遊戯王GX~ノーバディ・レコード~   作:銀猫

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Turn101 ガーディアン・ヒーロー

 

 

 

―資料室―

 

「………」

 

「星光?」

 

 

十代、星光、そして目が覚めたルキは資料室の書物を調べていた。この資料室には日本語や英語などの人間界で書かれた書物も多く存在していた。

それぞれが読める文章を翻訳して祈りの内容を調べようとしていた。

 

 

だが、星光はどこか呆然としているように虚空を眺めていた。

 

 

「…いま…嫌な…ううん、気のせいかな」

 

 

星光――ではなく、彼女の中で眠る紫苑が何かを伝えるかのようにしていた。だが、それを伝えたところで十代とルキの不安をあおるかのような結果になるのは目に見えていた。

 

 

―階段―

 

 

「――…釼都っ…」

 

「…ああ、お前も感じてるのならそうなんだろ」

 

 

階段を駆け上がる3人だが先頭を走っていた釼都にユウが小声で話しかけた。その会話が聞こえてないが、響もどこか心配そうな表情をしていた。

 

本能というべきか、感じていたのだ。仲間の危機に、シゲルの命の瀬戸際に。

 

「死ぬんじゃねぇぞ…馬鹿野郎…ッ…!!」

 

―魚の間―

 

 

「うぐわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっあああああああああああああ――――――!!!!!!!」

 

「シゲルさぁぁぁぁん!!!!」

 

 

炎の息を吐き、沸騰した血を吹き出し、悲鳴という叫びを上げるシゲル。ガルドニクスの攻撃で倒れたソウルも、ソファの影で戦いを見守っていたレイも何もできない。

 

やがて、シゲルは――シゲルだった『それ』は倒れた。

 

 

「…多少なりともやるようだが、残念だ。俺の計算通り、ライフを尽きることもなく、貴様は死ぬことになった」

 

 

既に悲鳴を上げることもなく、かつて「獣斬繁」という名前を持っていた『炭』にサリエルは残念そうな声をかけていた。

 

そして思い出したかのようにレイは吐いた。胃の中のものだけではなく胃液も、もう空っぽになっても胃が足りないと言わんばかりに収縮した。

 

レイはその場から動けず、そして声も出せずにただただ見てることしかできなかった。2人のその間、傷つきながらもレイを守るかのようにソウルが睨んで割っていた。

 

 

「…小娘、そして龍よ、恨むなら恨めばいい。だが力なき殺意を向けられたところで死体が増えるだけだ」

 

「ッ…ぁっ…!!」

 

『グァ…!!!』

 

 

今にも襲い掛かりそうなソウルだが、今ここで動けば、レイを守ることができない。この塔もろとも破壊するほどの怒りを持っていながら、彼はシゲルの魂のカードでもある誇りもあった。

 

 

「下手な行動はしないのが身のためだ」

 

「ッ…!!」

 

 

このときほど、レイは無力な自分を呪ったことはなかった。プラネットモンスターとの戦いでVenusに操られたとき、すべてを投げ打って助けてくれた紫苑の役に立ちたくて精霊界へと踏み込んだ。

 

だが、蓋を開ければ何もできてない。シゲルに守られ、震えて敵にただの道に堕ちてる石のような目を向けられる。

 

 

「ま、だ…私も…私も…!!」

 

 

『闘える』そう言いたかった。たとえシゲルのように殺されようとも一矢報いて、いや、足止めにさえなればよかった。ユウ達がツバキという少女のもとにたどり着くまで少しでも――

 

 

 

「ぁ…っ…!!」

 

 

だが、言えなかった。恐ろしかった。逃げ出したかった。目の前の男から、目の前でシゲルが死んだという事実から。

そもそもこの試練の光景をただの小学6年の少女であるレイが見るのが無茶だったのだ。ほんの数日前まではただの11歳だった子供には追いつけてこれない状況だ、思考停止してもおかしくはない。

 

「…戦う気があるのなら相手にしてやる。だがその時は貴様は――」

 

 

その先の言葉を聴けなかった。今意識を持ってる精神が焼き切れそうだったから。俯いて、膝を強く握りしめて堪えているのがやっとだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまで…だ…」

 

 

 

 

 

 

だが、それは聞きなれてきた声――そして、もう聞こえないと思った言葉によって終わった。

 

 

「ば、バカな…なぜ立てる…いや、なぜ生きてる!!」

 

 

サリエルは――レイも恐怖した。先ほどまで、そこに倒れていた――いや、死んでいたはずのシゲルは立っていることにではない。

 

いや、確かにその光景はホラー映画よりも悲惨な状況だった。ゾンビのようにフラフラだが自分の脚で立ち、額を伝う血を拭き払っていたのはおかしいが。

 

 

「…ガン…ガン…バン…バン…うるせぇ…なぁ…!!」

 

「貴様…本当に人間なのかっ…!?」

 

 

傷が――癒えてるのだ。ケロイドのように爛れた腕も、完全に焼けて潰れていた目も、両脚のアキレス健が見えるほどに焼けた肉もまるで逆再生をしているかのように戻り始めているのだ。

 

いや、よくよく考えてみればガルドニクスの攻撃で体の大半が炭化していたのだ。超再生や治療なんてレベルのことじゃない。素人目のレイでもすでに手遅れだというのがわかったのだ。

 

 

 

たとえ、治癒能力がある天属だろうがアンデット族のスキルだろうが――それこそ、死者蘇生を発動してようがそんなことは不可能だった。できないこともないが、そのスピードが異常だったのだ。

 

 

 

「さあ…な…けど、それが何だってんだ」

 

わずか数分で、戦う前と同じ状態まで戻ったシゲル。上着がすでに焼け落ちて、バンダナが炭となり、インナーとズボンがボロボロになってなければ夢だったと、幻覚だったと完結できたのかもしれない。

 

バンダナがなくなった上に彼の特徴であった女性のような長髪も今はエドよりも少し長いぐらいのショートまで燃え尽きていた。だから、彼の眼が、獰猛な獣の瞳がサリエルを睨みつけていた。

 

 

「俺が人間だろうが化物だろうが…そんなもの関係あるか…!!『ユウ』の道を開くのが『俺達』の役目なんだよ!!」

 

「くっ…」

 

「おー、やっと動揺したな。【計算】が外れたみたいだな…じゃあ、こっから先はアドリブ…テメェの台本はここで終わりだ!!」

 

 

シゲル

LP50 手札0枚

ソウル・ブラック・ドラゴン/ATK2400

伏せカード無し

 

 

「なめるなよ、人間風情がァァァ!!!!

 

 

サリエル

LP900 手札1枚

炎王神獣ガルドニクス/ATK2700

伏せカード無し

炎王の孤島

 

 

初めて激昂したサリエル。一方、死にそうに――いや、事実死んでいたはずのシゲルは落ち着いていた。思い出したかのように振り返ってレイを見たシゲル、その頬や額などにはまだやけどの跡があるがそれもなくなり始めていた。

 

 

「悪いな、スプラッターな場面見せて」

 

「えっ、あっ、えっ…!?」

 

 

「まあ、大丈夫だ、俺は生きてるからな」

 

 

そう言って構えなおしたシゲル。それに、いろいろと理解を越えていたが一つだけわかったこと――それはシゲルは死んでなかったのだ。

 

 

 

「メインフェイズ2、墓地に存在するライオコックの効果を発動!!フィールドの炎王の孤島を破壊して手札に加える!!」

 

 

炎王神獣ライオコック

効果モンスター

星7/炎属性/鳥獣族/ATK2500/DEF2000

「炎王神獣ライオコック」の以下の効果は1ターンに1度どちらかしか発動することができない。

(1)このカードが破壊された場合、次のターンのスタンバイフェイズ、自分の墓地のこのカード以外の炎属性・鳥獣族を1体特殊召喚することができる。

(2)墓地に存在するこのカードを手札に戻すことで自分の手札・フィールドの「炎王」カードを破壊することができる。

 

 

「そして炎王の孤島の効果を発動!!」

 

ライオコックが孤島の火山から飛び出してサリエルの手札に加わったと思えば火山が噴火して流れ出した溶岩がガルドニクスを飲み込んだ。

 

 

「孤島は破壊されると俺のフィールドのモンスターをすべて破壊する、そしてガルドニクスの効果で次のターンのスタンバイフェイズに復活して貴様の切り札を破壊してやる!!次が貴様のラストターンだ!!」

 

 

 

サリエル

LP900 手札2枚

モンスター無し

伏せカード無し

 

―シゲルのターン―

 

 

「ああ、ラストターンだ…テメェが次を迎えることはねぇ――!!」

 

そう言ってデッキの上に指をかけたシゲルの目が赤く染まり、指先から光が灯った。そしてまるで武士の居合抜きのように目を閉じてカードを引いた。

 

「スタンバイフェイズ、ガルドニクスを蘇生してソウル・ブラック・ドラゴンを破壊する!!クリムゾンチャージ!!」

 

『ガァァァ!!!』

 

「…ッ……すまねぇ、ソウル」

 

 

ガルドニクス/ATK2700

 

炎に包まれて消えた自分の精霊に謝罪してキッとサリエルを睨んだ。一方のサリエルは自らの勝利を疑わなかった。次のスタンバイフェイズにはネフティスの鳳凰神が復活しシゲルの場が完全にフリーとなる。

 

炎王の孤島を破壊したのもそれが理由なのだろう、もしベストロウリィなどの破壊効果を持つモンスターを出されたら逆にサリエルがやられているからだ。

 

だからこそ、分からなかった。

 

 

「なぜだ…貴様にはもう次はない、なのになぜ諦めない!?」

 

 

シゲルの戦う意志、それがどのような逆境だろうが、死ぬかもしれないとわかっていても尽きることがなかった。 

 

 

「…言ったはずだ、ここから先はアドリブだとな。テメェの計算はすでに狂ってたんだよ…これでな」

 

 

そう言ってシゲルが手札から見せた魔法カード――それにサリエルは目を見開いた。なぜ、そのカードをデッキに投入してるのか――なぜ、それで逆転の手となるのか――

 

 

なぜ、自分が敗北する想像ができたのか――

 

 

 

 

「手札からミラクル・シンクロ・フュージョンを発動!!」

 

 

それは、文字通りの逆転の手。だがそれを使えるのはユウと、今は姿を消したツバキだけだった。だが、それは昔の話だ。

 

 

「ば、かな…!!そのカードは、そのカードを使えるのは…なぜだ…!!」

 

「なぜかって…そりゃ、『使える』からなァ!!」

 

 

そう言ってるうちにシゲルの墓地から3体のモンスターが出現した。眠る魂の咆哮では行えないその召喚条件。

1体の魔龍と2体の獣がサリエルを食い殺さんと睨んでいた。

 

 

「俺はソウル・ブラック・ドラゴンと剣闘獣エセダリ、剣闘獣フレイム・ファングを除外融合!!気高き孤高の魂と、獰猛なる獣の意思よ――ひとつに交わりその高貴なる命を現出せよ!!」

 

3つの魂が除外されてフィールドで一つに交わった。その中から出現したのはソウルのような翼と体を持ち、剣闘龍のような鋭い眼光を飛ばす1体のドラゴンだった。

 

 

「融合召喚、剣闘龍ソウル・オーガ・ドラグーン!!」

 

 

剣闘龍ソウル・オーガ・ドラグーン/ATK2600

 

 

だが、その攻撃力はわずかにガルドニクスよりも低く、このままでは勝つことができない。しかしサリエルは気づいていた、ただ無意味にモンスターを並べるなんてことをシゲルはしないと。

 

 

「ソウル・オーガ・ドラグーンの効果を発動!!俺のライフが相手よりも低い場合、墓地の剣闘獣をデッキに戻すことでその攻撃力分、相手のモンスターの攻撃力をダウンさせる!!」

 

 

剣闘龍ソウル・オーガ・ドラグーン

融合モンスター

星9/闇属性/ドラゴン族/ATK2600/DEF2400

「ソウル・ブラック・ドラゴン」+「剣闘獣」融合モンスター+「剣闘獣」シンクロモンスター

このモンスターは上記のモンスターを素材にした融合召喚でしか特殊召喚できない。

また、上記のモンスターをフィールドからデッキに戻すことで融合召喚することができる。

自分のライフが相手よりも低い場合(2)(3)の効果を1ターンに1度発動することができる。

(1)このモンスターは戦闘では破壊されない。

(2)墓地に存在する「剣闘獣」モンスターをデッキに戻すことで

相手フィールドのモンスターの攻撃力を戻したモンスターの攻撃力分下げる。

(3)このモンスターを除外することで「ソウル・ブラック・ドラゴン」をエクストラデッキから特殊召喚することができる。

(4)相手フィールドの全てのモンスターに攻撃することができる。

 

 

 

「俺はベストロウリィをデッキに戻し、ガルドニクスの攻撃力ダウンさせる、ウリィ!!」

 

『うむ、これが逆転となる一陣の風じゃ!!』

 

ガルドニクス/ATK2700→1200

 

 

ソウルの前に霊体となって表れたウリィの巻き起こした突風でガルドニクスの身に纏っていた炎が吹き飛ばされていた。

 

「そんなっ、バカなッ…!!俺の計算じゃ…」

 

「物語は計算じゃ出来上がらねぇんだよ、アドリブをこなしてこその戦いだ…それによ、何でもかんでも計算できたらつまらないだろ?バトルフェイズ、剣闘龍ソウル・オーガ・ドラグーンで炎王神獣ガルドニクスに攻撃、ビースト・フレアァァ!!」

 

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

サリエル/LP900→0

 

 

漆黒の、ソウルの時とは違う太陽のギラギラしたような炎を受けたガルドニクスはその中に消えた。そしてその炎がサリエルまで飲み込んだ。

 

 

「はっ、はぁっ…ゲホッ…」

 

 

サリエルは倒れた、煙を上げて動かないが死んではないだろう。だがシゲルは摩耗しすぎているのは変わりなかった。

 

例の「特異的な体質」でギリギリ命を繋いでいたとはいえ、体を燃やされたのだ。体力が一気に限界に達していても無理はない。

 

 

『無茶をしたな…』

 

「ああ…まあ、な…」

 

 

実体化したウリィに支えられながらなんとかシゲルは立っていた。かつてないほど、リンディとの戦いでもアイリスとの戦いでもここまで追い込まれたことはなかった。それどころか実体化のダメージが大きくなるブラック・デーモンズ・ドラゴンとの戦いでもライフを残して死ぬ寸前まで行くことはなかった。

 

 

「シゲルさん、少し休んだほうが…!」

 

「ゲホッ、いや…時間がねぇんだ…進まねぇと…っ…!!」

 

 

そう言って奥の扉を見据えたシゲル、だがすぐに支えているウリィを押しのけるとまだ展開しているディスクを構えた。その光景にウリィとレイが驚いているとその意味がすぐに理解できた。

 

 

「あれだけの攻撃でもまだ意識があるのか…!!」

 

「ああ、驚きだ…人間でありながら俺を追い詰めるなんてな」

 

 

ソウルの攻撃で吹き飛ばされ、失神したと思われていたサリエルが起き上がっていたのだ。しかも、シゲルとの戦いのダメージも気にしてないかのように平然としていた。

 

 

「ッ…ソウっ――!!」

 

「その腕では続戦は無理だろ?」

 

 

戦いの最中はアドレナリンで気づいてなかったが、どうやら骨が折れているようだ。指に力が入らず、カードを持つことができない。

 

リンディとの戦いのでジュンコがしたようにレイに手札を持ってもらうという手もあるがサリエルの実力からして危険すぎる方法だった。

 

 

「糞…がッ…!!」

 

「落ち着け、貴様とは戦う気はない…それに――」

 

 

ため息を付くようにして歩いてきたサリエルは指先で、まるで家のインターホンを押すような動作でシゲルの額をついた。

 

 

「――すでに意識をない相手と戦うような趣味は無い」

 

 

シゲルは構えた姿のまま、仰向けに倒れた。それに呆然としていたレイはハッとするとすぐにシゲルに駆け寄った。

 

 

「シゲルさん!!」

 

「静かにしていろ、気を失っているだけだ…あれほどのダメージを食らって平然とした顔をする方がおかしい」

 

 

 

サリエルの言うとおり、静かに息の音が聞こえ、胸も静かに上下していた。安定した息遣いに危険はないと判断して、ホッとしながらレイは着ていた上着をシゲルにかけた。

 

改めてみると彼のジャケットやバンダナは炭となっており、ズボンも煤汚れて裾は完全に燃え落ち、彼の艶やかで女性のようだった黒髪はベリーショートまで焼き切られていた。

 

おそらくユウ達チームメイトが見れば驚き、響が見れば卒倒してもおかしくはない。

 

 

「(それにしても…こいつの再生能力…本当にただの人間なのか…?まるで――)」

 

 

 

少し考えたサリエルはまだ少し警戒して彼を睨んでいるウリィの方に向いた。

精霊の睨みぐらいなら彼もそれほど気にしていないようだった。

 

 

「なあ、そいつは本当に人間なのか?」

 

『…生まれは異界だが、この世界の人間と同じ存在、それがどうかしたというのじゃ?』

 

 

ウリィの返答に「いや」と答えて近くのソファに腰掛けたサリエル。頬杖をついて静かに横になっているシゲルを見つめて考えていた。

 

 

「(まるで、こいつも…天属みたいだな)」

 

 

 

―資料室―

 

「はずれ、か…」

 

「本当に手がかりがあるのかぁ?」

 

 

星光が読んでいた本を積み上げられた山に投げて十代も読んでいた本を置いて背を伸ばしながら愚痴っていた。

 

 

「…? 写真?」

 

 

ルキが調べていたノートのような薄い書物。その中から1枚の写真が零れ落ちた。

 

 

「…誰だろう」

 

「誰って、アンゲロスじゃないのか?」

 

 

十代が持っていた本を読み終えた本の山に追加するとそう聞いた。だがルキは首を横に振ってそれを十代に見せた。そこには5人の男女が映っていた。年齢的には十代達より少し上だが、写真の角が完全に丸みを帯びているため、今現在では何歳なのかわからない。

 

しかし、そこには顔の割れているアラエルや、先ほど出会ったザフキが映っておらずアンゲロスのメンバーではなさそうだった。

 

 

「精霊…っていうより、人間みたいだな…」

 

「精霊界に人間…管理局か…な…!?」

 

 

十代から写真を受け取って星光がその写真を受け取ると、驚いていた。

彼女も見覚えがない、だが紫苑の記憶の中にそれはいた。

 

 

「星光…?」

 

「なんで…この…人が…!?」

 

過去に見たあの写真。そこに写っていた2人の男女よりも若い姿が写し出されていた。そうなればあの疑問も解消されるがそうなれば新たな疑問が浮かび上がる。

 

 

そこまで言って、立ち上がった星光はハッとして振り返った。

 

 

「…2人とも、警戒して」

 

「えっ?」

 

「アンゲロスがいる」

 

 

星光の言葉に十代とルキも構えた。それに少しクスクスとした笑い声が響いた。

そこから出てきたのは袖の無い中国服に蒼のコートを着ている青髪の女性、アラエルの妹、ルヒエだった。

 

 

「あーあ、ばれちゃってるか」

 

「あなたがアラエル?」

 

 

「んーん、私はルヒエ・パズズ、アラエルは姉…ねえ、なんであなた達はここにいるのかな?」

 

 

なぜか、それはルヒエがザフキがやられたのを知らないからだろうか。だが、それとは違う事情のようだった。

 

 

「門番のザフキに落とされてここに迷い込んだ、まあ偶然だね」

 

「落とされて…ああ、サリエルが前に言ってたやつかな…ふうん……まあ、お姉ちゃんにあなた達の相手をするように指示されてるからね。悪いけど祈祷が終わるまでおとなしくしてもらうわ」

 

 

そう言って、かつてアラエルが使っていた鳥の羽のようなディスクを構えた。

 

 

「どうする、星光…」

 

「戦うしかない…けど…」

 

 

アラエルは過去に、あまだアクセルシンクロを所持してないとは言えユウを倒した実力がある。それに今もザフキが万丈目を戦闘不能に追い込む実力があった。

 

ただの人間である十代、本来のデッキではない星光。そして戦いに不向きなルキ。

誰が戦おうが被害が大きいのが目に見えている。

 

 

「んー、じゃあ2人同時にかかってきてもいいよ」

 

「はっ?」

 

「…2VS1の変則バトルロイヤルで勝てると?」

 

 

「ええ…私の試練、受けるかな?」

 

 

そこまでルヒエが勝てると自信があるのか、それか2人の実力を見誤っているのか。

しかし、星光はそれに頷いた。こっちに部がある申し出に断る理由もなかった。

それに十代も同じ考えだった。

 

「後悔しても遅いぞ!!」

 

「ふふ…なら…」

 

 

「待って…十代、このカードをデッキに入れて」

 

「えっ、あっ!!」

 

ルヒエが開始を宣言する前に、星光が2枚のカードを十代に渡した――というか、デッキに突っ込んだ。

 

学園のディスクは紫苑が作り出したオートシャッフル機能の試作品が搭載されており、もちろん十代のディスクもカードが自動で切られる仕組みになっていた。

 

何のカードなのか確認もできてないが、星光には何か考えがあるのだろうか。

 

 

「大丈夫、きっとあなたの天性のドロー運で使う時が来るはずだから」

 

「(信頼されるのはいいけど…だ、大丈夫かぁ…?)」

 

 

星光はどこか十代に対してドライに接している。その彼女が十代を買うのは珍しいが、四の五の言ってられる場合じゃないのは確かだった。

 

「じゃあ、気を取り直して――」

 

「「「デュエル!!」」」

 

 

 

―ルヒエのターン―

 

「私から先行をもらうね。ガスタ・スクイレルを召喚!!」

 

 

身体が翠の毛並みのかわいらしいリスが出現した。レベル2のチューナー、だがこのバトルロイヤルルールでは1ターン目からガンガン攻める利点はあまりない。

 

ガスタ・スクイレル/DEF1800

 

「そしてカードセット、ターンエンド」

 

 

ルヒエ

LP4000 手札4枚

ガスタ・スクイレル/DEF1800

伏せカード1枚

 

 

―十代のターン―

 

「俺のターン!!俺は、手札から融合を発動!!スパークマンとネクロダークマンを手札融合、来い、E・HEROダークブライトマン!!」

 

ダークブライトマン/ATK2000

 

 

十代のフィールドに闇の雷を操るモンスターが登場した。貫通能力と破壊されたときに相手モンスターを破壊するというカウンター効果を持っているモンスターだ。

 

守備力が心許ないが、出鼻をくじくことは十二分にできる。

 

 

「バトルロイヤルルールでは最初のターン、攻撃できない。ターンエンドだ!」

 

 

十代

LP4000 手札3枚

ダークブライトマン/ATK2000

伏せカード無し

 

―星光のターン―

 

「あたしのターン、E・HEROレディ・オブ・ファイアを召喚!!」

 

 

レディ・オブ・ファイア/DEF1000

 

 

紫苑のデッキでデュエルをする星光。本来のデッキではないためか、重要な見落としに気付いてないようだった。

 

 

「カードを伏せてターンエンド、そしてレディ・オブ・ファイアの効果で相手に200ポイントのバーンを――あっ!?」

 

ルヒエ/LP4000→3800

 

十代/LP4000→3800

 

 

レディ・オブ・ファイアの放ったのは2発の火球、ひとつは狙い通りルヒエに、もう一つはなんと十代に向かって放たれた。

 

 

「忘れたのかな?これはバトルロイヤルルール、三つ巴の戦いに味方はいないんだよ」

 

「っ…」

 

そう、たとえ選択しない相手に影響を与えるカードなどは十代にも牙を剥くことになる。アブソルートZeroの破壊効果やGREATTORNADOのパワーダウン効果も例外ではない。

 

「それともう一つ、十代…あなた何か違和感を感じない?」

 

「えっ…?」

 

 

そう、忘れていたが天属の試練があるのだ。しかし、万丈目の時のような明確な変化もない。2人は知らないがシゲルが受けたようなダメージもない。

 

 

「ん~…まあ、そのうち分かるかな?」

 

「…ターンエンド」

 

星光

LP4000 手札4枚

レディ・オブ・ファイア/DEF1000

伏せカード1枚

 

 

―ルヒエのターン―

 

「私のターン、ガスタの神官ムストを召喚!!」

 

 

ムスト/ATK1800

 

 

今度は緑色のローブと杖を持た賢者のようなモンスターが登場した。どうやらルヒエのデッキはガスタという名前カテゴリーのデッキのようだ。だが、まだそのデッキの特色は見えてこない。

 

「レベル4のムストにレベル2のスクイレルをチューニング!!大地の嵐を身にまとい巫女よ、風の歌を聴き迷える者たちを導け!!」

 

 

☆4 + ☆2 =☆6

 

 

「シンクロ召喚、ダイガスタ・スフィアード!!」

 

ダイガスタ・スフィアード/ATK2000

 

 

今度はアマゾネスに近い緑色の民族衣装に身を包んだ少女が登場した。すると彼女は1枚のカードをルヒエに投げ渡した。

 

「スフィアードはシンクロ召喚成功時、墓地のガスタを手札に戻すことができる、ムストを手札に。そして緊急テレポートを発動!!デッキからサイキック族モンスター…ピリカを特殊召喚!!」

 

 

ピリカ/ATK1000

 

 

今度は小さい少女が巨大な鳥に乗ってやってきた。すると墓地より1匹のリスが登場した。

 

「ピリカは召喚・特殊召喚した時墓地のスクイレルを特殊召喚できる!!さらにレベル3のピリカにレベル2のスクイレルをチューニング!!

天空の嵐を吹き起こす怪鳥よ、悪しき力を薙ぎ払え!!」

 

☆3 + ☆2 =☆5

 

 

「シンクロ召喚、ダイガスタ・ガルドス!!」

 

ダイガスタ・ガルドス/ATK2200

 

 

今度は巨大な鳥に少女が乗ってやってきた。しかし攻撃力はダークブライトマンに勝っていながらも、その能力を封じ込めるのは難しい。ダークブライトマンは破壊された時に相手のモンスターを破壊する効果を持つ、たとえ効果破壊だろうが発動し、ルヒエのモンスターを破壊できる。

 

 

「魔法カード、ガルドスの羽根ペンを発動!!墓地のピリカとスクイレルをデッキに戻してダークブライトマンをバウンスする!!」

 

「なにっ!?」

 

 

これではダークブライトマンの効果を発動できない上に十代のフィールドががら空きとなってしまった。スフィアードとガルドスの攻撃を受けてしまえば十代のライフが尽きてしまう。

 

 

「バトルフェイズ、スフィアードで十代に攻撃!!」

 

 

「くっ、うわあああああああああああっ!??」

 

十代/LP3800→1800

 

 

スフィアードの攻撃で十代に突風が突き抜けた。吹雪の中にさらされるような痛みを感じた重大だが、その中で一つの違和感があった。

 

 

「ゲホッ!?ゲホッ、ヒュュ、なん…ゲホッ!!」

 

 

「十代!?」

 

 

十代が蒸せたのだが、呼吸音が時々おかしい。もしかしたらこれが試練なのかもしれないが、だが徐々に十代の顔色が悪くなっていった。

 

 

「気づいたかな?」

 

「息がっ…!!」

 

 

まるで登山をしてるような感覚が十代にあった。息苦しい、体が酸素を求めて暴れている。

 

 

「ええ、これが私の試練。あなたのライフはその周囲の酸素と同じ…ライフが0になったとき、貴方たちは息ができなくなる。けどライフが100にでもなればそれを迎える前に意識を失うわ」

 

 

「(つまり、私たちの酸素がライフとなっている…そして、意識を失うほどの低酸素状態になればライフが残っていても敗北となる…!!)」

 

 

それはシゲルとサリエルの戦いでも同じだった。しかしもともと体力系でもある十代はライフが半分になろうとも立ち上がって構えていた。

 

 

「へぇ…耐えるんだ」

 

「これぐらいへっちゃだぜ…それにライフが残っても負けなんてもったいないぜ!!俺はライフが残ってる限りデュエルを楽しませてもらうからな!!」

 

「けど、それももう終わり…ガルドスで十代に攻撃!!」

 

 

怪鳥に乗った少女が持っていた杖を十代へと向けた。伏せカードもなく、彼のデッキには攻撃に反応して手札から発動するカードもない。

 

 

 

 

「リバース罠、ヒーローバリア!!」

 

 

 

しかし、それに割り込んできたのは星光だった。そう、これはバトルロイヤルルール、星光もルヒエの行動に割り込むことができるのだ。

 

 

「あたしのフィールドにE・HEROが存在するため攻撃を無効にさせてもらうよ」

 

「へへっ…助かったぜ、星光!」

 

「別に、あいつを倒すにはあたしの力じゃ無理だから助けただけ」

 

 

「(仲がいいんだか悪いんだか…)」

 

ルヒエ

LP3800 手札3枚

ダイガスタ・スフィアード/ATK2000 ダイガスタ・ガルドス/ATK2200

伏せカード1枚

 

 

―十代のターン―

 

「じゃあその期待に答えるぜ!!俺のターン、墓地に存在するネクロダークマンの効果を発動!!E・HEROと名のつくモンスターの召喚の生贄を1度だけなくすことができる!!エッジマンを召喚!!」

 

 

エッジマン/ATK2600

 

 

十代のメインデッキでは1番の攻撃力を誇るモンスターだ。するとエッジマンは腕の刃物を構えてガルドスへと駆け出した。

 

 

「バトルフェイズ、エッジマンでダイガスタ・ガルドスへ攻撃!!パワー・エッジ・アタック!!」

 

 

「ふふ…ダイガスタ・スフィアード効果発動!!私のフィールドのガスタモンスターが戦闘を行う場合、私が受けるダメージを相手に反射する!!」

 

「なっ!?」

 

 

エッジマンが破壊したガルドスの羽がルヒエに降りかかるが、スフィアードが巻き起こした竜巻に乗って十代へと返された。

 

 

十代LP1800→1400

 

 

「ぐっ…!!」

 

「十代! っ…なら、スフィアードを破壊するしか…!!」

 

「ところがぎっちょん! ダイガスタ・スフィアードは戦闘で破壊されない効果を持ってる、攻撃しても意味はないよ」

 

 

一瞬十代が心臓を抑えるように苦しむ一方、星光はスフィアードの驚異的な能力に舌打ちをしていた。ダメージ反射モンスターは過去にも見たことがあるがそれをほかのモンスターに付与するなんて聞いたことがないからだ。

 

「ならっ…フュージョン・サポーターの効果を発動する、これは手札から墓地に送ることで融合を手札に加える、ただしこのターン発動することができない…カードを伏せてターンエンド!!」

 

 

十代

LP1400 手札2枚

エッジマン/ATK2600

伏せカード1枚

 

 

―星光のターン―

 

 

「私のターン、戦闘で破壊されないなら効果で破壊するまで!!融合を発動、フィールドのレディ・オブ・ファイア、手札のアイスエッジを融合、凍てつけ!!アブソルートZero!!」

 

アブソルートZero/ATK2500

 

 

氷の属性を持つ戦士が登場した。確かにアブソルートの効果、フィールドから離れたとき相手のモンスターをすべて破壊する効果を持ってすればエッジマンも巻き込まれるがスフィアードを破壊することができる。

 

 

「更にシンクロンを召喚!!」

 

シンクロン/ATK0

 

 

「シンクロンの効果、フィールドのアブソルートのレベルを2つ下げる!!レベル6となったアブソルートZeroにレベル1のシンクロンをチューニング!!我を受け入れし純粋なる心よ、その力を具現化し勝利を導け!!」

 

☆6 + ☆1=☆7

 

 

「シンクロ召喚!!ファントム・ブルース・ドラゴン!!」

 

『キュアアアアアアア!!!!!』

 

 

ファントム・ブルース・ドラゴン/ATK2800

 

 

 

紫苑のデッキのエースであるドラゴンが登場した。だが本当の狙いはそこではなくアブソルートをフィールドから離すことだった。

 

 

「アブソルートZeroの効果、フィールドから離れたとき相手フィールドのモンスターをすべて破壊する!!」

 

「(俺のモンスターも破壊されるけど、この際仕方ない…)」

 

 

 

アブソルートの残氷が鋭い刃となってスフィアードとエッジマンに向かった。十代が心の中でエッジマンに謝罪をするが、その氷は落雷で砕け散った。

 

「カウンター罠、天罰!!手札のムストを捨てて墓地で発動したアブソルートZeroの効果を無効にするよ」

 

「ッ…(墓地のカードを回収する意味もないし、ファントム・ブルースで攻撃しても意味はない…)ターンエンド」

 

星光

LP4000 手札2枚

ファントム・ブルース・ドラゴン/ATK2800

伏せカード無し

 

 

―ルヒエのターン―

 

「私のターン、ガスタ・イグルを召喚!!」

 

 

ガスタ・イグル/ATK200

 

 

 

今度は先ほどのガスタ・ファルコによく似た、一回り小さい鳥がスフィアードの杖に止まった。いつもなら攻撃力の低さに怪訝に思っているだろうがスフィアードでの反射ダメージを狙っているとわかっているためその戦法に危機感があった。

 

 

「バトルフェイズ、イグルでファントム・ブルース・ドラゴンへ攻撃!!」

 

「(自爆特攻…くっ、止める手段が…!!)」

 

 

「ヒーロー・ブラストを発動!!墓地のスパークマンを回収してその攻撃力以下のモンスター、イグルを破壊!!」

 

 

 

すると今度は十代が割り込みをかけた。スパークマンが墓地から登場すると襲来するガスタ・イグルに向かって雷を放った。

 

 

「十代!」

 

「へへっ、さっきのお礼だ」

 

 

「なら、スフィアードでファントム・ブルース・ドラゴンに攻撃!!」

 

 

「ッ…!!」

 

星光/LP4000→3200

 

 

たった800のダメージでは試練の効果は薄い。しかし、正直に言うと星光は危険なことは控えたかった。もし星光が命を落とした場合、紫苑に何が起こるのかわからないのだ。

 

肉体が死んで精神の紫苑がその中に囚われるのか、何事もなかったかのように入れ替わるのか、それとも紫苑も死んでしまうのかわからないのだ。

 

 

 

「カードを伏せてターンエンド」

 

 

ルヒエ

LP3800 手札0枚

ダイガスタ・スフィアード/ATK2000

伏せカード2枚

 

 

―十代のターン―

 

「俺のターン!!融合を発動、手札のスパークマンとフィールドのエッジマンを融合、来い!!プラズマヴァイスマン!!」

 

 

プラズマヴァイスマン/ATK2600

 

エッジマンの巨体を持つスパークマンが登場してその雷でスフィアードを威嚇していた。攻撃力も然ることながらこのモンスターは効果も優秀だった。

 

「プラズマヴァイスマン効果発動!!手札を1枚捨てて相手モンスターを破壊する、スフィアードを選択!!」

 

「っ…!!」

 

 

プラズマヴァイスマンの雷に打たれてスフィアードは甲高い悲鳴とともに爆発四散した。

 

 

「バトルフェイズ、プラズマヴァイスマンの直接攻撃!!プラズマ・パルサーション!!」

 

「リバース罠、ガスタへの祈りを発動!!墓地のガスタの神官ムストとガスタ・ガルドをデッキに戻してダイガスタ・スフィアードを蘇生させる!!」

 

ダイガスタ・スフィアード/DEF1300

 

 

一陣の風が吹くとその風をまとって再びダイガスタ・スフィアードが出てきた。しかも、プラズマヴァイスマンの効果は攻撃表示のモンスターのみ破壊できる。

 

守備表示で出されてはプラズマヴァイスマンの効果は完全に封じられた。

 

「クッ…カードを伏せてターンエンド!!」

 

 

十代

LP1400 手札0枚

プラズマヴァイスマン/ATK2600

伏せカード1枚

 

―星光のターン―

 

「あたしのターン、融合回収を発動、墓地の融合とアイスエッジを回収、そしていま手札に加えた融合を発動!!アイスエッジとフリーズ・レディを融合、吹雪け、ダイヤモンド・ダスト!!」

 

ダイヤモンド・ダストATK2700

 

 

今度は氷の女性像のようなHEROが現れた。そのモンスターが出ると同時に巻き起こった吹雪にスフィアードは片膝を付いた。

 

「ダイヤモンド・ダストの効果、このターンの終了時まで相手フィールドのモンスター効果を無効にする!!」

 

「いいぞ、これであいつを破壊できる!!」

 

 

「バトルフェイズ、ファントム・ブルース・ドラゴンでスフィアードに攻撃!!ミラージュ・バースト!!」

 

 

ファントム・ブルース・ドラゴンの放った虹色の光線、だがそれがスフィアードに当たる前に薄透明な膜に阻まれてしまった。

 

 

「リバース罠、聖なるバリア・ミラーフォース!!攻撃表示のモンスターをすべて破壊する!!」

 

 

『ピュアアアアアアア!!!!!』

 

「ッ…ファン…!!」

 

 

「速攻魔法、フォーム・チェンジを発動!!プラズマヴァイスマンをエクストラデッキに、同じレベルのM・HEROを呼び出す、光牙!!」

 

光牙/DEF1800

 

 

守備表示で登場した光牙はミラー・フォースでは破壊されない。しかし星光のフィールドのファンとダイヤモンド・ダストはそのエネルギーに耐え切れず破壊されてしまった。

 

「ッ…ターンエンド!!」

 

星光

LP3200 手札1枚

モンスター無し

伏せカード無し

 

 

―ルヒエのターン―

 

「私のターン、ガスタ・サンボルト召喚!」

 

 

ガスタ・サンボルト/ATK1500

 

 

スフィアードに付き添うようにして雷をまとった獣が登場した。問題はその攻撃力の合計が星光のライフを超えてしまっているということだった。

 

 

「バトルフェイズ、サンボルトで星光に直接攻撃!!」

 

「きゃあぁぁっ!!」

 

 

星光/LP3200→1700

 

 

攻撃をくらって、そして試練により息が泊まったのか悲鳴が途切れて星光がふらついた。

しかし、それでもルヒエの攻める手は止まらなかった。

 

 

「ダイガスタ・スフィアードで星光に攻撃、これで終わり!!」

 

 

「させるか!!光牙の効果を発動!!墓地のネクロダークマンを除外して攻撃力を1600ポイントダウンさせる!!」

 

 

スフィアード/ATK2000→400

 

 

透明な姿になったネクロダークマンがスフィアードの放った風の弾丸から星光を守るようにして受け止めた。しかし、破裂した衝撃で少しダメージを負ったようだ。

 

 

星光LP/1700→1300

 

「ゲホッ、ゲホッ…!!」

 

「星光!!大丈夫か!?」

 

 

 

咳が止まらなくて息ができない星光。蹲っていたのだが、落ち着いてきたのか立ち上がると辺りを見回してひとつ大きなため息をついた。

 

 

「ええ…大丈夫ですよ」

 

「…え?」

 

 

なんか、口調や雰囲気が違った。というよりも、なんか眠そうな目をして十代を見つめるそれに星光の気配がなかった――

 

 

「あ、紫苑、起きたのか!」

 

「はぁ…あの子も無茶をしますね……で、後でどういうことなのか教えてもらいますからね」

 

「???」

 

 

「へぇ、本当の意思が戻ったのね」

 

 

どうやらダメージで目が覚めた紫苑は星光と強制的に入れ替わったようだ。たしかに、彼女の危惧していたデュエル中の入れ替わり――もしこの時、使われていたのが紫苑のHEROじゃなくて星光のフォーチュン・レディなら危険だったかもしれない。

 

ちなみにルキはどういうことなのか理解してなかった。

 

 

「まあ、いいわ…ここからが本当の試練、ターンエンド」

 

ルヒエ

LP3800 手札0枚

ダイガスタ・スフィアード/ATK400→2000 サンボルト/ATK1500

伏せカード無し

 

 

―十代のターン―

 

 

「俺のターン、よし!グランモールを召喚!!さらに光牙を攻撃表示に変更!!」

 

グランモール/ATK900

 

光牙/DEF1800→ATK2500

 

 

大地の力を持つN、その効果は強力だというのはルヒエでもわかっていた。グランモールはドリルのように肩のパーツを使って地面に潜った。

 

 

「グランモールでダイガスタ・スフィアードへ攻撃!!そして効果発動!!ダメージ計算を行わずにお互いに手札に戻す!!」

 

「やるねっ…!!」

 

 

「まだだ、光牙でガスタ・サンボルトに攻撃宣言、効果で墓地のスパークマンを除外して攻撃力ダウン。さらに光牙は相手フィールドのモンスターの数×500ポイントの攻撃力アップする!!」

 

 

光牙/ATK2500→3000

 

ガスタ・サンボルト/ATK1500→0

 

 

ルヒエ/LP3800→800

 

 

「いったぁ……流石に効いたよ…!!だけどガスタ・サンボルトの効果、バトルフェイズ終了時に自身を除外してガスタの巫女ウィンダを特殊召喚する!!」

 

ウィンダ/DEF400

 

 

一気にライフを削り、スフィアードという驚異もなくなった。しかしそれでも戦線を維持するほどの粘り、まだまだ気を抜くことができない。

 

「ターンエンド」

 

十代

LP1400 手札1枚

光牙/ATK3000→2500

伏せカード無し

 

 

―紫苑のターン―

 

「私のターン、E・HEROブレイズマンを通常召喚!!」

 

ブレイズマン/ATK1200

 

 

フィールドにレディ・オブ・ファイアやヒートと同じ炎のエレメントの戦士が登場した。するとその爆炎の中から1枚のカードが紫苑の手札へと加わった。

 

「ブレイズマンの効果、融合を手札に加えて発動!!手札のクスノペとフィールドのブレイズマンを融合、燃えろ、ノヴァマスター!!」

 

ノヴァマスター/ATK2600

 

 

炎の騎士が登場するが、それで紫苑の手札が尽きてしまった。とはいえ、星光もここまで自分のデッキではない紫苑のカードで善戦したと言える。

 

 

「バトルフェイズ、ノヴァマスターでウィンダへ攻撃!!さらに、戦闘で破壊したときカードをドロー!!」

 

「ッ…けど、ウィンダの効果も発動するよ、このモンスターが破壊されたらデッキからチューナーを特殊召喚することができる、効果でガスタ・ガルドを特殊召喚!!」

 

ガスタ・ガルド/ATK500

 

 

チューナーが再びフィールドに、あくまでスフィアードはエクストラデッキに戻ったに過ぎない。再び召喚されてしまえば大きな痛手となってしまう。

 

「カードをセット、ターンエンド!!」

 

紫苑

LP1300 手札0枚

ノヴァマスター/ATK2600

伏せカード1枚

 

―ルヒエのターン―

 

「私のターン、じゃあこれが最後の試練!!ミラクル・シンクロ・フュージョンを発動!!」

 

「あれは!!」

 

 

そのカードに見覚えがあった。クリアとの戦いで使用してるのを、その効果も2人が使うカードによく似ていた。

 

「墓地のシンクロモンスター、ダイガスタ・ガルドスとガスタの巫女ウィンダを除外してダイガスタ・ヴァルファーレを融合召喚!!」

 

 

ダイガスタ・ヴァルファーレ/ATK0

 

 

墓地の2体のモンスターが合わさると、いつだったかユウが異次元デッキ使用したエアトスに似たガスタの緑の翼を持つスフィアードに似た巫女が舞い降り、手に持っていた錫杖が音を鳴らして揺れる。

 

「ダイガスタ・ヴァルファーレの効果、フィールドのガスタ・ガルドをデッキに戻して相手の手札かフィールドのカードを1枚デッキの一番下に戻す!!十代、あなたのグランモールはデッキで眠ってもらう!!」

 

「しまった!!」

 

 

協力が故に狙われるのは仕方がない。だが、ヴァルファーレの攻撃力が0というのが気になった。もしかすると、あの効果を持っているのかもしれないと紫苑は危惧していた。

 

 

「ヴァルファーレ第二の効果、デッキのガスタ・ファルコを墓地に送ることでこのターン、2回攻撃ができる!!」

 

「攻撃力0の二回攻撃…やっぱり…!!」

 

 

その考えが的中してることを悟った十代。それにルヒエはニコリと笑った。

 

 

「ええ、ヴァルファーレもスフィアードと同じガスタモンスターに反射能力を持たせる効果を持つ、バトルフェイズ、ダイガスタ・ヴァルファーレでノヴァマスターに攻撃に攻撃!!」

 

 

ダイガスタ・ヴァルファーレ

融合モンスター

星10/風属性/サイキック族/ATK0/DEF3000

「ガスタ」シンクロモンスター+「ガスタ」モンスター

このモンスターの(3)(4)の効果は1ターンに1度、自分のメインフェイズにしか発動できない。

(1)自分フィールド上の「ガスタ」と名のついたモンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。

(2)このモンスターは戦闘・カード効果で破壊されない。

(3)自分フィールドの「ガスタ」モンスターをデッキに戻すことで相手の手札・フィールドのカードを1枚選択してデッキに戻すことができる。

(4)デッキに存在する「ガスタ」チューナーモンスターを墓地に送ることで2回攻撃することができる。

 

 

「光牙の効果、エッジマンを除外してノヴァマスターの攻撃力をダウンさせる!!」

 

ノヴァマスター/ATK2600→0

 

 

十代の光牙の効果によってノヴァマスターがバランスを崩してしまいダイガスタ・ヴァルファーレと交差するかたちで攻撃がぶつかりあわなかった。

 

 

「…そして攻撃力0同士では戦闘破壊されない」

 

「…ふーん、ならまずはあなたね」

 

 

攻撃力を持たないヴァルファーレでは攻撃力を失ったノヴァマスターで紫苑に止めを指すことができない、そうなれば残るは――

 

 

「ッ…!!」

 

「ヴァルファーレの2度目の攻撃――光牙の攻撃力を受けて、敗北しなさい!」

 

 

光牙の効果は1ターンに1度のみ、そして伏せカードも存在しない上にネクロダークマンを墓地に送ってもないため十代に打つ手がない。

 

 

 

 

「リバース罠、守るべき者を発動!!」

 

 

しかし、それに紫苑が割り込んできた。すると悪魔の仮面をしたHEROが飛び出して、ヴァルファーレの攻撃を受け止めていた。

 

 

「デッキのネクロ・リターナーを墓地に送り、その攻撃力以下のヴァルウファーレの攻撃を無効にする!!」

 

「…へぇ、だけどわかってるのかな?その効果のデメリットに。墓地に送ったモンスターの攻撃力分のダメージを受けるという意味を」

 

「なにを――!?」

 

ルヒエの言葉に十代がハッとして紫苑を見た。彼女はこの試練のことを知らないのだ。そう、気づいたときには遅かった。

 

紫苑/LP1300→100

 

 

「ぐっ、あっ…――!!」

 

 

胸を抑えて、苦しそうに蹲る彼女は低酸素状態でそのまま気を失ったようだ。だが、顔色が悪い。おそらくライフがまだ残ってるため試練が続いてるのだろう。心なしか、彼女の肺の動きも収まってきているようにも見えていた。

 

 

「紫苑!!」

 

「紫苑さん!!」

 

 

ルキが本棚の影から飛び出すと倒れている紫苑に駆け寄って気道を確保して回復魔法をかけ始めた。

多少はマシだろうが、それでも危険な状態には変わりがない。

 

 

 

「まさか、自分のライフを削って守るってね…まさに守るべき者、かな?」

 

「クッ…(なにが…何が…っ…!!)」

 

 

十代はルキに抱えられてる紫苑を見て奥歯を噛みしめていた。『守るべき者』――それは、自分が紫苑に対して思ってることだった。

かつて、エドに敗れてそのトラウマでカードが見えなくなったことにショックを受けて島を去った時、紫苑を傷つけた。

 

それを知った時、十代は決意した。何があろうとも、絶対に紫苑を守ると。星光に誓った。

 

だが――

 

 

「十代さん…!」

 

 

「…助けれる手はあるよ。貴方がサレンダーすればいい、ライフを残した状態でデュエルを終えれば…もうその子もデュエルができる状態じゃない。そうなれば試練は終わり。だけど、この塔で試練に敗れた者がどうなるのかは…」

 

 

ルキの心配そうな声と、アラエルの言葉に十代は手札のない右手を見た。展開は極めて不利、手札が0枚に伏せカードもない。フィールドにいるのはダイガスタ・ヴァルファーレ相手には相性が悪い光牙。

 

もし、デュエルを投げれば、紫苑は助かるかもしれない。だが、そうすればツバキの下へはたどり着けなくなる。

 

 

星光は彼女が紫苑の名付け親だと言っていた。

 

 

家族も、存在する意味も、心温まる居場所もなかった彼女が初めて与えられた『モノ』

 

それを与えてくれた人だと。だから星光はユウに対して必死に呼びかけていた。なら――

 

 

「俺は…俺は、紫苑と星光の意志を引き継ぐ!!俺のターンでお前を倒して、紫苑を助けて見せる!!」

 

「…なら、やってみなさいよ。口先だけで人は守れない、時に非情になって見捨てないとね……ターンエンド」

 

 

ルヒエ

LP800 手札0枚

ダイガスタ・ヴァルファーレ/ATK0

伏せカード無し

 

―十代のターン―

 

「俺のターン、ドロー!?(なんだ、このカード…!!)」

 

 

大事な大一番のドロー、だが来たのは逆転するためのミラクル・フュージョンなどではない。それどころか見たこともない魔法カードだ。

 

効果を読むと、相手のデッキに依存して場合によっては全く使い道のないカードだ。そんなものを十代はデッキには入れない。

 

 

「…! そういうことか!」

 

「………?(なにを引いたの?あの様子じゃあ逆転のカードでもないみたいだけど…)」

 

 

「手札から魔法カード、スクラップ・フュージョンを発動!!このカードは相手のエクストラデッキのモンスターを選択して素材を相手の墓地から除外して選択したモンスターを俺のフィールドに特殊召喚するカードだ!!」

 

 

アンゲロスのデッキは未知、唯一アラエルのデッキがわかってる程度だがそれでもシンクロ主体のデッキにこのカードは使えない。しかし、これがバトルロイヤルルールなら、だから『彼女』はこのカードを入れたのだ。

 

 

「俺は紫苑の墓地のシンクロンとアブソルートZeroを融合!!来い、ミラージュ・ガール!!」

 

 

「(始まる前に十代のデッキに無理やり入れてた2枚のうちの1枚ね。なるほど、お互いに内容を熟知してるこの場合なら私のデッキでも十分に有効なカードでもある)」

 

 

ミラージュ・ガール/ATK100

 

 

登場した、どことなく紫苑にいた少女。しかしその効果は墓地に特定のカードがあればドローするという融合にしてチューナーのモンスターだ。だが、3種類の内十代は融合しか使ってないはずだった。

 

 

「どうするつもりなのかな?」

 

「決まってんだろ!!ミラージュ・ガールの効果でカードを2枚ドロー!!」

 

「…えっ!? 墓地には融合しかないはず…!!」

 

 

ミラクル・フュージョンも平行世界融合も発動してないはずだ。だが十代のドローにディスクのエラー音がせず、プレイとしては認められていた。

 

 

「俺はプラズマヴァイスマンの効果を発動したとき、平行世界融合をコストとして送っていた!!だから墓地には融合と平行世界融合の2種類のカードがある!!」

 

「ッ…迂闊だった…」

 

 

いつもならネクロダークマンやネクロガードマンなどの墓地発動するカードを送っていたから忘れていたが、別に手札にあっても意味のないカードを墓地に送るのが普通だった。

 

十代はこのドローにかけていたのだ。星光が十代の引きに賭けた、そのドロー運に。

 

 

「(来た、もう一枚のカード!!よし、これで星光がやろうとしたことがわかった!!)手札から死者書生を発動!!紫苑の墓地からファントム・ブルース・ドラゴンを復活させる!!力を貸してくれ、ファン!!」

 

『ピュアァァァァァァ!!!」』

 

ファントム・ブルース・ドラゴン/ATK2800

 

 

これで十代のフィールドには光牙とミラージュ・ガールそしてファントム・ブルース・ドラゴンが並んだ。

 

「最後はこれだ、星光が俺を信じてくれた結果だ!!レベル7のファントム・ブルース・ドラゴンにレベル3のミラージュ・ガールをチューニング!!」

 

「!? あなたのデッキにシンクロモンスターは存在してないはずよ!!」

 

 

ルヒエの言うとおり、十代のエクストラデッキにシンクロモンスターはない。過去に紫苑と組んだ時にファントム・ブルース・ドラゴンを密かに仕込ませていたりしたが今回はそんなことをする時間がなかった。

 

 

「ああ、だからこれを使う!!速攻魔法、エクストラ・セレクト!!ライフを半分払って自分がエクストラデッキからモンスターを出すとき、その対象を相手のエクストラデッキから選択することができる!!」

 

 

エクストラ・セレクト

速攻魔法

自分がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚する時、ライフを半分支払い発動することができる。

(1)その素材で召喚できるモンスターを1体宣言する。

宣言したモンスターが相手のエクストラデッキに存在する場合、素材を墓地に送る事で特殊召喚することができる。

存在しなかった場合、自分フィールドのカードと手札をすべて墓地に送り2000ポイントのダメージを受ける。

(2)この効果で召喚したモンスターは攻撃力が半分となり、エンドフェイズに相手のデッキに戻る。

 

十代/LP1400→700

 

 

「俺は紫苑のエクストラデッキからミラージュ・ファントム・ドラゴンを選択!!」

 

「そんな…相手のシンクロモンスターを奪うカードだなんて…!!」

 

 

紫苑はエクストラデッキを3枚のカードを絶対に変更しない。そのことは十代も知っていた、だからこそ星光はこのカードを十代に託したのだ。

 

 

「高貴なる幻影の魂と孤高なる戦士の意思が交わりし時、その命は光を纏う霧となる!」

 

☆7 + ☆3 = ☆10

 

「シンクロ召喚!!力を貸してくれ、ミラージュ・ファントム・ドラゴン!!」

 

 

ミラージュ・ファントム・ドラゴン/ATK1650

 

 

フィールドに登場したファン。霧を吐き、光を屈折させて佇むその姿は文字通り蜃気楼のような雰囲気だった。

 

しかし、エクストラ・セレクトのデメリット効果で攻撃力が半分となった。これで十代はフィールドに2体のモンスターしか残されてない。

 

 

「ミラージュ・ファントム・ドラゴンの効果発動!!光牙をリリースしてエクストラデッキから選択したモンスターの効果を得る!!M・HERO闇鬼を選択、そしてその効果で攻撃力を半分にして直接攻撃可能となる!!」

 

「1650の半分…825…!!」

 

 

825――たった25ポイント、攻撃力が上回っている。数値ではその僅かな数字だが勝負を決定づけるものとなった。

 

 

「ミラージュ・ファントム・ドラゴンで直接攻撃!!ミラージュ・バースト!!」

 

「きゃああああああああああ!!!!!」

 

ルヒエ/LP800→0

 

 

 

ミラージュ・ファントム・ドラゴンの攻撃を一身に受けたルヒエ。それを見届けることなく十代は倒れたままの紫苑の下へ駆け寄った。

 

「紫苑!!」

 

「くっ…駄目っ、すぐに手当てをしないと…!!」

 

 

回復魔法を当てているルキだが、それでも状態はあまり芳しくないようだった。

すぐにルキは紫苑の気道を確保できるように体勢を変えさせるとすぐにハッとしたように十代を見た。

 

 

「ど、どうかしたのか?」

 

「…十代さん、今、私…回復魔法をかけ続けないといけないんです」

 

 

回復魔法でギリギリ命を繋いでる状態なのだ、無理もない。だがルキの魔力が切れる前に紫苑が自分で呼吸ができるようにしないといけない。

 

 

「魔法に集中しないといけないので…」

 

「…ああ…それで?」

 

「…人工呼吸、お願いします」

 

 

その言葉に、十代はぼーっとしながら紫苑の口を見た。過去に、何度かキスを交わすことがあった。だがそれは自室などの人がいない状態、いるとしてもウルやハネクリボーしか…まあ、人ではないが。

 

つまり、人工呼吸とはいえ、ルキに、人に――キスを見られるというわけだ。

 

 

「っ!」

 

 

ボフッと分かりやすいぐらいに顔が真っ赤になる十代。

ちなみにルキはまだキスどころか異性と手を握るということも未経験な初心だった。

 

もしシゲルや釼都のようなクールな性格だった良かったのだが、乙女でもあるルキはその場面を想像してか、顔が赤い。しかし、それが余計に十代に羞恥心を掻きたてた…まあ、紫苑の命がかかってるとなればそれなんてどうでもいいのだが。

 

「ここここれは紫苑を助けるため、そうだよな!?別にやましいこととかないよな、ルキ!?」

 

「え、ええ…」

 

 

落ち着くためのようだが、動揺しまくりで確認を取る十代。そんな気迫に押されながらもルキは頷いた。

 

そして十代は一つ、唾を飲み込むと――意を決したように紫苑と口を合わせた。

 

 

そして、そんなコントのようなやり取りをルヒエは苦笑いをしながら眺めていた。ミラージュ・ファントム・ドラゴンの攻撃を食らったとは言え、天属の彼女はダメージは少なかったようだ。

 

 

「(…もう、試練は終わって放っておいても回復するのにね)」

 

 

確かに周囲の空気がなくなれば体調を崩したり失神するが、デュエルが終わった時点でそれが解除される。それは万丈目とザフキの戦いでも証明されており、ルキの回復魔法があれば徐々にだが全快へと向かう。

 

 

だが、面白そうだから黙っておこうとルヒエは成り行きを見ることにした。

 




シゲル「俺生きてた!?」
はい、生きてますね
ユウ「そそそうだよね、いくらなんでも主要人物が死亡するなんて…」
釼都「落ち着け」

とは言ってもフレイムゴーストみたいに炭化してたけどね
星光「…けど、生きてた?」
そう、生きてた
シゲル「特異的な体質じゃ説明つかないぞ…」
しかしその原因がなんなのかシゲル自身分かってないです
釼都「前にお前が言っていたシゲルが人間離れするってこれのことか…」
そしてレイにトラウマを植え付けてしまった。


次はルヒエとの戦い…
紫苑「……………」
それは最後で説明するから落ち着け

ユウ「まず2VS1か…」
この作品だとユウ&万丈目VS斎王以来だね。そして星光の危惧してたとおり紫苑が突発的に表に出たせいで状況が把握できてなかった。
釼都「訳も分からずよく戦えてたな…」

星光「そしてルヒエのデッキはガスタ…か…」
リクルートと墓地のカードをデッキに戻して効果を発動するのが多く、そしてスフィアードのバーン効果で1ターンキルが狙えるというデッキ。
ユウ「途中でお互いに守ってなかったら負けてたね」

シゲル「そういえば最初に十代のデッキに投入したカードは」
スクラップ・フュージョンとエクストラ・セレクトです。まあ、何らかの理由でデュエルが不能になった場合の時のために十代に渡してたという感じで、ただ紫苑のエクストラの属性HEROを使うために入れてた感じです。
ユウ「死者蘇生とかでファントム・ブルース・ドラゴンとミラージュ・ガールを揃えないといけないからね」

釼都「それと紫苑は試練について知らなかったのか」
作中であったように紫苑にとっては

レイと響の制服の採寸をする
  ↓
気分が悪いから部屋に戻ろうとして階段に差し掛かる
  ↓
意識がフェードアウト
  ↓
十代と一緒に戦ってる
という理解不能な状況でした。だから試練のことを含めてアンゲロスとの戦いなど全く知らないのでライフをギリギリまで削る戦法を取ってしまいました。


シゲル「……で、紫苑がさっきから反応がないんだが」
紫苑「あうあう~……」
まあ、このネタは次回まで引っ張るので…このまま悶えてもらいましょう
紫苑「あう!?」

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