遊戯王GX~ノーバディ・レコード~   作:銀猫

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姉弟喧嘩

 

 

「十代君、お手紙ですよ」

 

「え、手紙?」

 

 

レッド寮の食堂でいつものように十代と翔に万丈目、ジュードが屯っており、それとレイと響に勉強を見ていた雪乃とももえは手紙を渡してきた伊藤という教師を見た。

 

 

「珍しいっすね、アニキに手紙なんて」

 

「第一お前に手紙を書く人がいることが驚きだ」

 

「な、なんだよ。入学したばかりの時は父さんと母さんから学校はどうなのかって手紙ぐらい来たことあるぞ」

 

 

十代は手紙を受け取りながら驚く翔と万丈目に反論する。しかし3年になって連絡が来るというのは本人でも驚いているようだった。

 

 

「母さんからだ。なんだろう…」

 

 

手紙を開いて内容を読み始めた十代はなぜか徐々に顔色を悪くなっていた。

 

 

「あの、十代さん…?」

 

「な、な、なんで…」

 

「ちょっと、どうしたの」

 

 

響の声が聞こえてないのかガタガタと震えた十代に雪乃が肩に手を置いた。

 

 

「ひぃぃぃぃぃ!!」

 

「え、ちょっと!!」

 

 

「あ、あの兄貴が…」

 

「ビビってるぞ…」

 

 

部屋の隅でガタガタと震える十代をありえないものを見るようにしてみている一番付き合いが長い翔と万丈目。するとジュードは十代が落とした手紙を拾い上げて内容を口にした。

 

 

「『十代へ、三年になってそろそろ進路を決める時期です。あなたの決める将来ですが一度はどうするかは連絡ください。

さて、本題ですが14日に一葉がアカデミアで仕事になります。

マネージャーさんの話だと先生方が案内をしてくれるのらしいけど、一応あなたも手伝ってね。

遊城和代』」

 

「十代様、一葉って…?」

 

 

仕事と書いてあるが全く知らない人にレイが首をかしげた。というよりも――

 

 

「14日といいますと…今日ですわね」

 

 

ももえの言葉に十代の震えがさらに大きくなった。

 

 

 

―アカデミア港―

 

「なんでだ」

 

 

クロノス教諭に呼ばれた明日香、紫苑、釼都の3人。なぜここに呼ばれたかというと彼らが生徒代表だからだ。

 

 

「さっき言われたじゃない。外部からの少女モデルの人が来るからその案内人として生徒代表として」

 

「言われた。先導としてクロノス先生、生徒代表で同性ってことでお前と紫苑。じゃあ俺はなんだ?」

 

 

「シニョール釼都は男子生徒代表としてなノーネ。マネージャーから問題が起こりうることのないように釘を刺されて、シニョールシゲルが居ないので任せられるのがシニョール釼都だけなノーネ」

 

 

確かに今現在シゲルとジュンコは本島へと泊まりがけのデートへと行っている。今日の夕方には帰ってくる予定だがそうなれば任せられるのは釼都しかいない。

 

 

「…で、誰が来るんだっけ」

 

「そういえば、聞いてないですね」

 

 

「ニョ?言ってなかったノーネ?…って来たノーネ」

 

 

するとやってきたのはメガネをかけた一言で言うと美人と言える女性。しかしクロノスの話によると来るのはアイドル的な人のはずだ、ということはマネージャーだろうか。

 

 

「先導の教師の方ですね。初めまして、マネージャーの二階堂と申します」

 

「デュエルアカデミアのクロノス・デ・メディチなノーネ。こちらは本日同行する生徒の…」

 

「天上院明日香です」

 

「姫野紫苑といいます」

 

「羽黒釼都」

 

 

最後の釼都の紹介の時だけ二階堂は目を細めた。どうやら男子生徒がついてくることに難色を示してるようだ。

 

 

「心配はないノーネ。このシニョール釼都は学園で五本の指に入る実力者の上に問題ごとに関しては我らが責任を持って保証することができるノーネ」

 

「……ですが」

 

「二階堂さん、私は構いませんよ」

 

 

さらに考える彼女をとどめたのは近くのクルーザーからやってきたのは焦げ茶色の長い髪にシゲルや明日香ぐらいの長身の少女だった。その姿を見て明日香は驚いていた。

 

 

「うそ…トランサーのウノ…」

 

「トランサー?」

 

「…あぁ、最近映画の主演が決まったっていうアイドルグループか」

 

 

明日香は知っていたが紫苑と釼都はその手のアイドルには興味がないため彼女のことをあまり知らなかった。

 

 

「ええ、本日はその撮影の下準備としてデュエルについての勉強とアカデミアをモチーフとしてるため、その空気を知るためにお邪魔させてもらうことになりました」

 

「デュエルについての勉強?」

 

「私はデュエリストとしては駆け出しなのでその道のプロを目指す人を見て勉強させてもらうことにしたのよ」

 

 

ウノの言葉に釼都は「なるほどな」と納得した。

 

 

「それと、この島にいる弟に会いにね」

 

「弟?」

 

「ええ、先にそっちに行きたいのだけど…」

 

 

ウノの弟と言われても名前も容姿も聞いてないため誰なのかわからない。

 

 

「シニョーラウノ、その弟というのは?」

 

「私の母から手紙が来てるはず…あら?」

 

 

ウノの見る先になぜか翔とジュードに引きずられるかのようにして青い顔の十代がやってきた。

 

 

「ん?十代?」

 

「なにしてるんですか」

 

 

「それがアニキの母親から手紙が来てからずっと…ってト、トランサーのウ、ウ、ウノさん!?」

 

 

引きずっていた翔はウノを見て驚いているようだった。釼都や紫苑は知らなかったがウノの知名度は半端なく高い。彼女の所属するトランサーも去る事ながらそのリーダーであるウノは何かとミステリアスなのだ。

 

普段の姿は冷静かつクールな性格で自分にも他人にもストイック、それなのにドラマや舞台などでは完璧に役をこなして新人アイドルでは一番の人気がある人物でもある。

 

 

「げっ…」

 

 

だがそのウノを見て十代はさらに青い顔をしている。

 

 

 

「……………」

 

 

「そ、そのウノさん、さ、サインを!!」

 

 

どこからともなくサインペンと色紙を取り出した翔だが、なぜかウノはそれをスルーして十代モノとへと向かった。

 

 

 

「…久しぶり~!十代!!」

 

「「「…えっ?」」」

 

 

 

ウノのことを知っている翔や明日香、クロノスはそのウノの言動に呆然となった。テレビで見るクールビューティーな彼女のイメージを完全にライトニングボルテクスで粉々に粉砕したその笑顔が全くウノには見えないのだ。

 

だが、釼都はそれよりも心配なことがあった。

 

 

「…………………」

 

「―――――――」

 

 

チラと横を見て後悔した。隣にいる紫苑から吹き出る負のオーラが半端なく濃い上に半端なく巨大なのだ。

 

 

「十代、どいうことですか?」

 

 

「し、紫苑、落ち着け!!」

 

「あら、あなたが十代の恋人?『弟』がお世話になってるわね」

 

 

「「「「「へっ?」」」」」

 

 

今度は釼都と紫苑を含めて呆然とした。今何といった、この人が――

 

 

「改めて、トランサーのウノ改め、遊城一葉。この十代の姉です」

 

 

 

 

「「「「「「…………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――!!!!!??」」」」」」

 

 

 

 

 

6人の叫びがアカデミアに響き渡った。

 

 

―レッド寮食堂―

 

 

「へぇ、ここが十代の暮らしてる場所なんだぁ」

 

 

「おい、どういうことだ」

 

 

十代と翔とジュードを見送った万丈目がなぜ有名人であるはずのウノを連れて戻ってきたのか釼都に聞いた。だが、釼都も把握してないところが多い。

 

 

「十代様のお姉さまがあのウノさんだったなんて…」

 

「ふふっ、初めましてね。なによ、十代も紫苑ちゃんだけじゃなくてこんな可愛い後輩に慕われてるのに何の連絡もないなんてね」

 

 

「かわっ――!!」

 

 

レイはウノ改め、一葉の言葉に顔を赤くしていた。ちなみに見学の打ち合わせということで二階堂とクロノスはこの場にはいなかった。

 

 

「十代、いい加減話せ」

 

 

「うぅっ…」

 

 

一葉と再会してからいつもの調子ではない十代だが、話が進まないため釼都が首根っこを掴んで説明を求めた。

 

 

「トランサーっていうアイドルグループに姉ちゃんが所属してるんだ…ただ本名を出すのはってことだから一葉の一から取ってウノっていう芸名で活動してたんだ…」

 

「……そもそもお前に姉弟がいたことが驚きだ」

 

 

付き合いが長い万丈目に翔と釼都と明日香も頷いていた。彼らが知らないことをジュードたち後輩が知ってるとも思えないが。

 

 

「姉ちゃんが有名人って言っても信じてもらえないし、信じても迷惑がかかるから母さんに言わないように言われたんだ」

 

「随分と可愛がられてるんだな」

 

 

港で見た光景を思い出しながら釼都が呟くと十代の体がビクッと震えた。

 

 

「…口止め以外にも理由があるんだろ?」

 

「……俺が、昔色々とあって…」

 

「ねえ、ここって確か大きなお風呂があるんでしょ?久しぶりに一緒に入ろうよ、十代」

 

「ね、姉ちゃん!!俺もう17歳だぞ!!」

 

「――あっ、そ、そうだったね…」

 

 

 

「…あれが原因みたいだね」

 

 

ジュードの冷静な判断にほかのメンバーは頷いた。よほど過激なスキンシップなのだろう、あの十代が怯えるというはよほどだ。

 

 

「うぅ…僕の中のウノさんのイメージが…」

 

「じゃあ、一緒に入ろうよ、紫苑ちゃん」

 

「えっ…私、ですか?」

 

 

ずっと話の流れには入れなかった紫苑。というよりも彼女としては十代の家族ということは今後付き合いが長いかもしれない相手なのだがそういう場合どうしたらいいのかわからなくて黙っていただけなのだが。

 

 

「朝風呂も気持ちいいだろうし、女同士、裸の付き合いってことでね。レイちゃんと響ちゃんだっけ?それと明日香ちゃんと雪乃ちゃんもね」

 

「ぼ、ボクたちも?」

 

「えっと…」

 

 

レイと響も迷っているようだ。というよりレイからしたら憧れの先輩の姉で誰もが知ってるアイドルからの誘いに迷っているのだ。

響はトランサーのことをよく知らないが、他人との付き合いが少ない彼女は誰かから誘われるということも初めてだった。

 

 

「いいんじゃない?十代の昔の話とか聞いてみたいし、レイちゃんと響ちゃんも興味があるんじゃない?」

 

「う、うん…ちょっと気になるかな」

 

「じゃあ、お願いします」

 

 

少し硬いながらもレイと響、それと雪乃も行くことを決めたようだ。

 

 

「紫苑先輩は?」

 

「私は…」

 

「ほら、迷ってないでいこうよ!」

 

「あっ―――」

 

 

悩んでいた紫苑だがその返答を聞く前に一葉がその手を掴んで食堂を出て行ってしまった。

 

 

「あの強引さは十代似だな」

 

「羨ましいな…」

 

 

「「「「「えっ」」」」」

 

 

 

翔の言葉にその場にいた上学年者は十代含めて一歩引いた。

 

 

「ちょっと、なんでみんな引くの!?」

 

「いやぁ…」

 

「羨ましいって…なぁ…」

 

 

ジュードと万丈目はまるで汚物を見るような目を合わさた。

 

 

「翔、やっぱりあの時お前覗こうとしたのか…?」

 

「アニキ、疑ってたんっすか!?」

 

 

「あぁ…そういえば、そうね。あなた、前科者だったわね…」

 

「おい、それは本当か?」

 

 

クロノスの罠とはいえ、翔が女子風呂近くをうろついたことを知っている十代と明日香、それとももえは当時のことを思い出していた。

 

 

「そういえば、その時釼都さんは転入する前でしたからご存知ないのも無理はないですね」

 

「うわ、翔先輩、さいてー…」

 

「見損なうわね」

 

「違うっす!!濡れ衣っす!!」

 

「皆さん、流石に…」

 

 

レイと雪乃も含めて翔を引いた目で見ていたが響だけがまるで天使のように宥めていた。

 

 

「ひ、響ちゃん…」

 

「あ、近づかないでください」

 

「ひどいっす!!」

 

 

どうやら宥めているが響も疑っているようだった。なにげに響は物事をストレートに言うことがある。

 

 

「ほら、覗きと男共は放っておいて一葉さんが待ってるわ、行きましょ」

 

 

「僕は無実だぁ~!!」

 

 

翔の嘆きも誰の耳にもはいらずに消えてしまった。

 

 

 

―大露天風呂―

 

 

「ふぁ~、きもちぃ~」

 

 

休みで朝のため、人気も少ない浴場でのんびりしてる長い髪を湯に付けないようにタオルを巻いた一葉とこの浴場を初めて使う響、身分を偽って転入した際に使ったことがあるレイ、グラマラスな体を見せつけるかのようにタオルを巻いて入浴してる雪乃と明日香、ももえの三人と離れたところで入っている紫苑。

 

 

「こんなところがあったんですね」

 

「そういえば響はいつもチーム寮の共有銭湯室使ってるのかしら。まあ、チーム寮からも離れてるし、事前申請もいるからあまり使い勝手がいいと思えないけど」

 

 

雪のはそういいながら髪を手で梳いた。ちなみに今日の事前申請はあらかじめ一葉が風呂好きということでクロノスが取り付けていた。

 

学園の生徒は実家に帰ってるし、休日に申請する生徒も少ないため貸切状態だった。

 

 

「それにしても、十代さんのお姉様があのトランサーのリーダーであるウノさんとは、驚きましたね」

 

 

「ええ、ずっと一人っ子だと思ってた」

 

 

この中では付き合いが長いももえと明日香、それと無言だった紫苑も彼に姉がいたことなんて一言も聞いたことはないし、そんな様相は全くなかった。

 

 

 

「そう…うん、やっぱり避けられてるのかな…」

 

「えっ?」

 

 

大きな溜息とともに呟くような独り言、紫苑が彼女を見るとどこか落ち込んでいるようだ。

その顔がエドに敗れてカードが見えなくなった十代にそっくりだった。

 

 

「あ、あはは。けど十代には貴女たちやさっきの友達もいるから、『もう』大丈夫だよね」

 

「もう…?」

 

 

一葉の言葉に雪乃が聞き返した。うっかり出てしまったその言葉が聞かれてしまったため少し哀しそうに笑った。

 

 

「そうね…貴女たちなら知ってもいいかもね。これを聴いて、十代のことを変わらずに思ってくれそうな友達と後輩みたいだし」

 

「…私は、人に知られたくない過去が、出生の秘密があります。いや、私だけじゃない。ほかにも知られたくない秘密や知りたくなかった事実を十代は知った。けどそれでも十代は変わらずに接してくれた、私の思いを受けてくれた…何を知っても私は彼を思います」

 

 

紫苑の言葉のとおり、十代はシゲルと響の身の上の話、剱都とAW社について、転生者の過去と荒木の罪、ツバキの正体、そして星光としての紫苑の出生などを知っても変わらずに接してくれていた。

 

 

「わぁ…紫苑御姉様、素敵…」

 

 

ジェネックスから紫苑を御姉様と慕うようになったレイはキラキラとした視線で紫苑を見つめていた。一言だけ言っておくと百合ではない。

 

 

「ふふ、流石十代の選んだ子ね。じゃあ、私の秘密も教えてあげる」

 

 

そう言うと一葉は頭に巻いているタオルを取り払った。

 

 

「…えっ…?」

 

 

響はそれを見て驚いた。風呂に入る前に見たのは十代と同じ焦げ茶色の長髪のはずだった。しかし湯についた髪はその名のとおりの緑髪だった。

 

 

「その髪は…」

 

「即時性ヘアスプレーっていう便利なものがあってね。普通に染めるよりも早くて10分で色がつくんだけどお湯につかると剥がれちゃうの」

 

「なんでそんな…」

 

「これが私の秘密。人の性格ってね生まれつきで決まるものじゃないのよ。過ごした環境、一緒に住んだ家族、遊びあった友達、私の性格が十代に似てたと持ってもそれは私が十代の義姉だから、血の繋がりがなくても似てるのは当たり前なの」

 

 

その言葉にその話を聞いた6人は何も言えなかった。この場にいる紫苑もツバキと釼都とは義兄弟だが紫苑の出生以外はその事情はこの学園では周知の事実だ。

 

 

「もう18年以上も前。当時私はゴーストシティにいた」

 

「ゴーストシティ――!?」

 

 

その名前は紫苑と明日香、ももえはかつて聞いたことがある。しかし童実野町の裏の事情を知らない雪乃とレイやこの世界の住人になったばかりの響はその言葉を知らない。

 

 

「ゴーストシティとはなんですか」

 

「…かつて童実野町であった地下鉄計画、だけど途中で頓挫してしまい今でも童実野町の地下には地下トンネルが張り巡らされているの。そこに警察の不祥事や行き場を失った人が集まって形成されたスラム街がゴーストシティっていうの。まあ、今となっては海馬コーポレーションが閉鎖してるけどね」

 

 

明日香がどういうものなのか説明すると怖いイメージを持ったのかレイと響は青い顔をしていた。

 

 

「詳しいのね」

 

「ええ…けどまさか、ゴーストシティの出身だったのね…」

 

 

ユウ、そしてカリーヌ協会の澪と徹がかつて過ごした場所でもある。当時の住人たちは海馬コーポレーションによって仕事を与えられ、施設に入り、そして社会復帰したと聞いた。

 

 

「私は当時、一人でゴーストシティの外れに住んでいた。とはいえ、独り立ちも出来てない物心がつく頃の子供には他人の情けで分け与えられる食事だけだと限界だった。もう動くこともできず、死に逝く私を助けてくれたのが義両親だった」

 

 

ゴーストシティでの生活の過酷さは以前にユウから聞いたことがある。当時の食事にありつくこともままならない日々、助けを求めれない弱者。

海馬瀬人がその実態を知らなかったら今でもそうなっていたのかもしれない。

 

 

「当時、子供がいなかった2人は私を娘のように…いいえ、今も娘として見てくれている。けど、十代は私を姉とは思ってないのかもしれない」

 

「それは…どうして…」

 

「あの子がまだ幼い時、両親が仕事で家を空けて私と十代が家にいたときにあの事件が起こった…」

 

 

―10年前―

 

「よし、ぼくのターン!!」

 

 

「ふふっ、楽しいんだね」

 

 

一階のリビングで近所のお兄さん相手にデュエルをする十代の声を聞いて一葉は二階の自室で学校の宿題をしていた。

 

人懐っこくてデュエルが大好きな十代と近所のデュエルモンスターズを持つ子供はすぐに仲良くなった。だが一葉はデュエルをしないので必然的に相手は近所の子供となる。

 

 

「――お兄ちゃん!!」

 

「?」

 

 

下から聞こえてきた十代の叫び声、何か嫌な予感がして一葉は急いで降りた。

 

 

「お姉ちゃん、お兄ちゃんが!!」

 

 

そこにいたのは胸を押さえて苦しむ近所のお兄さんと涙目で彼のそばにいる十代――そして――

 

 

「――あなた…一体何をした!!」

 

 

十代を守るかのように佇む背後の精霊を一葉は睨んでいた。

 

 

―レッド寮:食堂―

 

 

「精霊?」

 

 

十代から一葉の事を聞いていた翔、万丈目、ジュード、釼都の4人。そして話したのは義姉弟ということと、幼い頃の出来事。

 

 

「当時の俺のフェイバリットモンスターの精霊が俺を守ろうとして俺の友達を傷つけたんだ。姉ちゃんは精霊が見えてたから俺の背後にいたそいつに向かって言った…」

 

「だが、見えてなかったお前からすると、それは自分に向けられていた」

 

 

釼都の言葉に十代は頷いた。守るはずの言葉だがそれは十代に牙となって襲いかかった。

 

 

「それから…俺は姉ちゃんを避けるようになった。あの言葉が、あの目が、俺に向けられたと思って。姉ちゃんもすぐに気づいた、精霊が見えてなかった俺に、あの言葉が向けられたと思って。けど、説明ができなかった」

 

「…まあ、精霊なんて見えないやつからすれば幽霊みたいなものだからな。そこにいないのと同じだ」

 

『いやぁ~ん、でもオイラ達はここにいるわぁ~』

 

「お前は黙ってろ」

 

「あ、こういうことっすね」

 

 

この中で唯一精霊が見えてない翔は万丈目の言葉に今おじゃまイエローがなにか要らないことを言ったんだと思った。

 

 

「当時、父さんも母さんも家を留守にしがちだった。だから必然的に姉ちゃんとも一緒に過ごすようになった…しばらくすると俺も姉ちゃんも以前のように接するようになった…」

 

「だけど完全に、とまでは。多分十代さんも一葉さんも当時のことを後悔して、けど言葉が見つからないから以前のように接してる『感じ』になってる」

 

「なんでそんなことが分かるんっすか?」

 

 

ジュードの言葉に翔が首をかしげた。ジュードはひとつだけ気になっていたことがある。いくら仲が良くても、年頃の弟と姉が一緒に風呂に入ることを提案しないだろう。

 

 

「当時の付き合いのまま、一葉さんも進んでない。十代さんを風呂に誘ったのも当時と同じだから。誘ったあと、どこか戸惑ってるようにも見えた」

 

 

医者の息子として、他人の体調などが自然と気になるジュードは彼女の言動で気になったところを口にした。

 

 

―大露天風呂―

 

 

「私もわかってる、あの時のままじゃダメだってことぐらい。だけど…私は逃げた。十代から」

 

 

間違いに気づいているのは一葉も同じだった。しかし、どうしようもなかった。

あの事件の後、その精霊のカードを当時の海馬コーポレーションのプロジェクトの一環として宇宙に送り、そして一葉はアイドル事務所へと入った。

 

 

「けど、なぜアイドルに…」

 

「…一つは、そのカードを海馬コーポレーションに使うためにプロジェクト参加の寄付とかでお金が必要だったから。もう一つ、私が…十代から逃げたかったから。あの日の怯えた十代の目を忘れようとしてアイドルでお金を稼ぐことを口実に家に帰らなかった」

 

 

だからなのだろう、新人でありながらトップクラスの実力者『ウノ』が生まれたのは。ほかの夢見る新人と違い、彼女は家に帰らないという気持ちが強かったからだ。

 

 

「しばらくして、十代もあの言葉が自分に向けられたことじゃないに気づいたみたい。けど私も、十代も、時間をかけ過ぎちゃった。もうお互いにどうしたらいいのかわからないの」

 

 

十代も一葉も、お互いにあの時の出来事の精算をやるきっかけが見つからないようだ。姉弟仲は悪いわけではない。だが、どこか一線を引くようになったのだ。

 

お互い歩み寄ることをやめてしまったため、その時の、『幼い十代』にする接し方をしてしまうのだろう。

 

「…一葉さん」

 

 

 

―レッド寮:食堂―

 

 

「なるほどな」

 

 

十代の心境と一葉の言葉の意味に釼都は納得していた。こんな状況で姉がトランサーのウノだと言っても一葉に迷惑をかけるだけだろう。

 

 

「多分母さんも、手紙を出したのはそのことをなんとなくわかってるんだと思う。昔から姉ちゃんの仕事とかの時に俺に会わせようとしてたんだ」

 

「けど、お前、今日行くのは嫌がってたのはなんだ?」

 

「……姉ちゃんに会いたくなかったからなんだ。俺に会うと、姉ちゃんはあの時のことを気にして必死になる、それが…姉ちゃんを追い詰めてるみたいで…」

 

 

「――独りよがりですか」

 

 

十代の言葉に、風呂から戻ってきたのか少し髪を湿らして戻ってきた紫苑。しかし彼女だけでほかの同行した面子がいなかった。

 

 

「紫苑、一葉さんやみんなはどうした?」

 

「…十代、デッキとディスクを持って付いてきてください」

 

 

―浜辺―

 

 

紫苑に言われたとおり、自分のデッキとデュエルディスクを持って紫苑についていくと、そこにはなぜかディスクを付けた一葉がいた。

 

少し離れたところには雪乃達もおり、待っていたようだ。

 

 

「姉ちゃん、何を…」

 

「十代、お願いがあるの。デュエルして」

 

 

その言葉に十代は驚いていた。その間に釼都達は女子の方へと向かい、事の成り行きを見守っていた。

 

 

「何言ってるんだよ!姉ちゃん、自分のデッキもないのに!!」

 

「そんな初心者の挑戦も了承できないの?それとも、私が一葉で、あなたの姉だから?」

 

「っ…」

 

 

カリーヌ教会であまりデュエルをしたことがないチビッ子の挑戦を十代は快諾して戦った。だが今回は全く違う状況だ。

 

 

「デッキならある。基本的なルールも知ってる。もともと私はここにデュエルのことを学びに来たのよ」

 

「でも…俺は…」

 

「お願い…十代」

 

 

 

いつ以来か、まっすぐと見た一葉の瞳。揺らがないそれを見て、十代は頷いた。

 

 

「けど、やるんだったら手は抜かないぜ」

 

「ええ、最初で最後の姉弟喧嘩を演じるよ」

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

―十代のターン―

 

「俺のターン!!E・HEROブレイズマンを召喚!!」

 

 

ブレイズマン/DEF1800

 

 

フィールドにはフォレストマンと似た融合サーチの効果を持つ炎のHEROだ。意外に守備力もあるため相手の出方をうかがうのにも最適だった

 

「召喚成功時の効果で融合を手札に、ターンエンド」

 

 

十代

LP4000 手札5枚

ブレイズマン/DEF1800

伏せカード無し

 

―一葉のターン―

 

「私のターン、魔法カード、融合を発動!!」

 

「いきなり融合!?」

 

 

十代が驚くが、事情を知っている女子陣は何も言わない。なぜなら――

 

 

「手札のE・HEROシンクロンとE・HEROエアーマンを融合!!煌光せよ、シャイニング!!」

 

 

 

シャイニング/ATK2600

 

 

シンクロン、HERO、そしてシャイニング。そうあのデッキ間違いなく――

 

 

「紫苑のデッキ…!?」

 

「(つっても、やっぱ使い方は素人だな…)」

 

 

早々に融合したことに剱都は一葉の腕前をそう判断していた。

 

 

「バトルフェイズ、シャイニングでブレイズマンに攻撃!!」

 

「っ…!!」

 

 

ブレイズマンはシャイニングが収束されて発射されて高熱のビームが直撃して消滅してしまった。

 

しかし、この場面でのプレミを一同は気づいていた。

 

もし、エアーマンを召喚してHEROを手札に加えたあとに手札融合をしていれば直接攻撃で大ダメージを与えられていた。いや、それだけではなくシャイニングは除外されてるHEROの数によって攻撃力が増加するモンスターだ。

しかし、今現在除外されているHEROは0、破壊されたときに発動する効果も意味がない。

 

エアーマンのサーチをシャドーミストにしてエスクリダオや炎属性HEROを呼んでノヴァマスターを召喚したほうがよかったのだ。

 

 

ただ強いモンスターを出すだけじゃ勝つことができない。

 

 

「私はカードを3枚伏せてターンエンド!!」

 

 

一葉

LP4000 手札0枚

シャイニング/ATK2600

伏せカード3枚

 

―十代のターン―

 

 

「俺のターン!!(手札を全部伏せた…多分、紫苑のデッキからすると1枚は破壊に対して発動するヒーローシグナル、速攻魔法の英雄変化、それと――)」

 

「(十代…)」

 

 

一葉は、こんな十代を初めて見た。まっすぐと『相手』を見て、そして強い瞳を『自分』へと向けている姿を。

 

 

「手札からカードガンナーを召喚!!このモンスターの効果でデッキトップ3枚を墓地へ送ることで攻撃力を1枚につき500ポイントアップさせることができる!!」

 

 

Drop

N・ブラック・パンサー

マスク・チェンジ

ダンディライオン

 

 

カードガンナー/ATK400→1900

 

 

「ダンディライオンの効果を発動!!墓地に送られたとき、綿毛トークンを2体特殊召喚する!!」

 

 

綿毛トークン/DEF0

綿毛トークン/DEF0

 

 

「ヒーローマスクを発動、デッキのE・HEROネクロダークマンを墓地へ送り綿毛トークンの名前をネクロダークマンに変更する!!」

 

綿毛トークン→ネクロダークマン

 

「そして融合を発動!!フィールドのネクロダークマンとなった綿毛トークン、手札のワイルドマンを融合!!来い、ネクロイド・シャーマン!!」

 

 

 

ネクロイド・シャーマン/ATK1900

 

 

「攻撃力はシャイニングよりも低いのに…」

 

「ネクロイド・シャーマンの効果!!召喚に成功したとき相手フィールドのモンスターを破壊し、墓地のE・HEROシンクロンを相手フィールドに特殊召喚する!!」

 

シンクロン/ATK0

 

 

「私のモンスターを…モンスターにこんな使い方が…!」

 

「バトルフェイズ!!ネクロイド・シャーマンでシンクロンに攻撃!!ダーク・シャドウ・ストライク!!」

 

「きゃあ!!」

 

 

一葉/LP4000→2100

 

 

シンクロンの攻撃力は0、ネクロイド・シャーマンの攻撃力のダメージがそのまま一葉に与えられた。しかし、その悲鳴を聞いて十代がハッとしたように目を見開いた。

 

 

「っぅ~~!!! リバース罠、ヒーロー・シグナル!!私のフィールドのモンスターが破壊されたためデッキからE・HEROフォレストマンを召喚!!」

 

 

フォレストマン/DEF2000

 

 

登場したのは大地の力を持つHEROだ。先ほどの十代のブレイズマンと同じで融合をサーチする効果を持っている。

 

 

 

「…っ、俺は、カードを伏せてターンエンド」

 

 

十代

LP4000 手札1枚

ネクロイドシャーマン/ATK1900 カード・ガンナー/ATK1900→400 綿毛トークン/DEF0

伏せカード1枚

 

 

―一葉のターン―

 

「私のターン!!このスタンバイフェイズにフォレストマンの効果でデッキから融合を手札に!!」

 

「(けど手札はこれで2枚…融合するには…)」

 

「リバース罠、融合準備を発動!!E・HEROジ・アースを選択してその素材のオーシャンを手札に加えて墓地の融合を手札に戻す!!」

 

これで召喚できるのはジ・アース、アブソルートZero、ガイアのどれかだ。この盤面で一番有用なのは――

 

 

「手札から融合を発動!!フィールドのフォレストマンと手札のオーシャンを融合!!凝結せよ、アブソルートZero!!」

 

 

アブソルートZero/ATK2500

 

 

やはりというべきか、全体破壊効果を持つHEROだ。ガイアはより攻撃力が高い相手がいれば真価を発揮するモンスター、そしてジ・アースはほかのHEROがいないとその能力を使えない。

 

 

「バトルフェイズ、アブソルートZeroでネクロイドシャーマンに攻撃!!Freezing at moment!!」

 

 

「ッ…!!」

 

 

無駄に紫苑より発音がよく攻撃宣言をしてネクロイドシャーマンが凍り付いた。

 

 

十代/LP4000→3400

 

 

しかし、今の状況ではネクロイドシャーマンよりもカードガンナーを狙ったほうが良かったのかもしれない。すでに効果がないモンスターと墓地活用できる効果を持つカードガンナー、攻撃力的には下だが、それも効果を使えば同じになる。

 

 

「(やっぱり、姉ちゃんはまだ分かってないんだ…)」

 

 

「カードを伏せてターンエンド」

 

 

一葉

LP2100 手札1枚

アブソルートZero/ATK2500

伏せカード2枚

 

 

 

―十代のターン―

 

「俺のターン…っ…姉ちゃん、こんなことに何の意味があるんだ」

 

「……………」

 

 

引いたカード、それを使えば一瞬で勝負を決めることができる。しかし、それで終わらせてもいいのだろうか。

 

 

「ルールも覚えたてで、慣れない紫苑のデッキを使って、何がしたいのかわからない…教えてくれよ、何がしたいんだ…!!」

 

「………私も、わかりたい」

 

 

そういった、一葉の顔――いつ以来だろうか、こうしてまっすぐと見るのは。あの時、あの言葉を口にしたときからまっすぐと見るのが怖かった。

 

 

「紫苑ちゃんの言ってた通り、わかるような気がする。今の十代の考えてること、デュエルで相手のことを思う気持ちが」

 

「――!」

 

 

そう、先ほどのターンで一葉の手の内を読んでいるとき、ふと十代は一葉のことを考えていた。紫苑の言う通り、独りよがりだったのかもしれない。

 

 

「怖い、んでしょ。私に拒絶されることが…私を拒絶してしまうことが」

 

「…っ…――!!」

 

 

 

図星のように十代が顔を顰めた。先ほどのネクロイドシャーマンの攻撃の余波で一葉が衝撃を受けた時、怖かった。

 

一葉を傷つけるかもしれないということに恐怖したのだ。

 

 

「…十代は、どう感じてる?私が、十代にどう思ってるのか、何を考えてるのか…そうね、今思ったらそんな風に喧嘩もすることがなかったし、喧嘩することも考えなかった。だから、本気の姉弟喧嘩なの。わかりあるために――」

 

「――………俺は、カードガンナーの効果を発動してデッキの上から3枚のカードを墓地に送る!!」

 

 

Drop

N・エア・ハミングバード

E・HEROフェザーマン

異次元トンネル-ミラーゲート

 

 

正直に言うと、十代はわからなかった。一葉がどう思ってるのか、一葉の気持ちが。だから――

 

 

「(分かり合うために…全力を出してこの喧嘩に勝つ!!)手札からミラクル・フュージョンを発動!!墓地のブレイズマン、フェザーマン、ワイルドマンを融合!!」

 

「3体融合!?」

 

 

剱都達観客が驚くのは無理もない。通常のテンペスターなどの素材ではないこの組み合わせで召喚できるとしたら優介の持つトリニティぐらいしかないはずだ。

 

 

「全てのE・HEROを原点となった最強のHEROよ、3つの核を一つにその姿を現せ!!」

 

 

十代の墓地にいた3体のモンスターが光になるとそれが一つとなって新たなHEROの姿へと変貌した。

 

 

「来い、E・HEROCore!!」

 

 

出現したのはジ・アースとよく似た全身が銀色に輝くHEROだった。その姿はまるで十代と紫苑のE・HEROそのものでどこかすべてのHEROの面影が見えた。

 

 

Core/ATK2700

 

 

「バトルフェイズ、CoreでアブソルートZeroへ攻撃!!エレクトロマグネティックインダクション!!」

 

 

「っ…!!」

 

 

一葉/LP2100→1900

 

 

ダメージを与えることに成功したが、それでもまだ一葉はライフを残っていた。しかし、アブソルートZeroの効果を十代は忘れてはいまい。

 

 

「アブソルートZeroの効果を発動!!フィールドから離れた時、相手フィールドのモンスターをすべて破壊する!!」

 

「ああ…これで十代のフィールドはがら空きだ」

 

「十代様はそれを見落として…」

 

「いえ、あのHERO。おそらく何か…」

 

 

凍り付くフィールドを見てレイは十代がまさかプレミをしたのかと思った。だが響はまだ一度も効果を発動してないCoreを見た。

 

 

「それを待ってた!!E・HEROCoreは破壊されたとき墓地のレベル8以下のE・HEROと名の付く融合モンスターを召喚条件を無視して特殊召喚することができる!!」

 

「墓地のE・HERO…!!」

 

 

そう、1体だけいる。十代の墓地にいる融合のE・HERO――

 

 

「墓地から蘇れ、ネクロイドシャーマン!!」

 

 

ネクロイドシャーマン/ATK1900

 

 

最初にシャイニングを葬り去ったシャーマンだ。その攻撃力は先ほどのCoreのダメージで減った一葉のライフと一緒だった。

 

 

「さらにカードガンナーの効果でカードをドロー!!いけ、ネクロイドシャーマン!!姉ちゃんに…一葉へ直接攻撃!!」

 

「(思い、受け取ったよ…十代。でもね…)リバース罠、ソニック・マジックを発動!!手札の通常魔法を墓地に送り、伏せてある通常魔法を発動する!!」

 

 

そういって一葉は手札に残っていた融合を墓地へと送った。

 

 

ネクロイドシャーマンの攻撃は伏せカードから漏れ出した光によって止められた。

 

 

「私が伏せていたのはヒーローアライブ!!フィールドにモンスターが存在しないため、ライフを半分払ってデッキからレベル4以下のHEROを呼び出す!!お願い、フラッシュ!!」

 

 

E・HEROフラッシュ/DEF1600

 

一葉/LP1900→950

 

 

登場したのは銭湯破壊されることによって効果が発動するモンスターだ。おまけに発動状況も整っている。

 

 

「(フラッシュは破壊されると墓地のE・HERO3種類と自身を除外することで通常魔法を回収するモンスターだ。墓地にあるのは融合とヒーローアライブだけだ…)そのまま続行だ、ダーク・シャドウ・ストライク!!」

 

 

「わかってると思うけどフラッシュの効果!!破壊された自身とアブソルートZero、フォレストマン、オーシャンを除外してヒーローアライブを手札に!!」

 

 

手札もフィールドのカードもなし、その状況で融合を手札に加えることはないとわかっていた。そして十代は紫苑のデッキを熟知している、ヒーローアライブで呼び出されたとしても一発逆転ができるモンスターはない。そうなれば――

 

「(次のドローが勝負…!!)ターンエンド!!」

 

 

十代

LP3400 手札2枚

ネクロイドシャーマン/ATK1900

伏せカード1枚

 

―一葉のターン―

 

「私のターン!!手札から融合回収を発動!!墓地の融合と融合素材となったエアーマンと融合を手札に!!」

 

 

ここ一番でのドロー運、やはり一葉と十代は似ていた。

 

 

「そしてヒーローアライブを発動!!ライフを半分払ってデッキからレディ・オブ・ファイアを召喚!!」

 

 

レディ・オブ・ファイア/ATK1200

 

一葉/LP950→475

 

「エアーマンを召喚!!」

 

 

エアーマン/ATK1800

 

 

今度は召喚されたエアーマン。そう、一葉はこのデュエルの最中でもデュエリストとして成長している。その理由はただ一つ――

 

 

「(勝ちたい…十代に、勝ちたい!!)」

 

 

勝つことへの枯渇、それが彼女の闘争心という本能に火をつけたのだ。

 

 

「エアーマンの効果でデッキからアイス・エッジを手札に!!そして融合を発動!!フィールドのレディ・オブ・ファイアと手札のアイス・エッジを融合!!焼燬せよ、ノヴァマスター!!」

 

 

ノヴァマスター/ATK2600

 

 

この状況で最善となる盤面、それを見て剱都と万丈目は血がつながってなくても一葉は十代の姉なのだということ改めて認識した。

 

 

「バトルフェイズ、ノヴァマスターでネクロダークマンに攻撃!!エクストリームフレイム!!」

 

「うわあああ!!!」

 

 

十代LP3600→2900

 

 

ダメージを受けてがら空きとなった十代のフィールド。しかしそれだけではない。

 

 

「ノヴァマスターの効果でカードを1枚ドロー!!」

 

 

そう、このドローだ。いつも十代が行う大逆転のドロー、それがまさしく今のタイミングだった。

 

 

「エアーマンで直接攻撃、エアーショット!!」

 

 

「うぐあああああ!!!」

 

 

十代LP2900→1100

 

 

 

一気に追い詰められた十代。決着がつくと思ってたら手痛いしっぺ返しが来たものだなとジュードはどこか遠い目で見ていた。

 

 

「カードを伏せてターンエンド!!さあ、十代…楽しもうよ、デュエルを!!」

 

 

一葉

LP475 手札0枚

ノヴァマスター/ATK2600 エアーマン/ATK1800

伏せカード1枚

 

 

―十代のターン―

 

 

「いわれなくても、俺はいつもデュエルを楽しんでるぜ…俺のターン!!」

 

 

 

「なんつーか…まさに姉弟だな」

 

「ええ、子供の様に喧嘩をして、そして楽しく遊ぶ…そんな感じですね」

 

 

剱都の言葉にももえも同意した。先ほどのギクシャクした感じは全くない。文字通り遊んでいる二人に紫苑は自分がデュエルを通して2人に分かり合えると思ったのは間違いではなかったと安堵した。

 

「魔法カード、コクーンパーティを発動!!俺の墓地のNの数だけCを特殊召喚する!!墓地にはブラック・パンサーとエア・ハミングバードが存在するためデッキから来い、Cチッキー!!Cパンテール!!」

 

C・チッキー/ATK600

 

C・パンテール/ATK800

 

呼び出された二匹のサナギ。しかし、おかしいと思ったのは呼び出されたのは墓地にいるCだった。

 

 

「その可愛らしいモンスターにどんな効果が秘められてるのかな?」

 

「こいつらはまだサナギだ、けどそのサナギはやがて成長するんだ!!永続魔法、コクーン・リボーンを発動!!俺のフィールドCに対応したNを墓地から呼び出す!!」

 

 

そう、手札にネオスペースもコンタクトもない十代だったが、今ドローしたのはコクーン・リボーンだったのだ。

 

 

 

「来い、N・ブラック・パンサー!!N・エア・ハミングバード!!」

 

 

登場したのは相手に変化する効果を持つNと相手の手札の枚数分ライフが回復するNだった。だが前者は有用なコピーができず、後者は一葉の手札が0枚。

 

「そして手札のスペーシア・ギフトを発動!!俺のフィールドのNの数だけカードをドローする!!来た、墓地のネクロダークマンの効果を発動!!このモンスターが墓地に存在する場合、1度だけE・HEROの召喚のリリースをなくすことができる、来い、ネオス!!」

 

 

E・HEROネオス/ATK2500

 

 

十代のデッキでエースとなった上級のHEROだ。だがそれでもわずかにノヴァマスターの攻撃力を下回っている。

 

コンタクト融合をするにしてもエアー・ネオスは自分のライフが相手よりも低くなければ発動しないし、ブラック・ネオスを召喚する意味はない。

 

 

「どんなプレーをするのかな?」

 

「初めてのコンタクト融合だ!!行くぞ、ネオス!!ブラック・パンサー!!エア・ハミングバード!!」

 

 

十代の声に応えるかのようにうなずいた3体は飛び上がった。剱都達はレオンとの戦いで行われたというトリプルコンタクト融合というものをすると気づいた。

 

 

「すべてを切り裂く暴風よ、その力を聖なる戦士に携えろ!!」

 

 

体がブラック・ネオスのように真っ黒となるが、エアーネオスのような巨大でありながら蝙蝠のような翼を持つネオスが宇宙空間から襲来した。

 

 

「来い、E・HEROラグナ・ネオス!!」

 

 

ラグナ・ネオス/ATK3000

 

 

「ラグナ・ネオスの効果を発動!!1ターンに1度、ライフを1000ポイント払ってフィールドのすべてのモンスターを破壊する!!」

 

 

E・HEROラグナ・ネオス

融合・効果モンスター

星9/風属性/戦士族/攻3000/守2500

「E・HERO ネオス」+「N・ブラック・パンサー」+「N・エア・ハミングバード」

自分フィールド上に存在する上記のカードをデッキに戻した場合のみ、

融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。

「E・HEROラグナ・ネオス」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1)自分のライフを1000ポイント払うことでフィールドのこのモンスター以外のモンスターをすべて破壊する。

(2)エンドフェイズ時、このカードを融合デッキに戻してお互いの手札をすべて捨てる。

 

 

十代/LP1100→100

 

 

「すべて壊せ、ラグナロク・インパクト!!」

 

「きゃああ!!」

 

 

一瞬でエアーマンとノヴァマスターが破壊されてしまった。そしてこれで一葉のフィールドは伏せカードのみになってしまった。

 

 

 

「っ…すごいね、十代」

 

「姉ちゃんも、初めてのデュエルで紫苑のデッキをそこまで使いこなしてるなんてな」

 

 

まるで紫苑とデュエルをしてるような感覚に陥った十代。それが初心者の一葉が演じてるというのが驚きだった。

 

 

「まだまだだね、たぶん紫苑ちゃんならこの伏せカードをもっと有用な時に使えただろうし」

 

「伏せカード…?」

 

 

 

そう、残されている伏せカード。伏せられたそれは英雄変化などのフィールドのHEROを対象としたものだと十代は予想していた。

 

 

 

「うん、これが今の私の限界…だから、次は負けない。リバース罠、英雄防衛-リフレクター・ダメージ!!」

 

「ッ、それは!!」

 

 

それは十代と紫苑が初めて戦った時に使ったカードだ。

奇しくもそれは今回の時と同じだった。

 

 

 

「私のフィールドのE・HEROの融合体が破壊されたとき、そのターン破壊されたモンスター1体に付きお互いに400ポイントのダメージを与える!!」

 

 

「つまり、お互いに800のダメージ…」

 

「そうなれば、お互いにライフが…!!」

 

 

 

レイの言う通り、その結果生み出されるのはお互いのライフが0になる、つまり――

 

 

「すげぇ、姉ちゃんすげぇよ…最後にこんなトラップを仕掛けてるなんて…!」

 

「ふふ…これが私の全力。ありがとうね、紫苑ちゃん。おかげで分かり合えたし…引き分けちゃったけど」

 

 

そう苦笑いをする一葉。しかし、紫苑は首を横に振った。その眼はまだ「勝負は終わってない」といってるようだった。

 

 

「一葉さん、あなたの思ってるよりも、十代はしぶといですよ」

 

「ああ、速攻魔法、非常食を発動!!俺のフィールドのコクーン・リボーンを墓地に送ってライフを1000ポイント回復させる!!」

 

 

僅かなライフ回復。しかし、それが運命を決した。

 

 

 

十代/LP100→1100→300

 

一葉/LP450→0

 

 

「うへぇ…まさか最後にそんな手があるなんて」

 

 

若干呆れたように一葉は十代のしぶとさを感じていた。

 

―アカデミア港:夕方―

 

 

「本日はありがとうございました」

 

 

十代と一葉の全力での戦い。そのあと当初の予定と違い十代や剱都を含めた一同で一葉の案内をした。その後はそれぞれのデッキの特徴や、デュエルをしてるところを観察したりして本来の目的である見学を終えた。

 

 

「十代、たまには顔を出しなさいよ。父さんも母さんも久しぶりに会いたいだろうし」

 

「わかってるって。けどもう帰る時間もないし、今度長期休暇になったら連絡する」

 

 

夕方の便で戻ってきたアカデミア生徒の視線もあるため、キャラであるクールビューティーのウノに戻った一葉に十代はまっすぐとその目を見て言った。

 

デュエルを通して二人は分かり合えて前以上に笑いあえるようになった。それこそ長い間離れ離れになっていたシゲルと響のように。

 

 

「紫苑ちゃん、十代は結構危なっかしいところがあるからしっかりしてね」

 

「はい」

 

 

ちなみに一葉と紫苑もこの中では比較的仲が良くなっているほうだった。どうやら一葉ももう一人の姉妹というように紫苑を認識し始めたようだった。

 

 

そして程なくしてフェリーは港を出た。十代達はそのフェリーが見えなくなるまで一葉に手を振っていた。

 

 

 

 

「今日は有意義な時間になったのかしら?」

 

「ええ……それにしても…」

 

 

二階堂の言葉に一葉は十代の後ろで見送ってくれていたジュードの顔を思い出しながらポケットの中のあるモノを取り出した。

 

実は、大露天風呂で彼女の秘密を打ち明けたがもう一つ、言ってないことがあった。

 

 

 

「アカデミアに転生者…か。私も打ち明けたほうが良かったかな?」

 

 

そう呟きながら一葉は『自分の転生者の証』にキスをするかのようにして考えていた。

 

 








今回は前話の『眠れる弱者』とほぼ同時期の話です。
シゲル「だから俺やユウ達は未登場だったってわけか」

今回はユベル編の導入の一部ということで十代の過去について触れる話ですね。
紫苑「これで私たちも十代の精霊について周知の事実になりましたが…」
前に行ったように原作では精霊界を行き来するのですが、この作品はないです。
そのため、十代がユベルについて思い出すシーンもなければ鮫島校長がみんなにユベルについて話すシーンもカットします。
剱都「そのためにあらかじめ知ってるってことか」

ちなみに最初に考えてた内容とは違うんですよねぇ
ツバキ「最初?」
大露天風呂に行くまでの流れは一緒なんですけど、その際『十代の家族』ということで紫苑がテンパってという流れからデュエルの勉強ということで紫苑と十代のデッキを使用する一葉とのデュエルを考えてたんだけど、大露天風呂での会話を考えてたらなぜか一葉が義姉になってゴーストシティにいたという設定になりました。
ユウ「うん、なんで?」
会話が途切れたり、いろいろとあって…ついでに最初は十代にすごいスキンシップが激しい姉という設定だった。

義姉にして十代に対して負い目がある感じにしようとしたらユベルが見えて敵意を持ったら十代がそれが自分だと思ったという流れになりました。
ツバキ「あ、あれ?なんか覚えが…」
思い込みという点では同じだね。ただツバキと剱都と違ってその誤解はすぐに溶けるんだけどお互いに近寄りがたくなったということに。
ついでにその設定ができた時に一葉が転生者ということにしてみようということになりました。

ついでに一葉の設定は以下

名前:遊城一葉
愛称:一葉 ウノ
使用デッキ:なし
フェイバリットカード:なし
身長:171cm
体重:○○○kg
髪の色:抹茶色(即時スプレー使用時のみ焦げ茶色)
眼の色:ブロンド

遊城十代の義姉。ユウが移住する数年前までゴーストシティで過ごしていた。親はおらず、引き取ってくれた遊城夫妻を本当の親のように慕っている。
十代と血のつながりがないことは彼が幼少のときに聞いていたが、本当の姉弟のように慕っていた。しかし、彼の当時のフェイバリットモンスターの精霊が引き起こした事件により溝が出来上がってしまった。

その後、逃げるようにアイドルへの道に進み、家に帰らないように打ち込んだ結果新人でありながら人気No1のトランサーのウノとなった。

デュエルの腕は初心者ながら筋がいいほうで借り物の紫苑のデッキで十代を追い詰めるほど。

実は転生者の一人でジュードとほぼ同時期にこの世界にやってきた。しかし十代の一件やアイドル活動に専念した結果デュエルモンスターズから離れてしまい参戦することはなかった。


ウノ
遊城一葉の芸名。クールビューティーであり、冷静だが時折見せる笑顔が素敵という人気。
アイドルグループ『トランサー』のリーダーも務めており、歌やダンスだけではなく舞台やドラマなどにも幅広く出演しており、今度は映画の主役を務めることになった。
ついでに本来の一葉は笑顔が絶えず明るい性格なのだが十代との一件で必死に打ち込んだ結果スイッチのON/OFFで性格が切り替わるようになった。


彼女が今後デュエルするかは未定。
シゲル「にしてもいい腕前だったな…」
本当に初期の紫苑ぐらいの腕前と思ってくれたらいいね。だけど当時の紫苑にはない『本能』で動ける技量があるため、デュエルの中で成長してます。
紫苑「当時の私にはない…」
ついでにデュエルの決着は本当は新しいフェイバリットのフレイムウィングマンで決めたかったけど流れ的にネオスも出したくてあきらめました。


さてと、次話は不在だったユウとツバキ、シゲルが戻ってきての『チーム・ノーバディ』としての話です。
ユウ「次話はすぐに?」
んー…何話かストックを作ってから投稿するつもりですけど、遅くとも4月の頭ぐらいまでには出そうと思ってます。
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