綾小路のフィアンセデュエルから2日後――
―レッド寮ユウ・シゲルの部屋―
「………………………」
「………………………」
「…………………(はぁ…)」
終始無言のユウとツバキ。そしてその空気の中で本を読んでいたシゲルは心の中でため息をついた。あの日から2人の反応がこんな感じなのだ。
実を言うと2人共心の奥底では互いが互いを好きになっていた。だが、そのことを表に出てくることは無かったが――
―前日―
「あ、ユウ」
「おはよ、ツバキ」
朝に教室で2人が会った。それは普通の光景のはずだった。だが――
「…ユウって…好きな人…いるの…?」
「…………………え?」
突然のツバキの質問。だがユウの頭の中は先日のシゲルの言葉は響いていた。
『フィアンセは…恋人、許嫁……まあ、好きな人みたいなことだ』
好きな人――いや、何かに好意を抱く事は今まで無かった。
一緒に暮らしていた徹や澪に対して抱くのは家族的な意味の愛情だった。
けど、イナがあの日――試験から帰っている時に気になることを言っていた。
『そういえば…今日ユウなんか普段と違ったきがする』
「え?ボクはいつも通りだよ」
『いや~そうじゃなくて、ツバキを助ける時何か違う気が…気のせいかな』
それはどういうことだ?普段と違う――確かに初めてツバキを見た時、なんか心臓がバクバク言ってたような……もしかして…
それが…
『恋』?
「っ!!い、いや、そんなのよく分からない!あ、ツバキは!?」
「…………………」
ツバキの頭の中でもある言葉が響いていた。
『勝った方がツバキ君のフィアンセだ!!』
『フィアンセは…恋人…そんな感じだ』
シゲルがそう説明した時、そしてユウが綾小路に勝った時嬉しかった。確かに自分の為に此処までしてくれるのはうれしかった。だがそれとは何かが違う――
そう、ユウが笑顔で話しかけて来てくれる度に体が熱くなるような気がした。
そのことを前にダークに言ったら――
『ふむ…それは『恋』と言うとモノではないか?』
「こ、恋?そんな私ユウのこと……」
『嫌いではないんだろう?だった恐らくそれは恋だろう』
ダークがそう言った。だが、今までで自分の事を好きになった人や、逆に誰かを好きになった事はあるにはある。しかし、それと今回のことは何かが違う。
今まで人見知りの所為か、それとも家庭の事情か周りには仲間や友達…
その様な味方があまりいなかった。
だが試験会場で
アカデミアに入って自分と一緒にいてくれる十代、翔、明日香、隼人――
それからなぜか少しユウの事が気になっていた。
そう考えると――
「……………………(シュ~)」
「ツ、ツバキ!!頭から湯気が出てるよ!!」
――ってなことがあった。改めて考えるとお互いが相手の事が好きなのに気付いた。それから互いが互いの顔を見るのはなぜか恥ずかしくなっていた。
そしてシゲルは薄々そのことを察していた。が、恋愛に関してアドバイスなんて今までで一度もしたことが無かったから見守ることにしていた。が、
「……………………(気まずい)」
無言の空気はこの上なく体に響く。
その雰囲気に耐えれないのかイナやウリィと言った精霊達もカードの中に戻って――
『どうしたの?』
「神楽どうかした?」
『ううん。なんかマスターもツバキもいつもとなんか違うかな~って』
「「……………………」」
『私はいつもの2人が好きかな~って思うんだけどね』
神楽がそう言った。そしてユウとツバキは互いに見つめ合って――
「「………………………////」」
互いに目をそらした。神楽よ、どうやらお前の望み通りいくのは無理みたいだな。と、シゲルは心の中で落ち込んでいると、その時何処からかヘリの音が聞こえてきた――
「なんだ…?結構近いな」
そう言いながらシゲルは扉を開いて外を見ると超大型ヘリがレッド寮の前に着陸していた。何事かと思い十代達や大徳寺先生も部屋から出てきた。
そのヘリの機体には赤い文字で『AW』と書かれていた。
「なんだあのヘリ」
「あれって…
さまざまな戦場で軍事介入して戦争を止めるという目的の会社だが、
武器の販売、傭兵の派遣なども多々あり黒いうわさが絶えないのだ。
ちなみになぜユウも知っているのかというのかというと、
その総帥がデュエルモンスターズの大ファンで有名な大会で何回か優勝しているからだ。
と、そこに金髪のユウ達と同年代の少年が現れた。
「…此処にあいつがいるのか」
「はい、剱賭様。この島の中にお嬢様がいらっしゃいます」
金髪の少年―剱賭とその横にいたお爺さん――どうやら執事の様だが、誰か探しに来たらしい。と、その執事がユウ達の方を見て少し驚いた顔をしていた。
「剱賭様、いましたぞ」
「なに…どこだ?」
剱賭が執事に聞くと執事は優雅に手で何処か示した。その方向は――ユウとシゲル、そしてツバキだ。そして先程執事は「お嬢様」と言っていた。今現在レッド寮にいる女子は――
「っ…!!」
ツバキしかいない。そしてツバキを見つけた剱賭は嫌な笑みを浮かべた。
「そんなところにいたのか、迎えに来たぞ!!」
「ツバキ、知り合―――ツバキ!?」
大声で剱賭が言ったからシゲルが聞いてみた。が、ツバキは振るえていた。
何かに脅えている様に、ユウの服を掴んでガタガタ震えていた。
「ツバキ、大丈夫か!?」
「貴様…俺のものに何をしている」
「「………………はぁ?」」
珍しく十代とシゲルの声が被ってしまった。なんだか知らないが二日前に似たような光景があった気がする。そして――
「おい下衆…ふざけるな」
「っ!?」
ユウがキレて処刑モードになるのもつい最近見た気がする。
そして剱賭はユウの気迫に少しビビっていた。
「まあ…ユウがああなっているうちに聞くが…ツバキ、あいつとは知り合いか?」
「……私の……兄…」
「…ちょっと予想外だな」
シゲルはそう呟いたが、それがユウに聞こえていたかどうか分からない。
「お、おいユウ…!!?」
十代がユウを止めようと声をかけたら――背後に巨大な竜が見えた。
一瞬だけだが、確かに見えた。
だが、ユウのデッキの八岐大蛇ではなく、白銀の体に美しい翼を持ったドラゴンだった。
「お、俺のモノに手を出すとどうなるか分かってるのか!?」
「貴様の…モノ?ツバキをモノ呼ばわりするのは…どうなるのか分かってるのか…!?」
明らかに先日の綾小路の時よりも強い瘴気を――あ、翔が気を失った。
というかほぼレッド生徒が気を失っていた。
というか十代も顔を青くしてるのになんであの執事さんは平気なんだ?
見た感じもう定年を過ぎてもおかしくないぐらいの老人なのになんで平然とできるんだ?
「っ、っ…!!お、おいお前!!デュエリストならあいつを賭けて勝負しろ!!」
「いいだろう…シゲル」
「な、なんだ?」
突然ものすごくいい笑みで振り返ったのでシゲルもツバキも驚いて――あ、隼人が気を失った。それを見事にスルーしたユウはあるカードを取り出した。
「これぇ、つかってもいいかなぁ?」
「…っておい!!それまだ調整中デッキだろ!!」
「良いじゃん★こんなの肩慣らしにちょうどいいしね♪」
「っ!!1時間後、この学園のデュエルリングに来い!!1分でも遅れるな!!」
どんどんユウが壊れて行く気がした。最早こうなれば誰も止めれることなんてできないとシゲルはそう直感した。
もう早くこの場を離れたいのか剱賭はツバキ達の横を通り過ぎて――
「もう逃がさない」
「っ…!!!」
通り過ぎる時何かを小声でツバキに言っていた。残念ながらシゲルは聞き取れ――
「ツバキ、何かあったの?」
なんで10mぐらい離れてるユウは聞こえたんだ?しかもこの様子じゃ全部聞こえたみたいだ。ツバキはガタガタ震えながら泣いていた。
「私…実は記憶が無いの…」
「「「「…え?」」」」
ツバキの言葉にユウ、シゲル、十代、大徳寺先生が驚いていた。なぜこの4人だけかというと他の生徒は気を失っていたからだ。
といっても大徳寺先生や十代も青い顔をしていた。
「…10年前に…気が付いたら……知らない森の中にいたの……そこに羽黒 竜也って人が来て……私を引き取ってくれて……」
羽黒竜也と言うのはAW社の前総帥――つまりあの剱賭の父親だ。
だが前総帥は数年前にガンで死亡している。それから剱都が会社を継いで、ツバキが家を出た。
「けど…AWは……元々は戦争で…親を亡くした子供の保護を…目的とした会社なの。なのに…お義父さんが亡くなって…剱賭が総帥になってから…AWは…戦争を引き起こす会社に変わったの…」
そう言ってツバキは泣き崩れてしまった。兄妹の様に一緒にいた男が変わってしまったのだ。無理も無い。もういいと言わんばかりに――
「大丈夫」
ツバキを優しく抱きしめた。悪夢を見た子供を慰めるように、頭を撫でながら――
「ユ、ユウ…!?」
「…ボクも……大切な人達を失って、寂しかった。けどこの学校に来て皆に会えた。ボクが此処に来れたおかげは…ツバキのおかげなんだよ。だから…」
そう言ってユウはまっすぐツバキを見た。その目は全てを包み込むような優しい青い色をしていた。
「今度はボクがツバキを守る番だ」
ユウはそう言って部屋に戻って行った。調整中のデッキの最終調整とデュエルディスクを取りにだが、何故かシゲルも付いてきた。
「調整終わらすんだろ?手伝う…それであの野郎を全力で吹き飛ばしてみろ」
「…ありがと…シゲル」
―45分後―
新デッキの調整も終わったユウはシゲル、十代、ツバキと事情を聞いた明日香と三沢、目を覚ました翔、隼人と共にデュエルリングへと向かっていたのだが――
「此処から先へは行かせませんよ」
「山本さん!!」
校舎に入ってすぐのエントランスホールであの執事さん――山本がディスクを構えていた。
やはりというべきかタダでは通れないようだ。
「お嬢様、剱賭様の元へお戻りになってください」
「え…っと…執事さん?そこを通してくれませんか?」
ツバキはユウの後ろへ隠れてしまった。一応今は通常モードのユウは丁寧に頼んでみた、が山本はデッキをセットしていた。
「…たく。ここは俺に任せて先に行きな」
「いいでしょう…では始めますか」
シゲルの言葉に普通なら「私の相手はそちらの少年ですが」と言いそうだが素直に山本は答えた。それを見た他の7人がリングへと向うのを山本は見送っていた。
「…始める前に一つ聞きたい。どうして素直に俺の要求に応えた?俺が残るといってもあいつと戦うはずのユウを通したら意味がないんじゃないのか?」
「ほっほっほ…いえ…老人の単なる気まぐれですよ。では、私からも一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
互いにディスクを構え、そしてカードを5枚引いた。すると一瞬だけだが山本の眼は先程までのやさしそうな執事の目から戦場で相手を殺すような眼に変わった。下手なことを応えるとシゲルは山本に殺されてしまう気がした。
「あなたはお嬢様とは…?」
「…仲間だ……大切な…ダチ…それ以上でも、それ以下でもない」
一瞬山本の雰囲気に呑まれそうになったが、シゲルははっきりと答えた。それに満足したのか、雰囲気を離散させた山本は優雅に礼をした。
「ふむ…これ以上聞くのは失礼ですかね…では…」
「「デュエル!!」」
―シゲルのターン―
「先行は俺からだ。俺のターン。剣闘獣ダリウスを攻撃表示で召喚」
「ほう…剣闘獣か…おもしろい。」
フィールドに現れた馬の獣人を見て山本がそう呟いた。
しかし先程から山本のキャラが定まってない気がしてならないシゲルだった。
ダリウス/ATK1700
「カードを2枚伏せ、ターン終了」
シゲル
LP4000 手札3枚
ダリウス/ATK1700
伏せカード2枚
―その頃―通路―
「シゲル…大丈夫かな…」
「大丈夫っすよ!あのシゲル君なんすよ!!」
不安そうなツバキを慰めるように翔がそう言った。だがツバキがそう言うということは何か不安なことがあるのだろう。
「そういえばツバキ君。あの山本と言う人はどういうデッキなんだ?」
「…………あの人のデッキは……」
―エントランスホール―
―山本のターン―
『…あの老人のデッキ…何か嫌な予感がする』
「不吉なことを言うな…そういう不吉なことは本当に――」
デッキのウリィの言葉にシゲルはそう呟いた。今まで嫌な予感がして外れたことなんて無かった。だがこのデュエルで嫌な予感――全く見当がつかない。
ウリィが言うにはあの老人のデッキが普通とは違うらしいが――
「では私のターン!!剣闘獣ラクエルを攻撃表示で召喚!!」
「『………は?』」
ラクエル/ATK1800
―通路―
「剣闘獣なの」
「「「「「「…………はぁ!?」」」」」」
―再び戻ってエントランスホール―
「剣闘獣…ラクエル……レベル4の剣闘獣の中で上位のアタッカーに分類される獣人……まさか…あんたのデッキ…」
「ええ、私も驚きましたよ。私と同じ剣闘獣を扱う人がいるとは」
そう言って山本は装備カード剣闘獣の闘器デーモンズ・シールドを装備した。
闘器――それは剣闘獣の強化のためのカード。ということは…
「行きますぞ。ラクエルでダリウスへ攻撃!!」
「伏せカードオープン!!ディフェンシブタクティクス!!…剣闘獣デッキなら説明はいらないな」
そういった時山本は優しそうに頷いてラクエルをデッキに戻した。
「ええ。バトルフェイズ終了時、私はラクエルをデッキに戻し、剣闘獣ホプロムスを守備表示で召喚いたします!!」
ホプロムス/DEF2400
ホプロムス――やはりシゲルと同じ剣闘獣デッキだ。
「俺はダリウスを戻しムルミロを特殊召喚、更にハンディキャップマッチ!を発動!!デッキからエクイテを特殊召喚!!ムルミロの効果発動!!ホプロムスを破壊する!!」
ムルミロ/ATK800
エクイテ/ATK1600
ムルミロの泡に包まれたホプロムスは泡が弾けると同時に粉々になった。
「ふむ…デーモンズシールドは効果に手札に戻ります。カードを2枚伏せてターン終了」
山本
LP4000 手札3枚
モンスター無し
伏せカード2枚
―シゲルのターン―
剣闘獣デッキを使うシゲルは山本の伏せカードが気になっていた。剣闘獣の攻撃反応型罠カード――恐らくディフェンシブタクティクスなのだが、何かがおかしい。
「俺のターン」
剣闘獣デッキを使う場合、長所と短所は使う者が良く分かるはずだ。恐らくシゲルと山本のデッキはほとんど同じタイプのはずだ。
「(なぜ俺の伏せカードに躊躇せず突っ込んだ…)俺はラクエルを召喚!!そして場に存在するラクエル、ムルミロ、エクイテをデッキに戻しヘラクレイノスを特殊召喚…っ!?」
シゲルが融合せさたヘラクレイノスが――山本の場に現れた。
ヘラクレイノス/ATK3000
「伏せカード、剣闘の束縛を発動いたしました。自分の墓地に剣闘獣がいる時、相手の特殊召喚したモンスターのコントロールを得ます」
「っ…!!だから特殊召喚承知の上でムルミロの警戒をして無かったのか…」
永続罠
相手がモンスターを特殊召喚に成功した場合、
自分の墓地に存在する「剣闘獣」をゲームから除外し
その相手モンスターのコントロールを得る。
この効果対してに相手はモンスター効果、魔法、罠を発動することはできない。
その後、このカードを装備カード扱いでそのモンスターに装備する。
このカードが破壊された時、自分のゲームから除外されている「剣闘獣」と
名のついたモンスターを特殊召喚する。
このカードがフィールドから離れた時、装備モンスターのコントロールは相手へ移る。
「っ…俺はカードを2枚伏せてターン終了!!(ヤバイ…この人…今まで戦った中で一番強いかもしれねぇ…!!)」
シゲル
LP4000 手札0枚
モンスター無し
伏せカード2枚
―山本のターン―
「それでは私のターン。剣闘の誘いを発動!手札の剣闘獣と名のついたカード、デーモンズシールドを墓地に送ってカードを2枚ドロー!!」
通常魔法
手札の「剣闘獣」と名のついたカードを墓地に送って2枚ドローする。
「剣闘の誘い」は1ターンに一度しか発動できない
このカードを発動したターン、自分はモンスターをデッキに戻すことはできず、
モンスターを通常召喚・特殊召喚することもできない。
『デッキ』ではなく、『墓地』を基点とした戦法。その戦い方にシゲルは聞き覚えがあった。
「そうか…それが噂に聞く
「ほっほっほ…よくご存じですね」
一度だけペガサスからI2社のアジア支部本社で開発されたもう一つの剣闘獣――
だがその本社がある国がクーデターに逢い、同時に本社のそのカードのデータが消えた。
現存するのはテスト用に作られた『墓地獣』と呼ばれるデッキしかない――のだが
「なんであんたがそのデッキを持っている…ペガサスが探したが見つからないと言っていたはずだ」
「クーデターの収拾に前総帥の竜也様がAW社を向かわせまして…その時に回収されたと仰っておりました。ですが、いくつかのカードは世に流れ、完全に作り上げることができないと仰っておりました」
確かにそれなら合点がいく。墓地剣闘獣を持ち帰ったAW社の竜也はおそらく当時から繋がりのあった山本にそのデッキを渡したのだ。
「剣闘の誘いを発動したターンモンスターを出すわけにはいきません。ですので…ヘラクレイノスで直接攻撃!!バーストブレイカー!!」
「まともに喰らってたまるか…カウンター罠、
カウンター罠
相手の直接攻撃宣言時発動することができる。
デッキの一番上から剣闘獣と名のついたモンスターが出るまでカードをめくり、
そのモンスターを特殊召喚する。他のカードはデッキの一番下へ送る。
このカードを発動したターン終了時、特殊召喚したモンスターは破壊される。
「…ですが、貴方自身のモンスターの効果はご存知ですよね?」
「ああ…だがヘラクレイノスはカウンター罠を無効にすることはできない」
「なんと…!!」
どうやら山本はヘラクレイノスを使った事が無いらしい。ガイザレスやベストロウリィはシゲルしか所持していないため無理もないが――
「(
「ふむ…このまま下手に攻撃して伏せカードが発動する事もありますか…私はカードを2枚伏せてターンを終えます」
エンド宣言とともにホプロムスは砕けた。だがヘラクレイノスの驚異はまだ終わっていない。
山本
LP4000 手札2枚
ヘラクレイノス/ATK3000
伏せカード3枚 剣闘の束縛
―シゲルのターン―
「俺のターン!!(ッ…)俺は剣闘獣エクイテを守備表示で召喚!!このままターンを終える」
エクイテ/DEF1200
フィールドに青い鳥獣が現れるも、シゲルの顔は冴えなかった。
ヘラクレイノスをどうにかするカードが来ないのだ。
シゲル
LP4000 手札0枚
エクイテ/DEF1200
伏せカード1枚
―山本のターン―
「私のターン。永続罠、
永続罠 (制限)
手札の剣闘獣と名のついたカードを墓地へ送り
ゲームから除外されている剣闘獣を1体を選択し特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
ホプロムス/DEF2100
「そして手札より剣闘獣ダリウスを召喚いたします」
今度はシゲルがはじめのターンに出した馬の獣人が現れた。
ダリウス/ATK1700
「伏せカード
「……剣闘獣用のリビングデッドか…」
永続罠 (準制限)
自分の墓地に存在するレベル4以下の「剣闘獣」と
名のついた1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
セクトル/ATK 400
そしてセクトルが現れた。だがデッキに戻すことのできないセクトルを出した所を見るとホプロムスと融合し、マキロを出す――だがそれでも何かが違う気がしていた。
「そして剣闘の場のセクトル、ダリウス、ホプロムスをデッキ戻し剣闘獣デバハーツを特殊召喚!!」
「3体融合だと…!?」
フィールドに巨大な漆黒の馬が現れた。ダリウスが獣戦士、セクトルが爬虫類族なのに対しデバハーツは獣族だった。
デバハーツ/ATK2300
デバハーツ――聞いたことのないモンスターだった。おそらくはあのデッキのキーカードだろう。
「デバハーツの効果発動いたします。このカードが特殊召喚に成功した時、デッキより剣闘獣を2体まで特殊召喚します」
「なんだと!?」
剣闘獣デバハーツ
融合・効果モンスター
星8/闇属性/獣族/ATK2700/DEF2000
「剣闘獣ダリウス」+「剣闘獣セクトル」+「剣闘獣」と名のついたモンスター
自分フィールド上に存在する上記のカードをデッキに戻した場合のみ、
融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードが特殊召喚に成功した時、デッキより
「剣闘獣」と名のついたモンスターを2体まで特殊召喚することができる。
この効果を発動したターン、バトルフェイズを行うことはできない。
またこの効果を発動したターン、このカード以外の融合モンスターを
特殊召喚することはできない。
フィールドに鎧の様な物を着た虎の様なモンスターと、犬の様なモンスターが現れた。
ティゲル/ATK1800
ワーグ/DEF1300
「さらにティゲルのモンスター効果、手札のディカエリィを墓地に送り剣闘獣と名のついたモンスターを一体手札に加えます。剣闘獣ヘルバードを手札に加えます。そしてワーグの効果でカードを1枚ドローします」
「っ…流石の墓地獣…もう次のコンボの準備まで整えているのか…!!(だが…ヘルバード…?聞いたことの無い…)」
剣闘獣ワーグ
効果モンスター
星4/地属性/獣族/ATK 800/DEF1300
このカードは融合素材モンスターとして使用する事はできない。
このカードが「剣闘獣」と名のついたモンスターの効果によって特殊召喚に成功した時、
カードを1枚ドローする。
「デバハーツの効果を発動したターン、私は攻撃することはできません。カードを1枚伏せターンを終えます」
山本
LP4000 手札1枚
ヘラクレイノス/ATK3000 デバハーツ/ATK2300 ティゲル/ATK1800 ワーグ/DEF1300
剣闘の束縛 剣闘の復活 剣闘の解放 伏せカード1枚
―シゲルのターン―
「俺のターン!!来た…俺は剣闘獣ベストロウリィを召喚!!」
『ようやく儂の出番かの』
フィールドに鳥人が現れた。それを見て山本は驚いているようだ。剣闘獣ベストロウリィ――精霊が宿っている世界に1枚しかないカードだ。
墓地獣は元をたどれば剣闘獣と同じだから知らないモンスターに驚いても無理は無い。
「行くぜ…場のベストロウリィとエクイテをデッキに戻し、剣闘獣ガイザレスを特殊召喚!!」
「ほう…なかなか面白いカードを使いますな…ですがヘラクレイノス攻撃力には及びませんぞ」
攻撃力2400――確かに攻撃力が3000を超えるヘラクレイノスは越えることは無い――だが、ガイザレスなら越えることができる。
「ガイザレスの効果発動!!特殊召喚成功時、フィールド上のカードを2枚まで選択し、破壊する!!」
「なんと…!!この状況を一変するとは…」
ガイザレスの生み出した竜巻――それによりデバハーツと剣闘の束縛を破壊した。
縛るモノの無くなったヘラクレイノスは――
「剣闘の束縛の無くなったヘラクレイノスは俺の場に戻る!!」
「お見事…剣闘の束縛の効果、除外されている剣闘獣を特殊召喚しますが…除外されてる剣闘獣はいません。ですが伏せカード
「なに!?」
山本の場のカードが上がった瞬間、ホプロムスとアンダルが守備表示で召喚された。
ホプロムスは先程デバハーツの召喚時デッキに戻ったカード。
恐らく剣闘獣の咆哮は――
「デッキから特殊召喚系か…」
「その通りでございます。フィールド上の剣闘獣と名のついたモンスターが破壊された時、デッキから剣闘獣と名のついたモンスターを2体特殊召喚します」
通常罠
自分フィールド上に存在する「剣闘獣」と名の付いた
融合モンスターが相手のカード効果、戦闘で破壊されたとき発動できる。
自分デッキから「剣闘獣」と名の付いたモンスターを2体まで特殊召喚する。
ホプロムス/DEF2100
アンダル/DEF1500
「だが…2体の攻撃力の方が上だ!!バトルフェイズ、ガイザレスでアンダルに攻撃!!凱陣旋風!!」
「クッ……」
ガイザレスの攻撃でアンダルは吹き飛んだ衝撃で粉々に砕けた。
「ヘラクレイノスでティゲルに攻撃!!バーストブレイカー!!」
「っ!!!」
ヘラクレイノスの振り下ろした剣を受け止めようとしていたティゲルだが、努力虚しく潰された。
山本/LP4000→2800
一気に山本の場の主力モンスターを破壊した――が、どうも腑に落ちない。墓地獣のデッキがいかほどのものなのかはわからないが、此処までスムーズにいくのは何かがある。
「(戦力的に高攻撃力のモンスターは残しておきたい…)ガイザレスのデッキへ戻る効果は発動しない。ターン終了」
シゲル
LP4000 手札0枚
ヘラクレイノス/ATK3000 ガイザレス/ATK2400
伏せカード1枚
―山本のターン―
「私のターン」
山本の手札は先程ティゲルで手札に加えたモンスター…それと引いたカード。
どう考えても山本はこうなる事は予測していたはずだ。だが、この状況をひっくりかえせる方法も思いつかなかった。
「カードを1枚伏せてターン終了」
山本
LP2800 手札1枚
ワーグ/DEF1300 ホプロムス/DEF2100
剣闘の復活 剣闘の解放 伏せカード1枚
―シゲルのターン―
「俺のターン!(伏せカード…なにか気になるが、今ここで攻撃の手を緩めるわけには行かない…!!)俺はエクイテを攻撃表示で召喚!」
エクイテ/ATK1600
「エクイテでワーグに、ガイザレスでホプロムスへ攻撃!!」
これで山本の場のモンスターは無くなった――が、一枚の伏せカードが気になっていた。
今シゲルの手札は0枚。ヘラクレイノスの効果を発動するためのコストが無い分、罠カードが気なる。が、今は攻め時だった。
「ヘラクレイノスの直接攻撃!!バーストブレイカー!!」
「では、伏せカード剣闘の昇華を発動いたします。このカードは相手の直接攻撃宣言時、墓地の剣闘獣をゲームから除外し攻撃を無効にいたします」
永続罠
相手の攻撃宣言時、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合
効果を発動することができる。
墓地に存在する「剣闘獣」と名のついたモンスターをゲームから除外し、攻撃を無効にする。
この効果は1ターンに1度しか発動できない。
「墓地の剣闘獣アンダルをゲームから除外し、攻撃を無効にします」
「…(たんなる時間稼ぎ…か?だが次のターンで仕留めれる…)ターンエンド」
シゲル
LP4000 手札0枚
ヘラクレイノス/ATK3000 ガイザレス/ATK2400 エクイテ/ATK1600
伏せカード1枚
―山本のターン―
「私のターン。カードを一枚伏せ…では私はこのデッキのエースを召喚しますか」
「っ!?モンスターも無い状態で…エースを召喚だと!?」
そう言って山本は手札のモンスター――剣闘獣ヘルバードをフィールドに出した。
「私は剣闘獣ヘルバードを攻撃表示で召喚!!」
ヘルバード/星10/ATK ?/
「馬鹿な!?レベル10のモンスターを生贄なしで召喚しただと!?それに攻撃力が…」
「ヘルバードは自分フィールドに存在する「剣闘」と名のつく永続罠を任意の枚数墓地に送って召喚します。私の場には剣闘の復活と剣闘の解放、剣闘の昇華、そして伏せていた2枚目のが剣闘の束縛を墓地に送りました。そして召喚時に墓地に送った枚数×1000攻撃力が上がります」
剣闘獣ヘルバード
効果モンスター
星10/炎属性/鳥獣族/ATK ?/DEF ?
このモンスターは通常召喚することができない。
自分フィールド上に「剣闘獣」と名のついたモンスターが存在しない場合
「剣闘」と名のついた永続罠を任意の枚数墓地に送って特殊召喚することができる。
このモンスターの攻撃力と守備力はこの効果で墓地に送ったカードの枚数
1枚につき1000アップする。
相手は墓地のモンスターを選択する魔法・罠の効果を発動できない。
このモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、
そのモンスターの守備力分のダメージを与える。
このモンスターがカード効果で破壊される場合、墓地の「剣闘獣」と名のついたモンスターを2体ゲームから除外することで破壊を無効にする。
ヘルバード/ATK ?→4000
「っ!4000だと!?」
「ほっほっほ…驚きましたか?そしてヘルバードが存在する場合、相手は墓地のモンスターを対象にする魔法、罠カードは使えません」
「っ…!!」
墓地のカードが使えないとなると、今場にある伏せカード『眠る魂の咆哮』が使えなくなる。そして4000を超えるモンスター――やばすぎる。
「では行きますぞ…ヘルバードでヘラクノイノスに攻撃!!フェニックスブレイブ!!」
「グッ……ッ!?」
体を炎に包んだヘルバードはヘラクレイノスに突撃してきた。
シゲル/LP4000→3000
破壊されたヘラクレイノスだが、破壊したヘルバードは更に炎を増してシゲルに襲いかかってきた。
「ヘルバードの効果、破壊したモンスターの守備力、2800ポイントのダメージを受けてもらいますぞ」
「なっうわあぁああぁああぁああぁ!!!!!!」
シゲル/LP3000→200
一気に3800もライフが削られた。しかも十代のフレイムウィングマンの様な効果ダメージのバーンを与えるモンスターがいるため、壁モンスターを出しても意味は無い。
「さて…私はこれでターンエンドです」
山本
LP2800 手札0枚
ヘルバード/ATK4000
伏せカード無し
―シゲルのターン―
此処まで追い込まれてくるともう打つ手は無い――
「俺のターン!!流石…墓地獣だな…一気に逆転した…」
「ほっほっほ…剣闘獣には攻撃力4000を超えるヘルバードを倒せるモンスターはいませんな」
「どうかな?確かに今までならいなかった」
「……?」
――今までだったら。
シゲルの行っている言葉『今までならいなかった』――言い換えるのなら『今はいる』となる。
「チューナーモンスター、パワー・リゾネーターを攻撃表示で召喚!!」
「はて…チューナー…?聞いたことが無いです。なんですか、そのモンスターは?」
「チューナーはあるモンスターの召喚に必要なモンスター…まあ見たら分かる」
場に現れた白い悪魔、それを見た山本は首を傾げていた。確かにチューナーは聞いたことのないモンスターだ。
持っているのはユウと、シゲル、ツバキだけでこの学園でも数人しか存在を知らない。
パワー・リゾネーター/ATK200/星2
「見せてやる…俺の新たな力…」
「ほう…面白いですね…かかってきなさい!!少年よ!!」
山本の眼つきが思いっきり変わった。まるで戦場で相手を殺す軍人の様な眼だ。
だが、シゲルの戦術は止まらない――
「それじゃあ行くぞ…レベル4、剣闘獣エクイテにレベル2、パワー・リゾネーターをチューニング!!」
白い悪魔は薄い緑の
そしてパワー・リゾネーターの輪の中で星になったエクイテが一直線に並んだ。
「獣の魂を受け継ぐものよ、死にゆく者に新たな命を吹き込め!!」
☆4 + ☆2 = ☆6
そして並んだ星は強力な光となり輝いた。
「シンクロ召喚!!吹きすさべ、剣闘獣ストーム・ウィング!!」
シゲル場に全体的に鮮やかな緑の体、そして黒いラインが入った巨大な鳥が現れた。
ストーム・ウィング/ATK2400
このモンスターはペガサスが送ってきた剣闘獣のシンクロモンスターの1体だ。
その力は全てを癒し、全てを守る獣の鳥――
「これは…なんと美しい…ですが私のヘルバードの攻撃力は4000ありますぞ」
「分かってる。パワー・リゾネーターの効果を発動!!このモンスターがシンクロ召喚の素材となった時、フィールド上のモンスター1体の攻撃力をこのターン終了時まで1000下げる!!」
「なんと…!!」
パワー・リゾネーター
チューナー・効果モンスター
星2/光属性/悪魔族/攻200/守600
このカードがシンクロ召喚に使用され墓地に行った時、
相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力を1000下げる。
この効果は自分のライフが1000以下の時のみ発動できる。
ヘルバード/ATK4000→3000
「さらにストーム・ウィングの効果発動!!フィールド上の剣闘獣と名のついたモンスター1体をデッキに戻すことで墓地に存在する剣闘獣を1体特殊召喚する!!ガイザレスをデッキに戻しヘラクレイノスを特殊召喚!!」
ヘラクレイノス/ATK3000
剣闘獣ストーム・ウィング
効果・シンクロモンスター
星6/風属性/鳥獣族/ATK2400/DEF1700
チューナー+「剣闘獣」と名のついたチューナー以外のモンスター1体以上
自分フィールド上に存在する「剣闘獣」と名のついたモンスターを
デッキに戻すことで、墓地に存在する「剣闘獣」と名のついたモンスターを
1体特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、ターン終了時デッキに戻る。
このカードがフィールドからデッキに戻った時カードを1枚ドローする。
「ほっほっほ…流石ですね…」
「行くぜ…ラストバトル!!ヘラクレイノスでヘルバードに攻撃!!バーストブレイカー!!」
「迎え撃てヘルバード!!フェニックスブレイブ!!」
ヘラクレイノスとヘルバードの攻撃がぶつかった。そしてフィールドは大爆発に巻き込まれ2体のモンスターは消えた。
「行け!!ストーム・ウィング!!トルネードストライク!!」
「うおぉぉぉおおおぉ!!!!!」
風を纏った鮮やかな鳥が山本へ突撃した。
山本/LP2800→400
「っ…!!ですが…まだ私のライフは…」
「まだだ、伏せカード眠る魂の咆哮を発動!!墓地と場の剣闘獣をゲームから除外し、融合モンスターを特殊召喚する!!」
シゲルの伏せカードを見た山本はものすごく驚いていた顔をしてる。
「少年…いや、シゲル殿。まさかそのカードを持っているのが貴方だとは…」
眠る魂の咆哮――それは
「…それを言うのなら
マキロ/ATK1400
「最後だ!!マキロで直接攻撃!!」
「うわぁああぁぁぁあぁぁ…!!!」
山本/LP400→0
マキロの起こした地震で山本のライフが無くなった。と同時にシゲルはペタンと座ってしまった。
「…危なかった…」
「ほっほっほ…まさか私が負けるとは思いませんでしたよ」
デュエルディスクを収めた山本がそう言いながらシゲルの元へ歩んでいた。
てか、2400と1400(計3800)の直接攻撃を喰らってるのに――
「山本さん…タフだな」
「いえいえ…これでも昔はもっとやんちゃをしておりましたよ」
……何だろう、この人が言うとシャレにならないぐらいの事をしてる気がした。
「ほっほっほ…シゲル殿」
「…俺は呼び捨てでいい」
「ではシゲル、お願いがございます。このままツバキの友人としていてください」
――恐らく山本はツバキを年の離れた孫の様に可愛がっていたのだろう。
だからデュエルが始る前にツバキとの関係を聞いたのだろう。
「頼んでもよろしいでしょうか?」
「…当たり前だ」
さて、ツバキの謎が出た。
ツバキ「記憶…喪失…」
この作品最大の伏線といっても過言じゃないからね。まだどこにも明かされない記憶。それがこの作品にどう関わるかだ。
ユウ「あの剱都ってのは…」
一言で言うと丸い性格の海馬瀬人。といっても今はツバキがいなくなって荒れているけどね。
シゲル「で、シンクロモンスターか…」
うん、あとでアザー・レコードのキャラ紹介のところを変更してると思う。
あれはリアルタイムの情報だから本編で触れられてないことも書いてあることがある。
ユウ「例えば?」
明確なキャラ情報、見た目とか目の色とかね。
次回予告
デュエルリングで待つ剱都の元にやってきたのは、一人の修羅の子だった。
そんな2人を悲痛な気持ちで見守っていた少女。
だが、2人の戦いは徐々にその心の方向を変えるものだった。
「おもしれぇ…!!おまえは強いな!!」
次回turn13 プライドの戦い 飛び上がる聖霊 VS機甲部隊
次回の最強カードは「マシンナーズ・バーサーカー」