題は釼都が見ている資料なのだが――

 

 

「さっぱりわからん」

 

 

精霊界の文字は様々な言語を組み合わせている特殊なものだった。中には精霊界ならではの文字もあるようで単語ごとに別の言語を扱っているように、一々翻訳するのに時間がかかるのだ。

 

 

「イナや神楽はわからないの?」

 

『地域ごとに表現や文字も変わるから…』

 

『私たちは魂の聖域の文字しかわからないの』

 

 

さすがの星光でも精霊界の文字を読むことができなかった。ウリィはコロッセウム、ブルースは歯車街の文字しかわからないようだ。

 

 

「にしても、おかしな資料だな」

 

「何がだ?」

 

 

 

釼都はパラパラと資料をめくるとあるページを開いて机の上に置いて全員に見えるようにした。

 

「ここまでは主に英語や西洋圏の語源が組合わせてあったのに、次のページからはアジアの文字が主流になってんだよ。で、ここからはまるで分らん文字だ」

 

 

そこまではアルファベットの文字だったのが、次からは漢字などが主流、そして最後は象形文字のような形の文章のページが最後の数ページに固まっていた。

 

 

「…えっ、ちょっと待て、釼都…」

 

「あ?」

 

 

パラパラとめくる釼都から資料を奪うようにして見入るシゲル。最後のほうのページを睨むようにして見つめていた。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「…『天聖の塔は聖なる闇が集まる地にて建設され、その最上階には巫女の祈りをささげる祭壇が存在する』…」

 

「は?」

 

 

指でなぞるようにして象形文字を読み上げたシゲル。その背後に出現したウリィも文字を食い入るようにして見ていた。

 

 

『これは…儂らの世界の文字と同じじゃ』

 

「えっ…儂らの世界って……あっ!!」

 

 

そう言えば、シゲルは異世界の出身だ。彼の世界ではデュエルモンスターズとの精霊が共存しており、その文学をシゲルは受けたこともある。

 

異世界と精霊界で何かしらの繋がりがあってもおかしくはない。

 

 

 

「じゃあ、これはシゲルの世界の言葉!?」

 

「間違いねぇ…ニズの言葉をより謙譲語に直したものだ。この4ページだけなら読める」

 

 

そういうとすぐにシゲルは問題のページを読み、解読を始めた。

 

 

「『天聖の塔を入るには精霊の子守歌が必要であり、また天属の血を引くものが扉を開ける鍵となる』」

 

「精霊の子守歌と天属の血…?」

 

 

聞きなれないものだが、後者の天属という者には心当たりがある。

 

 

「おそらく天属ってのは天界が落ちる前に住んでいた精霊か、その上位の存在なんだろ…アンゲロスが含まれてるかどうかわらかねぇが…」

 

「次に書いてあるのは例の儀式についてだな…『巫女たちが祈りをささげ、神の意志を持つ存在が望めば、調和の秤が傾くことができる。それは世界崩壊を巻き起こしかねない』」

 

「…祈り…」

 

 

その時、ユウの脳裏には連斗が教えてくれた言葉が浮かんだ。その正体をつかむことができたら、そうなればアンゲロスの目的も漠然とだが見えてくるような気がした。

 

 

「シゲル、その巫女というのは何か書いてあるの?」

 

「巫女については…いや、書いてはない…が…もしかすると祈祷の巫女のことかもしれないな」

 

「祈祷の巫女?」

 

 

聞いたことがない言葉だが、シゲルがそれだと思うのには一つ理由があった。

 

 

「一言でいうとするなら神様に祈りを捧げる役職のことだ。そうすれば、たとえば未来のことが予知できたり、身病に対しての治療ができるようになったりする。とは言ってもなりたくてなるんじゃなくて神からの指名でやる感じだな」

 

「なんか詳しいな」

 

 

万丈目がそう思うのも無理はない。だが、シゲルがここまで知ってるのにはわけがあった。

 

 

「ウリィの奥さんのマリアも祈祷の巫女だ」

 

「マリアさんが…?」

 

 

かつて、シゲルが自らの過去を話すときに紹介した女性。今はペガサス会長の秘書をしているマリアが祈祷の巫女だというのだ。

 

 

「ニズからこっちに飛ばされる時に話しただろ?マリアの予知能力」

 

「…ああ!」

 

 

思い出すようにユウが反応した。というよりもあまりにも昔過ぎて忘れていたのだ。釼都でもそうだったかと首をかしげるほど昔のことなのだから無理もない。

 

というよりも、それから濃厚な時間が長すぎて忘れてしまったのだ。

 

 

「けど、それとツバキに何の…」

 

『考えられるのは、本人が祈祷の巫女だということじゃな』

 

 

ブルースの言う通り、神に祈祷の巫女になるように指名されても記憶喪失でそれを忘れている可能性がある。それに――

 

 

「……………」

 

 

ユウが取り出したのはコスモスのカード。そう、ツバキは神とは全くの無関係ではないのだ。

 

 

「連斗からの話だと、ツバキは祈りを捧げるような場面があったということだ。つまり、祈祷の巫女の可能性は十分ある」

 

「…ちょっと待てよ、それだとツバキは…」

 

 

そう、十代の思ってるどおり祈祷の巫女ならツバキは人間界の住人ではないかもしれない。人間界は独自に形成された世界とも言え、ニズや魂の聖域のような確立した神が存在してるわけではない。

祈りを捧げる神がいないなら祈りを捧げる必要もないし、指名されることもない。

 

 

「…………」

 

「それは本人から聞くことにしよう。聖和の塔にいるなら、そこらへんの事情を聞いてるかもしれない」

 

 

「で、最期…『儀式の本来の目的は、真のノーバディを誕生させることである』……」

 

 

その言葉に、全員が黙り込んでしまった。なぜか、それは意味がわからないからだ。

 

『チーム・ノーバディ』

 

チーム科唯一の2年であり、問題の姫野椿が所属するチーム。

だが、名前はただシゲルが故郷のニズでの言葉を使っただけで深い意味なんてないはずだった。

 

 

「…どういうことなんだろう」

 

「わからん。書かれてる内容的には調査内容というよりも古文書みたいなもんだ、確証はない。確かめるには行くしかないな…行けたらな?」

 

 

そう言うとシゲルは資料を投げるようにしてテーブルに置いた。

だが、問題は変わっていない。この資料の中に『聖和の塔』の場所が書かれていないのだ。

 

 

「どうするの、リーダー?」

 

「…ここで篭城するのならタイミリミットが来て終わりだ」

 

「タイミリミット?」

 

 

どういうことかわからない十代とユウが首をかしげていた。ほかの3人は理解しているようで釼都はトントンと指で資料を叩くようにして考えていた。

 

 

「儀式が終わるまで俺たちを拘束するつもりってことは、すでに始まってる可能性がある。何が起こるかわからんが、最悪の場合は止めなくちゃいけない。そのためには早く動かないといけない」

 

「それをどうするって聴いてるんだ」

 

 

万丈目の言うとおりここでずっと待ってるわけには行かない。だが、味方だと思っていたルキでさえツバキの所在を黙っていたのだ。エンディミオンで新たな協力者を探す訳にもいかず、調査書も読める人物がいない。

 

「手当たり次第といっても手がかりがないとどうしようもない」

 

 

星光の言うとおり、この世界の広さはわからないが一日そこらで全てを回れるほどの大きさはないだろう。手分けしたとしても一人二人でアンゲロスすべてを相手にするのも難しい。

 

 

 

「なら、取れる手は強引だが…エンディミオンを襲う」

 

「…はぁっ!?」

 

 

釼都の提案にシゲルと星光以外の3人が驚いていた。というよりも、取れる手としてはそれしかないのだ。

 

 

「ちょっと待て、襲うって…」

 

 

「命を奪ったりするつもりはない。情報を――」

 

「なんだ!?」

 

 

 

そう言ってると、研究所のコンソールからけたたましい音が鳴った。

すぐに星光はコンソールを操作している。

 

 

「星光、何があった?」

 

「……行かなくても、向こうから来たね。侵入者が3人。そのうち敵が1人」

 

「え? 残り2人は?」

 

 

ユウの問いは星光が映した画面が答えとなった。先ほど、家で別れたルキにつれられるように、人間界にいるはずの響とレイがいた。

 

 

 

「な、なんで響とレイが!?」

 

「分からん。星光、万丈目、十代はここで待機、俺とシゲルとユウで行くぞ」

 

 

「えっ、俺たち待ってたらいいのか?」

 

 

十代が疑問に思うが、わざわざ全員で行く必要もないのだ。というよりも、そのことを説明してる釼都は今すぐにもルキを吹き飛ばしに行こうとするシゲルの肩を押さえている。

 

 

―出入口―

 

 

ルキと響、レイは警報装置のアラームに驚いたのかその場で動けないでいた。

立ち位置的には戦闘をルキ、その背後にレイと響が手をつないでる状態だった。

 

 

「ル、ルキさん…本当にここに…?」

 

「…ええ、彼らが安全に落ち着ける場所は私の家か、エンディミオンで寝泊まりしていた空き家か、ここだけだから…」

 

 

そのルキの言葉に反応するかのように扉が開くと鬼の形相と言えるシゲルにマシンナーズを展開して、まるでルキを取り囲むかのように指示を出す釼都がやってきた。

 

最初、シゲルの姿を見て響は喜んだ色を顔に浮かべたが、その表情を見て固まった。

 

 

「覚悟はできてるか?遺言はあるか?ガタガタ泣き叫ぶ準備はできてるか?」

 

「待て待て、殺そうとするな」

 

 

 

あからさまな殺意を含めたシゲルにチョップをかまして釼都は抑えこんだ。だが、その釼都の背後には銃を構えた機械兵士が隙間なく構えている。

 

 

「まあ、ルキ。俺たちの目の前に人質を連れてやってくるってことは覚悟できるんだよな?」

 

「っ……」

 

 

だが、予想に反してルキのとった行動は――自分の杖を投げ捨てることだった。

 

 

「「………は?」」

 

 

「許してほしい…なんて、調子がいいよね」

 

 

呆けている2人に対して、ルキは伏し目がちにそう漏らした。すると彼女をかばうかのように響が前に出た。

 

 

「お、お兄ちゃん!話を聞いて!」

 

「……ああ、お前がいることも含めて全部言え」

 

 

明らかに起こっている口調のシゲルに響は泣きながら引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。

 

 

 

―回想:レッド寮―

 

「幽霊さんはここの寮長さんだったんですか…」

 

「大徳寺先生が…」

 

 

響は幽霊というものを初めて見たからなのか、物珍しそうにしており、その横ではレイがかつて世話になった人物がすでに死亡していて幽霊となっていたことに驚いていた。

 

ちなみにこの2人は年齢的にも近いので仲がいい。

 

 

「それで、この穴が…」

 

『そうだにゃ、この先は精霊界……入ろうとしたらだめにゃ』

 

 

説明している大徳寺はじっと穴を見ている響の視界に割って入った。

それほど詳しくもないが、彼女の性格は見てわかるように兄を追いかけて無茶をするタイプだというのを感じていた。

 

 

「でも…」

 

『心配なのはわかるにゃ。けどこの先はどうなってるのかわからないにゃ。目的地のエンディミオンなのかもしれないし、もしかしたらデーモンとかの悪魔が蔓延るパンディモニウムかもしれない、十代君のHEROがいる摩天楼かもしれない。

彼らには対抗しうる力があるが、君たちには無理にゃ』

 

 

確かに、あの6人は精霊と心を通わせて力を持っているが、響とレイは精霊がおらず、対抗する力がない。

 

「でも…」

 

「なら、無理でも通ります!」

 

『にゃ!?』

 

 

ファラオとは違う、白毛の猫が大徳寺に飛びついた。

それに驚いたのか大徳寺は部屋の梁へと逃げた。

 

 

「行こ、響ちゃん!!」

 

「えっ、あっ!!」

 

『あぁ!!』

 

 

レイが引っ張るようにして響と共に穴の中へと消えた。それに茫然とし、シゲル達になんて言い訳をしようかと悩む大徳寺が浮かんでいた。

 

 

―エンディミオン―

 

「ここが…」

 

 

レイと響が落下したのはユウ達とは違って街の広場のような場所だった。だが、人気がおらず、なんか物々しい雰囲気が漂っていた。

 

 

「お兄ちゃんたちも…」

 

「たぶん、いると思う」

 

 

周囲を見渡していると人影が見えた。というか、犬の影だった。

 

 

「あれは…」

 

「魔導獣ケルベロス?」

 

 

2つの頭を持つ獣で3匹やってきた。その背後からは追いかけるようにして魔導戦士ブレイカーもやってきた。

 

 

「人間…貴様らが長の言っていた世界の矛盾か?」

 

「?」

 

「それは…」

 

 

レイはわからないが、響はわかっていた。アカシック・レコードに記録されない特異的な存在で、それに当てはまるのはノーバディの5人と自分だということを。

 

 

「…まあ、いい。一先ず拘束させてもらう」

 

「えっ!?」

 

「っ!?」

 

 

嫌な予感がして響とレイは逃げようとした。

 

「グルルル」

 

「そんな…!!」

 

 

だが、3体の魔導獣ケルベロスに挟まれ、逃げ道がない。ブレイカーはそれを確認すると永続魔法「魔力の枷」に描かれているのと同じ拘束具を取り出した。

 

 

「ゲイル!!」

 

「ぬっ!?」

 

 

響が召喚した烏の少年が突風を生み出すとブレイカーとケルベロスを吹き飛ばした。

 

 

「逃げよう!!」

 

 

 

そこからは匂いで追ってくるケルベロスとの追いかけっこだった。ブレイカーはどうやら応援を呼びに行ったようでケルベロスだけなのだが、3匹もいるとどうすることもできないのだ。

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」

 

 

 

響とレイは曲がりくねった路地の先へと逃げている。幸いなのがブレイカーのような人型の魔導師と出会わないということだった。

 

 

「あっ!!」

 

「行き…止まり…」

 

 

曲がりくねった先は袋小路になっており、逃げ道がない。壁は段差のせいなのか結構高く、ジャンプ程度では届かない

 

 

「召喚…ゲイル…ブラスト…シュラ…駄目…!!」

 

 

召喚をしようにも、先ほどと違いうまく召喚することもできない。どうやらまだユウ達の様に召喚に慣れていないようで空振りで終わる。

 

一方のレイはただの人間。雪乃のように訓練をしていれば話は別だがそんな時間も環境もなく、どうすることもできない。

 

 

「グルルル―――ル?」

 

「ビースト、ハウス」

 

 

そこに一人の少女がやってきた。彼女の言葉に従うようにしてビーストが立ち去った――

 

 

 

―回想終了―

 

「――それがルキさんだったの」

 

「…なるほどな、とりあえず――」

 

 

そういうと、シゲルは両手でそれぞれ響とレイの頭をつかんだ。

そのまま――

 

 

「「きゃあああああああああああああああああああ!!!!!!」」

 

 

器用にも両手でアイアンクローを決めるシゲルに痛さに手をはがそうとするがびくともしない響と手をぶんぶんと振って抵抗するレイ。

 

 

「おー、スゲェ悲鳴だな、ところでなんか言うことはあるか?」

 

「「ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」」

 

 

 

ペイッと投げる様にして手を離したシゲル。2人は地面でのたうち回るようにして痛みをこらえていた。

 

 

「で、ルキ。お前…なんで2人を助けた?いや、そもそもなんで俺たちを裏切った?」

 

 

釼都の質問にルキは投げ捨てた自分の杖を見ていた。それは彼女が魔法使いとしての誇りを示すもので彼女の命に等しいものだった。

 

 

「本当は…私はみんなを裏切りたくなかった…けど、長の命令は絶対だから…」

 

「それは本当だと思うよ」

 

 

口を挟んだのはバックアップとして潜んでいたユウだった。やはりというべきか、他人の心をよく見ているのはユウだった。あの時のルキは申し訳ないというようにユウ達を見ていたのだ。

 

 

「だから響とレイを助けてくれたんでしょ?」

 

「……ただの、自己満足。こんなことをしたって私は許してもらえるわけじゃないのに…」

 

「…とりあえず、部屋に戻るぞ。ここじゃ落ち着くこともできねぇ」

 

 

―研究室―

 

 

「さてと、ルキ。何があったのか、なんで俺たちが襲われるのか、アンゲロスの目的がなんなのか、知ってることは全部話してもらうぞ」

 

「うん…けど、私も全部知ってるわけじゃないんだ。長がアンゲロスのザフキって人と関わりがあってたまに私たちみたいな下の魔法使いに指示を出すことがあったぐらいなの」

 

 

ということは、アンゲロスの目的がわかるのはエンディミオンクラスの魔法使いぐらいしかいないということだ。

 

 

「じゃあ、俺たちを拘束するっていう指示は?」

 

「一週間ぐらい前に突然通達された…エンディミオンに訪れるノーバディ及びその一味を捕獲せよと。アンゲロスが聖和の塔でなんかの儀式をするために、近づけたらいけないって」

 

「その聖和の塔ってどこにあるの?」

 

 

星光の言葉にルキは懐から地図を取り出した。どうやらエンディミオンを中心に周囲の地形などが書かれているモノのようだった。

 

 

「ここが私の家、ここが魔法図書館、今いるのはここ。それで聖和の塔は…ここ」

 

「…真反対か…」

 

 

 

エンディミオンの中心から見て聖和の塔は研究所とは逆の方向だった。しかし距離はそれほど無いようで向かうのだったらすぐにつきそうだった。

 

 

「あれ、でも塔なんてあった?」

 

「いや、覚えがないな」

 

 

ユウとシゲルの言うとおり、以前ここに訪れた時は塔のようなものが見えなかった。距離からすると一部だけでも見えてもおかしくはないはずだった。

 

 

「強力な魔法で鍵がかけられているみたいだけど、詳しくは…」

 

「鍵…」

 

 

そう聞いて万丈目が思い出したのは先ほどのシゲルが翻訳した内容だった。『精霊の子守唄』と『天属の血』――

 

 

「あ、そうだ…ルキはこの資料を読むことってできるのか?」

 

 

そう言って十代は先ほどの資料を手渡したが、ルキは1ページを開けると目を細めた。

 

 

「ダメ…強力な乱文魔法で読み取れないや…」

 

「乱文魔法?」

 

「一定の権限がないと見れないようにする魔法のこと。エンディミオンの文字にはそれが使われてるから…多分これは長やマナお姉ちゃんぐらいじゃないと…」

 

 

そう言われてマナのことを6人は思い出した。そう、ルキの姉である彼女が今どうしてるのか。妹が反抗をしたとなればまずことになるかもしれないのだ。

 

 

「そういえば、マナは大丈夫なのか?」

 

「…………」

 

 

十代の言葉にルキは目に見えて落ち込んでいた。やはりというべきか、問題があるようだった。

 

 

「お姉ちゃんは…身代わりで監禁されてる」

 

「っ…どこだ、直ぐに――」

 

 

十代が助けに行く、という前に剱都がそれを抑えた。

 

 

「残念だが、助けに行くことはできない」

 

「なっ!?」

 

「剱都、なんで…」

 

 

十代、そしてユウがそう食いかかるが彼は頭をボリボリと掻いて大きなため息をついた。

 

 

「そこに裂ける余裕がないからだ。少なくとも相手はエンディミオンという街そのもの。護衛を増やしてルキからの話を聞いて俺たちが来るのを待ち構えてる可能性が高い。それに言ったはずだ、時間がないって」

 

「だからって…」

 

「いいんです、お姉ちゃんも覚悟してたから…」

 

 

少し泣きそうだが、健気に笑顔で言うルキ。それに剱都はまたひとつ大きなため息をついた。

 

 

「助ける方法がないわけじゃない」

 

「どんな方法があるの?」

 

 

「アンゲロスを倒す」

 

 

ユウの質問に簡単に剱都がそう答えた。それに万丈目がどういうことなのか理解した。というよりも星光は最初からわかってシゲルも剱都と同じことを考えていたようだ。

 

 

「そうすえば、俺たちを捕縛する指令は意味をなさなくなる。命令違反での罰はあるかもしれないが、それ以上のことはないはずだ」

 

「じゃあ、決まり。時間も惜しいから…ドラゴンに乗ってその場所に行こう」

 

 

星光の言葉に全員が頷いた。だが、その中で状況についていけない人物もいる。

そう――響とレイだ。話し合ってる内容がむずかすぎてわからないのだ。

 

 

「…お前たちはここにいろ」

 

「えっ!」

 

「なんで!」

 

 

「モンスターを召喚する技術がないのに、戦闘になったら危険だからだ」

 

 

シゲルの言葉に響とレイは納得いかないようだ。それに剱都は少し半笑いでシゲルを見ていた。

 

 

「妹を思うのはわかるが、連れていけばいいんじゃねぇか」

 

「…無茶言うなよ…戦闘になったらどうするんだ?」

 

 

確かに根本的な問題は解決してないが、2人の様子を見て剱都は察していた。この2人、絶対にあとを追いかけてくると。

 

 

「勝手にいなくなっても逆に危険だ。それにここもいつまでも安全とは限らねぇぞ。セキュリティシステムなんて時間稼ぎ程度にしかならねぇし」

 

「でもよ……はぁ、わーった」

 

 

シゲルの方が折れて、響とレイは納得いったように笑顔になった。だがシゲルは「ただし」といって指を2本立てた。

 

 

「2つ、条件だ。俺たちの誰かから離れるな。それと万が一、はぐれて一人になった時に敵と遭遇したら戦わずに逃げろ。いいな?」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 

「ああ、そうだ…それと――」

 

 

 

―エンディミオン:上空―

 

「たかーい!」

 

「ちょっと、怖いね」

 

 

楽しそうな響と下を見てしまって顔を青くしてるレイ。2人は星光とユウとともにのファントム・ブルース・ドラゴンに乗っており、シゲルたちはソウル・ブラック・ドラゴンに乗っている。

 

 

「で、ルキ。その塔ってのは?」

 

「あそこ、あの祠が扉になってる」

 

 

ルキの指差した先には小高い丘の上にポツリと立つ石版のようなものがあった。ソウルが先行してその後ろをファンが飛ぶ形で丘に降り立った。

 

 

「これか…」

 

「ここに秘密が、ねぇ…」

 

 

石版にはニズと同じような文字のようなものが書かれているようだが、どうやら風化していて読めないところが多いようだ。

 

 

「なになに…『天属の血を受けし者の――』…だめだ、全く読めん」

 

 

シゲルが読み上げようとするも、前半部分は結構風化がひどく、なかには崩れている部分もある。同じくニズ出身の響も文字を読もうとして手を触れた――

 

 

 

「きゃっ!?」

 

 

 

 

 

すると、石版が消えた。

 

 

 

 

「えっ…?」

 

「はっ?」

 

 

 

いや、消えたとは違う。石版が扉のように観音開きになると、その先に響が倒れ込んだのだ。だが、その石版の奥にはエンディミオンが見えてたはずなのに響がいる場所の先には薄暗い通路があるだけだった。

 

 

「い、いたた…あれ?」

 

 

いきなりのことで鼻を打った響は座り込むとその異質な地面に気づいた。丘にしてはコンクリートのように滑らかな地面。朝なのにくらい場所。

 

 

 

「……響、お前、なにやったんだ?」

 

「……え、え?な、何もやってないよ?」

 

 

慌てて言う響、どうも嘘ではないが扉には鍵がかかっているはずだった。精霊の歌を誰かが歌った様子もないし、考えられるのは――

 

 

「とりあえず、進もう」

 

 

ユウ、十代を先頭に響とレイ、ルキを囲むようにして進む一同。すると、全員が綺麗に整えられた地面を踏むと入って来た石版が閉じた。

 

 

「どうやら、戻す気はないみたいだな」

 

「上等だよ」

 

 

万丈目の言葉に星光がニヒルに笑いながらそう反応したのをみてレイは少し怖くなった。

 

―天和の塔:祈りの間―

 

 

「どう?」

 

「やはり、彼の者を記憶を葬り去らない限り祈りは完遂しないようだ」

 

 

アラエルの言葉に眼鏡をかけて黄色い短髪の青年はそう分析した。

それにルヒエは大きなため息をついた。

 

 

「なんでぇ…異世界のデュエリストはうまくいったんでしょ?」

 

「それほど繋がりがあるってことよ。ほら、あなたはザフキの手伝いに行きなさい」

 

 

追い出すようにしてぶちぶち反抗するルヒエを外に出したアラエル。だが、彼女は妹の姿ではなく、この場所で祈りをささげる少女のほうが気になるようだった。

 

 

 

「…ねえ、エル…あなたは…それでいいの?」

 

 

確かめるような言葉を、彼女は聞くことはなかった。

 

 

 

―天和の塔:下層―

 

 

「またか」

 

 

出入口の石版に似たものが通路に鎮座しており、それが邪魔で先に進めない。すると再び響はその石板に手を触れた。

 

 

「あれ?」

 

 

だが、今度は何も起こらなかった。

 

 

「響、無暗やたらに触るなよ。何があるのかわからんからな」

 

「あ、うん」

 

 

「で、今度はなんて書いてあるんだ?」

 

 

出入口のほうは屋外にあったためかボロボロだったが、こっちは崩れているのが最後の部分だけで、シゲルには十分読むことができた。

 

 

「『精霊の歌を捧げ、さすれば道は開かれる』…続きは歌詞みたいだな『Redii domum . Ut cum amabili familia vivere.』…最後が読めねぇ」

 

 

最後のところはやはりというべきか、崩れているため歌が分からないのだ。

しかも歌の内容が日本語ではないため、なんて言ってるのかわからない。

 

「ねぇ、それってどういう意味?」

 

「精霊の子守歌というエンディミオンに伝わる子守歌で、自分は家に帰って、一緒にいる家族のために精霊の歌を謳い、女神様の加護を受ける、みたいなことだったと思う。小さいときにお姉ちゃんがよく歌ってたのを覚えてる」

 

 

ルキはそう言うが、その子守歌もシゲルが読み上げた部分までしかないらしい。

残りの部分は風化というよりも崩れている。

 

 

「手がかりなし…か」

 

「Et devoto animo concinentem, et mente laesus deae beneficium」

 

 

「「「「「「「「!!」」」」」」」」」

 

 

万丈目のため息にかぶるようにしてその歌が響き渡ると同時に、石版が動いた。

先ほどとは違い、今度は光の粒のようになり消えたのだ。その先はエントランスのようで広場のように広かった。

 

 

だが、それよりも全員が注目したのは歌を歌ったユウだった。

 

 

「…ユウ、お前、なんでこの歌を知ってたんだ?」

 

「わからない…僕が小さい時に母さんがよく歌ってた子守唄に似てたから歌ってみたんだけど…なんで…」

 

 

ユウの母親――聖牙沙苗の子守唄。それが聖和の塔の精霊の歌。

先ほどの響のこともある上に謎が増えていく。だが、それを解明する時間はないようだった。

 

 

 

「呆然としてる暇はないみたいだぞ」

 

 

万丈目がそう言ってディスクを起動させた。その先には一人の男性が立っていた――

 

 

「待っていたぞ、世界の矛盾」

 

 

天使のような翼を背中に持ち、翼のような形をしたデュエルディスク。鎧のようなものを着込んだ隻眼で芝生のように短い赤褐色の髪をした男性。

 

 

「アンゲロスか?」

 

「いかにも、この塔を守る門番――といったところだ」

 

 

言葉に秘められた威圧感――それが9人に圧し掛かった。息をするのも禁じられているような殺気。

 

 

「カヒュッ…!!」

 

「ヒュゥ…!!」

 

 

それに命の取引(殺し合い)に耐性がないレイと響の息が可笑しくなる音が聞こえた。

 

 

「落ち着け、響。俺に合わせて息をするんだ」

 

「大丈夫、貴女が死ぬことはないんですよ」

 

 

だが、落ち着く言葉でシゲルと星光が過呼吸になりかけた2人を守った。しかしその2人でも、戦いなれているノーバディでも息が詰まりかけた。ただの威圧でそれなのだ。

 

十代と万丈目も顔を青く、ユウも若干ディスクを構えてる左腕がカタカタと震えていた。

 

 

「ッ…」

 

「どうした?この程度の重圧に呑み込まれたのか?」

 

 

意外、というようにその男が口にした。ただの挑発のように取れる言葉だが、その雰囲気が欠片もない。それが本心――歴戦の男の気配だった。

 

 

「ふん…そのまま銅像の様に固まるのならこちらとしても好都合だ。祈祷の時が終わるまでそうしてろ」

 

「(祈祷の時…儀式の事か?)お前たちは一体、なにをしようとしてるんだ!?」

 

 

釼都が震える心に喝を入れて吼えた。また男は驚いたように釼都を見た。

 

 

「ほお…俺の威圧に耐えられるとは…なるほど…流石としか言いようがないな」

 

「答えろ!! 俺たちの記憶をいじって、姫野椿を連れ去った理由は何だ!?」

 

 

「…ふ……ハッハッハハハハハハハ――!!!」

 

だが、男は釼都の質問に一瞬呆けて、そのあと高笑いした。まるで釼都の質問の意図がずれているような、そんな反応だった。

 

 

「俺たちが、連れ去った?違うな、あの子は自らの意志で立ち去ったのだ…貴様らの下から」

 

「嘘だ! ツバキが自分の意志でなんて――「嘘ではない、彼女は自らの意志で決めたのだ、すべての人間を裏切ることを」!!」

 

 

そう、それはアラエルの言っていた忠告そのものだった。あの時、ツバキは「もしかしたら」とそうなることを恐怖していた。

この状況、まさしくそれだった。ツバキは仲間を裏切って、アンゲロスのもとにいる。

 

 

「だが、なんで俺たちから立ち去っただけで裏切るんだ?」

 

 

十代が疑問に思ったことを口にした。確かに、ただそれだけで裏切り行為だとするのは無理がある。すると男性は顎に手をやり、少し考え込むようなしぐさをした。

 

 

「ふむ……アラエルが忠告してたし…俺からもひとつ教えておいてやろうか」

 

「一体何を…」

 

 

「この祈祷が終わるとき―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――人間界は崩壊する」

 

 

「「「「「「「「「!!!!??」」」」」」」」」

 

 

狂いだした歯車は、動き出した




星光「遅い!」
ごべんばざい(ボロボロ)


シゲル「で、遅くなったのはなんだ?ほったらかしか?」(指ポキ)
いやいやいやいや!!書いてたの、次の話を書いてたの!!
釼都「へぇ…で?」
それが全く進まなかったの!!書いて消しての繰り返し、ストックができないからこっちも出すのが遅れたの!!
ユウ「そうなの?」
今回はガチでスランプ状態でした

それともう一つ理由がある
紫苑「もう一つ?」
いや、OCGを魔導征龍の環境で見切りをつけてやめてたんだけど新弾で真紅眼が収録されてるとなって…それでいろいろ準備したり購入したりで書く時間がなかったの
星光「復帰するってこと?」
そういうこと、大会にも何度か参加して…エクシーズ、ペンデュラムは無理だけどそれ以外のコンボもネタに話ができるかなと思って…
あ、それと吹雪のデッキのネタにもできそうだなって

釼都「まあ、こいつが投稿遅らしてた話はここまでで、話の解説行くか」

まずは仮拠点として研究所で落ち着いてました
シゲル「紫苑救出してから希に出てくるな、あそこ」
既にシステム関係は釼都と紫苑(星光)に掌握されてるからね。

ユウ「次は星光と釼都が持ち帰った情報だけど…」
釼都「調査情報じゃなくて古文書だったな」
ついでに言っておくとあれは様々な文語で書かれた聖和の塔の古文書関係のファイルです。そのため、剣闘獣の世界で書かれていた文書の部分はシゲルでも読めました。
紫苑「それってニズと剣闘獣の世界の文字は同じってこと?」
そう、だからあの文字はウリィにも読めます

紫苑「それとノーバディ…巫女…」
さぁて、そこは今後明らかになっていく感じですね。
ちなみにシゲルは別にノーバディに深い理由もなく命名してたので本人も驚いてる。

そしてルキ達の合流
ユウ「やっぱり、やりたくなかったんだね」
そうじゃなかったらシゲルを治療して談笑なんてしてないからね。
治療すると見せかけて拘束したりとかもできたのにしてないから。
釼都「けど、まさかレイと響まで来てるって…」
6人だけで行くとでも思ってたのか?
けどそのうちジェネックス大会決勝書かないとな…

シゲル「次は聖和の塔についてだが、なんで響は開けることができたんだ?それとなんでユウの母親の子守唄が鍵なんだ?」
さあ?なんででしょう?
ユウ「なんでとぼけるの…?」


釼都「で、次はアンゲロスとの戦いか…」
8割がた書き上げた感じですね…まあそこからはプロット通りに進めるはずです。
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