紫苑VS十代の戦いが起こっているちょうどその頃――
「彼らのディスクからデバイスの反応ですか…」
アースラでリンディがエイミィの報告にそう呟いた。
どうしてもあの時シゲルが発動したカードの実体化したのに理由があるはずだった。
そしてその時のデータをもとにエイミィが仮説を立てたのだ。
「はい。おそらくはストレージと思われます…」
「…『カードを実体化する』デバイス…恐らくですがそれを5人全員持っているはずですね…しかし、そんなものどうやって…」
デバイスを作るのはパソコンを組み立てるのとはわけが違う。
専用の部品から思考回路とも呼べるAI、それを導入する高性能パソコン。
どう考えても5人で制作できる代物ではない。いくら剱都がAW社総帥と言っても、紫苑が元・闇の書の一部だとしても必要なモノが足りないのだ。
「…ロストロギア」
そう呟いたのはクロノだった。その言葉にリンディ、エイミィ、なのは、フェイト、はやてがクロノを見た。
「もしかしたらあのデュエルディスク…ロストロギアなのかもしれない」
「確かに…それかロストロギアに近い何かがあれに入っているとしたら…」
フェイトも納得したように言葉を紡いだ。しかし、そんなものが都合よく5人の手に渡るとも偶然にしたら出来過ぎていた。
「…ユーノに頼んで、そう言った者があるかどうか調べてもらおうや」
「そうなの!そうすれば分かるの!」
―夜:レッド寮―
「ねえシゲル」
「どうした?」
そろそろ就寝時間となる頃、シゲルが二段ベットの下で寝転がって本を開いているとユウが上から顔を覗かせた。
「…今さらだけど…紫苑って結構無口だよね?」
「そうか?」
呼んでいた本を閉じてシゲルはユウを見た。
ちなみに本のタイトルは『リアル鬼――』なんでも無かった。
「うん、あまり喜んだり悲しんだりしてないし…」
「そう言われるとそうだが…」
そう言ってシゲルは机の上のディスクを見た。
アナトから渡されたソレはかつて紫苑が持っていたデバイスと呼ばれるものと同じだと聞いた事がある。
「まあ…元から感情を表に出さない奴なのか、昔何かあったのかだな…」
「…なんだか、可哀想だよ」
そう言ったユウの顔が悲しそうだった。シゲルはベットから出ると目線をユウと同じ様に立った。
「…何かあったのか?」
「……ボクの過去…聞いてくれる?」
そう言ってユウは自身の過去――両親の死と自分の境遇、澪と徹との生活、海馬との遭遇を話した。
(番外編:精霊の出会いを参照)
「…そんなことが」
ユウの過去を聞いてシゲルは驚きを隠せなかった。その話を聞いてシゲルは少し考えていた。自らの過去を話すかどうか――
「…その時の僕と同じ眼をしてたから…っ!?」
「なんだ!?」
突然窓の外から紫に光り輝く光が差し込んだ。
ユウとシゲルは眩しさに目を瞑った。
―女子寮―
「!?」
「どうしたの?」
ツバキの部屋でデッキ調整を行っていた紫苑とツバキ。だが紫苑が、何かに気付いた様に窓の外を睨んだ。
「…なにか、魔力的なものを感じました」
「どういうこと?」
そう言った紫苑はPDAを取り出すと通信機能をONにした。
連絡先をショートカットキーでシゲルに合わせるとスピーカーから音が漏れた。
「シゲル、聞こえますか?」
『ザーーー…紫…か?』
なぜかノイズ交じりで帰ってきた。島全体に電波が行きわたってるPDAの通信ならノイズは入らないはずなのに。
しかもノイズは徐々に酷くなっていた。
『ちょ…ど…い………すぐ…に…てくれザーーー』
「……レッド寮で何かあったみたいです」
「た、大変!!」
2人は散らばっていたデッキを直して、其々のカラーのディスクを持って部屋を飛び出した。
―???―
「…駄目だ。通信が戻らねぇ」
PDAを懐にしまったシゲルがそう言った。
近くにはユウ、明日香、十代、剱都が呆然と立っていた。
「ここは…?」
「火山…!?」
そう、レッド寮にいたはずの3人は火山の火口にいた。ちなみにアカデミアの火山は活火山でマグマが火口にあるのだ。
「てか、なんでお前らまで?」
シゲルが剱都と明日香に聞いた。既に剱都はイエロー寮に泊まり込んでいる。そして明日香はブルー女子寮に戻っている時間のはずだった。
「もしかしたら一番強いカイザーじゃなくて、レッド寮の十代を狙うかもしれないと思って…」
「で、部屋の場所が分からないというから俺が案内…けど、まさか的中するとはな…」
剱都が驚いたように周囲を見渡した。ちなみに5人の足元には光の足場ができており、落ちないようになっていた。
すると突然、火山からプロミネンスが発生した。
「プロミネンスって…?」
「太陽とかで、炎が龍みたいに燃える現象よ。というか今なんで聞いたのかしら?」
「……誰だ?」
ユウと明日香の会話を尻目にシゲルがディスクを構えた。彼の睨んだ先には黒いコートのを着た、目元を隠す仮面を嵌めた一人の男性が立っていた。
「我が名はダークネス。セブンスターズの一人だ」
「お前が…!!」
セブンスターズ――それはほんの数時間前に鮫島校長から聞いた敵の名前だ。
「遊城十代…貴様が私の最初の相手だ」
「…セブンスターズ関係なら、ボク達は手は出せないね」
ユウはそう言って構えていたディスクを降ろした。5人の仕事は7人の護衛――セブンスターズと戦う時までのだ。
それならば今、ユウとシゲル、剱都の3人に出番はない。
「やっぱ一番俺が強いのか!?」
「いや…多分あれだろ」
そう言った剱都の指先には、十代のペンダントと同じ様な半円の首飾りがあった。
いつの間にか十代がもっていた夏祭りの時とは別のもうひとつの半円のペンダントそっくりだった。
「その通り…だが、私が欲しいのはその胸に揺れる七星門の鍵だ。貴様からそのカギを奪ってみせよう…闇のデュエルで」
「闇のデュエル…俺やユウが喰らった、ダメージを受けるあれか…?」
シゲルがそう苦虫を噛んだような顔で言った。確かにあのダメージは受けたいとも思わないし、デュエルで命をかけたいとも思わなかった。
しかし、ダークネスの闇のデュエルは違った。
「兄貴~!!」
「十代~!!」
「っ翔!?」
「隼人君!?」
4人が見た先には、マグマすれすれの岩の上に隼人と翔がいた。2人を包み込むように光のドームがあった。
グツグツと煮え滾るマグマがはじけてそれに触れるが、溶けることなくそれはそのままあった。
「光の檻に守られているが、あの折は時間とともに消滅する。このデュエルが長引けば、彼らはマグマの中に。更に負ければ…その魂をこのカードに封印される」
それを聞いて十代はダークネスに食いついた。だがダークネスはそれを一蹴した。
「全力でかかってこい、遊城十代!!」
「ねぇ!!何とかならないの!?」
明日香がユウ達に言った。3人の持つ力なら何とかなるかもしれなかったからだ。
確かにモンスターやサポートカードで2人を助け出す事も不可能ではなかったが――
「何ともできないよ…」
「それに俺達は、セブンスターズとの戦いには手は出さない」
それを聞いた十代は睨むようにシゲルを見た。親友が目の前で死にかけているのを見捨てると言ったのだ。
「テメェ!!翔と隼人を見捨てるのか!?」
「はぁ…十代。なんで鮫島校長が鍵を渡す時俺達を呼んだと思ってるんだ?」
射殺すように冷たい剱都の目――その目を見て十代は臆してしまった。
普段の剱都の目は確かに鋭く、睨んでいるようだった。しかしいまの剱都の目はそこに冷徹さも混ざっていた。
「もしかしたら自分の周囲の人間が危険にさらされる可能性もある…自分が死ぬかもしない…そうなる事も考えて、それで鍵を投げだすかもしれないから俺達を呼んだんだよ。それなのにお前は楽しそうにワクワクして、それで翔達が危険な目に遭ったら自分の所為じゃない、助けない俺達が悪いと言い張るのか?」
「クッ……」
「ちっ…!!」
「剱都!!」
十代は悔しそうに眼をそらした。それに苛立ったのか剱都は十代の胸倉をつかんだ。
それを抑えるようにユウが剱都の腕を掴むが、それを剱都は無視した。
「テメェが戦うことを望んだから2人が巻き込まれた!!だったらその尻拭いは自分でしろ!!グダグダ言う暇があるならあいつを倒して2人を助け出せ!!嫌なら代われ!!決意もせず命を投げ出す戦いに参加するな!!」
「剱都君!!」
剱都の言葉に明日香もユウと同じ様に止めに入った。それに熱が冷めた剱都は手を話した。
「テメェがそんなガキだと言い張るんなら、それでいい。代わりに助け出してやるよ。だが俺は、あいつらを巻き込んだお前を二度と許さない」
つぶやくように言った言葉、しかしその言葉が響いたのか――
「…勝負だ…!!ダークネス!!」
決意したように十代が立ち上がってディスクを構えた。
「ふっ…良い目だ…」
「「デュエル!!」」
十代とダークネスの戦いが始まった――
―レッド寮―
「…いない」
ユウとシゲルの部屋に来たツバキと紫苑はそう呟いた。
鍵は開いていたが中には誰もいなかった。十代の部屋の前にはカイザーと三沢がいた。
来る途中で2人に会ってそのまま一緒に来たのだ。
「十代達もいなくなってる」
「恐らく…一番手があいつらだったんだろうな」
そう言ってカイザーはレッド寮から校舎を見た。誰もいない校舎は異様な不気味さを――
「ん?何だ…?」
「どうかしました?」
カイザーと三沢が鍵を握っていた。そのカギは――震えていた。
「……火山だ。間違いなくそこにいる」
「何の騒ぎだ?」
すると一番奥の部屋から万丈目が現れた。その手には七星門の鍵が握られており、同じように震えていた。
「どうやら同じようだな」
「…そうだな。火山へ急ぐぞ」
―火口―
「ワイルドジャギーマンで2体の
ワイルドジャギーマン/ATK2600→3600
スピア・ドラゴン/DEF0
ワイルドジャギーマンの腕から刃物が飛び出すと真紅眼の闇龍2体を破壊し、背負っていた大剣でスピア・ドラゴンへと振り下ろした。
それによりダークネスの場のモンスター全てを破壊して合計600のちょうどのダメージを与えた。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁああぁ!!!!!」
ダークネス/LP600→0
ダークネスのライフが0になった瞬間、足場が崩れ始めた。
「翔…隼人…!!」
「兄貴!!」
「十代!!」
だが――運命は残酷だった。
2人を守っていた檻が完全に無くなったのだ。
「あ、熱い!!」
「助けてくれ~!!」
溶岩の熱に2人は叫んだ。そして――2人の姿は溶岩に包まれた。
「翔!!隼人!!」
「嘘…うそよね…2人とも!!」
十代と明日香がその光景に眼を見開いた――が、すぐにきょとんとした。
「へ?」
「なんだぁ…これ?」
2人は――なぜか水の泡に包まれていて無事だった。
「剣闘獣ムルミロ。まあ元々は破壊効果の水だが…破壊しなかったら何とかなるだろ」
「シゲル…!!」
「流石に命賭けた戦いに挑んだやつを見捨てる真似はしねーよ」
シゲルは勝負が始まる時からずっとムルミロを準備していた。それを知っていたから剱都は十代に啖呵を切ることができた。
「!!」
「うお、眩し!」
すると辺りに光が立ち込めた。全員がその光から目を守る様に腕で覆った。
―火山:火口付近―
「…どうやら助かったみたいだな」
剱都の言葉に全員がホッとため息ついた。足元はちゃんとした地面で周りに全員いた。それに十代は安心したのか、糸が切れたように膝をついた。
「兄貴!!」
「十代!!」
ばたりと十代は倒れてしまった。ダークネスとの戦いで蓄積されたダメージが限界を超えたようだった。するとすぐにシゲルが近づいて容体を見た。
「ダメージが溜まって、意識が無いだけだ。けど早いところ寝かせた方がいいな」
「皆!!!」
遠くの方からツバキ達5人が走ってくるのが見えた。
「十代!?」
「安心しろ、気失ってるだけだ。三沢、運ぶの手伝ってくれ」
―保健室―
ベットに寝かした十代の横のベットの上にはダークネス――天上院吹雪が寝ている。
ダークネスの正体を知って全員――特に明日香と亮は驚いた。
2人の探していた人物がセブンスターズとして出てきたのだからだ。
「―――奴ら…なんて事しやがる…!!」
十代の戦いの経緯を聞いた万丈目がそう反応した。「だが」と前置きして剱都がその場にいた鍵の保持者を見回した。
「こうなる事可能性が高くなっていく。十代が勝って2人を助け出せたが…次はどうなるか分からない。下手をしたら死なせるかもしれない」
「…だからなんだ?」
そう言ったのは壁に寄りかかり、腕を組んで話を聞きながら目を瞑っていた亮だった。
「俺は相手がだれであろうと、どうしようが敵は倒すまで。敵が何かしようがそれは敵の作戦…ならばそれを崩せばいい」
「カイザーの言うとおりだな。相手がなにをしてくるのかしっかり分析する必要があるな」
カイザーの言葉に三沢と首を縦に振って万丈目も同意した。
「今日はもう遅いわ。2人はこのまま寝かしとくから、貴方達は部屋に戻りなさい」
―翌日―
「明日香さん?」
ブルー寮の廊下で紫苑が部屋に入ろうとしていた明日香を見かけた。だが時刻はようやくネボスケが起きる時間だ。
「あら?紫苑…どうかしたの」
「どこに行っていたのですか?」
「兄さんの様子をね…けどまだ目が覚めないみたい…」
そう言った明日香の顔は兄を見つけた嬉しさからか明るくも、目が覚めないという事実があって何処か暗かった。
「そうですか…あの、明日香さん」
「どうしたの?」
なんだかすこし困っている様な紫苑の表情に明日香が眉をひそめた。あまり…というか全く紫苑は笑う事もない。悲しむ事もない。困る事もない。
しかし今目の前にいる紫苑は困っていた。
「…妹は…姉妹にどう接すればいいんですか…」
「…え?」
あまりにもおかしな質問に明日香の反応が遅れてしまった。
しかし紫苑はどういうことなのか説明を続けた。
「もう私がツバキの妹となって2週間ほどですが…私はどうすればいいのか…妹とはどういう感じなのか分からないんです。だからっ…!?」
そこまで言った時、紫苑は持っていたディスクを廊下の先に向けて構えた。
その眼は威嚇するように鋭く、戦い慣れた者の眼だった。
「紫苑…!?」
「魔力反応…なにか来ます」
静かに言った紫苑の言葉に明日香は紫苑の目線の先を見た。
「なにが来るの…?」
「この魔力……」
感じた魔力に覚えがあった。それは確か精霊界で――
「ふぅ…そう殺気立つもんじゃないぞ。紫苑」
「…なんであなたが…」
明日香が見たのは長い黒髪の少年だった。そしてその少年の姿は明らかに学園の生徒ではなかった。一瞬管理局かと思ったが、紫苑の様子を見る限り違うようだ。
「あ、貴方は誰?」
「ん?おお…これは失礼したの…ワシの名は『カルマ』じゃ」
ユウの持つ神の化身――生命の神『カルマ』だった。
「カルマ…どうしてここに…」
「ふむ、精霊界でお主が捕まっていた研究所にの…不可解なデータがあったのじゃ。ダークに調べてもらったのだがの…精霊界や人間界に無い文字だったのじゃ。もしかしたら何か分かるかも知れぬのかもしれぬ…来てくれぬか?」
そう聞いた紫苑は少し考えていた。そしてひとつだけ心当たりがあった。
あの建物は管理局の研究所。そして管理局の本局があるミッドチルダには別の言語が使用されている。
「明日香さん、お姉ちゃんに伝言頼めますか?」
「伝言…?」
話について行けない明日香だったが、紫苑の呼びかけにそう応えた。
「しばらく留守にするのでお願いします、と言ってください」
「え、えぇ…分かったわ」
明日香が紫苑に返事をするとチラリとツバキの部屋を見た。まだかすかに紫苑の寝息が聞こえる部屋の扉――そこから目を紫苑に戻す……
「…あら…?」
紫苑はすでにそこにいなかった。
―アースラ―
「次元震…?」
「はい。ですが…」
ブリッジで指示を出していたリンディだがエイミィの報告にそう聞き返した。
だがブリッジのメインモニターには次元震の報告は出ていなかった。
「サブモニターで一瞬だけ…調べてみたのですが、一瞬高い数値の次元震があったんです。場所はアカデミアのブルー女子寮からです」
「……エイミィ、なのはさんとヴィータさんに調査をお願いしてください」
やがて――物語の歯車は動き出す。
シゲル「十代VSダークネスか」
原作の戦いです。それと剱都の叱咤シーンが欲しかった。
剱都「やめろ、なんか恥ずかしい」
ユウ「それにしてもなんか短かったね」
幕間みたいなものかな。それぞれの動きみたいなのを決めるからまだ大きな動きはない。
だけど次回からいろいろと慌ただしくなるね。
次回予告
研究所の調査へと向かった紫苑の気配を察知した管理局。
そしてその闇が無関係の人間へと伸びた。
「あらあら、お困りの様ね?」
管理局の執務官にさらわれたジュンコの救出に世界の矛盾は動き出した。
次回turn32 スカウトという名の強奪
最強カードは「剣闘獣ヴォルテックテール」