遊戯王GX~ノーバディ・レコード~   作:銀猫

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Turn105 母の祈り

「エルの正体が、姫野椿!?」

 

 

ユウとエルの戦いの最中、エルの発動させていた聖和の塔―コスモ・タワー―を破壊した途端ユウの記憶が戻ったのだ。

 

 

「どういうことだ…エルが姫野椿?じゃあなんでユウは忘れて…!」

 

「おい、アラエル。お前たちは何を知ってるんだ!」

 

 

シゲルが睨むようにアンゲロスのメンバーを見た。ザフキとサリエルはその睨みをどこ吹く風でガギエルは逆に睨み返していた。

 

ルヒエはその睨みにワタワタしているが、唯一シゲルから名指しされたアラエルは落ち着いて2人を見ていた。

 

 

「…エルが…ツバキが何をしようとしてるのか、知ってるでしょ?」

 

「人間界を崩壊させる祈りをしてるってやつか?」

 

「そう、祈祷の祈り。巫女の力を用いることで神の意思を具現化させるというもの。けどあの子の力ではそれをやるのは難しかった」

 

 

十代の問いにアラエルは目を伏せた。とある事情により、巫女の力が歴代の中で一番弱いというツバキがひとつの世界を崩壊させるほどのエネルギーを生み出すのは難しかった。

 

 

「けど、ひとつだけ方法があった…それが世界からの忘却」

 

「世界からの忘却…?」

 

「なんだよ、それ」

 

 

あまり考えることが得意じゃない十代の言葉に少し小馬鹿にしたようにガギエルが鼻を鳴らした。

 

 

「アイツがエルのことを忘れたら世界が崩壊するんだ」

 

「なんだと!?なんでユウがツバキのことを忘れたら――」

 

「…それが世界からの忘却ってことか?」

 

 

剱都の言葉にザフキは顎をシャクリながら大きなため息をついた。

 

 

「ったく。その無駄に早い回転はあいつ譲りだな」

 

「は?」

 

「お前が察した通り、世界中の存在の記憶から『姫野椿』という存在がいなくなれば世界が崩壊する」

 

 

そう言うとザフキ隣にいたサリエルがシゲルたちの前に手をかざした。するとサッカーボールほどの球体が出現した。

 

 

「これは…地球?」

 

「ああ、そうだ。この地球は繊細なほどのバランスの上で成り立っている。全ての生命の重さが世界のバランスを保つ、言うなれば数グラムの誤差もない天秤のようなものだ。人の死もその誤差を保つために半ば運命として天命、事故、災害として訪れるものだ」

 

「人が死ぬのは当たり前っていうのですか…!?」

 

 

少し紫苑が怒るような口調で睨んだ。だが、ルヒエが宥めるようにして手を振った。

 

 

「バランスを保つために世界が自衛のためにやること…誰にも止められない。人の寿命を人が伸ばすのができないように」

 

「それは…そうだが…」

 

 

万丈目も納得できないようだ。この中では人の死というものに一番遠い存在だがそれゆえに受け入れられないのかもしれない。

 

 

「そして10年前に新たに生まれた【姫野椿】という存在が人間界に現れたことにより世界は一時的に不安定となった。だが、姫野椿も記憶を失い、生まれた赤子と同じ状態だったため、それはすぐに世界と馴染んだ」

 

「…っ…?」

 

 

その時、剱都の脳裏に謎の記憶がノイズのように紛れ込んだ。父親である竜也が見知らぬ白髪の少女をあやす姿だ。

 

しかし、そんなのに剱都は見覚えがなかった。だが、それに気づいてないのかザフキは説明を続けていた。

 

 

「だが、もし…その繊細なバランスの世界からひとりの人間の存在が天命とも、事故とも違う修復できない形で消えてしまったらどうなると思う?」

 

「そんなことができ…そうか!そういうことか!!」

 

「え?なにが?」

 

 

万丈目やシゲル達はわかったようだが十代と響、レイはわからないようだった。もし彼らの推察が当たってるのなら――

 

 

 

「俺たちの中から姫野椿の存在が消えたとなれば、世界がバランスを崩すということか!!」

 

「ああ、そうだ。もともと存在しない姫野椿が存在していたことによるバランスの修正が終わり、そのバランスが再び崩れるのなら人間界は完全に消滅する」

 

 

 

これで納得した。なぜ自分たちが姫野椿を忘れているのか、なぜアンゲロスが世界の矛盾含めて全員の記憶を奪ったのか。

 

 

「じゃあ、この試練の本当の目的って…!!」

 

「そう…最後の鍵…聖牙夕の記憶を奪うことだ。

 

 

ユウ

LP300 手札0枚

聖霊神スピリット/ATK3000

伏せカード1枚

 

 

「そんな…!!」

 

 

 

エル

LP1400 手札2枚

アンゲロス・プリースト-アリエル/ATK0

伏せカード無し

 

 

「まだ私のターンです、ダメージは無効になりましたが私自身の効果はまだ残ってます」

 

「っ…!」

 

 

淡々と進めるツバキ――いや、エル。その姿がユウには違和感があった。あのツバキのデュエルとは思えない冷静ぶりだ。

 

 

「私の効果は特殊召喚に成功したとき、墓地に存在するアンゲロスのレベルを7にして特殊召喚できます、墓地よりサリエルを蘇らせます」

 

 

アンゲロス・プリースト-アリエル

効果モンスター・チューナー

星1/光属性/天使族/ATK0/DEF0

「アンゲロス・プリースト-アリエル」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1)このモンスターが特殊召喚に成功したとき、

墓地に存在する「アンゲロス」モンスターを1体選択して発動する。

選択したモンスターを特殊召喚し、レベルを7にする。

 

 

サリエル/ATK1600/☆4→7

 

 

再び現れたのは特殊召喚したときにドローするモンスターだ。エルはカードをドローするためにサリエルを出したとしても攻撃力がスピリットに上回ってるわけでもないし破壊する方法もない。

 

 

「…レベル…8…!!」

 

「まさか、シンクロ!?」

 

 

「レベル7となったサリエルにレベル1の私自身――アリエルをチューニング、

聖なる光から生まれし混沌の魂よ、我が願いのもとに集え」

 

 

☆7 + ☆1 =☆8

 

 

「シンクロ召喚、カオス・レッド・ドラゴン」

 

『キュアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

 

カオス・レッド・ドラゴン/ATK3000

 

 

フィールドに出現したのはユウもよく知る姫野椿のエースであり、世界の矛盾の5人の繋がりを示すドラゴンの1体だ。

 

 

「あれは…」

 

「覚えが、あるな」

 

 

紫苑たちはそのドラゴンに見覚えがあった。自分の持つドラゴンによく似た雰囲気であり、秘めている力が強力なのを肌で感じていた。

 

 

「カオス…!!」

 

 

「まだ終わりません、このままではあなたを倒すことができない…なら、私の本当の祈りを見せる時です。私のフィールドに…」

 

 

 

手札のカードを見て、エルはチラリとシゲルを見た。このカードも、シゲルからのつながりとして渡されたものだ。それが、ユウの驚異として立ちはだかるのだ。

 

 

「私のフィールドにレベル8以上のシンクロモンスターが存在する場合、手札からこのモンスターを特殊召喚できます。クリエイト・リゾネーターを攻撃表示で召喚します」

 

『グリ!!』

 

 

「グリ!?」

 

 

「リゾネーターって、もしかしてあれはシゲルのカードなのか!?」

 

「…覚えがある、が…霞がかかったように思い出せない。ペガサスから送られた最初のリゾねーターの中にあったが、確かその時俺のデッキの相性的に抜いてたのを誰かが使ったはず…」

 

 

シゲルの高レベルシンクロモンスターは後々で渡されたため、序盤ではそれほどいないのだ。

 

 

「そして魔法カード、祈祷の軌跡を発動します。墓地より再び私自身を特殊召喚します」

 

 

祈祷の軌跡

通常魔法

(1)自分の墓地から「アンゲロス」モンスターを1体選び特殊召喚する。

 

 

アリエル/ATK0

 

 

これでフィールドにレベル8のカオスにレベル3のグリ、レベル1のアリエル。

 

 

「レベル12…パイル・ドラグーン…(いや、あのモンスターは墓地の魔力カウンターを乗るモンスターを呼び出す効果、攻撃力を狙うのならもっと有効的な方法がある…)」

 

 

「私の、アンゲロスとしての祈りを見せます。

レベル8のカオス・レッド・ドラゴンにレベル3のクリエイト・リゾネーターとレベル1の私自身をダブルチューニング!!」

 

 

「チューナーを2体使ったシンクロ!?」

 

「これがあいつの本当の力…!!」

 

 

クリエイト・リゾネーターとアリエルは4つの赤黒いリングに変わり、その中でカオス・レッド・ドラゴンはまるで音色のような雄叫びをあげた。

 

 

「祈祷の願いを捧げ、私の声を聞いてその封印を解き放て!!」

 

☆8 + ☆3 + ☆1 =☆12

 

 

 

「シンクロ召喚!!ディープ・カオス・ドラゴン!!

 

『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』

 

 

フィールドにはカオスの赤黒い体に古代文字のような白い文字が浮かび上がり、より強力な魔力を持つ姿となって出現した。

 

 

ディープ・カオス・ドラゴン/ATK4000

 

 

「ディープ・カオス・ドラゴンは相手の効果を受けず、効果で破壊されません。さらにライフを800ポイント払うことで墓地のモンスターを召喚条件を無視して特殊召喚できます。私の命の一部と引き換えに墓地に存在するハリエルを蘇らせます」

 

「…!」

 

エル/LP1400→600

 

ハリエル/ATK1700

 

 

登場したハリエル、その姿を見てユウは驚いたように目を見開いた。なんで気付かなかったのか、そのことすら忘れてしまっていたのか。

 

 

「ダーク…?」

 

『…思い出したようだな、ユウ』

 

 

それは姫野椿の魔力カウンターデッキのフェイバリットモンスター闇紅の魔導師の精霊ダークだった。

 

 

「ど、どうして…!!」

 

『私もアンゲロスの一人だったというわけだ。そして…エルは私の娘だ』

 

 

「なっ!?」

 

「姫野椿の…エルの父親!?」

 

 

ユウの話では姫野椿は記憶喪失で釼都の父親である竜也に引き取られたはずだ。それなら本来の家族構成も知ってるわけはない。

 

 

「ダークがツバキの父親…!?」

 

『といっても、それは私自身忘れていたことだ。エルと共に人間界に降り立ったときに、目的のために封印した』

 

「っ…!!」

 

 

確かにダークがツバキのことを娘のようにしてることは何度かあったが本当に親子だったというのは驚きだ。

 

 

「ハリエルの効果によりその伏せカードを破壊させてもらいます」

 

「ならそのカードを発動!スター・セパレート!!自分フィールドのシンクロモンスターを除外することで同じレベルになるように墓地のモンスターを選んで特殊召喚する!!」

 

 

スター・セパレート

通常罠

自分のフィールドのシンクロモンスターを1体選択して発動する。

(1)選択したモンスターを除外し、同じレベルになるように墓地からモンスターを特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

 

スピリット・ゾンビ/☆2/DEF700

 

スピリット・ビースト/☆2/DEF500

 

スピリット・ガードナー/☆3/DEF0

 

スピリット・バード/☆3/DEF0

 

 

「すげぇ…」

 

「一気に4体のモンスターを並べた…」

 

 

 

「っ…でしたら、圧倒的な力でねじ伏せるまで…バトルフェイズ、ディープ・カオス・ドラゴンで攻撃、ネクロス・セフィロ・ムーブメント!!」

 

「っ…!!」

 

 

ユウのフィールドの一番端に出現していたスピリット・ビーストが破壊されてしまった。

するとディープ・カオスに記されている文字が一気に光りだした。

 

 

「このディープ・カオス・ドラゴンの効果により戦闘で相手モンスターを破壊したとき全ての相手モンスターを破壊します!」

 

 

ディープ・カオス・ドラゴン

シンクロモンスター

星12/闇属性/ドラゴン族/ATK4000/DEF4000

「カオス・レッド・ドラゴン」+チューナーモンスター2体

(1)このモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊したとき、相手フィールドのモンスターを全て破壊する。

(2)1ターンに1度、自分のライフを800ポイント払うことで墓地のモンスターを1体を召喚条件を無視して特殊召喚することができる。この効果で召喚したモンスターはエンドフェイズにゲームから除外される。

(3)相手のカード効果を受けず、カード効果で破壊されない。

 

 

「なっ…!」

 

「Sinトゥルース・ドラゴンと同じ効果!!」

 

 

響が驚いたように反応した。そう、あのシゲルを苦しめたSinモンスターのエースであるドラゴンと同じ力があるのだ。

 

 

「これで終わりです、すべて、なにもかも!!」

 

「……………」

 

 

 

 

光がディープ・カオス・ドラゴンの前に集まると、巨大な球体となってユウのフィールドに向かって放たれた。

 

ユウのフィールドには既に伏せカードもない。カードを破壊する効果を止めるカードもユウのデッキには入ってない。

 

 

「確かに、終わりだね」

 

「なっ!?」

 

 

だが――球体は半月に切られた。ユウのデッキの内容を知っている一同は驚いていた。

 

 

「なぜ…フィールドには伏せカードがない上にこの状況で墓地から発動できるカードも入ってないはず…!!」

 

「うん、ジェネックスで僕のデッキ調整を一緒にやってた『ツバキ』ならそうだと知ってるね。けど…『エル』は僕の今のデッキを知らない」

 

 

「そうか、あのカードか…釼都」

 

「ああ、アレだ…ったく、本当に来るのが遅いんだよ…」

 

 

ぼやくようだが、安心したように呟く釼都。そう、ユウのフィールドには機械の武士が佇んでいたのだ。

 

 

「マシンナーズ・ブルースの効果を発動!!カード効果で僕のフィールドのカードが破壊されるとき、その効果を無効にして破壊する!!」

 

 

『主の名により、この命変えても使命を果たしますぞ』

 

「ブルース!?」

 

 

 

釼都のデッキの精霊のカードだ。だが、なぜそれがユウのデッキに入っているのか――

 

 

「さあ、ディープ・カオス・ドラゴンは破壊できなくても効果破壊は無効にしてもらった、それとブルースのもう一つの効果でバードを破壊してブルースを召喚するよ」

 

『推して参る!!』

 

 

マシンナーズ・ブルース/DEF100

 

 

「っ…なら、ハリエルでスピリット・ゾンビに攻撃!!」

 

「冷静さを欠いたね、スピリット・ゾンビの効果を発動!!戦闘で破壊されたとき、墓地のスピリットモンスター、神楽を除外してデッキからスピリット・フィッシュを特殊召喚する!!」

 

 

スピリット・フィッシュ/DEF0

 

 

例えスター・セパレートで無効化されてもそれはフィールドでの話、リクルート効果のゾンビの効果が発動するのは墓地だ。

エルはそのことを忘れてしまうほど焦っていた。

 

 

「っ…ターンエンド、そしてハリエルはゲームから除外されます…」

 

 

エル

LP600 手札0枚

ディープ・カオス・ドラゴン/ATK4000

伏せカード無し

 

 

―ユウのターン―

 

 

「ボクのターン!!(よし、いいカードだ)貪欲で無欲な壺を発動!!このターンのバトルを放棄して墓地の種族の異なるモンスターを3体選択してデッキに戻し、カードを2枚ドローする!!」

 

「バトルを放棄って…」

 

「いや、攻撃力4000を超える方法は少ない、チャンスを増やすのならこの手は悪くはない」

 

 

ルキが心配そうだったが釼都の予想のどおり、効果破壊できないディープ・カオスを倒す方法は少ない。効果破壊もブルースを使用したということはもうほぼ残されていないのだ。

 

 

「墓地のビースト、ゾンビ、ガードナーをデッキに戻してカードを2枚ドロー!!カード・ガンナーを召喚!!」

 

 

カード・ガンナー/ATK400

 

 

「あれは、十代のカードだな」

 

 

そう、このカード・ガンナーは十代のだ。十代がアカデミアに来る前からお気に入りでE・HERのサイドデッキに入れていたカードなのだ。

 

「カード・ガンナーの効果、デッキの上から3枚のカードを墓地に送り攻撃力を1500ポイントアップさせる!!」

 

 

カード・ガンナー/ATK400→1900

 

 

攻撃力が上がるも、ディープ・カオス・ドラゴンの半分もない。おそらく狙いは今後のための墓地肥やしだ。

 

 

「そしてレベル3のカード・ガンナーとスピリット・ガードナーにレベル2のスピリット・フィッシュをチューニング!!

大いなる魂よ!砕かれし魂と共に光の風を纏いその身を再び現わせ!!」

 

 

☆3 + ☆3 + ☆2 = ☆8

 

 

「シンクロ召喚、行くよ、スピット・シルバー・ドラゴン!!」

 

『ガァ!!』

 

 

スピット・シルバー・ドラゴン/ATK2500

 

 

フィールドに再びユウのエースが登場した。しかし、ただのスピット・シルバー・ドラゴンではディープ・カオス・ドラゴンを倒すのは不可能だ。

 

 

「カードを伏せてターンエンド!!(今のツバキなら…エルなら、絶対に攻撃を仕掛けるはず…!!)」

 

 

ユウ

LP300 手札0枚

スピット・シルバー・ドラゴン/ATK2500 マシンナーズ・ブルース/DEF100

伏せカード1枚

 

 

―エルのターン―

 

「私のターン、このままバトルフェイズに入りディープ・カオス・ドラゴンでスピット・シルバー・ドラゴンに攻撃!!今度こそ、今度そこ…!!」

 

「墓地に存在するウルクリボーの効果を発動!!このカードの効果でスピットは破壊されない!!」

 

「また…けど、ダメージを受けて終わりです!!」

 

 

そういうが、ユウのフィールドには1枚のカードがある、さきほどの出来事に動揺したのかエルの頭には入ってなかったのだ。

 

 

「リバース罠、おジャマットを発動!!」

 

「よし、守れ雑魚ども!!」

 

『あん、ひどぅいわ~!』

 

 

発動されたのを見て万丈目がガッツポーズをしながら喜んでいた。それに万丈目のデッキからおジャマが出るとそのカードを恨めしそうに眺めていた。

 

 

「このターン受けるダメージを全て0にしてデッキからレベル2以下の獣族モンスターを手札に加える、僕は金華猫を手札に!!」

 

おジャマット

通常罠

相手の攻撃宣言時発動することができる。

(1)このターン受けるダメージを全て0にしする。

(2)デッキからレベル2以下の獣族モンスターを手札に加える事ができる。

 

 

攻撃がなぜかおジャマモンスターに防がれたかと思うとユウのデッキから1枚のカードが手札に加わった。

 

だが、それにより一層エルが動揺している。知っているユウのデッキとまるで違うカード、それもなぜか仲間たちのデッキに入っているカードだった。

 

 

「なんで…なんで…みんなのカードが…なんで…!!」

 

「……ボクに、託してくれたんだ」

 

 

 

―数時間前:研究所―

 

「ああ、そうだ…それと――ユウ、これ持っていけ」

 

 

響とレイが付いてくることを渋々了承したシゲルはデッキから1枚のカードを取り出すとそれをユウに渡した。

 

 

「えっ…でも、このカードは…」

 

「お前が持ってろ、それと、途中で俺たちのことは捨てろ」

 

 

シゲルはそう言うと近くの椅子にどっかり座り、抜いたカードの代わりになるものをサイドデッキから選んでいた。

 

 

「捨てろって…」

 

「…ユウ、今回の作戦の要はお前だ。何があるのかわからないし、俺たちは姫野椿の顔を覚えてない。接触して一番スムーズに事を運ぶことができるのはお前だけなんだ」

 

 

次に釼都も一枚のカード――マシンナーズ・ブルースをユウに手渡した。

 

 

「不本意だが、俺たちがその椿ってのにあっても何もできない。説得しようにも相手のことが覚えてないからな…」

 

 

万丈目はデッキに投入していた中でユウのデッキに合うカードでおジャマットを

 

 

「ああ、きっと俺たちよりもお前の声のほうが届くからな、頼りにしてるぜ、ユウ!」

 

 

十代は幼い頃からのお気に入りでユウの墓地をカードを起点にする戦術に合うカードガンナーを

 

 

「ま、紫苑ならきっとこれを渡すだろうし、しっかりやってね」

 

 

星光は紫苑の代わりにウルクリボーを渡した。

 

 

「みんな…!」

 

「感動する暇があるならデッキを組み直せよ、時間がねぇんだから」

 

 

少しぶっきらぼうにだが、恥ずかしがっているシゲルは悩んだ挙句ソウル・オーガ・ドラグーンを組み込むことにしたようだ。

 

 

―回想終了―

 

「みんながボクに、全部託してくれたんだ!!だから、ボクは諦めない、試練にも、エルにも!!」

 

「っ…永続魔法、シンクロ・チャージを発動!!お互いにモンスターをシンクロ召喚するたびにライフを500ポイント回復する!!」

 

シンクロ・チャージ

永続魔法

(1)シンクロ召喚するたびにライフを500ポイント回復する。

 

 

「ターンエンド!!」

 

 

エル

LP600 手札0枚

ディープ・カオス・ドラゴン/ATK4000

シンクロ・チャージ

 

 

―ユウのターン―

 

「ボクのターン!魔法カード、埋葬呪文の宝札を発動!!墓地の貪欲で無欲な壺、ゼロゼロック、スピリット・ドローを除外してカードを2枚引く!!(この手札…うん、もう、これしかない…)」

 

 

守る戦法を取る方法はもうない。つまりもう攻めるしかない――

 

 

「ボクは、手札のカードを1枚墓地に送ることで装備魔法DDRを発動!!ボクのもとに集え、ウルクリボー!!」

 

『クリ!!』

 

ウルクリボー/ATK300

 

 

ウルクリボーの効果は1度しか発動できない。となると狙いは――

 

 

「レベル1のウルクリボーにレベル1のマシンナーズ・ブルースをチューニング!!

魂の決意が交わりし時、新たな扉の鍵が生まれる!!」

 

 

☆1 + ☆1 =☆2

 

 

「シンクロ召喚、力を貸して、ブラッディ・リゾネーター!!」

 

『フリ!』

 

 

ブラッディ・リゾネーター/ATK1300

 

エル/LP600→1100

 

シゲルから渡されたのは彼のキーモンスターであるブラッディ・ソウル・ドラゴンを召喚するためのシンクロチューナーだった。

 

 

 

「フリ…けど、たとえスピット・クロス・ドラゴンを出したところで私のディープ・カオス・ドラゴンには勝てない!!」

 

「(確かにそうだ、純粋な攻撃力の勝負で上回り、こっちの効果が効かないモンスター…倒す手段は、ひとつだけ…)」

 

 

すると、ユウは祈るように手を合わせた。目をつぶり、祈祷するようにしてる。

 

 

「…なんのつもりなんだ?」

 

「祈ったところで負けることには変わりない、無駄だね」

 

 

十代の言葉にガギエルが吐くようにしていた。

 

 

「ボクは、一度君のことを忘れてしまった。あの時も…名前は覚えていた。だけど君の顔を思い出すことができなかった。だから決意が揺らいでしまった」

 

「…………?」

 

「けど、もう二度と揺らがない…ボクは、刻む。君を守ることを――」

 

 

ゆっくりと目を開けたユウは手札に残されていたモンスターを召喚した。

 

 

「金華猫を召喚、効果で墓地のスピリット・マターを蘇生させる」

 

 

金華猫/ATK400

 

スピリット・マター/ATK100

 

 

「レベル1の金華猫にレベル1のスピリット・マターをチューニング!!

決意の意志、祈りと共に聖なる生命よ、天元せよ!!」

 

 

☆1 + ☆1 =☆2

 

 

 

「シンクロ召喚!スピリット・シンクロン!!」

 

 

スピリット・シンクロン/ATK200

 

エル/LP1100→1600

 

 

 

「シンクロン…!!」

 

「あれがユウの…」

 

「シンクロチューナーか…」

 

 

出現したのはあの時、藤原優介とのデュエルで出そうとしていたモンスターだ。しかし、なぜ今になって召喚できるようになったのか。

 

 

「どうやら新たに決意したみたいだな、エルを…姫野椿を守るということを」

 

「決意って…そう簡単に固めれるものじゃないでしょ」

 

「んー、でもユウの決意は固いみたいだよ」

 

 

アラエルが言うとおりユウの顔には迷いは既になかった。

 

 

「なんで…どうして、またそのモンスターが出せるの…!!」

 

「…さっき、ボクの記憶が戻った時、頼まれたんだ」

 

 

そう言ってユウが取り出したカード、白紙のカードでそれを見たシゲルたちはスピット・クロス・ドラゴンのカードかと思っていた。

 

 

「君を、本当の君を取り戻して欲しいから…だから、頼まれたんだ!!」

 

白紙のカードに力が宿ると光り輝きだした。アクセルシンクロをするのかと思ったが、アンゲロスたちはその力に驚いていた。

 

 

「なんで、あの子がアレを…」

 

「お、おい!それはエルの!!」

 

 

「ユウ、何を出すつもりなんだ…?」

 

 

「あの人は君のためにボクに力を貸してくれた…けど、それは君を倒すためじゃない、君を助けるために」

 

 

 

ユウは目を閉じてそのカードを両手で包み込み、祈った。

 

 

願うのは、愛する少女の幸せ

 

信じるのは仲間の力

 

 

叶えるのは、一つの奇跡

 

 

 

 

 

「レベル8のスピット・シルバー・ドラゴンにレベル2のスピリット・シンクロン、そしてレベル2のブラッディ・リゾネーターをダブルチューニング!!」

 

 

「なっ!?」

 

 

「ユウもダブルチューニングを!?」

 

 

「しかもシンクロチューナーを使った…!?」

 

 

 

そうしてるうちに2体のチューナーは虹色のリングに変わり、その中を潜ったスピット・シルバー・ドラゴンは8つの光となり、一つの姿をかたどった。

 

 

「「祈りが生命を守る力となり、心を映す翼は世界の色に染まる!!」」

 

 

☆8 + ☆2 + ☆2 = ☆12

 

 

ユウの声に重なるように、女性の声が響いた。その声を聞いて、エルの目が見開いた。

 

 

「なんで…!!」

 

「アクセルシンクロ!!」

 

 

「どうして…!!」

 

「集え、コスモ・クロス・ドラゴン!!」

 

 

 

コスモ・クロス・ドラゴン/ATK4000

 

 

エル/LP1600→2100

 

 

フィールドに舞い降りたのは一言で表すと【天使】そのものだった。

 

 

4対の虹色に輝く翼に女性をかたどったような顔つき、優しそうな瞳、そしてアンゲロスをモチーフにしたような槍を手にした人型の龍。

 

スピットの面影を残していながら、まるでカルマやアナトという神のような雰囲気を持つ存在。

 

 

 

『また、会えましたね…アリエル』

 

 

「えっ…」

 

「声…?」

 

 

コスモ・クロス・ドラゴンから発せられたのはスピットの鳴き声ではなく女性の声だった。その声に一同は驚くが――その中で驚いているのはアンゲロスの面々だった。

 

 

 

「おい、誰なんだ?あの声、知ってるのか?」

 

「…忘れられもしないよ…私たちの記憶に間違いないのなら、この声の主は『コスモス』様…私たちが生涯従うことを誓ったお方で…エルの母親だ」

 

「エルの…姫野椿の母親の声が、なんでスピットからするんだ?」

 

 

それが一番の謎だ。そもそもなぜユウはダブルチューニングをするモンスターを持っていたのか。

 

 

「お母様…!」

 

『アリエル、もう、いいのです。巫女としての使命はあの日に終わりました。もうあなたは祈祷の巫女ではないのです』

 

「っ…成し遂げなければいけないんです…私は、なんとしても、私の役目を…じゃないと…じゃないと…!!」

 

 

「ツバキ…」

 

 

まるで、それを成し遂げることが義務のように感じた。おそらくエル自身、分かっていたのだろう、今自分が行ってることを。

 

 

「240年、ずっと…それを成し遂げるためにみんな頑張ってた…後一歩…後一歩なんです…!!」

 

『…ユウ、娘を…あの子を…お願いします』

 

 

『コスモス』の声を聞いて、ユウは頷いた。しかしコスモ・クロス・ドラゴンとディープ・カオス・ドラゴンの攻撃力は互角。

 

 

「スピリット・シンクロンの効果、このモンスターがシンクロ素材となったとき、カードを1枚ドローする!!そして、コスモ・クロス・ドラゴンの効果を発動!!墓地のシンクロモンスターを除外することで相手のライフポイントと同じ数値、自身の攻撃力をアップさせる!!」

 

 

 

コスモ・クロス・ドラゴン

シンクロモンスター

星12/光属性/ドラゴン族/ATK4000/DEF4000

ドラゴン族シンクロモンスター+シンクロモンスターのチューナー2体

このモンスターの(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1)このモンスターはカード効果で破壊されない。

(2)自分のライフが相手より低い場合、墓地のシンクロモンスターを除外することで次の自分のターンのスタンバイフェイズまで相手のライフポイント分、このモンスターの攻撃力をアップさせる。

(3)このモンスターがフィールドから離れたとき、ゲームから除外されているモンスターを1体特殊召喚することができる。

 

 

 

墓地に存在しているスピット・シルバー・ドラゴンが除外されるとコスモ・クロス・ドラゴンの槍に光が集い始めた。

 

 

コスモ・クロス・ドラゴン/ATK4000→6100

 

 

「よし、これで一気にケリをつけることができる!!」

 

「ユウ!!」

 

 

「…手札から永続魔法オーバー・バランスを発動」

 

 

しかし、ユウは攻撃を行わずに引いたカードを発動させた。本来なら相手のコンボを封じるために入れたいたカードのはずだとシゲルは知っていた。

 

 

「ユウ、お前何をするつもりなんだ!!」

 

「ごめん、みんな。だけど…ボクは約束したんだ」

 

 

 

「おい、シゲルどういうことだ、ユウの発動させたカードはなんだ?」

 

 

釼都はユウが何をしたいのか、何を約束したのか知らなかった。しかしシゲルはあの日、紫苑の救出に関わっていたためユウとツバキの会話を聞いていたのだ。

 

 

 

「…オーバー・バランスは自分のターンのスタンバイフェイズにもともとの攻撃力よりも攻撃力が高いモンスターが居る場合、その差の分だけダメージを受けるカードだ」

 

 

オーバー・バランス

永続魔法

(1)スタンバイフェイズ開始時、フィールドに存在するモンスターの攻撃力が元々より高い場合、その分だけダメージを受ける。

(2)相手のターンの場合、この効果は相手にも適用される。

 

 

コスモ・クロス・ドラゴンの攻撃力の差は2100、そして元に戻る前にオーバー・バランスの効果が適用される。つまり――

 

 

「ボクは、これでターンエンド」

 

 

このままエルが何もしなければユウの負けとなるのだ。

 

 

ユウ

LP300 手札0枚

コスモ・クロス・ドラゴン/ATK6100

オーバー・バランス

 

 

「ちょ、ちょっとユウ!!お前、何をしてるんだ!!」

 

 

「とうとう展開について来れなくなって頭がイカれたか?」

 

 

十代とサリエルがユウの行動に驚いているが、ユウはいたって真面目だった。

 

 

 

「何を…このまま私がターンを終えたら、あなたは!!」

 

「そう、終わり…ボクの記憶はなくなり、人間界はツバキが消滅したことによりバランスを崩す」

 

「だったら何故、私が自滅するとでも…」

 

 

確かに、ここまで冷静さを欠くとは言え自滅をすることはなかった。しかもこの場合はゲームエンドというミスに繋がる。

 

そんな行動をエルが取るとは思えない。

 

 

「…約束したから、最後まで君を信じるって。世界が敵になっても、君が裏切っても、君を信じるって」

 

 

初めて紫苑と出会った日、研究所でツバキが裏切ることを断言され、その後空家で休息を取っていた時に言った言葉。

 

何事があろうとも、誰が敵になろうとも、ツバキを信じると。

 

 

それは連斗にも言われた言葉だった。連斗は知っていた、人間界が崩壊する寸前ということを。それは『彼女』から教えられたのだ。

 

 

 

―ユウの記憶が戻る寸前―

 

 

「っ…?ここは…?」

 

 

気が付くと、ユウは浮いていた。連斗と出会った空間に似た場所。

足場がないが無重力状態で浮かぶユウはなぜここにいるのかわからなかった。

 

 

『やっと、声が届きました』

 

「…あなたは?」

 

 

ユウが声に反応して振り返ると、そこにはひとりの女性がいた。モノクルをつけ、手に杖を持ち、目を閉じた女性。どことなく見覚えが有るが、どうしても思い出せなかった。

 

 

『私の名は『コスモス』』

 

「コスモスって…ツバキが持っていた神のカードの?」

 

 

カルマ、アナト、そしてコスモス。

ユウたち3人が管理局から狙われる理由となったカードだ。しかしコスモスのカードだけは眠りについてるはずだった。

 

 

『あなたにお願いがあります』

 

「それよりも、ここはどこ?ボクは確かエルと戦ってたはずだ」

 

 

確かにエルとの戦いの最中、シルバーフォースでロスト・エデンとコスモ・タワーを破壊したところまで覚えている。

 

 

『ここはあなたの深層心理、今私の残された力であなたの心に呼びかけています』

 

「…じゃあ、お願いってのは?」

 

 

心にしては殺風景だが、それは置いておくとしてコスモスの願いというのを聞いてみることにした。もしかしたらなにか状況を変えることが出来るかも知れないからだ。

 

 

『私の力をあなたに託します。その力を用いて、彼女を解放してください』

 

「開放…?」

 

『彼女は幼い頃に背負った巫女の使命に縛られています。自分の心を押し殺し、あの子達のために全てを背負うつもり…けど、それは誰も望んでいない結末が待っています』

 

 

そう言うと、いつの間にかユウの手には一枚のカードが握られていた。スピット・クロスのカードに似ているが、それは違うカードだ。

 

 

「これは…あなたのカードじゃ…」

 

『ええ、ダークが道しるべに残した私のカードです。そのカードに私の最後の力を込めました。貴方の願いを形にする力を…』

 

 

そう言われて、封じられていたはずの力が漏れ出しているのを感じた。しかし、その中に混ざる力に気づいてユウは眉を潜めた。この力はあの時に感じた――

 

 

「まさか、連斗を呼び寄せたのって…」

 

『私です。少しでもあの子を知る人に貴方を奮い立たせてもらいたかったので…』

 

 

それで合点いくことがある。連斗はなにかの目的で時空を飛んでいた、そしてそこで『偶然』にもツバキを探そうとするユウと遭遇し、『偶然』にも連斗がその手がかりを知っており、『偶然』にもツバキが裏切ることを示唆していたという。

 

余りにも出来すぎていると思っていたが、すべてコスモスが裏で糸を引いていたということだ。

 

 

「…わかった、必ずエルを倒す」

 

『いいえ、倒してはいけない…気付かさなければいけないのです。あの子の本質を――偽りの『アリエル・セラフィ』の仮面の下に隠された『姫野椿』という少女のことを』

 

「……えっ…?」

 

 

 

―回想終了―

 

 

「ボクは知ってる、ツバキのことを。ツバキの笑顔を」

 

「…だから、だからなんですか…それで私が止まるとでも…?それで私の使命が失われるとでも言うのですか!!」

 

 

そう叫びながらエルはカードを引いた。

引いたのは攻撃対象を変更するという罠、今現在では特に意味がない。

ディープ・カオス・ドラゴンで墓地のモンスターを出すとしても何もしなければエルの勝ちだ。

 

 

「私はこのまま――」

 

 

そう、勝ちなのだ。

 

 

「このまま…」

 

 

勝てば、どうなる

 

 

「ターンを…」

 

 

すべて、終わる。

 

 

「ターンエ…」

 

 

シゲルから料理を学び、釼都に勉強を教えてもらい、紫苑とデュエルの特訓をして、十代とデュエルをして、万丈目から武勇伝を聞いて、翔の目標を後押しをし、明日香に女性としての磨き方を聞き、ジュンコの恋を応援し、ももえと一緒にみんなを見て微笑む。

 

ジュードにシゲルの昔話を聞いて、雪乃と仲良くおしゃべりをし、如月の取材を受け流して、荒木の照れ隠しに笑う。

 

響の世話をして、レイの学生生活をサポートする。

 

 

そして、ユウと一緒にいる。

 

 

そんな未来が、終わる。

 

 

「……私は…!」

 

 

「ツバキ」

 

 

その一言が言えないエルにユウは微笑んだ。ディスクを構えるのをやめて、自然体となった。

 

ユウは全てを受け入れるつもりだった。

たとえ、このままエルがターンを終えてユウのライフが尽きたとしても恨まず、怒鳴らず、それを受け入れていた。

 

 

「ボクは、君の選択を受け入れる。世界が滅んでも、僕ら裏切ってもボクは君を恨まない」

 

 

「…ユウ…」

 

 

「やっと、普通に名前を呼んでくれたね」

 

 

無意識に、言ってしまったユウの名前。それにユウは微笑んだ。刹那、無限とも思える時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

「でき、ないよ」

 

 

 

 

ディープ・カオス・ドラゴンが右腕に力を込めてコスモ・クロス・ドラゴンに攻撃する体制へと移った。

 

 

「…ディープ・カオス・ドラゴンで…コスモ・クロス・ドラゴンに攻撃…!!」

 

 

ただ、攻撃をした。相手を倒すためではなく、終わらせるために。

 

その攻撃を、コスモ・クロス・ドラゴンは避けようとはせず、受けとめた。エルの背負っていたものを受け止めるかのように。

 

 

 

エル/LP2100→0

 

 

 

『…貴女は、貴女です。しがらみに囚われず、好きな人と過ごしてください』

 

「お母様…!」

 

『貴女の幸せが、私の幸せです。ツバキ、ユウと共に生きてください』

 

 

「……うん、元気でね…お母さん…!!」

 

 

 

残されていた力を使ったのか、再びコスモスは眠りについてしまったようだ。ユウのディスクの上に残されていたコスモ・クロス・ドラゴンのカードは再び白紙となり、力も感じられなかった。




長かった…
ユウ「今年最後でやっとアンゲロス編の終ができたね…」

ツバキ「私もあとがきに復帰になりました」
ついでに作中でふんわりと出てきたことや次の話で色々と伏線を回収するのでキャラ設定、用語集を次の話で一新します。

シゲル「それよりも…ツバキがコスモスの娘…?」
うん、それを含めて次話とキャラ紹介でね。

釼都「ちょっと早いがデュエルの話だが…」
最後はツバキの自滅でエンドですね。本当はあのままユウが攻撃宣言をしたり、ツバキが勝っても記憶を奪わない、またはサレンダーや引き分けなどいろいろなルートを考えてたんですけど最終的にはこれにしました。
紫苑「いろんな終わり方を考えてたんですね」
おそらくこの作品で一番試行錯誤した…
ただどうしても『ツバキがユウと共に生きるという選択をした』っていう終わり方にしたかったので…
それとツバキも『自分から選ぶ』ということにしたかったのでサレンダーか今回の話みたいになった。
シゲル「けどサレンダーは既にアラエルがやったばかりだからな…」
そう、流石に二回連続でその終わり方なのもどうかと思ってこうなりました。

ユウ「あと、連斗が全部知ってた理由もわかったね」
本当にゲストキャラなのに妙な重荷を背負わせてしまいました…
ちなみに次話とその次でちょっと連斗が出る予定です。

そしてユウの力とコスモスの力の融合体、『コスモ・クロス・ドラゴン』
釼都「スピットにシンクロチューナー2体か…」
今後出る予定がほぼないモンスターでもある。
ユウ「えっ、そうなの?」
召喚のためにはどうしてもブラッディ・リゾネーターが必要になるから…新たな決意でスピリット・シンクロンじゃないシンクロチューナーで2体持っているということにしてもいいんだけどそしたらスピット・クロスがでなくなる気がするので…

一方ツバキの新たなモンスターであるディープ・カオス・ドラゴン
釼都「俺たちのドラゴンの新たな姿みたいなものか」
イメージはスカーレット・ノヴァとアンゲロスに相性がいい特殊召喚効果。ミラージュ・ファントムに似てるのはツバキと紫苑が姉妹だからということで。

紫苑「コスモスは、どうなりました?」
再び眠りについたね。


さて、2015年最後の投稿を終えます。
読者の皆様、2016年も『ノーバディ・レコード』をよろしくお願いします!
ユウ「良いお年を!」
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