遊戯王GX~ノーバディ・レコード~   作:銀猫

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※今回はただグダグダと説明をする話です。重要な部分はあとがきで箇条書きで出してます。


Turn106 過去の言葉

 

―祈祷の間―

 

「っ!?」

 

「頭が…」

 

「なんだこれは…!」

 

 

「安心して、祈祷でなくなっていたものが帰っていくだけだから。とは言ってもより一層奪われた記憶が大きいアナタ達には結構苦痛かもしれないけどね」

 

 

アラエルの言うとおり、なんで気付かなかったのかというほどのツバキに関する記憶が戻ってきた。

 

 

「けど、まさかコスモス様がユウの記憶を守ってたなんてね…」

 

「異世界のデュエリストの記憶を奪えたが、あの少年のは無理だった理由がようやくわかったな…」

 

 

ルヒエとサリエルの言葉――異世界のデュエリストでツバキのことを知ってるといえば一人しかいない。

 

 

―異世界:アメリカ―

 

「デス・シンギュラリティ!」

 

「ぐああああ!!」

 

 

連斗/LP900

 

『連斗!!』

 

 

 

自分の世界のために死闘を繰り広げていた連斗。彼もまた、ツバキの記憶を失っていた。だが、この絶体絶命に――運命とも必然とも言えるタイミングですべてを思い出したのだ。

 

 

「……あ」

 

 

エクストラデッキから取り出したのは、いつの間にか紛れ込んでいたと思っていたカード。自分の物語には本来存在しないそのカードだが、こうなることを見越してなのかコスモスが渡したカード。

 

 

「――こんなところで倒れていたらユウたちに笑われるな」

 

 

確かめるように呟いて、そして立ち上がった連斗は目の前にいる強大な闇を相手に立ち向かった。

 

 

『連斗!』

 

 

「俺にはまだまだ大切な人達が残っている!そいつらとまたあの日々を過ごすためにここで負けるわけにはいかない!」

 

彼もまたサレンと共に、また、ツバキとユウに会うために戦い続けるしかないのだ。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

―アカデミア:レッド寮:食堂―

 

 

「痛ぇ…」

 

「そうね…」

 

 

「ほら…2人とも、頭痛薬…」

 

 

荒木と雪乃が頭を抱えていた。というのもアカデミアにいる生徒、職員全員が突然の頭痛に悩まされているのだ。

 

しかし、あの時のユウの叫びを聞いた者はその理由を知っていた。

 

 

「薬で治るとは思えないけど…」

 

「ないよりはマシですぅ…」

 

「うぅ…水ください…」

 

「ほら、しっかりしなさいよ…」

 

 

とはいえ、理由を知っても知らずとも、頭が痛いのには変わりないのだ。

 

 

 

「で、どう考えるんだ?」

 

「…全部終わった、って感じじゃないかな」

 

 

エドの言葉にジュードは水を配りながらそう答えた。ツバキに関する記憶が戻るとなると考えられるのは全て終わったとしか考えられない。

 

 

―祈祷の間―

 

 

「…これで、終わったよ」

 

「……いや、終わりじゃねぇぞ」

 

 

奪った記憶を全て解放し、ツバキは肩を下ろしたがシゲルはそのツバキの頭を掴んだ。

 

 

「えっ…」

 

「……解放して、それで終わりか?」

 

 

「…え、っと…」

 

 

言うべき言葉があるのはツバキも気づいていた。しかし、その言葉を口にしていいのか――なにか、嫌な予感がする。そういえば前にも似たような展開があったような

 

 

「………………」

 

「………………」

 

 

何とも言えない空気がツバキとシゲルの間に流れた。そして周りの全員がその光景を見ていた。

 

 

 

「……ごめんなさい」

 

「――じゃねぇよバカやろうがぁぁぁぁぁ!!!」

 

「きゃああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

アイアンクローで締め上げることにより、孫悟空のように頭に激痛が走った。甲高い悲鳴を上げて泣き叫ぶツバキを見て響とレイはガタガタと震えていた。どうやらトラウマを思い出したようだ。

 

 

 

「痛い痛い痛い!!!」

 

「痛いで済むのか?じゃあもっとやってろうかぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ひいいぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

もはや悲鳴とは言えない言葉に食らったことがないルキやルヒエも恐怖した。ガギエルもザフキの影に隠れてされてもいないのに頭を抱えて震えた。

 

 

「ごめんごめんごめんごめんなさいいいいいいい!!!!」

 

「心配かけてんじゃねぇよ!!」

 

「いやあああああ!!あぁ、おかあさぁぁぁぁん!!」

 

 

なぜか先ほど眠りに就いたコスモスに助けを求めるツバキ、その姿はまさに哀れだった。

 

そしてペイッと投げしてるようにして釼都の前に投げ捨てた。

 

 

「うぅぅ…」

 

「自業自得だ馬鹿」

 

「お兄ちゃんが冷たい…」

 

「こんな時だけ兄と呼ぶな」

 

 

常日頃名前で呼んでるのになぜか今だけ兄と呼ぶことに釼都はため息をついた。一方、立ち上がれないツバキを紫苑が手を貸してなんとか立たせた。

 

 

「こんな時、姉なら叱るのですが私は妹です」

 

「うぅ…紫苑だけが優しい…」

 

「残念ですが、妹だから見捨てさせてもらいます」

 

「味方がいない!」

 

 

世界の矛盾のメンバーからのお仕置きにツバキは膝をついて落ち込んでいた。その姿を見て十代と万丈目は「ツバキってあんなキャラだったか?」と疑問に思ったそうだ。

 

 

「…で、約束だアラエル。全部吐け、お前たちの本当の目的。今回の一件の始まりを」

 

「……そうだね。けどひとつ、今回の一件に世界の矛盾や私たち(アンゲロス)だけじゃない、転生者とエネミーズにも関係してることなの」

 

 

「じゃあ、ジュードたちを呼ばないとね」

 

 

ユウの言葉にサリエルは大きなため息をついた。

 

 

「呼ぶにしてもゲートはどうするんだ?そんな大人数を呼ぶゲートは俺たちには作れない」

 

「………じゃあ「お前は黙ってろ死にぞこない」」

 

 

シゲルが立候補しそうになるが釼都のチョップが炸裂して拒否された。そもそも今朝、致死量の吐血をしてその数時間後に全身を焼かれて生きている方が絶対におかしいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら、ワシが開こうかの」

 

 

『!!』

 

 

 

聞こえてきた言葉に全員が驚いた。いつの間にかそこにいた、久しぶりに見た姿。

 

 

「ワシなら大人数のゲートを開くことができる」

 

 

「…今更、なんの用、カルマ」

 

 

 

生命の神、カルマ。ユウの持つ神のカードの化身であり、そして全てを知りながら姿を消していた存在。長年の付き合いがあるとは言えそんな彼の言動にユウはもう信用することができなくなっていた。

 

 

「時が来た、それだけじゃ」

 

「それだけ?それだけって何?」

 

「おい、ユウ」

 

 

既にユウは限界だった。父、瞬火との交わしたという約束、隠している『ノーバディ』の真相。そして、それを口にしなかった事実。

 

 

「カルマが本当のことを言ってたなら、今回のことが起こらなかったはずじゃないの!!シゲルも死にかけることもなかったし、みんながツバキを忘れることもなかった、響とレイも危険な目に遭うこともなかった!!全部、カルマが話さなかったから起こったことじゃないの!!」

 

「ユウ、そこらへんに…」

 

「よい。事実じゃ、何も言い返すこともしない。しかしの…本当のことを知ってもツバキは同じ道を辿るじゃろう。経過は違っても結果は同じじゃ」

 

 

そう言うとカルマを中心に空間に穴があいた。そして遠くから悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「「「「「「「「「「うわああああああああああああああ!!!!!」」」」」」」」」」

 

 

 

そして穴からジュード、雪乃、荒木、如月、翔、明日香、ももえ、ジュンコ、エド、カイザー、吹雪が落下してきた。

 

 

「いたた…」

 

「もう何よ…」

 

「ってあら、皆さん…」

 

 

落下のダメージがなくなってきて周りを確認して10人は驚いた。特にシゲルを見て

 

 

「シゲル、あんた、何があったの?」

 

「死にかけた」

 

 

見た目もボロボロの上に髪もベリーショートに焼き切られているシゲル、昨日までとまるで違う姿に驚いていたのだ。

 

平然としているがシゲルの言葉に一同は「ああ、またか」と管理局との戦いで唯一大怪我をしたことを思い出していた。

 

 

「って、ツバキちゃんも、どうしたの?その格好」

 

「色々あったの」

 

 

翔も祈祷の巫女の姿のツバキに疑問を思ったのだが、説明するのも億劫になるほど複雑すぎる事情があるのだ。

 

 

「で、俺らが呼ばれた理由はなんだ?」

 

「ちょっとした昔話をね」

 

 

役者が揃ったのか、アラエルは話を始めた。

 

 

「この世界が1枚のカードで生まれた、っていう話は知ってる?」

 

「ああ、ネオスペーシアンから聞いたことがある」

 

 

かつて、破滅の光との戦いで十代が聞いたことがある話だ。そのツテで一同も聞いたことがあるため「なら話は早い」とアラエルは説明する部分を省略した。

 

 

「あなたたちが戦った破滅の光と、十代の持つネオスペーシアンとの優しい闇の戦い。けどね、それは戦いの一部だったのは知ってるかしら?」

 

「戦いの一部?」

 

「どういうことだ?」

 

 

万丈目の言葉と全員の反応にどこから話し始めるのかアラエルは纏まったようだ。

 

 

「『この世界ができたとき、光と闇が生まれた』…それは形容詞だけど、それぞれが意思を持つようになった。破滅の光…またの名を『ルーラー』と優しき闇の『コスモス』様の戦いは世界が生まれてから始まった」

 

 

そう言うと、サリエルが周囲の光景を変えた。

宇宙空間のような光と闇が交じり合う一帯。そこにはおそらく本来の姿のコスモスとかつてのアンゲロスたちの姿もあった。

 

「あれがコスモスの本当の姿…」

 

「うん、僕に話しかけてきたコスモスだ」

 

 

モノクルで、話した時とは違い杖を持たずに目も開けていた。優しそうな微笑みを浮かべながらもその顔は真剣そのもので目の前の光り輝く軍勢を見つめていた。

 

「なっ…」

 

「あの人って…!!」

 

 

コスモスの顔を見て如月と荒木が驚いていた。ジュードも、どこか納得したような顔をしている。

 

 

「知ってるのか?」

 

「前に先輩らに言った、俺らが転生者としてこの世界に来る時に会った女の人だ」

 

 

荒木から転生者について教えてもらった時に言っていた「モノクルをつけた綺麗な女の人」というのはコスモスのことだったようだ。

 

 

「どういうことなんだ?」

 

「後で言うから待ちなさい」

 

 

光り輝く軍勢の中から出てきたリーダーらしき存在の男、その手にあるのは一冊の本だった。

 

 

「あれって…アカシックレコード!?」

 

 

以前、一度だけ目にしたことがある本だ。流石に世界の記録をしている本と名を持つだけあって、その存在感は圧倒的だった。

 

 

「えっ、でも…」

 

 

響が気づいたのは同じ本をコスモスがもっているということだ。

 

 

「アカシックレコードが2冊…?」

 

「本来、アカシックレコードは世界の記録をし、未来を映し出すもののはず…2冊あるのはおかしい」

 

 

カイザーの言うとおり、両方同じ内容が書かれているのならともかく、同じ本が2冊あるというのは不自然だった。

 

 

「…片方はアカシックレコードじゃない。世界の記録から外れた記録…言うなればもしもの記録、それが『ノーバディ・レコード』」

 

「ノーバディ・レコード…存在しない記録…か…」

 

 

シゲルの世界、ニズの言葉の意味だと分かる。もし、ここに来なかったらどうなるのか、片方のアカシックレコードに記されてももう片方に記されていないのならそれだけでノーバディ・レコードということになるのだ。

 

 

「世界を破滅させようとするルーラのアカシックレコード、世界を繁栄させようとするコスモス様のアカシックレコード、どちらも正しく、どちらも間違い。私たちはコスモス様のアカシックレコードを証明するために優しき闇の一員として戦っていた」

 

 

ルヒエの言葉のとおり、デュエルモンスターズのない時代、殺し合いというのが合うような光景が目の前に広がっていた。

 

 

「アカシックレコードに記された世界を破滅させるかも知れない出来事が起こるたびに私たちは戦った。時には勝ち、時には負け…世界は滅亡し、時代は繁栄した…」

 

 

風景が宇宙から地球に変わると恐竜が隕石で滅んでいく様が映し出された。剣山がいると発狂していたかもしれないなと釼都は思っていた。

 

そして次は人間が文明を発展させ、様々な発明をして世界が豊かになっていく風景が出てきた。

 

 

「数百年に一度、戦い、その度にお互いのアカシックレコードどおりの出来事が起こった。だけどルーラーもコスモス様も相手を倒しきることができなかった」

 

 

場面が戦いの後の様子を映し出した。地を這い、力尽きた仲間を見捨てて撤退するルーラー、息も絶え絶えに、目を閉じようとする同胞を抱えて泣くコスモス。

 

「力を取り戻し、仲間を増やし、お互いに戦いあった…拮抗した戦力差はずっと続くと思われていた」

 

「…だが、何かが起こった。それが今回の一件の始まり…だろ?」

 

 

釼都の言葉にアラエルは頷いた。するとサリエルは場面を全て消し、祈祷の間の過去の映像に変えた。

 

 

「コスモス様は生命を繁栄させ、世界を豊かにすることを目的としていた。だけど、同士の中にその考えに反論する者が出てきた…」

 

 

今はない玉座のような場所に座るコスモス、彼女を守るかのように数人のアンゲロスが立ちはだかり、そして対面するように黒いローブの人物がいた。

 

 

『なぜ生命を放す必要があるのです。我らが管理すればより一層の繁栄ができるというのに』

 

『生命を管理するのは神ですらやる必要のないことです。【ダークネス】よ、この話はここまでだ』

 

 

「ダークネス!?」

 

 

その名前に一同は驚いていた。特に明日香と吹雪、カイザー、雪乃の4人はそのローブの人物を睨むように見つめていた。

 

 

「そう、ダークネス…そこにいる天上院吹雪、そして藤原雪乃の兄である優介が関わったダークネスとはこの者のことだ」

 

「ちょ、待て!ダークネスがあんたらのもともとの仲間だっていうのか!?」

 

「違う、あんな奴は仲間じゃない!!」

 

 

万丈目が代表して聞いた。しかしガギエルが鼻息を荒立てながら否定した。

 

 

「ガギエル、落ち着きなさい。話はまだ続くよ」

 

 

そう言うと次はどこかの部屋――おそらく魔法を行使する場所なのだろう。中央には巨大な魔法陣が描かれており、その中に鎖で縛られたダークネスが固定されていた。

 

 

『ダークネスよ、考えは変わらぬか?』

 

『くどい、我々が人間なんぞのために行うのは管理だ』

 

 

『……残念です、ケビン』

 

 

ケビンと呼ばれた青年は魔法陣を作動させるとダークネスは苦しみながらその中に消えていった。

 

 

「ダークネスは反乱を起こす可能性があるとして、封印されることになった。けどもうひとり――ダークネスの思想に賛同した人がいた」

 

 

場面が再び祈祷の間に戻ると今度は先ほどコスモスを守るために立ちはだかったアンゲロスが誰かを拘束していた。

 

『なぜですか…アザゼル…なぜ…』

 

『なぜ?決まっている、あなたのやり方だと繁栄なんて無理だからですわ。管理し、不必要な人間を処分すれば世界がより優秀な人間を生み出す、それになぜ気づかないのです!!』

 

 

長い黒髪の女性がコスモスに何かを訴えかけている。しかし、アンゲロスもコスモスもそれを受け入れていなかった。

 

 

「…聞いてるだけで反吐が出る持論だな」

 

「誰なんっす?あの人は?」

 

エドと翔の言葉にアラエルはチラリとツバキを見た。ツバキは少し悲しそうに頷くだけだった。

 

 

「……コスモス様の妹、アザゼル・リーン・ストラス様。ツバキのとっては叔母にあたる方よ」

 

「ツバキの叔母…!?」

 

 

確かにコスモスに似た雰囲気があり、黒髪ということぐらいしか違いが見つからなかった。しかし、実の妹がそのような事を言うのにコスモスは心を痛めているようだった。

 

 

「ダークネスはアザゼル様の部下でもあった、それに影響されることがあったんだと思う…流石にコスモス様も実の妹を封印することはできず、天属の力を全て封印して異世界へと追放することにした」

 

 

映し出せれた場面はダークネスの時よ同じように鎖で拘束されたアザゼルが魔法陣の中央で消えていく様子だった。

先程と魔法陣の形や色が違うため、異世界への追放だということがわかった。

 

 

「けど、ダークネスもアザゼル様も重要な役割を持っていた…あいた穴を埋めるのは難しくて当時の戦いでは大きなダメージがあった」

 

それは――世界戦争だった。人間同士の殺し合い、国家の繁栄と豪語するが裏で糸を引いていたのはルーラーだったのだ。お互いに殺し合うことでコスモスの目的を壊そうとしたのだ。

 

 

「正直に言うと私たちだけじゃこの戦いに勝つことはできず、コスモス様もやられていた可能性があった」

 

「一体どうしたんだ?」

 

「……人間の中に、私たちと同じ力を持つ存在が現れたのよ。お互いのアカシックレコードにも記されていない、特異点――それを我々は『世界の矛盾』と呼ぶことにした」

 

 

「世界の矛盾…!?」

 

 

 

場面が消え、真っ黒な空間になった。そこにひとりの男性が現れた。

 

 

「えっ…!?」

 

 

ユウ信じられないような顔をし、レイや響を除いたメンバーも驚きを隠せなかった。

 

 

「この人って…!!」

 

「…そうじゃ、そしてその戦いがワシとの出会いでもあった」

 

 

 

カルマがその男性を懐かしむようにして眺めていた。そう――

 

 

 

「父さん…!?」

 

 

 

――聖牙瞬火を、ユウの父親の姿をだ。すると瞬火を中央に、3つの光が現れるとそれも3人の姿へと変わった。

 

その一つは――あの時、エックスの写真で見た瞬火と一緒に映った女性、ユウの母親である聖牙沙奈江だった。

 

 

「母さんも…!?」

 

「お前の母親、聖牙沙奈江は人間界における聖和の塔の力一番引き付ける場所…一言で言うのなら社(やしろ)がある神社の生まれだ。少なからずともコスモス様の力を受け、祈祷の巫女としての力も持っていたのだ。ダブルチューニングができたのもそれが理由だろう」

 

 

それを聞いて一つ、わかったことがある。聖和の塔に入るときに捧げた【ユウの母親の子守唄】というのは何らかの事情で歌を知っていた沙奈江が子守唄に使用したのだということに。

 

 

「お前たちの天属の血も戦争等で行方知れずになったアンゲロスの誰かの血を引き継いでいるのだろう」

 

 

サリエルは扉を開くことができた響と死ぬ寸前になりながらも生き返ったシゲルの出生についてそう考えた。今更調べることなんてできないが。

 

 

「人間と精霊…けど、そんなこと可能なのか?」

 

「……お前は、ユウとツバキが愛し合っているのを否定できるのか?」

 

 

荒木はザフキの言葉に少し思い出しながら『無理』と判断した。あの甘い空気たっぷりの空間を否定するなんてそれこそ神に喧嘩を売るのと同等な気がするのだ。

 

そうしてるうちに残り2つの光も人へと変わった――

 

 

 

「はっ!?」

 

「なんだと…!?」

 

「嘘…!?」

 

 

 

見覚えのない姿、しかし、その中で釼都、シゲル、響だけは驚いていた。見間違いではない、それこそ二度と見ることができないと思っていた相手なのだ。

 

 

 

「親父…!?」

 

「オヤジ!?」

 

「おとーさん…!?」

 

 

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 

『ま、間違いない、左の男は獣斬霧矢…シゲルと響の父親じゃ!!』

 

「右は釼都の実の父親、羽黒竜也だよ」

 

 

 

驚いて反応ができない3人に代わってウリィとツバキが答えた。

 

 

「シゲルたちの父親!?」

 

「言われてみたら確かに似てるっす…」

 

 

サリエルの見せてる幻覚のため、触れることができないがその姿をまた見れて3人は泣いてしまった。特にシゲルは目の前で父親の最後を見ているのだ。

 

 

 

「…悪い」

 

「取り乱した」

 

「構わん」

 

 

釼都とシゲルはなんとか立ち直ったが響はまだ泣いており、レイに背中をさすってもらっている。

 

 

「…で、俺たちの親がそのアンゲロスと同じ力を持った人間だと」

 

「ああ、ルーラーとコスモス様の戦いにより生じた歪より生まれ落ちた人間――それを俺たちは【ノーバディ】と呼ぶことにした」

 

 

ザフキの言葉にユウはハッとしてカルマを見た。あの時、精霊界で療養していたユウが聞いたカルマの呟きというのはこれのことだったのだ。

 

 

「そしてコスモス様はルーラーとの戦いの終焉を彼らに託すことを考え、この聖和の塔で儀式を行った」

 

「…エンディミオンから奪った古文書に書かれてるアレか。けど親父達がそれを受ける初めての被験者になるならあの古文書はなんだ?」

 

 

古文書に書かれている儀式、つまり『真のノーバディ』生み出すためなのなら古文書ができる前にも行われてるはずだった。

 

 

「その古文書が出来上がったのは精霊界で700年ほど前だ」

 

「えっ?ユウ達の両親って700歳?」

 

「そんな訳無いだろ…」

 

 

十代の天然な発言をするがカイザーはため息をついて否定した。いくらなんでも人間がそんな長生きなわけはない。

 

 

「忘れたのか?精霊界と人間界では時間の流れが違うと」

 

「……ああ!そうだ、こっちだと一日が人間界の1時間程度なんだっけ!」

 

 

そう、今だと時間の流れは同じとなったがそれまでズレがあったのだ。そして精霊界で700年というと人間界では25年ほど前だ。それなら時間は合う。

 

 

「なるほどな、それほど前ならあの古文書の風化具合は納得できる」

 

「…話を戻すと、この塔で4人…それとコスモス様に使えていたケビンがノーバディとして力を持った」

 

 

先ほど出た4人の姿の横にひとり、優しそうでありながらしっかりとした決意をした瞳を持つ青年――ダークネスを封印させる時にいた青年が並んだ。

 

 

「ウリィ、覚えがあるか?親父がそんな戦いに参加したことがあるのを」

 

『むぅ…ニズに昔、異変が起こって霧矢が事態の収拾のために旅に出たことがあるが詳しいことは…』

 

 

まあ、普通に考えたら異世界が存在することは信じられないのだろう。シゲルもニズ以外の世界を知らなかったため無理もない。

 

 

「そしてルーラーと戦い、勝利した…けど、完全に倒しきれず5人とも力を失って普通の人間になってしまった。とはいえ、これで数百年はルーラーはまともに動くことができないほどのダメージを負った」

 

 

周囲の空間の画が当時の戦いを映し出した。ルーラーの操る巨大なドラゴン、一方5人は自分のエースだろう、それぞれのモンスターを繰り出していた。

 

 

瞬火がその背に跨り、攻撃を繰り出す混沌帝龍 -終焉の使者-

 

ドラゴンの攻撃が仲間に届かないように沙奈江と共に警戒する裁きを下す者-ボルテニス

 

邪魔をするルーラーの配下を蹴散らす霧矢の剣闘獣ヘラクレイノス

 

死ぬ覚悟で混沌帝龍の前に立ち、攻撃を一身に受ける竜也のマシンナーズ・フォース

 

 

そして――聖和の塔に迫る敵を蹴散らすケビンの火之迦具土

 

 

見知ったモンスターがいる戦いも、最後には混沌帝龍がドラゴンとの一騎打ちを制し、ルーラーは満身創痍の状態で撤退した。

 

 

「仲間も失い、深手を負ったルーラー…そして戦いの影響で人として生きることを強いられるようになった4人。霧矢は自らの世界へと帰り、竜也はルーラーの起こした戦争を止めるために戦いを続けた」

 

 

どういう事情で共闘するようになったのかは不明だが、霧矢はニズの生まれで異世界に来ていたに過ぎなかった。生きていても二度と合うことはない別れ、それはアンゲロスにも悲しい気持ちが生まれたようだ。

 

AW社が生まれた理由もこの戦いにあったのだろう。

 

 

「そして瞬火と沙奈江は夫婦となり、平穏に過ごすことを決めた」

 

 

ユウが生まれ、育ち、別れとなったあの小さい家。今は焼け落ちて何も残ってない。

そこで2人は生活を始めた。

 

 

「精霊界と人間界の時の流れは違う。私たちが1年を生きれば瞬火達はたったの2週間しか過ごしていない、私たちが最後に彼らに会ったのは人間界で16年ほど前…ユウと釼都が生まれたとき」

 

 

そう言うとユウの家に竜也とまだ赤子の釼都がやってきてそこにツバキとガギエルを除いたアンゲロス、そしてノーバディの一人のケビンもいた。

 

 

「…俺ら、赤ん坊の頃に会っていたのか」

 

「全く覚えてないね」

 

 

予想外の接点にユウと釼都が驚いていた。といってもころの頃だと物心がつく前だろう。

 

 

 

「少しだけ一緒にいたけど、3人とも幸せに暮らしているのがわかった…けど、それもすぐに崩れることになった」

 

 

ユウの家の幸せな雰囲気の映像が消えると今度は聖和の塔――先ほど、瞬火たちが最終決戦を行った場所へと変わった。

 

 

『くっ…なんていうことだ…!!』

 

『死ね!』

 

『グァッ!!』

 

 

そこは、まさに地獄絵図だった。見知らぬアンゲロスが襲撃者に襲われ、命を落とした。その光景にレイや響、明日香、ジュンコとももえは青い顔をした。

 

 

「240年前…人間界で10年前にルーラーが襲いかかってきた」

 

「ルーラーって、そう簡単に復活なんて…」

 

 

ユウの言うとおり、あのケガで戦力を再編成するなんて無理だ――ルーラーだけでは。

 

 

『くっ…なぜあなたが…!!』

 

 

場面が祈祷の間に変わると、そこには先ほどユウが召喚したコスモ・クロス・ドラゴンと同じ槍を持つコスモスが応戦していた。その相手は――ダークネスだった。

 

 

「ダークネス!?」

 

「封印されてたはずだろ!!」

 

 

「ええ、封印は内側からだと絶対に解除できないはずだった――内側、だとね」

 

つまり、誰かがダークネスの封印を解いたというわけだ。しかし、アンゲロスはコスモスに忠誠を誓っている、敵になりかねないダークネスを解放する理由なんてないはずだ。

 

 

『ここまで来ると、哀れですね…御姉様』

 

『なっ…!?』

 

 

そこに入ってきたのはつい先ほどまで生きていたであろうアンゲロスの死体を引きずってきたひとりの女性。

 

 

「あいつはアザゼル!?」

 

「そうか…あいつがダークネスの封印を…」

 

 

「そう…アザゼル様は異世界で軍隊を作り上げ、手負いのルーラーと接触して手を組んだ…聖和の塔の構造を知り尽くしているアザゼル様とコスモス様と同等の力を持つルーラーでダークネスを解放した」

 

 

すると、響は震えながらその光景を見ているとあることに気づいた。アザゼルが腕につけたデュエルディスクに刻印されているマーク――

 

 

「あ、あの…なんでアザゼルの腕に時空管理局のマークが…!?」

 

「管理局!?」

 

「まさか、アザゼルが作り上げた軍隊って…!」

 

 

そう、それが真実――破滅の光との戦いは光の結社との接触からではなくこの学園に入った時から始まっていたのだ。

 

 

「【時空管理局創設者】その名前は【アザゼル・リーン・ストラス】…つまり、管理局の実質的なトップがアザゼル様ということ。とは言っても管理局の上層部しかルーラーのことを知らず、一般隊員はただの正義の組織だと思ってるのだろうね」

 

 

ルヒエの言う一般隊員というのはなのは達のことだろう。確かにあのメンバーがこの戦いに参戦する度胸があるとは思えない。

 

 

「そして、聖和の塔はコスモス様が封印することでその時生き残っていた私たちとエルを生かした…その代償としてコスモス様のカードは封印され、アンゲロスは全滅した」

 

 

それだからなのか、社がエンディミオンの近くにでき、そこからしか聖和の塔へとはいれなくなったのだ。

 

 

「そして、ルーラーの標的はノーバディへと向いた」

 

「「「!!」」」

 

 

ユウとシゲル、響には覚えがあった。

 

ずっと謎だった。

 

 

あの時、ユウの家に襲いかかってきた敵とは誰だったのか。なんで沙奈江はユウを逃がすときに魔法のようなものが使えたのか。

 

 

「ユウの家に管理局が襲い掛かり、そして沙奈江はあなたを追ってから逃がすためにわずかに残されていた力で別の場所へと転移させた」

 

 

その日、シゲルの村を襲い、そして攻撃を仕掛けてきた存在はなんだったのか。なぜ霧矢は襲ってきた敵が誰なのか知っていたのか。

 

 

「シゲルの村…ううん、ニズにアザゼル様が攻撃を仕掛けた。霧矢は応戦をし、シゲルを逃がすためにアナト様の力で瞬火達がいる世界へと飛ばした」

 

 

そう、全てつながったのだ。長年の疑問が、押さえ込んでいた殺意が。

 

 

 

「じゃあ…ボクたちの親の敵は管理局であり…ルーラーとアザゼルであるってこと…!!」

 

「…そう、そしてそのことに霧矢は気づいていた。だからあなたにほかの犠牲者が出る前に止めるように言った」

 

「…ん?待て、親父があの時止めろていったのはここにいる響のことだろ?」

 

 

確かに響が管理局で名乗っていたのは『アイリス・イヴ・バラスティア』という名前だ。霧矢はそれに気づいていたためシゲルに止めろと――

 

 

「違う、霧矢はその時響が洗脳されるとは知らなかった。第一に響をアイリス・イヴ・バラスティアとして洗脳する時間もなかったでしょ?」

 

 

言われてみればそうだ。あの日響を見なくなってニズが消滅するまで数時間、その間に霧矢が全てを察する時間もない。

 

 

「アンゲロスには本名ともう一つ、役名が与えられる。例えば俺なら本名のザフキエルと役名であるモラクスでアンゲロスとしての名前は『ザフキエル・モラクス』という風にな」

 

「けどそれがなんだ?」

 

 

確かに名前と役名で別名があるのは不思議ではない。するとツバキは少し、躊躇うようにしていたがダークが一歩前に出た。

 

 

『私の本当の名前はハリエル・ダークレットという』

 

「えっ、でもツバキさんの…アリエルさんの本名って…」

 

 

名乗ったときその場にいたのはユウと響だけ、その2人は知ってるがツバキの名前は『アリエル・セラフィ』だった。

 

 

「…セラフィは役名、本名は…【アリエル・バラスティア】」

 

 

その言葉とともにシゲルはツバキに飛びかかろうとしてダークに押さえ込まれていた。

まるで獣のように目を見開いたシゲルだが、押さえ込まれて落ち着いたのか暴れるのをやめた。

 

 

「…わりぃ、頭の中が真っ白になってた」

 

「理解したか?」

 

 

「ど、どういうことなの?ツバキがユウ達の両親の敵なんて言うんじゃないわよね?」

 

 

ジュンコ達はどういうことなのか理解できなかった。しかし、エドはわかったようだ。

 

 

「…先ほどの話なら、そのアザゼルがツバキの叔母だとすると…リーン・ストラスというのは役名で本名は――」

 

「そう、アザゼル・バラスティア…それが本当の名前」

 

 

先ほどツバキが躊躇ったのは自分がその敵の姪に当たるということだからだ。

 

 

「ごめん…3人とも…」

 

 

「ツバキが謝る必要はないよ!」

 

「う、うん…驚きましたけど…ツバキさんが優しい人ってるのは知ってます。だから、謝らないでください!」

 

 

 

ユウと響はそう言って頭を下げるツバキに言うがただひとり、先ほどダークに押さえつけられていたシゲルは立ち上がると無言でツバキの前に向かった。

 

 

「……アリエル、頭上げろ」

 

「っ……」

 

 

 

名前を、アンゲロスとしての名前を呼ばれて少し震えながらツバキはシゲルの顔を見た。

 

しかし、それが何かに遮られた。

 

 

「えっ?」

 

 

先程も同じようなものに【掴まれ】たような――ああ、そうだ、これはシゲルの手だ。

 

 

 

「で、謝る必要があるのか?」

 

「だ、だって私はアザゼル叔母さまのひにゃあああああああ!!!!」

 

 

答えようとしたツバキだがその言葉が途切れた。やはりというべきか、シゲルがアイアンクローをして締め上げているかだら。それにガギエルやユウはシゲルに飛びかかって止めようとするがサリエルとカイザーに止められた。

 

 

「ごめん、ごめんなさい!!」

 

「そのごめんってのはなんだ?お前の叔母が俺らの親を殺したことか?」

 

「ち、違う!ううん、違わないけど違う!!」

 

 

痛みで若干頭が混乱しているようだった。これでは話ができないと判断したのかシゲルは手を離した。

 

ツバキはその場でうずくまって頭を抱えているがシゲルは大きなため息をついた。

 

 

「お前の叔母がどうだか知らないが、それを俺たちに謝るのは違うだろ?第一お前にどうすることもできなかったんなら仕方ないんだろうが」

 

「で、でも…」

 

「それ以上このことでゴタゴタ言うなら両手でやってやろうか?」

 

 

※今までシゲルは片手でアイアンクローしてました。

 

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

 

「完全にトラウマだな」

 

「そうですわね」

 

 

ジュードとももえの言葉が証明するかのようにレイと響はまた頭を抱えて怯えていた。

 

いや、それだけでツバキの罪悪感を払拭するほどの威力があるのも逆に怖い。

 

 

 

「…話し、続けるね?」

 

 

収拾がつかなくなってきたのかアラエルが苦笑いをしながら続けた。

 

 

「ダークネスとアザゼル様、そしてルーラーの襲撃で聖和の塔は制圧された。けど、コスモス様が最後の力で聖和の塔と同じ力を持つ場所を作り上げ、エルと私たちを転移させた」

 

「じゃあ、ここって正確には聖和の塔じゃないんだね」

 

 

おそらくその複製が不十分のために出入り口が変わったりなどしたのだろう。

 

 

「そして今回の一件を起こすきっかけとなったのはエルが祈祷の巫女としての力を手にしたとき――その力の本質が忘却だった」

 

「ああ、戦いの最中に言ってた崩壊ってやつか」

 

 

「そう、ルーラーの勢力はエネミーズも含めて巨大になってきた…このままじゃこの世界じゃない、ほかの世界にも驚異となってしまう。現にそこにいる3人の世界も滅んでいる」

 

 

「えっ!?」

 

「私の故郷が!?」

 

 

驚くのは如月と荒木だった。ただジュードだけは赤ん坊の頃にこの世界にやってきたため元の世界の記憶なんてないのだ。

 

 

「さっき気になっていたでしょ?なんでコスモス様がなんで転生者とエネミーズのゲームで接触してきたのか…ルーラーの勢力が異世界も襲いかかってそこにいる生命をエネミーズとして従えているの」

 

「あっ!」

 

 

そう言われて如月は気づいた、あの日――自分の弟が倒れた日、謎の襲撃があった。あれがルーラーの勢力が行っていたのだと。

 

ただ荒木は当時木田殺害の罪状で女子少年院に収監されているため外の世界でそんなことがあるとは知らなかった。

 

 

「じゃあ、圭ちゃんが倒れたのも…」

 

「おそらくルーラーの襲撃が原因、言ったように世界は生命のバランスを保とうとする、異世界からの介入なら何があってもおかしくはない」

 

「…じゃあ、エネミーズと戦っても吉家は…生き返らない…?」

 

 

呆然と聞く荒木、彼女は親友を生き返らすために戦っていたのだ。しかし、如月と違い木田に殺された吉家が生き返る可能性があるとは思えない。

 

 

「それは…正直に言うと私たちにもわからない。けどコスモス様がそんな提案をするのも納得できない」

 

「じゃあ、どうなんだ…?」

 

「考えられるのはその吉家さんが殺された原因がルーラーにあるか…別の要因があるのか。少なくともコスモス様が嘘をつくとは思えない」

 

 

しかし、どうも信じられないのか荒木はその場にドサリと座り込んでしまった。信じていたものが違うかも知れないと言われてのだ、無理もない。

 

 

「そっちに関してはこっちで調べてみる。その木田っていうエネミーズが関わってるのなら何か知って――」

 

「木田は死んだ。ゴスペルが接触してきて教えてきやがった」

 

 

精霊界にいたメンバーは知らないが優介の入院している病院にエネミーズが襲撃に来たのだ。その際、ゴスペルが荒木に伝えたのだという。

 

 

「…けど、その木田って人も生きていたんでしょ?もしかしたらこの世界でその吉家ってい人が生きている可能性があってもおかしくはないと思うよ」

 

「…ああ、そうだな」

 

 

確かに木田もそういった現象ではなく荒木が殺したのだ。可能性があると言われて少し立ち直した荒木だが、やはり落ち込んでいるようだった。

 

 

「…それで、アリエルはツバキとして人間界に…」

 

「ええ、ほかの世界を守るためにこの世界を崩壊させることを考えた。けど…私たちも、エルも、最善策じゃないことぐらいわかってたのにね」

 

 

アラエルの自虐するような笑み、だがそこに至るまでに何度も葛藤し、何度も論議し、何度も悩んだのだろう。

 

 

「まだ教えてもらってないことがあるよ」

 

 

そう言うとユウはずっと自体を見守っていたカルマの方を見た。

 

 

「カルマ、これだけでいいから教えて。父さんとの約束って何?」

 

「…瞬火は分かっていたのじゃ。ノーバディの力を失った自分や沙奈江ではお前を守ることができぬ。釼都はアイオーンがついていたがコスモスに万が一があった場合、誰もお主を守れない。だからノーバディとしての力が覚醒するまで守ってほしいとな」

 

「……父さん、らしいね」

 

 

ほかの親子に比べてユウと瞬火が一緒にいた時間は短い、しかしその性格は知っていた。何しろ自分の父親だ、自分が守れないならほかの人の手に縋る、自分と同じだと。

 

 

「ちょっといいか、俺がアイオーンに出会ったのは一年修行の時が初めてだぞ。どこかで見守っていたのか?」

 

「なんじゃ、気づいておらんかったのか…アイオーン、見ておるのだろう!」

 

 

カルマの言葉に反応するかのように近くに『ゲート』が開いた。一同はそこからアイオーンがやってくるのだと思っていたが違った。

 

 

「………はっ!?」

 

「お呼びでしょうか、カルマ様」

 

 

「ふん、竜也の元にいた頃に比べてしっかり板に付いたの」

 

 

「な、ななな!?」

 

「おいおい…そりゃありか…?」

 

 

釼都が驚いて言葉を失うのも無理はなかった。

 

なぜ――ゲートからやってきたのは羽黒家執事であり、今現在AW社を纏め上げている山本なのだろうか。

 

 

「や、山本!?お前がアイオーン!?」

 

「ほっほっほ…――全く気付かなかったね」

 

 

山本の姿がぶれたと思ったらそこにいたのはアイオーンだった。まさか生まれてくる前から父親に仕えて、今となっては重要な腹心である老人が神だということには釼都は言葉を失った。

 

 

「…俺、神を顎で使ってたのか…」

 

「いやいや、こっちはなかなか楽しくやらせてもらったよ」

 

 

これでひとつだけわかったことがあった。釼都のエンシェントモンスターはアイオーンの力を受け継いで具現化させたものだ、しかしなぜ彼がここまで自分に肩入れするのか。

 

それは竜也から釼都を守ってほしいという願いがあったからだ、彼の願いでアイオーンの力がエンシェントモンスターとなったのだろう。

 

 

 

―アカデミア:校長室―

 

「…迷惑をかけて、申し訳ないです」

 

「うむ」

 

 

試練を終えて、【真のノーバディ】となった一同と帰還したツバキ、同行した十代と万丈目は精霊界の一件を報告していた。

 

 

「…しかし、無事で良かった。そこの2人も」

 

「「………はい」」

 

 

鮫島校長の目線の先には小さくなったレイと響。ほかのメンバーと違い、自衛の術を持たず、大徳寺の静止を振り切ったのだ。

 

 

 

「まあ、校長、無事だったからそこまでにして…」

 

「むう…」

 

「お兄ちゃん…」

 

「シゲルさん…」

 

 

かばったシゲルにキラキラ目線を向ける響とレイ。

 

 

 

「このあと、みっちり俺と釼都で扱きますから」

 

「「……………」」

 

 

指をゴキゴキ鳴らす修羅の姿にさらに絶望して2人は沈んだ。流石にこの2人からお仕置きを受けるとなると逆に哀れに思えてきた。

 

 

「えっと、校長先生、それでツバキは…」

 

「人間ではなく、精霊と…にわかに信じがたいことですが君たちの目を見てると嘘をつくようには見えませんね」

 

 

すでにツバキの出生の秘密や本名は話した。ツバキが消えた理由と全員の記憶がなくなった理由を話すうえで必要なことのため仕方なくだ。

 

 

「ごめんなさい、校長先生…私…」

 

「何を謝る必要があるのですか。たとえ精霊だとしてもこの学園の生徒です。姫野椿という名前とアリエル・バラスティアという名前を持つ少女がいる、ただそれだけの話です」

 

「一週間の無断欠席及びジェネックス大会の規定違反として罰はありまスーノ、まあ、去年セニョールシゲルが行った入試の補助、それが終わればお咎めなしなノーネ」

 

 

「…ああ、もうあいつらが入学して1年か…」

 

「…3年半ぐらい経ってない?」

 

 

※リアルタイムの話です。メタイのでユウさん言わないでください。

 

 

「では遅くなりましたが…無事で何よりでした、みなさん、そしてお帰りなさいです、姫野椿君」

 

「お帰り、ツバキ」

 

「…はい!」

 

 

鮫島校長とユウが代表してツバキを迎え入れた。それにツバキは今までの迷いを押し殺すように笑顔で返事をした。

 

 

 





明けましておめでとうございます
ユウ「2016年、原作の遊戯王GXが放送開始から12年も経ってるんだね」
当時小学生だったからね。十代の真似をしてE・HEROを使ってたのが懐かしい。
ツバキ「今年もよろしくお願いします」

さて…長くなった…
ユウ「新年一発目はただの説明回のはずなのに…」
広げた風呂敷を整えようとしたらこうなった…
ちなみに飛ばしたり、よくわからない人のために箇条書きで説明します。

1.優しき闇VS破滅の光=コスモスVSルーラー
シゲル「ツバキが持っていたコスモスと敵勢力のトップであるルーラーの戦いか…」
まあ、コスモスが優しい闇、ルーラーが破滅の光の化身だと思ってくれたいい。

2.ノーバディレコード
それぞれの神が持つアカシックレコードのことだね。
劔都「まさかの今更のタイトル回収か…」
設定は最初にアカシックレコードが出た時からあったんだけどね。コスモスとルーラーの設定は光の結社編ぐらいから考えた。

3.モノクルの女
コスモスです
紫苑「転生者を引き入れた方ですね」
この設定も上記のノーバディレコードぐらいの時から考えた。
ユウ「あれ、じゃあ荒木の話の時は?」
姿だけで細かい設定や誰なのか未定だった。逆に言えばコスモスの外見はこれで決まった。

4.先代の世界の矛盾(真のノーバディ)
ユウの両親、釼都の父親、シゲルの父親ですね。ただ今の5人のような力は失ってますが。
ツバキ「ちなみに5人とも私と面識はあるよ」
それと竜也もツバキの素性を知っていたが力を失った自分じゃ何もできないとわかってたので保護だけしてました。ちなみに本人も癌で死亡となってますが、実際は戦いの影響による体のガタで命を落としました。
最後の1人であるアンゲロスのケビンは多分死亡してます
紫苑「多分?」
どこかで出したいな…という感じで。ちなみにコスモスが封印される際に行方不明になってます。
それとダブルチューニングはコスモスの力でそれを引き継いだツバキと聖和の塔の力を持つ社の出身だった沙奈江なら使えます。
ユウ「ぼくが使えるのも母さんが使えるから?」
そう、ユウ自身のアクセルシンクロの力と母親のダブルチューニングが組み合わさった結果がコスモ・クロス・ドラゴンです。

5.アザゼル・リーン・ストラス
ツバキの叔母でコスモスの妹ですね
シゲル「そして俺とユウの仇…か」
実は彼女は本編にこれ以上出てくるかは未定です
釼都「は?ちょっと待て、相手は正直に言えばボスクラスの相手だろ?」
ボスクラスだからなんだよね…正直に言うと出てくるタイミング的なアレでね…
その前にユベル編をどうするか…
釼都「まだ言ってるのかよ…」
もしかしたらそこのボスか、それか別の章のボスか、番外編で出てくるか…

6.ダークネス
アザゼルの部下であり、吹雪と優介の因縁の相手でもある。
ツバキ「ついでに私が生まれる前に封印されてたので会ったことはないね」
ついでに原作の骨山羊と同一人物です。
紫苑「それにしても元仲間というのは…」
ダークネスも闇だからね、破滅の光と同じ分類にするのはあれだし、コスモス陣営にいたとすればなんか設定ができそうだったので。

7.転生者の故郷
ニズと同様に消滅してます
シゲル「ニズだけじゃなかったのか…」
ついでにこれらの世界は12次元世界ではなく、別の次元世界のことです。連斗の世界やなのはたちの世界も別の次元世界です。

8.アイオーンの正体
第一章で釼都が初登場したときに一緒にいた執事の山本です。
釼都「俺が一番驚いてるんだが…」


箇条書きにしたら予想以上にあった…
紫苑「よくこれを1話に纏めようと思いましたね…」
我ながら、伏線を多くしすぎた…それに初期設定と変更したり追加したものも多いし…
とはいえ、これでほぼ全ての伏線を回収したはず…

シゲル「途中の連斗の部分、あれって何と戦ってたんだ?」
向こうでの敵だね。詳しいことは【沈黙の使者】のネタバレに含まれるかもしれないし、伏せておくけどアメリカで連斗はツバキに関しての記憶を失っています。
ユウ「それもネタバレなんじゃ…」
いや、もともとそういった描写があって作者のサイレントさんに確認を取ったら特に理由をつけてない、サイレント・コスモ・マギアやユウと出会ったことを口にしてなかった理由としてそうしたと言ってたからその理由をこっちで付けさせてもらうことにしました。
紫苑「それは、お姉ちゃんの祈祷による忘却ですか?」
そう、『Turn98 聖和の塔』でルヒエが言ってる『異世界のデュエリスト』というのは連斗のことで、完全に『姫野椿』を消すために連斗の記憶を奪っていた、ということにしました。

さて、次回は少し間を起きます
紫苑「理由は…聞くまでもないですね…」
うん、ユベル編のストーリーを考えてない…ってか思いつかない。正直言いうとほぼ省略しようかと思ってる。
ツバキ「飛ばすの?」」
いや、ユベルは出す。ただ他校交流からコブラの陰謀、異世界に飛んでの流れをやると本当にこの作品が終わるのが数年先になるから…十代も大人になる話だけど紫苑との関わりで子供っぽさが抜け始めてるから原作ほどのドロドロをやる必要もなさそうだし…剣山を出す気はないし…
シゲル「そーいや、今回出てこなかったな」
原作だとメインキャラの一人だったけどノーバディレコードだと出番はない。やられキャラになりそう。
ユウ「なんか、嫌ってない…?」
というよりもキャラが多すぎるから出番を回す暇がない。だからジェネックスもダイジェストで釼都にやられたの。

というわけで、とりあえず2月中は幕間の話やアザー・レコードの話をいくつか投稿する予定です。
それ以降についてはしばらく期間を空けるかもしれません。

ユウ「それじゃあ、今年もノーバディ・レコードをよろしくね!」
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