「うっ……ここ…は…?」
十代が目を覚ますとそこはまるで図書館だった。あまり本を読まない彼でもそこが資料室か図書室のような本棚と本が並んでいるのに気づいた。横になっているのはどうやら備え付けのソファのようで近くのテーブルには自分のディスクとデッキが置いてあった。
「確か…」
「目が覚めたんだ」
何があったのか考える前に、本棚の間から紫苑――いや、星光が顔を出した。その両手には10冊ほどの本を抱えており、十代のディスクがあるのとは別のテーブルにおいた。と、そのテーブルの横のソファにはルキが眠っていた。
「…そうだ…俺たち落ちたんだ…!」
「そう、2人を運ぶのも難しいし、どうやらここは聖和の塔の資料室みたいだからなにか手がかりがあるかと思ってね」
そう言って持ってきた本を開いてページを開いた。だが星光とルキ以外の人の気配がしないことに十代が気づいた。
「シゲルとレイは?」
「…落下中にはぐれたみたい、ここに落ちてきたは私たちだけ」
少し心配なのか口を噤んだ星光は総説明して本を置いた。よく見れば近くには本の山がいくつも出来上がっていた。彼女は目が覚めてからずっと情報を集めているようだった。
「今はレイがシゲルと一緒なのを祈るしかないね」
―一方―
「……ほぇ…?」
「やっと目が覚めたか」
何かに揺らされるような感覚に寝ぼけながら目をこするレイ。そして目の前から聞こえた声に一気にその意識を覚醒させた。
「ふぇ!?あ、あれ!?シゲルさん!?え、っ、えぇ!?」
「落ち着け…立てるか?」
シゲルは彼女を背負いながら階段を上っているようだった。首をブンブンと縦に振りながら彼女は降りた。なぜこのような状況になってるのかわかってなかったレイだが、徐々に思い出したようだ。
「えっ、えっと…あれから…?」
「ああ、落ちて目が覚めたからな…おそらく地下だろう。ひとまず釼都たちと合流するぞ」
そう言って再び登り始めたシゲル。それにまだ呆然としているレイだったがハッとするとシゲルを追いかけ始めた。
「あの、他のみんなは…?」
「さあな…気づいたところから一本道だったが姿が見えない。先に行ったか、別の場所に落とされたかだろうな。まあ、あいつらは大丈夫だろう」
それよりも危険なのがこっちだということはシゲルは言えなかった。星光も十代も単独で行動できる実力を持っているしルキも若干の心配はあるとは言え問題はないだろう。響はユウと釼都と行動してるからなんとなる。
だが、シゲルは一人でレイを守りながら進むことになる。
相手が1人ならまだしも複数人で襲いかかってきたら守りきれないかもしれない。
「ん?」
先程までと違い、何かの扉にたどり着いたシゲルは壁に書かれている文字に気づいた。
「……魚の間?」
「え?」
この先の部屋の名前なのか、書かれている文字の意味がわからなかった。だが考えても解決することもないのでシゲルは扉を静かに開けた。
「わぁ…!」
感激の声を漏らすレイ。それもそのはず、この部屋は巨大な水槽に囲まれた水族館のようだった。デュエルモンスターズの魚が遊泳し、明るい室内はまるで海中散歩をしているようだった。
「(……門のところ、ザフキがいたのは琥珀の闘技場…ここは水槽の密室…なるほど)」
「なんだろうね、ここ…」
興味津々というようにレイが辺りを見回している。たしかにここまで巨大な水槽が聖和の塔の内部にあるのか、ただの水族館というようなことでもないだろうし。
「おそらく、この部屋の主の特徴なんだろうな」
「特徴?」
「入ってすぐの門は琥珀の闘技場…そしてそれを門番であるザフキが自在に操る能力を持っていた。おそらくこの部屋…水属性か、魚関係のデッキなんだろう」
「よくわかったな」
シゲルの言葉に返すかのように、いつの間にかそこに男性が立っていた。黄色い髪に眼鏡をかけて、見た感じの年齢はシゲルとあまり大差がないようだった。
服装はザフキが鎧だったのに対し、この青年は司祭のようなゆったりとした服だった。
「テメェが部屋の主か?」
「…フッ……獣の魂を持つ男か…その勇敢なお前を湛えて一つ、教えてやろう。俺の名前はサリエル・アミーフラウロス…残念ながらこの部屋の主ではない、ここは生意気なガキの子供部屋だ」
そう言って構えた、サリエルという青年から発せられるのはザフキとあまり謙遜ない威圧感にまたレイが呑まれそうになるが、シゲルが割って入ることでそれは回避された。
「だが、貴様に試練を与えるのには変わりない」
「…まあ、この塔にいる奴全員が敵なのはわかってた。この部屋の主かどうかなんてそれほど重要でもないしな」
この塔にいるのはアンゲロス、そして姫野椿のみ。ザフキの話によるとツバキは自分の意志でここにやってきて、ユウ達を裏切ったということだ。
つまり、味方以外はすべて敵ということになる。
「ふん…少しは楽しめそうだな」
「レイ、お前は俺の後ろに隠れてろ。それと万が一は逃げろ」
「う、うん…!!」
レイはシゲルの背後、備え付けのソファの陰に隠れた。そしてシゲル、サリエルは共にディスクを構えた。
「「デュエル!!」」
―シゲルのターン―
「俺のターン、俺は剣闘獣ラクエルを攻撃表示で召喚!!」
レベル4の剣闘獣ではアンダルに続いて高いモンスターが登場した。
まだサリエルのデッキの特徴が分からないが、守備表示で召喚するモンスターも存在しないため、これが最善策だった。
「カードをセット、ターンエンドだ」
シゲル
LP4000 手札4枚
ラクエル/ATK1800
伏せカード1枚
―サリエルのターン―
「俺のターン、フィールド魔法炎王の孤島を発動!!」
水槽の密室からどこかの孤島へと姿が変わった。島の中央には火山があり、どこかアカデミアに似ていた。
「炎王の孤島は3つの効果が存在している。そのうちの第2の効果、フィールドにモンスターが存在しない時、鳥獣族・炎属性モンスターを特殊召喚できる…不死鳥の如く舞い上がれ、ネフティスの鳳凰神!!」
ネフティスの鳳凰神/ATK2400
ホルスの黒炎竜に似た鳳凰が襲来した。攻撃力は上級モンスターと同じで、そして効果もある意味では有名だった。
「さらに炎王獣バロン召喚!!」
炎王獣バロン/ATK1800
今度はいくつもの剣を持ったラクエルにどことなく似ている炎の獣戦士が登場した。
「バトルフェイズ、ネフティスでラクエルに攻撃!!フェニックス・ストライク!!」
「くっ…!!?」
シゲル/LP4000→3400
自身よりさらに強い炎に包まれたラクエルが爆散し、そしてその衝撃を食らったシゲルに異変が――
「うっ…がっ…!?」
「シゲルさん…っ!?」
シゲルの後ろのソファに身を隠すようにしていたレイの鼻に突き刺すような刺激臭が漂った。まるで、焼肉屋で肉を焼くような、そんな匂いがする。だが実際のダメージとは言えシゲルにそのような火力が与えられるほどの威力はないはずだ。
「テメッ…何をっ…!!」
「ザフキの時に聞いたはずだ。俺たちのデュエルは全て試練である、と。俺の試練…それはダメージに比例して貴様の体が文字通り焼かれていく。今だと背中が焼けたんじゃないのか?」
サリエルの言うとおり、シゲルの背中からヒリヒリする痛みがある。だが、かつて廃寮の前で戦った時の実際のダメージ以上の痛みが走っていた。
いうなれば、あの時は火に晒される時の痛み、そして今回は火を体に付けられるような痛み。まるでシゲルの体から発火したようなものだ。
「俺の試練ではライフが0になる前に決着がつく、その意味がわかるか?」
「………ダメージでノックダウン、ってわけでもないだろ?」
「…やはり、お前は頭がいい。人間は痛みに弱い、たとえ手足をもがれようものなら無様にのたうち回る。そして、痛みによっては死に至る。そういえばわかるな?」
「痛みによるショック死…か、笑えないオチだな…!!」
確かにそうだ、この手の戦いに身を投じているシゲルとしては最後まで戦うことに意味があるのだ。たとえダメだったとしても相手に傷を付け、最後まで抗い、そして一矢報いる。
それすらも許さない結末なんて彼は望んではない。
「まだ俺の攻撃は終わってない、続いてバロンの攻撃!!」
「ダメージステップ、ガードブロックを発動!!バロンの攻撃力のダメージを0にしてカードをドローする!!」
黄色い透明の壁がバロンの剣の攻撃を遮った。だが、もしこの攻撃が通っていればと思うとぞっとしている。
レイは気づいてないがシゲルは結構無理をしているのだ。背中の火傷だけではなく、落下した時にレイを庇って体中が軋んでいるのだ。その状態でレイを背負って階段を上がるという無茶をしていたのだ。
「…ふっ、カードをセットしてターンエンドだ」
サリエル
LP4000 手札2枚
ネフティスの鳳凰神/ATK2400 バロン/ATK1800
伏せカード1枚
炎王の孤島
―シゲルのターン―
「俺のターン!!(ッ…もしから気付かれてるかもしれねぇな…)相手フィールドのみにモンスターが存在する場合、スレイブ・キャットを特殊召喚できる!!」
スレイブ・キャット/ATK800
今度は剣闘獣の眷属である猫が出現した。いつもならチューナーを召喚してシンクロを行うのだが、手札にチューナーモンスターが存在しないため下策に走るしかなかった。
「スレイブ・キャットをリリースして剣闘獣アレクサンデルをアドバンス召喚!!」
アレクサンデル/ATK2400
本来なら剣闘獣ディカエリィからつなげるはずのモンスターだが、今できる手がこれぐらいしかないのだ。
「バトルフェイズ、炎王獣バロンへ攻撃!!」
「甘い!リバース罠 炎王暴刃!!」
突撃をするアレクサンデルにバロンは持っていた剣を突き刺した。
「なに!?」
「このトラップは炎属性モンスターが攻撃対象になった時、そのモンスターと相手の攻撃モンスターを破壊する!!」
炎王暴刃
通常罠
自分フィールドの炎属性モンスターが攻撃対象になったとき
発動することができる。
(1)攻撃対象となったモンスターを破壊し、相手フィールドのカードを破壊する。
(2)相手に500ポイントのダメージを与える。
バロンに攻撃をされながらもアレクサンデルはその歩みを止めなかった。だがバロンはその命を燃やしてアレクサンデルと共に散った。
「そして、相手へと500ポイントのダメージを与える!!」
「うあぁっ!!」
シゲル/LP3400→2900
今度は左の脚に突き刺さる痛みが走った。その時レイが感づいた、シゲルの不調に。
「(もしかして、シゲルさん…無茶してる…?)」
「ッ…カードを2枚伏せてターンエンド」
シゲル
LP2900 手札2枚
モンスター無し
伏せカード2枚
―サリエルのターン―
「俺のターン…バロン効果を発動。このモンスターが破壊された次のターンのスタンバイフェイズに炎王との名の付くモンスターを手札に加える。炎王神獣ガルドニクスをサーチ」
「……だが、そのモンスターは最上級モンスター。炎王の孤島はフィールドにモンスターが存在すると発動できない」
「ふん、トレード・インを発動。ガルドニクスを捨ててカードを新たに2枚ドローする。なにも炎王の孤島だけが特殊召喚する方法ではない。死者蘇生を発動!!ガルドニクスを特殊召喚する!!」
今度はバジリスクのような炎の鳥が登場した。だが、その威圧感は隣にいるネフティスの鳳凰神の数倍もある。
ガルドニクス/ATK2700
「そいつがお前の切り札か…!」
「なるほど、こいつの存在感に気付けるか…」
精霊に準じた何かだろうか、おそらくは万丈目の光と闇の龍のような力を持つモンスターだ。
「さらに炎王獣ヤクシャ召喚!!」
ヤクシャ/ATK1800
フィールドに3体のモンスター、一方シゲルのフィールドはモンスターはなし、伏せカードが2枚という絶望的な状況だった。
「バトルフェイズ ネフティスの鳳凰神で攻撃だ!!」
「やられてたまるか、ハーフ・チャージを発動!!このターン俺が受ける戦闘ダメージを半減させる!!」
ガード・ブロックのような薄い壁がネフティスの鳳凰神の火焔からシゲルを守った。だが、その衝撃は伝わっているようで右足で必死にこらえていた。
シゲル/LP2900→1700
「だがすべての攻撃が通れば変わらない、ガルドニクスで攻撃!!」
「ぐぅぁ!!」
シゲル/LP1700→350
ライフが一気に1000を切った。気にしてる暇がないが、シゲルの右肩や腹部、首なども痛みが走っていた。まるでその部分だけ炎の紐を巻かれたかのような痛みだった、しかしそれどころではないのだ。
「最後、ヤクシャよ、とどめをさせ!!」
「シゲルさん!!」
「まだだ!!眠る魂の咆哮を発動!!墓地のアレクサンデルとラクエルを除外融合する、エセダリを特殊召喚!!」
エセダリ/ATK2500
ヤクシャの攻撃の前に古代戦車に乗ったゴリラが登場した。これで最後の攻撃が通ることがなくなり、一安心となったためかシゲルは痛みに顔をゆがめて肩を押さえた。
その時気づいたのは服の肩の部分が完全に炭化していたのだ。体を焼かれるというより、そこが燃えたと考えたほうがいいだろう。
「だが、わずかに延命したにすぎん。貴様のライフが尽きるのが先か、痛みで命を落とすのが先か…楽しませてもらおうメインフェイズ2、カードをセット、エンド」
「残念だが両方違うな、俺の命が尽きる前にお前を倒す!!エンドフェイズにハーフ・チャージの効果を発動!!このターン受けたダメージ以下になるようにモンスターをデッキから特殊召喚する」
ハーフ・チャージ
通常罠
自分フィールドにモンスターが存在しない場合のみ発動することができる。
(1)このターン、自分が受ける戦闘ダメージを半分にする。
(2)このカードを発動したターンのエンドフェイズ、
このターン受けたダメージ以下の攻撃力になるように
デッキからモンスターを任意の枚数特殊召喚する。
この効果は自分フィールドのモンスターの数が相手のフィールドのモンスター以下の枚数にならなくてはいけない。
「俺が受けたのは2550以下、さらにフィールドのモンスターが相手のモンスターの数以下になるように選択するため2体までしか出せない。デッキからフォース・リゾネーターと剣闘獣ベストロウリィを特殊召喚!!」
フォース・リゾネーター/ATK500
剣闘獣ベストロウリィ/ATK1500
これで何とか戦線を維持できたが残りライフが350、先ほどの炎王暴刃のようなバーンカードでもシゲルは負ける。まだ安心はできない。
サリエル
LP4000 手札1枚
ネフティスの鳳凰神/ATK2400 ガルドニクス/ATK2700 ヤクシャ/ATK1800
伏せカード1枚
炎王の孤島
―シゲルのターン―
「俺のターン、ここからは俺の番だ…レベル5のエセダリにレベル2のフォース・リゾネーターをチューニング!!獣の魂を受け継ぐものよ、立ち塞がる敵を破壊せよ!!」
☆5 + ☆2 = ☆7
「シンクロ召喚、剣闘獣フレイム・ファング!!」
剣闘獣フレイム・ファング/ATK2600
出たのはシゲルのエースであるソウルではなく、攻撃力をアップさせることができるフレイム・ファングだった
「モンスター効果を発動、墓地のエセダリを指定することでその攻撃力を自分に加えることができる!!」
フレイム・ファング/ATK2600→5100
これで攻撃力がガルドニクスを越えた。しかしエンドフェイズに元に戻ってしまうし、伏せカードの警戒のためにさらなる攻め手が必要だった。
「クロック・リゾネーターを召喚!!」
クロック・リゾネーター/DEF600
「レベル4のベストロウリィにレベル3のレベル・リゾネーターをチューニング!!獣の魂を受け継ぎし翼、氷結の羽を纏い舞え!!」
☆4 + ☆3 =☆7
「シンクロ召喚、剣闘獣フリージング・クロー!!」
剣闘獣フリージング・クロー/ATK2000
ユウのシルフィに似た氷の鳥が出てきた。その翼で羽ばたくたびに粉雪のような欠片が待っていて、偶然にも体が燃えたシゲルには気持ちがいい冷気だった。
「フリージング・クローの効果を発動!!シンクロ召喚成功時、自分のフィールドに融合かシンクロの剣闘獣がいる場合、次のターンのエンドフェイズまで相手のカードの効果を無効にする!!ただし、この効果を発動した場合剣闘獣以外のモンスターを召喚することができない」
剣闘獣フリージング・クロー
シンクロモンスター・効果
星6/水属性/獣族/ATK2000/DEF1800
チューナーモンスター+チューナー以外の「剣闘獣」モンスター1体以上
(1)このモンスターが特殊召喚に成功した時、自分のフィールドにほかの「剣闘獣」融合モンスターかシンクロモンスターが存在する場合
エンドフェイズまでお互いに魔法・罠の効果を発動することができない。
「剣闘獣フリージング・クロー」の効果を発動した場合、
自分は「剣闘獣」以外のモンスターを特殊召喚することができない。
(2)このモンスターがデッキに戻った時、
墓地に存在するカードを1枚手札に加えることができる。
フリージング・クローの羽ばたきにサリエルの伏せカードが凍り付いた。本当ならソウル・ブラック・ドラゴンで攻めたいのだが伏せカードを警戒するのを優先した。
「ふん…俺の伏せカードを警戒して安全策か…激痛に思考力が低下したか?」
「(ソウル・ブラック・ドラゴンで攻撃力を吸収して攻撃が通れば効果ダメージを含めて一気にライフが削れてたのに…)」
「とか言いつつ…その伏せカード、攻撃反応じゃねぇのか?」
だがしかし伏せカードの警戒はこれで無くなった。問題は見知らぬモンスターたちの効果だが、ここで臆さず攻めるのが最善だった。
「バトルフェイズ、フレイム・ファングでガルドニクスに攻撃だ!!」
「手札に存在する炎王兵アグニの効果を発動!!このカードを手札から捨てることで自分フィールドのモンスターを破壊してカードをドローする、ガルドニクスを破壊!!」
炎王兵アグニ
効果モンスター
星3/炎属性/獣戦士族/ATK700/DEF1200
(1)このカードを捨てて発動する。自分フィールドのモンスターを1体破壊する。
その後、カードを1枚ドローする。
なぜか攻撃対象になったガルドニクスを破壊するサリエル。アグニの仕掛けた爆弾にガルドニクスが破壊され、カードを引いた。
一方攻撃目標がいなくなったフレイム・ファングはその場を警戒してるようにグルグルと円を描くようにして歩いていた。
「…なら、ネフティスへ攻撃、ファイアバイト!!」
ネフティスに向かってとびかかったフレイム・ファングは自身の炎の牙を突き刺した。そこから流れる熱気に鳳凰神は嫌がっていたが、大きな鳴き声を上げると爆散した。
「クッ…!!」
サリエル/LP4000→1300
「まだだ!!フリージング・クローでヤクシャに攻撃、ブリージングスラッシュ!!」
氷の爪でヤクシャ切り裂いたフリージング・クロー。そのダメージが氷の礫となってサリエルに降り注いだ。
サリエル/LP1300→1100
ライフを半分以上削り、一気に有利になったシゲル。だがそれでもサリエルは余裕の表情を崩してなかった。
「(…そもそも大前提、なぜあいつはガルドニクスを自分で破壊した…攻撃力の低いヤクシャを破壊してダメージを軽減するならまだしも…)」
「破壊されたヤクシャの効果を発動する、このカードが破壊されたとき、自分の手札からフィールドのモンスターを破壊できる。俺は手札の炎王獣ガルドニクスを破壊する」
破壊されたのはガルドニクス――の幼体だった。しかし、自分の手札のモンスターを破壊する効果、一体何が目的なのか――
「…そうか、それがお前のデッキか…」
「えっ…?」
「…ふっ、やはり頭がいい奴との戦いはいい。そうだ、俺のデッキはカード効果で破壊されることによって効果が発動するデッキだ」
デッキの特性――ネフティスの鳳凰神はともかくほかのカードは同じ名称を持つモンスター。剣闘獣やHEROのような特性を持っていてもおかしくはない。
そしてネフティスの鳳凰神はカード効果で破壊されると次の自分のスタンバイフェイズに特殊召喚され、大嵐と同じ破壊効果を発動する。
「そして手札で破壊されたガルドニクスの効果、デッキから炎王獣ナンディンを特殊召喚する!!」
炎王獣ナンディン/DEF500
「(効果で破壊されたら発動するシリーズ…となるとガルドニクスを破壊したのも何か意味がある。今発動しないとなるとエンドフェイズか次のターンか…)カードを2枚伏せて、エンドだ」
シゲル
LP350 手札0枚
フレイム・ファング/ATK5100→2600 フリージング・クロー/ATK2000
伏せカード2枚
―サリエルのターン―
「俺のターン、スタンバイフェイズに前に破壊されたガルドニクス効果を発動!!このモンスターを特殊召喚する!!」
ガルドニクス/ATK2700
不死鳥のように炎の中から舞い上がったガルドニクス。するとそこを中心に炎の竜巻が巻き上がった。
「ガルドニクスにはもう一つ効果がある。自身の効果で蘇生されたとき、フィールドのこのモンスター以外のすべてのモンスターを破壊する!!」
「なにっ!?」
「だからアグニで破壊して次のターン、シゲルさんのフィールドをがら空きにするためにッ…!!」
「消し飛べ、クリムゾンチャージ!!」
シゲルのフィールドにいた2体の剣闘獣が破壊された。予想外すぎることに苦虫を噛んだような顔のシゲル。一方サリエルはただ淡々と続けていた。
「炎王の孤島の更なる効果、手札の炎王兵インドラを破壊して炎王神獣ライオコックを手札に加える、その後流転の宝札を発動」
流転の宝札、それは万丈目がザフキとの戦いで使用したカードでもある。先ほど手札に加えたライオコックは最上級モンスター、ガルドニクスと同じように蘇生でコストを踏みつぶすつもりなのかもしれない。
「バトルフェイズ、ガルドニクスで直接攻撃だ…ヘルフレイムブレス!!」
「まだだ、ロスト・スター・ディセントを発動!!効果で墓地のシンクロモンスターを守備表示で特殊召喚する…ただし守備力は0となり、レベルは一つ下がる。フレイム・ファングを蘇生!!」
フレイム・ファング/DEF0/☆7→6
再び出現した炎のライオンだったが、ガルドニクスのブレス攻撃を食らって破壊されてしまった。しかし他に攻撃宣言ができるモンスターが――
「手札から速攻魔法、炎王円環を発動!!俺のフィールドのモンスター、ガルドニクスを破壊して墓地の炎属性モンスターのネフティスの鳳凰神を特殊召喚する!!」
ネフティスの鳳凰神/ATK2400
攻撃権が発生したモンスターの出現。となると、最後の問題はシゲルの残り1枚の伏せカードだった。
「さあ、最後のあがきを見せてみろ…ネフティスの直接攻撃!!フェニックス・ストライク!!」
「最後どころか俺の命が尽きるまで足掻いてやるよ!!罠カードシンクロ・スピリッツを発動!!フリージング・クローを除外して素材となったベストロウリィとクロック・リゾネーターを守備表示で召喚する!!」
ベストロウリィ/DEF800
クロック・リゾネーター/DEF600
シゲルの相棒の精霊と時計を背負った悪魔の2体が出現した。しかしどちらを攻撃するのかは明確だった。
「たしか、そのチューナーは1度破壊を無効にする効果があったな…ならばベストロウリィへ攻撃せよ!!」
『ぬおぉ!!』
「ウリィ!!」
火の鳥となったネフティスの攻撃にウリィが耐え切れずに破壊されてしまった。
「バトルフェイズを終了しカードを伏せてターンエンド、流転の宝札の効果で手札のライオコックを捨てる」
サリエル
LP1100 手札0枚
ネフティスの鳳凰神/ATK2400
伏せカード1枚
炎王の孤島
―シゲルのターン―
「くっ…俺のターン!!」
「このスタンバイフェイズ、墓地に存在するガルドニクスが蘇る…そして効果を発動、クリムゾン・チャージ!!」
「だが、クロックは1度だけ破壊されない!!」
しかし、サリエルのフィールドのネフティスが破壊された。おそらく次のターンでネフティスの効果でシゲルのフィールドの魔法・罠を破壊して止めに刺しに来るだろう。
「手札から魔封印の宝札を発動!!カードを2枚ドローする代わりにこのターン、俺は魔法の発動とカードのセットができなくなる!!」
「苦肉の策だな、ネフティスの破壊効果が確定してるとは言えそのようなカードを使うとは…」
「なんとでもいいな、ドロー!!(バウンドか…よし)俺は剣闘獣バウンドを通常召喚!!」
バウンド/ATK1000
本来なら手札を捨てて特殊召喚するモンスターだが、今の状況ではその効果は意味をなさず、もうひとつの効果の方が有効的だった。
「バウンドの効果!!召喚成功時墓地の剣闘獣を除外する、この効果を受けたモンスターはバウンドがフィールドから離れたとき特殊召喚する!!俺はフレイム・ファングを除外!!」
「なるほどな、そしてレベル7のシンクロを行って除外したモンスターを出すというわけか…」
「レベル4の剣闘獣バウンドにレベル3のクロック・リゾネーターをチューニング!!獣の命を喰らいし者よ、今ここに全ての魂を喰らい尽くせ!!」
☆4 + ☆3 = ☆7
「シンクロ召喚、ソウル・ブラック・ドラゴン!!」
『ガアアァァァァ!!!!!』
ソウル・ブラック・ドラゴン/ATK2400
ようやく登場したシゲルのエースモンスター。そしてその横にバウンドの効果で除外された炎の獣が異次元から帰還して並ぶ。
フレイム・ファング/ATK2600
「バトルフェイズ、フレイム・ファングでネフティスの鳳凰神に攻撃だ!!」
「リバースカード発動、くっ…!!」
サリエル/LP1100→900
炎の獣が炎の鳳凰に噛み付いた。これでサリエルのフィールドががら空きとなった――のだが、シゲルはサリエルの不敵な表情が解せなかった。
「ククク…やはり、この程度の希望に貴様は喜ばないか」
「…テメェの計算だろ?ここまでのゲームメイク、そのカードもソウルの攻撃を止めるためのカードなんだろ?」
「そう、そのとおり…だが運が良かったな。俺が攻撃宣言時に発動させていた炎王逆煙は元々と異なる数値のモンスターで攻撃した場合、その攻撃力のダメージを相手に与える効果を持っていた。先ほど…いや、今もその竜の効果を使っていたら貴様の負けだった」
炎王逆煙
永続罠
自分フィールドの炎属性モンスターが攻撃対象になった場合発動することができる。
「炎王逆炎」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できず、発動した場合バトルフェイズを行うことができない。
(1)1ターンに1度、墓地に存在する炎属性モンスターを特殊召喚することができる。
(2)自分フィールドの炎属性モンスターが相手フィールドのもともとの攻撃力と異なる数値のモンスターと戦闘を行う場合、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。
このデュエルは序盤からシゲルのライフを大幅に削られていた。その中での一番の警戒はバーンカードの存在だった。特に炎属性は破壊とバーン効果を持つモンスターが多く存在している。
シゲルの危機察知能力が優れている証拠だった。そして高度な駆け引きにソファの影から見守っていたレイは息を呑んだ。
「だが、炎王逆煙の効果で墓地よりネフティスの鳳凰神を特殊召喚する!!」
ネフティスの鳳凰神/ATK2400
ネフティスの攻撃力はソウルと同じ、バーン効果を発動するソウルでもそれは破壊に成功した時だけ。相打ちでは発動はしない。
「…このままエンドフェイズだ」
シゲル
LP350 手札1枚
フレイム・ファング/ATK2600 ソウル・ブラック・ドラゴン/ATK2400
伏せカード無し
―サリエルのターン―
「さあ、最後のターンだ!!スタンバイフェイズ、炎王神獣ガルドニクスを蘇生!!そしてその怒りの業火ですべてのモンスターを破壊しろ!!クリムゾンチャージ!!」
「手札のブレイク・リゾネーターの効果を発動!!俺のフィールドのリゾネーター、もしくはそれを素材にしたシンクロモンスターを選択してこのターン、破壊を無効にする!!
ブレイク・リゾネーター
星2/地属性/悪魔族/ATK300/DEF100
このカードを手札から捨てて発動する。
(1)自分フィールドの「リゾネーター」モンスター、
もしくは「リゾネーター」モンスターを素材にしたシンクロモンスターはこのターン戦闘・効果では破壊されない。
ソウルを守るかのように2つのハンマーを持った悪魔がガルドニクスの炎を遮った。一方ネフティスの鳳凰神はその炎の中で眠るようにして消滅した。
「ふん…だが前のターンに破壊されたナンディンの効果でカードを更に1枚引かせてもらおう。さあ…貴様のライフは貴様の体が完全に燃え尽きる寸前にまで削れれる」
「ッ…!!」
薄々と感ずいていたが、この試練でシゲルに与えられるダメージは大きさではなく残りライフに比例していた。たとえ1500のダメージと100のダメージと食らっていたとして残りライフが2000の時と1900の時とは天と地ほどの差があった。
それは万丈目の時にも言え、ライフゲインしたあとにダメージを食らっても宝石になることはなかった。それはライフポイントが回復する前よりも減っていなかったからだ。
「さて、バトルフェイズ…恨むなら、その無謀な自分の運命を恨め。炎王神獣ガルドニクスでソウル・ブラック・ドラゴンに攻撃!!」
ガルドニクスがソウルに向かって炎の鞭を振るった。ブレイク・リゾネーターの効果でソウルは破壊されない――だが、ダメージを受けて倒れたソウルを一瞥してガルドニクスは持っていた鞭をシゲルへと投げつけた。
シゲル/LP350→50
「ぐっああああああああああああああああああああっぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――!!!!!!!!!」
「シゲルさんっ、そんな、いやあああああ!!!!!」
炎の鞭で締め付けれれたシゲルは、燃えていた。体中から炎を上げ、煙と共に皮膚と肉が炭化していく。
生きながら焚火の様に、蝋燭のように焼けていた。
そのバンダナも、最近では響が手入れをしていた長髪も、上着も燃料となってその命を燃やすエネルギーとなっていた。
あまりにも悲惨で、そして猟奇的な光景にレイは目を反らして、そして彼女の収縮した胃から汚物を吐き出した。
だが事実は変わらない――シゲルは、生きながらにして、燃やされ、そして――
その名を持った『炭』になった。
シゲル「………………」
あの、そんなに睨まないでください…
釼都「おい、本当に死んだのか…?」
描写のとおり、炭になりました。絵がかけないから挿絵もできないけど…カードで言うと灼熱ゾンビのような状態になっている。
紫苑「焼死というか溶解してるんじゃ…」
ユウ「……………」
あの、ユウ。その、涙目で見ないで。
星光「主要キャラを死なすなんて…」
ありえない話ではないでしょ。GXでも精霊界編で死亡というか消滅するし、ZEXALでも大人数のキャラがいなくなってるから。
星光「最初の方の話になると、離れ離れになったんだ」
十代、星光、ルキは資料室ですね。ちなみに前のあとがきで言っていた情報収集とはこのことです。道中で見つけてもスルーして先に進みそうだから。
ユウ「それとシゲルとレイが一緒に…」
本当は最初、シゲルは落下しない予定だったけど死亡する描写を出したら響が発狂しそうだからやめた。
シゲル「死ぬことは確定だったのか…」
釼都「で、サリエルか…」
ユウ「炎王という炎モンスターを主体にした自分のモンスターを破壊するデッキね…」
ついでにサリエルの初期の名前はガギエルで行こうかと思ったけど諸事情で変えた。
それとどうでもいい情報だけどサリエルはこの聖和の塔では司書兼参謀役でもある。
星光「じゃあ私たちが今いる資料室は…」
サリエルの部屋でもある。
デュエルの解説だけど、することも少ないんだよね。今更【炎王】の回し方とか説明するまでもないような気がする。
ああ、そうそう。ルールはマスタールール2だけどカードの説明は新規に変えることにしました。
釼都「ああ、(1)や「」モンスターっていうふうなやつか」
文字数も抑えられるし見栄えも良かったので。
さて、次回は十代たちの話になるけどまだ全くかけてないから次回予告は無しで。