遊戯王GX~ノーバディ・レコード~   作:銀猫

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~第七章Pay the tab編~
Turn107 5人目


 

「デュエルアカデミアの航海は無事に終了しそうだ。懸念されてた台風も想定よりも早く勢力を弱めてルートを逸れたため、快晴のクルーズは最高のものになっている」

 

 

アカデミア近海に浮かぶクルーザーのラウンジ、そこにメガネをかけた青年がボイスレコーダーを片手に旅の記録をつけているようだった。

 

 

「――ただ、ひとつ問題があるとすればこの豪華客船に乗っている客が6人だけということだった」

 

 

そう、この船は大きさ的にはアカデミアの一つの学年の生徒が乗っても余裕が有るほどの大きさだ、しかし今はゴーストシップのように人がいないのだ。

 

 

「一人はこの僕、アモン・ガラム。もうひとりはジム・クロコダイル・クック。どうやらあそこが彼のお気に入りの場所らしい」

 

 

アモンの見下ろすプールサイドにはワニに寄りかかって気持ちよさそうに昼寝をしている片目を包帯で覆ったカウボーイのような青年がいた。

 

 

「3人目と4人目はプロフェッサー・コブラとオースチン・オブライエン…だが、この2人はほとんど部屋から出てこない」

 

 

クルーザーには食堂もあるが部屋で食事を取ることもできる。そのためアモンが2人と会ったのは乗船時とちょっとした打ち合わせの時だけだった。

 

 

「5人目は…」

 

 

 

アモンがジムとは逆のプールサイドを見ると楽しそうに海を眺めている少女がいた。

 

 

「リチャード・チェルベック。男性のような名前だが可愛らしい少女だ。ただ、この最近でノースのトップとなったためその実力は未知数だ。ちなみに海を眺めてるのが好きのようでよくジムと一緒にプールサイドにいるのを見る」

 

 

その時、船に併走するようにイルカが泳いできて高くジャンプしたため、驚きながらも花のような笑顔を見せるリチャードがいた。

 

 

「そして6人目は……『ゴースト』」

 

 

―アカデミア屋上―

 

 

「十代、最近どうかしたんですか?」

 

「…んー?」

 

 

どこか気の抜けている十代はぼーっとしながら空を見上げていた。

 

 

「お姉ちゃんみたいになにか悩みでも?」

 

「悩み…じゃないんだけどな。ただ…ちょっと思い出したことがあってな」

 

 

どこか後悔したようにため息をつく十代に紫苑は怪訝そうに眉を顰めた。

 

 

『クリ?』

 

『クリクリ~?』

 

「相棒?」

 

「どうしたのですか、ウル」

 

 

2匹のクリボーはどこかを見つめて首を傾けていた。十代と紫苑もその方向を見ると可愛らしい猫のような生物がいた。

 

 

『ルビィ。ルビルビ!!』

 

 

するとその精霊は物陰から飛び出すとハネクリボーとウルの近くまで駆け寄った。尻尾にルビーのような宝石が付いているその姿はどう考えても精霊だった。

 

 

「なんだこいつ…リス?」

 

「いえ、おそらくこの姿はカーバンクルでしょう。空想上の生物で額に赤い宝石がある小動物と言われています」

 

『ルビ!』

 

 

紫苑の予想に「正解!」というようにそのカーバンクルは鳴いた。

そのカーバンクルはハネクリボーとウルとじゃれあっていた。

 

 

「お~い、ルビー!」

 

『ルビ!』

 

 

するとそのカーバンクルのマスターなのか、藍色の髪の少年が立っていた。嬉しそうに体をよじ登って肩に登った。

 

 

「こんなところにいたのか」

 

「よお!」

 

「ん?」

 

 

十代と紫苑はクリボーたちを引き連れてその少年に近寄った。一方の少年も十代達に呼びかけられたからか同じように近づいた。

 

 

「そいつ、ルビーっていうのか?」

 

「ああ、こいつはカーバンクルのルビー」

 

 

やはり紫苑の予想が当たっていたようだ。

 

 

「それってハネクリボー?それに青いクリボー?」

 

『クリクリ~!』

 

『クリ!』

 

 

やはりというべきか十代は他校交流デュエルでテレビに出たこともあり、ハネクリボーも珍しいモンスターのため有名のようだ。

 

 

「じゃあ、君が遊城十代?へぇ、もう一匹クリボーがいたのか」

 

「あ、いや。こっちのウルクリボーは俺のじゃなくて」

 

「私の精霊です」

 

 

ウルは紫苑の胸に飛び込むと彼女の言葉に「そうそう」と頷いていた。

 

 

「君は?」

 

「姫野紫苑です。ところで…見ない顔ですが新入生の方ですか?」

 

 

確かに十代と紫苑はアカデミアの最高学年となり、ほとんどの生徒の顔を見たはずだがその少年は全く見覚えがなかった。

 

 

「まあ、そんなところだ」

 

「へぇ…」

 

「アニキ~!」

 

「紫苑、やっと見つけた、始業式始まるよ!」

 

 

そこにやってきた翔とツバキ。そう、今日は新学期、そして新入生を迎える始業式があるのだ。

 

 

「いっけね!」

 

「もうこんな時間でしたか…あなたも早く来なさいね」

 

 

十代と紫苑はクリボーを引き連れて屋上を後にした。

 

 

―講堂―

 

 

「さて、今日より新しい一年が始まるわけなのだが、それぞれの思いを胸にこれからの一年を悔いのないように過ごして欲しい」

 

「万丈目、お前まだレッドにいるのか?」

 

「ああ、何かとあそこの暮らしも静かでいい」

 

 

未だに万丈目はレッド寮にいる。昨年の成績ではイエロー、ギリギリブルーの規定も越しているため変わることもできたのだが本人の希望で残ったのだ。

 

 

「本音はブルーまで歩くのがめんどいんだろ?レッドの方が違いし」

 

「ふん、俺専用のブラック寮が出来るのなら校舎に併設させてやる」

 

 

 

「では次に、新入生を代表して早乙女レイ君に宣誓をしてもらうでアール」

 

 

 

ナポレオンがレイを指定したのは響は小学・中学に通っていなかったためそういうのをやること以前に見ることも経験が皆無だったのだ。

ちなみに学力的には休みの間に紫苑に見てもらっていたため十代よりもある。

 

 

「でもお前の部屋、レイに取られただろ?」

 

「うるさい」

 

 

残念ながら特別改装した部屋は唯一女子のレイの部屋となってしまった。ちなみにセキュリティやプライバシーもブルー女子寮並に強化されているため下賎な考えを持つ生徒が来るのなら即退学となる。

 

 

「宣誓、我々新入生はデュエルアカデミアの規律を守り、デュエリストとしての誇りと相手へのリスペクトを重んじ、日々精進することを誓います。新入生代表、早乙女レイ」

 

 

宣誓を終えて一礼し、退場するレイを生徒は拍手で見送った。

 

 

「それと、来月よりI2社より発表があることが決定した」

 

 

その言葉に生徒は再びざわめいた。I2社といえばデュエルモンスターズを生み出し、管理している企業だ。つい2年前にシンクロモンスターについて発表したのも真新しい出来事だった。

 

 

「シンクロモンスターの導入によるゲーム環境の調整のため、2つのルールが変更される。まずは先行のプレイヤーはドローフェイズにドローする事ができなくなる」

 

 

「まじで!?」

 

「先行で優位なシンクロモンスター並べてたからな…展開力が落ちるな…」

 

「うわーん!」

 

 

 

まさに阿鼻叫喚、後攻なら攻撃権を得ることができたが先行の展開を上回なければそのまま力押しで主導権を奪われて負けていることが多くなっていた。

 

 

「もう一つはフィールド魔法についてだ。これまでならお互いにフィールド魔法はあわせて1枚しか発動できなかった。しかしルール改定によりお互いにフィールド魔法を発動しても破壊されないようになった」

 

 

「えっ、どういうことだ?」

 

「つまり、今までならお前がスカイスクレーパーを発動してる時に俺がコロッセウムを発動したら破壊されてただろ?それがなくなってお互いにフィールド魔法の効果を使えるってことだ」

 

 

理解できてない十代にシゲルがたとえを使って説明をすると納得していた。

 

 

「じゃあ、この前みたいに僕のフィールド魔法が相手のフィールド魔法の発動で破壊されることがなくなるってこと?」

 

 

「ああ、そうだ」

 

 

先日のユウとツバキの戦いでは序盤にユウの展開力の要であるスピリット・フィールドが破壊されて苦戦していた。それがなくなるというわけだ。

 

 

「このことに関しては来月に正式に発表されるが我が校では既に新規ルールを用いてデュエルすることにする。くれぐれも注意するように。そして本年度はデュエルアカデミアの生徒の能力向上を願い新しい生徒たちを迎え入れることにした。デュエルの発展を目指すデュエルアカデミアには世界各地にその分校が点在する」

 

 

そう言われてほとんどの生徒は2年前にあった他校交流デュエルを思い浮かべていた。ちなみに去年は光の結社及びジェネックスのため執り行われていない。

 

 

「今年は、そこの主席の生徒を我が学園に迎え入れることにした」

 

 

噂としては流れていたが本当に他校の生徒が来ると言うにざわめいた。

 

 

「では紹介しよう。デュエルアカデミアイースト校代表、アモン・ガラム君」

 

 

一人目はメガネをかけた好青年だった。

 

 

「2人目はデュエルアカデミアウェスト校代表、オースチン・オブライエン君」

 

 

次に入ってきたのは褐色肌の鍛えられた体が見え隠れする青年。その姿を見て釼都の目つきが変わった。

 

 

「(あいつは…)」

 

 

「デュエルアカデミアサウス校代表、ジム・クロコダイル・クック君」

 

「Year!」

 

どこか楽しそうに入ってきたのはワニを持ち上げた冒険家のような青年だった。というより――

 

 

「ワニ!?」

 

「剥製…じゃねぇな、目も動いてるし」

 

 

驚くユウの横でシゲルが呆然としていた。まさかワニを持ってくる生徒がいるとは思わなかったからだ。

 

 

「次はデュエルアカデミアノース校、リチャード・チェルベック君」

 

 

入ってきたのは名前から想像してた予想と違い、可愛らしい少女だった。彼女は手を振りながら入るとジムの横に並んだ。どちらかというと長身のジムに比べたら彼女は翔ぐらいの小柄な背丈だった。

 

 

「(あいつか…リチャード・チェルベック……敵か味方か…)」

 

 

目を細めた荒木はリチャードの顔を睨むようにして見ていた。

 

 

「最後はデュエルアカデミアアークティック校、ヨハン・アンデルセン君」

 

 

残り一人――名前が呼ばれたはずなのだが誰も入ってこなかった。

 

それにざわめいていると万丈目が反応した。

 

 

「ヨハン…ヨハン・アンデルセン。まさか…宝玉獣デッキを持つヨハンか!」

 

「宝玉獣…あれか」

 

 

その存在をその場にいた中で唯一知っているのはペガサスのもとにいたシゲルだけだったようで反応していた。

 

 

「宝玉獣?」

 

「なんか知ってるの?」

 

 

紫苑とユウの言葉に万丈目は腕を組みながら説明をした。

 

 

「かつて万丈目グループはあらゆる財力を使いI2社から宝玉獣のカードを買い上げようとしたことがあった」

 

「万丈目先輩…」

 

「ずっと前の話だ!」

 

 

ジト目になったジュードに万丈目は切り捨てた。まあ、確かに兄と決別した万丈目にそんなことをする力はないだろう。

 

 

「確か、ローマ帝国を支配したユリウス・カエサルの権力の象徴として各地の宝石を用いて石版を作ろうとしたことがあった。だがその宝石は嵐で海に沈んだのをI2社が見つけ、そのカードの成分より7つのカードを作ったんだったな」

 

「ああ、そのカードはどれほどの金を積み上げても売らず、とある大会の優勝者に譲った…」

 

 

「けど、来てないんだよね」

 

 

ツバキの言うとおり、そのヨハンが姿を見せないのだ。すると生徒用の自動ドアがスライドした。

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…いやー、遅れた遅れた」

 

「あれ?あいつは…」

 

「屋上にいた方ですね」

 

 

十代と紫苑は見覚えがあった、先ほどであった生徒だ。

 

 

「よぉ、新入生。ところでヨハンってやつ知らないか?」

 

「あ、いや十代君…」

 

 

 

十代はその生徒にヨハンについて聞くと少年は少し笑って頭を掻いた。

 

 

「あー、悪い。騙すつもりじゃなかったんだけど…」

 

「…十代、よく考えろ。新入生が私服で学園にいると思うか?」

 

 

釼都の言葉に十代と紫苑は考えるようにしてハッとした。

 

 

「えっ、じゃあ…?」

 

「ああ、俺がヨハン。悪いな、勝手に新入生に勘違いされちゃってさ…」

 

 

そう、彼こそが最後の5人目の生徒。ヨハン・アンデルセンだった。

 

 

「では改めて、デュエルアカデミアアークティック校代表、ヨハン・アンデルセン君」

 

 

鮫島校長の言葉にヨハンは舞台に上がり手を振った。

これで一年間アカデミアに滞在する生徒が揃った。

 

 

「それと…今の生徒は知らないが復学することになった生徒も紹介しておこう」

 

 

そう言うとユウたちには見覚えが有る生徒がやってきた。

 

 

「彼は藤原優介君。訳があり学園を休学していたがこの度3年生として復学することになった」

 

 

優介は一礼すると一同は拍手をした。

 

 

「(藤原優介…聞いたことがある。デュエルアカデミア始まって以来の天才だと。行方不明と聞いていたが…生きていたのか)」

 

 

アモンは横目で優介を見て考えていた。するともうひとり、生徒ではない大柄な男性が入ってきた。

 

 

「それと、もうひとり紹介しておこう。今年、特別講師としてウェスト校より赴任した、プロフェッサー・コブラ!」

 

 

「あいつ…」

 

「ああ、相当なやり手だな。デュエリストとしても…な」

 

 

その気迫に気づいたシゲルと釼都はそうつぶやくような小声で話していた。

 

 

「こんにちは、諸君」

 

 

海外の出身だからなのか、若干訛りの入った挨拶をするコブラ。アカデミアの教師よりも気迫があるその雰囲気に生徒は息を飲んだ。

 

 

「本来ならここで延々と挨拶を述べるところだが、そんなものを聞いても君たちの足しにはならん。私の教育方針としては座学も大切だが何より実戦あるのみ。学んだことを使いこなせないのならタダの時間の無駄だ」

 

 

「ほー、話のわかる先生じゃん」

 

「お前は座学が嫌いなだけだろ」

 

 

十代の言葉にシゲルはため息をついてツッコミを入れた。しかしそういうシゲルや紫苑達も座学よりも実戦が身になると思っている。

 

 

「あらかじめ、生徒達のデータも閲覧したがあくまでデータ。実際に見るものとは違う。早速だが、エキシビジョンマッチを執り行わせてもらいたい」

 

「!?」

 

「エキシビジョンマッチ!?」

 

「聞いてないノーネ」

 

 

教師陣はコブラの言葉に驚いていた。生徒もざわめいていたがコブラはそれを手で制した。

 

 

「なに、今日来た5人の実力がどのようなものなのか諸君らも気になっているであろう。そこでこの場にいるヨハン・アンデルセンと藤原優介に行ってもらいたい」

 

「ん?」

 

「俺が?」

 

「残念ながら復学も急に決まったようなので私も彼の実力を知らない。この場を借りて試させて欲しいのだ」

 

 

確かにそれは納得できる、今度の授業で似たようなことをやる予定だっため、別段断る必要もない。

 

 

 

 

「では2人とも、右手を前に」

 

「「?」」

 

 

コブラの前に並んだ2人だが言われるがまま右手を出すと腕時計のようなものが装着された。

 

 

「荒木、あれはなんだ?」

 

「…デスベルトと呼ばれる。コブラが自分の目的のためにアカデミアの生徒を利用するんですけど…」

 

「待て、ここじゃ人が多い、後で話し合うぞ」

 

 

ジュードの言葉に釼都は制した。確かに無関係の生徒も多くいる。荒木も頷くとまっすぐとリチャードを見た。

 

 

 

「これは?」

 

「なに、ちょっとした測定装置だ。では会場の準備もあるため、30分後にデュエルを開始する」

 

 

―購買横休憩室―

 

 

校舎内の一番広い部屋で誰も来ないのがここのため荒木の呼びかけに釼都と万丈目、如月の3人が集まった。

 

 

「で、どういうつもりだ?」

 

 

ほかのメンバーはどういうわけか如月の指示でデュエルフィールド、コブラ、そしてリチャードを手分けして張り込んでいた。

 

 

「実は、オレがこの世界のことをアニメで見てたのは今日の話までなんです」

 

「今日の話…」

 

 

つまり、今後荒木に起こるであろう事象を聞いても宛にはできないということだ。

 

 

「オレがダチのツテとあわせて覚えてるのは今年一年間で…細かいことは忘れたが赴任してきたコブラが生徒を使ってとある精霊を復活させるつもりなんだ」

 

「精霊…三幻魔みたいなのか?」

 

「いや、なんて言ったっか…まあ、この前の破滅の光のような奴で、コブラは自分の死んだ子供を生き返らせるためにその精霊と手を組んでいた」

 

「子供…」

 

 

コブラの年齢は見てもわかるとおり子供がいてもおかしくはなかった。しかし、あの気迫で子供がいるというのも妙なものだった。

 

 

「その名前は確かリック。コブラは当時軍人で戦場でただひとり残されていた赤子を保護した。その赤子を引き取り、親戚が世話をしていたらしい」

 

「なるほどな」

 

 

あの重々しい気迫の正体を知って釼都は納得していた。確かにあれほどの雰囲気を戦場で養っていたというのなら納得できる。

 

 

「はいはい!じゃあ、なんであのリチャードって子も張らせてるんですかぁ~」

 

 

手を挙げてまるで記者のようにメモを取っていた如月が質問をした。確かにそれだけなら生徒――しかも一人だけを見張る必要もないはずだ。

 

 

「覚えている中で来た生徒は4人、アモン・ガラム、ジム・クロコダイル・クック、オースチン・オブライエン、ヨハン・アンデルセン…本来なら5人目なんていなかった」

 

「なるほどな、つまりあの5人目の生徒も怪しいってことか」

 

 

万丈目の言葉に荒木は頷いた。釼都はまた戦いが起こるということに大きなため息をついた。つい先日光の結社、プラネットシリーズ、アンゲロスと連戦したばかりなのに休息する暇がないのだ。

 

 

「荒木、お前はジュードたちに知らせろ。如月はコブラについて調べろ、そのリックっていう子供、精霊についてもだ。万丈目は十代たちに、俺はユウたちに話す」

 

「はーい!じゃあひと足お先にアジトに向かいますねぇ~」

 

 

そう言うと如月は近くのターミナルへと向かった。荒木はリチャードを見張っているジュード、釼都はコブラを見張っているユウ、万丈目はデュエルを見守っている十代のもとへと急いだ。

 

 

―デュエルフィールド―

 

 

「ではこれより、ヨハン・アンデルセンと藤原優介のエキシビジョンを始める!!」

 

 

時間となり、フィールドに現れたヨハンと優介は互いに握手をするとそれぞれのポジションへとたった。

 

 

「よろしく頼むぜ、先輩!」

 

「ああ、お手柔らかにな」

 

 

「先行はヨハン・アンデルセンより。ではデュエル開始!!」

 

 

審判代わりの教師の言葉にお互いにディスクを起動させるとカードを5枚ドローした。

 

 

―ヨハンのターン―

 

 

「俺のターン、っと。そうかドローはできないんだ…なら、宝玉獣エメラルド・タートルを召喚!!」

 

 

「わぁ…綺麗…!!」

 

ヨハンのフィールドに緑色の宝石――エメラルドの結晶が出現するとそれが光り出して砕けた。

 

それが一体の亀に姿を変えた。

 

 

 

エメラルド・タートル/DEF2000

 

 

『ふぁ~…よく寝てたのに、なんだねヨハン』

 

「ここが前に話してた、デュエルアカデミアさ」

 

 

どこかから聞こえた老人じみた声にヨハンがやれやれというように説明をするとその甲羅の中の目が辺りを見回した。

 

 

『ほぉ…ここが、確かにいい目をした子がたくさんおるのぉ』

 

「頼むからいいところ見せてくれよ?それに、今日の相手は…一筋縄じゃ行きそうにないぜ」

 

 

ヨハンの声にエメラルド・タートルは優介を見た。

 

 

『なるほど…確かに、今まで見てきたどの相手よりもいい顔つきじゃ』

 

 

「精霊か…いや、古の宝石の成分から生まれたカード、ある意味では必然だな」

 

 

優介は精霊のカードは持ってないがダークネスの力に身を染めていたためか精霊の姿を捉えることができる。

 

 

「カードを伏せて、ターンエンド!!」

 

 

ヨハン

LP4000 手札3枚

エメラルド・タートル/DEF2000

伏せカード1枚

 

 

―優介のターン―

 

「俺のターン、魔法カード融合を発動!!手札のミニマムレイとマルティプリガイを素材にV・HEROアドレイションを融合召喚!!」

 

「HERO!?しかもいきなり融合か…!!」

 

 

アドレイション/ATK2800

 

 

フィールドに出たのは彼のデッキで一番出しやすく攻撃力もある司祭だった。

 

 

「いきなり融合召喚…」

 

「いや、V・HEROは墓地にあってもアドが取れる。この選択に間違いはない」

 

 

以前カミューラとの戦いで融合のデメリットを聞いたユウは優介が初手でこのような動きをするというのに心配そうだったが効果を知っているシゲルはその動きに納得していた。

 

 

「リバース罠、誘発召喚!!相手がモンスターの特殊召喚に成功したときお互いにレベル4以下のモンスターを手札から召喚できる!!」

 

「だがそのモンスターはエンドフェイズに戻るはずだ。なかなかマイナーなカードを使ってるな」

 

 

ツバキのアンゲロスのような特殊召喚に反応するカードがあるのならいいのだが、それでもほかにいいカードがあるはずだ。

 

 

「へへっ、相手の動きをもっともっと見て、そして勝つにはいいカードだぜ」

 

「…なるほど、相手のプレイングにいちいち口を出すつもりはない。その効果使わせてもらおう、俺はV・HEROブラッドリバースを召喚!!」

 

 

ブラッドリバース/ATK2200

 

 

「攻撃力2200!?」

 

「ああ、ただしブラッドリバースは召喚することができない」

 

 

V・HEROブラッドリバース

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/ATK2200/DEF0

「V・HEROブラッドリバース」が魔法・罠ゾーンに存在する場合(1)の効果を発動することができない。

(1)このカードが墓地に存在し自分が戦闘・効果ダメージを受けた時、このカードを永続罠扱いで魔法・罠ゾーンに表で置く事ができる。

(2)自分フィールドのモンスターを1体墓地に送ることで魔法・罠ゾーンのこのモンスターを特殊召喚することができる。

(3)このモンスターは召喚することができない。

 

 

「なら俺は…来い、コバルト・イーグル!!」

 

『おっしゃー!』

 

 

コバルト・イーグル/DEF800

 

 

 

「バトルフェイズだ、アドレイションでエメラルド・タートルに攻撃!!アンビション・サンクションズ!!」

 

「くっ!!」

 

 

一撃で流れを持ってきた優介に彼を知らない生徒は相当な腕前だと認識することができた。残念ながらその存在がカイザーや吹雪と肩を並べるほどの実力者ということは知らないが。

 

 

「さらにブラッドリバースでコバルト・イーグルへ攻撃!!」

 

『ぬおぁ!!』

 

「イーグル!!」

 

 

これでヨハンのフィールドはガラ空きだ。しかし気になるのはなぜ誘発召喚を発動させたのか。コバルト・イーグルに何か効果があったのだろうか。

 

「…?」

 

 

すると優介は妙なものを発見した。破壊したはずのエメラルド・タートルとコバルト・イーグルが召喚前に出てきた結晶と同じで魔法・罠ゾーンに置かれているのだ。

 

 

「俺の宝玉は常に一緒にいる。フィールドで破壊された宝玉獣は永続魔法扱いで俺のフィールドに残る!!」

 

「……なるほど、面白い…!!」

 

 

どこかで聞いたことがある効果に悠介は面白そうに笑った。

 

 

「カードを伏せてV・HEROグラビートを召喚。グラビートは召喚に成功すると守備表示となる」

 

グラビート/DEF2000

 

 

「ターンエンドだ。そしてブラッドリバースは手札に戻る」

 

優介

LP4000 手札1枚

アドレイション/ATK2800 グラビート/DEF2000

伏せカード1枚

 

 

―ヨハンのターン―

 

「俺のターン!!俺は宝玉獣アメジスト・キャットを召喚!!」

 

『あら、ヨハン。なかなか苦戦してるじゃない』

 

 

アメジスト・キャット/ATK1200

 

 

「ああ…やばい相手だぜ。魔法カード宝玉の導きを発動!!俺のフィールドに宝玉となっている宝玉獣が2枚以上あればデッキから宝玉獣を特殊召喚する、来い!!トパーズ・タイガー!!」

 

『やはり俺がいないとな、ヨハン!』

 

 

トパーズ・タイガー/ATK1600

 

 

フィールドに2体の宝玉獣が並んだ。しかし両方ともアドレイションよりも攻撃力が低く、グラビートの守備にも到達していない。

 

 

「さらに魔法カード、レア・ヴァリューを発動!!俺のフィールドに永続魔法となっている宝玉が2枚以上あるとき相手はそのうちの1枚を選択する。選択された宝玉を墓地に送って2枚のカードをドローする!!」

 

「…なら、コバルト・イーグルを墓地へ」

 

 

引いたカードをみてヨハンはニヤリと笑った。

 

 

「俺は宝玉の解放をトパーズ・タイガーに装備する!!装備されたモンスターの攻撃力を800ポイントアップする!!」

 

『いつでもいいぜ、ヨハン!!』

 

 

「バトルフェイズ、トパーズ・タイガーはモンスターに攻撃する時その攻撃力を400ポイントアップさせる!!アドレイションに攻撃だ!!」

 

 

トパーズ・タイガー/ATK1600→2400→2800

 

 

アドレイションはトパーズ・タイガーの捨て身の攻撃に破壊された、しかし宝玉獣であるトパーズ・タイガーは宝石となりヨハンのフィールドに出現した。

 

 

「さらに宝玉の解放の効果で破壊されたとき、デッキから新たな宝玉を魔法・罠に置く事ができる。俺はルビーをフィールドに出す!!」

 

「…だがそのアメジストはグラビートの守備よりも攻撃力が低い」

 

『あら、私は攻撃力を半分にすることで直接攻撃することができるのよ』

 

「なに!?」

 

 

アメジスト・キャットはその名のとおり身軽な動きでグラビートを翻弄すると優介の目の前に飛び込んだ。

 

 

「アメジスト・ネイル!!」

 

 

アメジスト・キャット/ATK1200→600

 

 

「くっ…!!」

 

 

優介/LP4000→3400

 

 

 

序盤から押していたはずの優介だが先制されたことに生徒は驚いた。しかし優介は慌てることなく、むしろ笑っていた。

 

 

「かかったな」

 

「ん?」

 

 

「墓地のミニマムレイとマルティプリガイの効果を発動!!俺がダメージを受けたとき、このモンスターは永続罠として俺のフィールドに出すことが出来る!!」

 

 

そう宣言すると融合素材となった2体のモンスターが霧のような幻影となって登場した。

 

 

『あたしたちに似た効果を持つモンスター…!?』

 

「…なるほど、永続魔法として扱う宝玉獣と永続罠として扱うV・HERO…!」

 

「なんとも数奇なデュエルだな」

 

 

このデュエルを見てる生徒や教師は今までの基本が覆すような光景を目の当たりにしていた。お互いにモンスターが魔法・罠に存在するのだ。

 

 

「俺はカードを伏せてターンエンド!!」

 

ヨハン

LP4000 手札0枚

アメジスト・キャット/ATK1200

ルビー・カーバンクル エメラルド・タートル トパーズ・タイガー 伏せカード1枚

 

 

 

「あの人が…?」

 

「ああ、なにか動きがあったか?」

 

 

荒木から聞いた情報をユウとシゲルに釼都が伝えるがコブラはエキシビジョンマッチが始まってから『一度も席を立っていない』のだ。

もし荒木がより鮮明に話を覚えていてこの時の違和感に気づいていたのなら――

 

 

 

―優介のターン―

 

 

「俺のターン、俺は闇の誘惑を発動!!カードを2枚ドローし、手札のブラッドリバースをゲームから除外する。フィールドのグラビートの効果を発動!!このモンスターをリリースすることで魔法・罠ゾーンのV・HEROを2体特殊召喚することができる、その幻影から姿を表せ、ミニマムレイ!マルティプリガイ!」

 

 

ミニマムレイ/ATK1200

 

マルティプリガイ/ATK800

 

 

守備状態だったグラビートが消えるとミニマムレイとマルティプリガイが幻影の中から実体となって飛び出した。しかし攻撃力はアメジスト・キャットと同じと下回っている。

 

 

「ミニマムレイの効果を発動!!魔法・罠ゾーンから特殊召喚に成功すると相手のレベル4以下の表側表示モンスターを1体破壊する、アメジスト・キャットを消しされ!!」

 

『きゃぁっ!!』

 

「アメジスト・キャット!!」

 

 

これでヨハンのフィールドに4つの宝玉が集まった。

 

 

「さらにマルティプリガイの効果は魔法・罠ゾーンから出たとき攻撃力が1600ポイントアップする!!」

 

 

マルティプリガイ/800→2400

 

 

「攻撃力2400!?」

 

「最後はこれだ、V・HEROインクリースを召喚!!」

 

 

インクリース/ATK900

 

 

これで優介のフィールドのモンスターの攻撃力の合計が4000ポイント超えた。全て通ればヨハンの負けとなる。

 

 

「バトルフェイズ、V・HEROインクリースで直接攻撃!!」

 

 

「くっ!!」

 

 

ヨハン/LP4000→3100

 

 

「次にミニマムレイで攻撃!!」

 

 

「うわぁ!!」

 

 

ヨハン/LP3100→1900

 

 

「最後だ、マルティプリガイで直接攻撃!!」

 

「まだ終わらないぜ、リバース罠ラスト・リゾートを発動!!相手の攻撃宣言時、デッキからフィールド魔法虹の古代都市―レインボー・ルインを発動する!!」

 

 

今までならフィールド全体がフィールド魔法のステージへと変わったがルールによって変わったせいなのかヨハンの背後だけに綺麗な虹がかかった遺跡へと変わった。

 

 

「そしてレインボー・ルインの効果、それは俺のフィールドの永続魔法となった宝玉によって変わる!!3枚以上存在する場合戦闘ダメージを一度だけ半分にする!!」

 

 

レインボー・ルインから虹のバリアが貼られるとマルティプリガイの攻撃を吸収したが威力が弱くなった程度でヨハンにそのまま直撃した。

 

 

「くっ!!」

 

 

ヨハン/LP1900→700

 

 

「ギリギリで耐えたか…ターンエンドだ」

 

 

優介

LP3400 手札1枚

インクリース/ATK900 マルティプリガイ/ATK2400 ミニマムレイ/ATK1200

伏せカードなし

 

 

「なるほど、あれが宝玉獣デッキを扱うヨハンという男か」

 

「エド?」

 

「お前、何しに来たんだ」

 

 

観客席にいた十代達の近くにはなぜかプロリーグ中のエドがやってきた。彼がいるということはカイザーもいるかと思ったが一人のようだ。

 

 

「おいおい、僕はまだこの学園の生徒だ。それにプロといっても常に仕事があるわけじゃない。今日は都合よくオフだ、それなのに宝玉獣のデュエルを見ないわけにはいかないだろ」

 

 

「何か知ってるのか、宝玉獣について」

 

 

後ろの席に座ったエドに十代がそう聞いた。エドは手を組むと少し考え込むような仕草でフィールドを見据えた。

 

 

「あれは…僕がある大会で優勝してI2社のパーティに招待された時だ。その時ペガサス会長から話を聞いた」

 

 

―回想:I2社ビル―

 

世界屈指の大企業ということもあり、ただの立食パーティにしては豪華な会場。来賓からの挨拶もそこそこにエドは軽い食事をとっていた。

 

 

「フェニックスボーイ」

 

「!」

 

 

呼びかけられて振り返るとそこにいたのはペガサスだった。

 

 

「会長」

 

「ノー、そう固くならずに。それよりもワンダフォーなデュエルでした。ユーの才能はミーが知ってる中では5本の指に入る実力デース」

 

 

そう言うとペガサスは指折りでそのデュエリストの名前を挙げ始めた。

 

 

ひとりは言わずと知れたデュエルキングの武藤遊戯

 

二人目はそのライバルである海馬瀬人

 

三人目は生涯の友である城之内克也

 

 

「そして4人目がユー」

 

「…もうひとりは?」

 

 

ちょっとした好奇心で聞いてみた。思い浮かべるのはプロリーグで活躍する名のあるデュエリストだった、しかしペガサスの口から出てきたのは予想外の名前だった。

 

 

「ヨハン・アンデルセン」

 

「ヨハン?」

 

 

聞いたことのない名前だった。少なくともプロデュエリストではないし、世界規模の大会で優勝したデュエリストにもそのような名前の人物はいなかった。

 

 

「数年前にヨーロッパの大会にミーが出席したときデース。アンデルセンボーイが戦い始めたとき、会場に持参していた宝玉獣のカードが光出したのデース」

 

「宝玉獣!?あの古代ローマ繁栄の証の…!?」

 

 

その噂はエドも聞いたことがあった。しかしその噂はいつの間にか消え失せ、宝玉獣は伝説のレアカードとしてしか名前が上がらなくなっていた。

 

 

「ミーはそのカードをアンデルセンボーイにプレゼントしたのデース」

 

「信じられない…あのデッキは値段の付けられないデッキなのでは…」

 

「仕方がないのデース、カードがそのボーイを選んだのデース」

 

 

―回想終了―

 

その時エドはペガサスの言うカードが選ぶという意味がわからなかった。しかし、今ならわかった。

 

 

「あのカードは強力な精霊でもある…それこそ、ユウ達の持つドラゴンや君の持つネオスのような」

 

「強力な精霊…」

 

「カードに選ばれる、それはつまりモンスターとの繋がりを示すことになる。その結果がフィールドから離れない効果になるというのなら…計り知れないほどに強い」

 

 

―ヨハンのターン―

 

「俺のターン!!レインボー・ルインの効果、4種類以上宝玉がある場合カードを1枚ドローできる!!宝玉獣サファイア・ペガサスを召喚!!」

 

『ともに行くぞ、ヨハン!!』

 

 

サファイア・ペガサス/ATK1800

 

 

「サファイア・ペガサスの効果、召喚に成功したときデッキ・手札・墓地から宝玉を1枚だけ魔法・罠ゾーンにセットできる、デッキからアンバー・マンモスを出す!!」

 

これでヨハンの魔法・罠ゾーンに5種類の宝玉が集まった。フィールドのサファイア・ペガサスと墓地のコバルト・イーグルを含めると全ての宝玉獣が集まった。

 

 

「レインボー・ルインの効果、宝玉が5枚以上ある場合、その内1体を特殊召喚することができる、来い、ルビー!!」

 

『ルビー!』

 

 

出てきたのは可愛らしいカーバンクル、それに見ていた女子生徒は「きゃー!」と黄色い声援を上げた。

 

ルビー・カーバンクル/ATK300

 

 

「ルビーの効果を発動、特殊召喚に成功したとき魔法・罠の宝玉を可能な限りモンスターゾーンに出すことが出来る!!ルビー・ハピネス!!」

 

 

『ルビィ!!』

 

 

ルビーの尻尾の先の宝石から光が放たれると宝玉の当たり、そして砕けて中から宝玉獣がヨハンのフィールドに並んだ。

 

 

トパーズ・タイガー/ATK1600

 

アンバー・マンモス/ATK1700

 

エメラルド・タートル/ATK600

 

 

「一気にモンスターを5体並べた…これが宝玉獣の力か…だが、まだお前のエースは出ていないのだろう?」

 

「!!」

 

 

「まだエースが出てないだと!?」

 

 

優介の言葉に図星なのか、ヨハンが言葉を失った。観客席でその声が聞こえた万丈目や生徒たちもここまでの戦いをしてるのにその全容がヨハンのデッキでは明かされていないというのにざわめいた。

 

 

「なんでわかった!?」

 

「簡単だ、今まで出てきたモンスターは全てレベル4以下…強力な効果もあるがそれでも下級モンスター止まり。そうなれば…考えられるのはエースがまだ登場してないということだ」

 

 

小声で「それで互角な勝負な俺もまだまだだが」と呟いているがヨハンには聞こえていないようだ。 

 

 

 

「ああ、まだ出してないぜ。俺のデッキにいる7つの宝玉が揃った時に出現する究極のモンスター、レインボードラゴンを!!」

 

「出さないのか出せないのかは知らないが…必ず引きずり出してやる」

 

「(出せたら苦労しないんだけどな…)」

 

 

そう意気込む優介だがヨハンはどこか乾いた笑みを浮かべていた。

 

 

「速攻魔法、M・フォースを発動!!効果によりトパーズ・タイガーの攻撃力を500ポイントアップさせる!!」

 

 

トパーズ・タイガー/ATK1600→2100

 

 

「バトルだ!!トパーズ・タイガーでマルティプリガイへ攻撃!!トパーズ・バイト!!」

 

 

トパーズ・タイガー/ATK2100→2500

 

「くっ…!!」

 

 

優介/LP3400→3300

 

 

「アンバー・マンモスでミニマムレイへ攻撃!!アンバー・スタンプ!!」

 

「うっ…!!」

 

 

優介/LP3300→2800

 

 

「サファイア・ペガサスでインクリースに攻撃!!サファイア・トルネード!!」

 

「っ…まさか全滅するとは…!!」

 

 

優介/LP2800→1900

 

 

「まだだ、ルビー・カーバンクルとエメラルド・タートルの直接攻撃!!ルビー・ソニック!!エメラルド・カッター!!」

 

「ぐっ…!!」

 

 

優介/LP1900→1600→1000

 

 

「ライフがほぼ並んだ…」

 

「けどフィールドは圧倒的にヨハンのほうが有利だ」

 

 

戦いを見守っていたリチャードとジムがそう話していた。その二人から離れたところにいるジュードと雪乃も戦いを見守りながらリチャードを監視していた。

 

 

 

「だがダメージを受けたたとき墓地のV・HEROは幻影となり蘇る…来い、インクリース、ミニマムレイ、マルティプリガイ!!」

 

 

優介のフィールドに3つの幻影が出現した。もしこれでなにかのモンスターを引いてマルティプリガイを出せばヨハンのライフを削ることが出来る。

 

 

「そうすると思ったぜ、エメラルド・タートルの効果!!このターン攻撃を行った自分のモンスターを1体守備表示に変更することができる!!アンバー・マンモスを守備に!!」

 

 

アンバー・マンモス/ATK1700→1600

 

 

「そしてアンバー・マンモスは他の宝玉獣が攻撃を受けるときに対象を自分にすることができる!!」

 

「なるほど…仲間を守る壁というわけか…」

 

 

「ああ、ターンエンドだ!」

 

ヨハン

LP700 手札0枚

サファイア・ペガサス/ATK1800 アンバー・マンモス/DEF1600 エメラルド・タートル/ATK600 ルビー・カーバンクル/ATK300 トパーズ・タイガー/ATK2100→1600

アメジスト・キャット

虹の古代都市-レインボー・ルイン

 

 

―優介のターン―

 

 

「俺のターン!!手札から魔法カード、幻影融合を発動!!このカードは自分の永続罠として扱うV・HEROを除外することで融合することができる!!」

 

「幻影を使った融合召喚!?」

 

 

すると優介のフィールドのインクリースとミニマムレイが除外された。

 

 

「幻影の魂を救う救世主よ、その力を解放せよ!!」

 

 

フィールドにアドレイションに似た風貌だがどちらかというと絵画などに描かれている人々を導く天使のようなモンスターが登場した。

 

 

「来い、V・HEROメシア!!」

 

 

メシア/ATK2200

 

 

「メシアの効果を発動!!1ターンに1度手札のカードを墓地に送ることで幻影となっているV・HEROを特殊召喚する、マルティプリガイを特殊召喚!!」

 

 

 

V・HEROメシア

融合モンスター

星8/闇属性/戦士族/攻2200/守2000

「HERO」と名のついたモンスター×2

「V・HEROメシア」の(1)効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1)手札を1枚捨てることで魔法・罠ゾーンに永続罠として存在する「V・HERO」モンスターを1体特殊召喚することができる。

 

マルティプリガイ/ATK800→2400

 

 

「これで攻撃が通れば…!」

 

「バトルフェイズ、メシアでアンバー・マンモスに攻撃!!ロード・リベレート!!」

 

「くっ…!!」

 

 

これでヨハンのモンスターを守る壁がなくなった。

 

 

「マルティプリガイでエメラルド・タートルに攻撃!!」

 

「まだだ!!」

 

 

そう宣言した瞬間、レインボー・ルインが輝きだした。

 

 

「レインボー・ルインの効果でダメージを半分にしたところで無駄だ!!」

 

 

「いいや、忘れてるぜ!!俺がまだ、エースカードを出してないことを!!」

 

 

 

「このタイミングで出るというのか、レインボードラゴンは!?」

 

 

エドが驚いたように口にした。相手の攻撃タイミングで手札もない、それなのにその名前を出すということは一体どのようなモンスターなのか――

 

 

「俺のフィールドと墓地に7種類の宝玉が存在する場合、世界をつなぐ光がこの地に蘇る!!」

 

 

「……(ん?待てよ…)」

 

 

ヨハンが何かをしてる尻目に観客席のシゲルがゴソゴソとあるカードを取り出した。

 

 

「これが宝玉獣の奇跡!!」

 

 

フィールドと墓地の宝玉が空に舞い上がるとそれが合わさり、ひとつのモンスターをかたどった。

 

 

「これが…レインボードラゴン…」

 

「……なーんてな」

 

 

 

ヨハン/LP700→0

 

 

モンスターが消えるとマルティプリガイの攻撃がそのままエメラルド・タートルを破壊した。

 

 

「……なんだ今の」

 

 

ざわめく観客たち。一瞬見えた影がレインボー・ドラゴンだとするとなぜ消えてしまったのか。

 

 

「いや、まいったまいった…レインボー・ドラゴンはじつは、まだ俺のデッキにないんだ」

 

 

そう言って高笑いするヨハンに呆然とする優介、そしてその言葉に野次を飛ばす観客たち。

 

 

 

 

「だってしょうがないだろー!まだ手に入ってないんだからー!」

 

「手に入ってない…宝玉獣の宝玉と何か関係あるのか?」

 

「ああ、もともとユリウス・カエサルは宝玉を収める石版を用意してたんだ。その石版にレインボードラゴンの姿が書かれているらしい。ペガサス会長も石版が見つかればカードにしてくれると言ってくれてるんだけどなかなか見つからないらしいんだ」

 

 

その言葉にシゲルは冷や汗をかきながら手元のカードを見た。

 

 

「(……今度、ペガサスに連絡しよう)」

 

 

そこにあったのは【究極宝玉神レインボー・ドラゴン】だった。

 

 

なぜシゲルがもっているのか。それは『この世界の』レインボードラゴンではないからだ。そう、響がアイリスとして管理局にいた時に異世界より手に入れたカードだ。

 

別段このカードをヨハンに渡してもいいのだが…なにかややこしいことになそうだとやめておくことを決めてシゲルはそれを保管しているSinデッキに戻した。

 

 

「なにはともあれ、素晴らしいデュエルをした2人には賞賛の拍手を送ろうではないか」

 

 

そう言いながらコブラがやってきた。するとライフ表示をしていた画面がなにかの数値を表示した。

 

 

「あれは…?」

 

「この数字はこのデュエルでの2人のプレイング、デッキレベル、戦術を数字化したものだ。その腕につけたデスクロージャーベルト、通称デスベルトがデータを算出する仕組みになっている。既にこのベルトを用いてサウス校の成績が大幅に上がった実績もある」

 

 

そう言うとコブラの横に並んだ鮫島がマイクを手にして生徒を見回した。

 

 

「今年度はこれを試験的に使用して生徒らのデュエルの腕を上げることを目標とするデスクロージャーデュエル、通称デスデュエルを行うことを宣言する。詳しい説明は午後の授業でクロノス先生より通達されるのでしっかり聞くように」

 

 

―廊下―

 

 

「――って訳だ」

 

ひとまずノーバディと荒木以外の転生者、それと十代と明日香を集めた釼都は事の次第を説明した。ちなみに問題のコブラとリチャードは荒木と万丈目が見張っている。

 

 

「なるほどね」

 

「それで、どうするの?」

 

「荒木が覚えてるのはコブラの目的ぐらいだ。いつ行動に移すのかわからんし、しばらくは見張るしかないな。リチャードの方は今現在如月が調査中だ。紫苑、ツバキはリチャードの監視、ジュードと雪乃、それと十代はコブラの監視をやってくれ」

 

「釼都はどうすんだ?」

 

 

釼都の指示だが、見張るのは2グループに分かれたら十分のため残った釼都たちがどうするのか。

 

 

「知ってると思うやつが一人な、念の為にシゲルとユウにも来てもらうぞ」

 

「僕ら?」

 

「…念のためって、何があるんだ?」

 

 

―廊下―

 

 

「今年、なんでしょ?」

 

 

人気のない廊下そこを歩く一人の生徒。しかしその言葉を聞く人はいないはずだった。

 

 

『そうなんだね』

 

 

だが、その声に聞こえない言葉が響いた。その言葉を聞ける人間はわずかしかいない。

 

 

「どうするの?」

 

『君が言う『原作」っていうのも面白いんだけど、それを知ってる彼女や彼らを欺くのも悪くないね』

 

「相変わらず、キミは人をからかうのが楽しいんだね…」

 

 

ため息をついてやれやれと肩をすくめるその生徒はデッキケースの中にあるカードを撫でて笑った。

 

 

『十代の驚く顔、楽しみだよ』

 

 

 

―別の廊下―

 

「久しぶりだな、オブライエン」

 

「………」

 

 

呼びかけられたオブライエンは睨むようにして釼都を見ていた。その横にはユウとシゲルも一緒にいた。

 

 

「知り合いなのか?」

 

「…親父がオブライエンの父親の依頼人だった関係で、だ。まあ、驚いた。父親の跡を継いで傭兵になると思ってたんだがな」

 

「ダディから教わったサバイバルをどう活かすかは俺次第だ。そういうお前も会社を放置してアカデミアにいるとは思ってもみなかった」

 

「なに、総裁ともなれば我が儘も言えるからな。それにガキの俺がいてもできることなんてあまりないしな」

 

 

ユウとエドのように久しぶりに会う友人のようだがどこか警戒するようなやり取り。

 

 

「で、答えろ。本当の目的はなんだ?何を指示されてる?」

 

「…そう言われて俺が口を割ると思ってたのか?」

 

 

そう言われてオブライエンは腰からショットガンのような形のデュエルディスクを取り出すとそれを腕にはめた。

 

 

「ああ、言わないだろうな。お前が教わったプロとしてあり方に反するからな。けど俺には背中を守る仲間が居る。不確定な危険因子を放置するほど甘くはねぇ」

 

 

釼都も自身の黄色いデュエルディスクをセットした。

 

 

「お前が奴らの仲間かどうか、何をしようとしてるのか吐いてもらうぞ!!」

 

 

 

 




またせたな!
ユウ「うるさい」

シゲル「やけに時間がかかったな」
先に言っておくと次話は最後のところの続きで剱都VSオブライエンだけどそれまでは書き終えてるからね
紫苑「ではなぜこんなに遅れたんですか」
本当にある理由でキャラの立ち位置に迷って迷走してた…
まあ、いい感じのポジが思いついたので…

ツバキ「とりあえず作中説明に入るね」

まず一番最初、ここは原作の流れを汲んでるね
ユウ「けどボイスレコーダーに記録するところの出だしが違うね」
ただ単に幕間で新入生を出す理由で台風を使ったんだけどアニメじゃ快晴だったから。それ以外に理由はない。

シゲル「で、問題の…荒木が言ってた5人目か」
リチャード・チェルベック。ブロンドの短髪、小柄の見た目。
笑顔が可愛らしいというぐらいのいたって普通の少女。
剱都「なあ、リチャードって男性の名前だろ?」
うん、まあ名前がなんでそうなってるのかは今後。

紫苑「私は原作だと悪夢を見ていた十代と一緒ですか…」
あの時はあの精霊のことを忘れてましたがこの話では一葉がいたのもあり、覚えてます。
そして紫苑がいるためカーバンクルの説明があったからあのセリフを泣く泣くカット…
ツバキ「あのセリフって?」
ああ!
シゲル「ここで使うな」

剱都「で、ルール改定か…」
今までマスタールールでやってたけどさすがにもう古くなったかなって。
エクシーズとペンデュラムは出ませんけど。
紫苑「それじゃあマスタールール3に移行したときに変更すればよかったのに…」
正直ここまで長くやるとは思わなかった。
というわけで今回からマスタールール3でストーリーが進みます。

ツバキ「で、デュエルだね」
剱都「原作だと十代だったが、優介さんか…」
病院にいなかったメンバーにV・HEROのことを見せたかったし、永続魔法として扱うモンスターVS永続罠として扱うモンスターって構図も面白いからね。

ユウ「けどこのデュエルの流れって…」
ほぼ十代VSヨハンと同じです。

シゲル「…なあ、お前レインボードラゴンをどうするんだ?」
どうしようかな。本当は精霊界でレインボードラゴンのカードを使用不能にされたがシゲルが持ってるみたいなことにしようかと思ったんだけど精霊界に行かないからね…まあ、追々考える。

ユウ「そして転生者と同じ原作を知る人…」
誰なんでしょうね~
シゲル「また伏線張りやがって…」


紫苑「剱都とオブライエンは知り合いなのですか…」
言ってるように竜也がオブライエンの父親のクライアントだったこともあるからね。その関係で顔見知り程度だけど。

さて、次回もお楽しみに!
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