―アースラ―
「…ヴィータさんとザフィーラさんまでも…」
そう呟いたリンディは自室で治療員からなのはとヴィータ、そしてザフィーラの状態を聞いていた。しかし3人とも――特にヴィータは受けたダメージが激しく、しばらくの間安静にしてなくちゃいけないのだ。
ザフィーラも数日絶対安静を言い渡された。
『提督……』
「…御苦労様、あなたも休んでください」
そう言われた治療員は敬礼をすると通信画面を閉じた。リンディは制服のままでベットに寝ころび、これからの事を考えていた。世界の矛盾への対策――とくにデュエルで勝って戦闘不能にする方法を――
しかし考えがまとまるはずもない。
まず教員として潜入していたシャマルは最後の攻撃の当たり所が悪かったのか脳震盪を起こしてしまった。若干の後遺症があり、無理はできない。
次に単独行動を取ったなのはを追い、紫苑を捕縛しようとしたクロノはカイザーのOverKillにより今だ意識不明。ちなみに時折発狂したように魘されている。
そしてなのはとヴィータ。運良くなのはは数日すれば戦えるがヴィータは数週間安静にしなくてはいけない。ちなみに聞いた話によると戦意の無いなのはの代わりにヴィータが戦い、瀕死になった様だ。
最後にザフィーラ。一人で
あまりにも怪我人が多すぎる。クロノとヴィータに関しては死んでもおかしくなかったのだ。
そして現状でまともに戦えるのはなのは・フェイト・はやて・シグナム・リンディ自身のわずか5人だった。リンディを除いて4人は一度彼らに負けていた。
再び勝てる可能性は低かったので先日、シンクロモンスターを渡したのだ。
しかし、それを使ったなのはとクロノは負けていた。
「…駄目ね、あまりにも」
そう呟いたリンディ。今まで受けた仕事でも此処まで危機的状況になった事は一度もない。そう思ったリンディはある場所へ通信を開始した。
―アカデミア:灯台の下―
放課後紫苑が話があると言っていたので剱都以外の世界の矛盾+十代達を呼びだしたのだ。
精霊界で何があったのか話すということだったのだがそれよりも気になるのが――
「紫苑、なんだそれ」
「ん?これですか?これはウルクリボーですよ」
紫苑の周囲を飛び回る青毛むくじゃらの物体、すると十代のデッキからハネクリボーが飛び出し――
『クリクリ~!!』
『クリ~!!』
『クリリ~!!』
何故か仲良くなっていた。しかし精霊が見えない面子は一体何の事なのか分からずにいた。
「ウルクリボーは向こうで見つけた私の心です」
「心…?」
心とは一体どういうことなのか、それに以前紫苑は自分自身に感情と呼べるものは無いと言っていた。
「向こうの世界での事を話します」
―回想:精霊界―
「ダーク、この翻訳は間違いないのですね?」
「ああ、私もルキも一言一句全く同じ結果になった」
紫苑が渡された翻訳したデータ。そこには色々書かれていたのだがファイル名を付けるのなら一言で言うとこう書かれるだろう。
「…闇の書の残滓専用感情追加プログラム」
喜怒哀楽のレベル――例えば宝くじがほんの千円当たる喜びと大好きな人と一緒になる喜び、悪戯をされた怒りと大切な物を壊された怒り、家族を失う哀しみと映画で哀しくなる、好きな番組で笑う楽しさと誰かといる楽しさ。
全部同じだということは無い。しかし紫苑にとっては喜怒哀楽があるだけでそれがどれが最も怒るのか、最も楽しいのか分からないのだ。
「…これを私にインストールすれば…」
「まて、これが本当にそうなのか分からないぞ。ダミーという可能性もある」
ダークの言うとおり敵の残したデータでもしもの時の場合に偽のデータを作った可能性もある。しかし紫苑はそれは無いと思っていた。
「闇の書の事を知っているのはほんのわずかです。その中で残滓の事を知ってるのは事件に関わった人だけ…わざわざ偽のデータを作る意味は無いはずです」
―数分後―
研究所に残されていたプログラム体にデータをインストールする装置の中に紫苑は浮かんでいた。
「紫苑、最後に聞く。本当にいいんだな?」
「………………(コク)」
培養液で声が出せないため頷いた紫苑。ダークはそれを見届けるとコンソールを操作し、インストールを開始した。
―Install 2%...6%...9%...10%...14%―
コンソールに表示される数値が徐々に上がっていた。問題が無ければものの数分で終わるはずだった。ダークはコンソールから目を話して紫苑の様子を見た。
特にこれと言って嫌がっていたり、苦しんでいる様子もなく、死んでいる様に浮かんでいる紫苑――しかしバイタルサインは正常に動き、生存している事を証明している。
「…私の考えすぎか」
そうダークが呟いた時、コンソールのランプが緑から赤へと変わった。完了するにはまだ時間がかかるはずだった。
―
「なに!?」
その言葉に驚くダークにコンソールは更に文字を表示した。
―
|May cause adverse effects to the subject and leave you install this.《このままインストールすると被検体に悪影響を起こす可能性があります》
yes
no←
―
「不具合だと…クッ、終了するしか…」
そう言ってnoの方にカーソルを持っていこうとした。しかし紫苑はそうなる事を分かっててインストールしようとしているのだ。
「……いいのか?」
「……………………」
紫苑は何も答えない。しかし「そのままやって」と言ってる気がしたダークはyesにカーソルを持っていった。
―Consent 41%...45%...―
「…頼むぞ」
祈るように呟いたダーク。そして1分が1時間にも感じる時が流れた。
―84%...87%...90%―
やっと90%を越えた。そのことにホッとしていると異変に気付いた。
「………ぃ…」
「…何の声だ?」
何処からかか細い声が聞こえた。しかし、コンソールが発する音声が大きくか細い声が聞こえないのだ。
―94%...97%...99%―
「…!!」
残り1%となった時、ダークは気付いたのだ。
そのか細い声が何処から出ていたのか。
「紫苑!!?」
紫苑の入っている培養液の中――なにか青い物体が動いていた。間違いなくそれが声を発生していたのだ。
―100%...complete―
そしてコンソールがその文字を映し出した瞬間、その青い物体が――
「!!?」
「クリ~!!!!」
装置のガラスを突き破ってダークに突っ込んできたのだ。
「っ…!!」
だが、何とか受け止めたダークはその顔を見て驚いた。十代も持つ――
「ハネクリボー…?いや、これはクリボーか?」
「クリ?」
羽根の無い青いクリボーだった。その時クリボーがダークに掴まれている事にようやく気付いたのか可愛らしい目でダークを見ていた。
「……お前はなにクリボーだ」
「クリ?」
クリボーにもハネクリボーとクリボンと様々な種類がいる。しかし青いクリボーなんて聞いた事が無いのだ。
「…ケホ、ケホ!」
「!紫苑、大丈夫か!?」
壊れた装置の中から紫苑が這いずり出してきた。
「ケホ、ダーク……インストール…成功ですか…」
「分からんが今は休め。調べるのは後だ」
―回想終了―
「それじゃあ…」
「そうです。喜怒哀楽…人と同じ様に感じる様にできました」
そう言った紫苑は嬉しそうに笑ってた。口調は昔から染み付いたもので敬語が抜けないようだった。
「それじゃあそのクリボーは?」
「それは私にインストールする過程で生まれたモンスターです。インストールデータの不具合で起こったバグの集まりで…けど、そのバグの元は私の
その説明を聞いていた十代が一つ気になった事がある。
「なるほどな…所で剱都は?」
「剱都は…」
―AW社:応接室―
「こちらが今まで採取したデータでございます」
そう言って山本がカミューラに渡したのはAW社が調べ上げた管理局の情報、世界の矛盾との戦いで使われたカードの効果・コンボ。
分かっている管理局の顔写真とプロフィールと偽の経歴。
「すごいわね…この情報量…今のところ管理局と争って負け無しって…」
「それは俺じゃなくてあいつらに言いな。俺はたった一回だけだ」
ほとんどの戦いはユウとシゲルが戦っていたのだがそれでも負けが無いというは凄かった。
それに管理局のことを知っている紫苑がいるため、潜入などの不意打ちも不可能に近い状況だった。
「で、これからあんたの事だが…いくつかの選択肢を出そう。
一つ目はセブンスターズ、アカデミア、管理局…全てから離れて過ごす。
二つ目はセブンスターズと共に残り、俺達の敵となる
三つ目は単独で奴らと戦う
そして最後は…」
そう言って剱都が4本目の指を上げようとしたが、それをカミューラは止めた。
「4つ目の『あなた達の仲間になる』を選ぶわ」
「…驚いたな。この選択を一番渋ると思ったが…」
剱都の言葉通りカミューラが誰かとつるむとか考えてれなかったからだ。
「今までだってそうだわ。セブンスターズでも利用するためいた。だから利用さしてもらうわ」
「…あんたとウマが合いそうだな」
剱都はニヤリと笑った。
―アースラ―
「お待ちしていました」
「ああ…こんな事件は類をみないからな」
リンディの言葉に返したのはひ弱そうな雰囲気を持った老人だった。その背後には部下と思わしき2人の青年と少年がいた。
「世界の矛盾にロストロギアにレアスキル…そして次元犯罪者か」
「ええ…私の艇の戦闘員も大半やられてしまったので援軍を要請したので…」
リンディはそう言って老人の背後にいる2人の青年を見た。彼女の予想だと普通このレベルは一個中隊以上の戦力がいるはずだからだ。
「上からの判断は『たった5人の子供に負けて一個中隊を動かすのは馬鹿げている』と」
「そ、それは…」
リンディはその老人の言葉に何も言えなかった。確かに他の部隊からしたらおかしいと思われることだが現実にリンディ達は彼らに勝てないのだ。
「ふむ…小人数精鋭の敵の対処は、こういう場合一人ずつ消していくのが定石だ」
―再びアカデミア―
「で、だ。ダーク、俺達を集めてどうする気なんだ?」
今現在世界の矛盾4人が剱都の部屋にいた。空き部屋となった今は自由に出入りができるため話し合いを行う場合も此処で行っている。
『つい先日、アラエルという女性が現れたというのは本当なのか?』
「そうだよ。ついでにツバキに置き土産をして行ったけど…」
ユウの言葉にツバキが3枚のカードを並べた。しかしアクセス・トラップだけは腰のデッキホルダーに入れており、デッキから抜いているのだ。
よっぽどのドロー運がない限り扱いこなせそうになかった。
「あいつが何者なのか知ってるのか?」
『全て説明するのには時間がかかるが…良いか?』
その言葉に全員が頷いた。そしてダークはあるお伽話を始めた。
―昔々ある所に、『天界』と呼ばれる場所が存在した。塔に寄り添うように精霊は歌い、育み、そして生きていました。
その場所は非常に豊かで常に日の光を浴び、植物は育ち精霊は伸び伸びと育っていた。
しかしある日その天界に魔の手が伸びました。
その光を求めた悪が天界を襲い、乗っ取ろうとしました。瞬く間に天界は悪に乗っ取られ、天界に住む精霊は生まれ故郷を捨てました。残ったのは母なる神たった一人です。
そしてその神は自らと天界もろとも悪と共に精霊界より姿を消しました。
残されたのは僅かな天界の欠片のみ。精霊達はその欠片の上に聖域を作りました。―
「という話だ」
「それとあのアラエルやルヒエってのにどういう関係があるんだ?」
シゲルの言葉通り、その話とあの2人は関係ないと思われる。しかし今度はウリィがまだ話があるように引き継いだ。
『実はワシらの世界で240年ほど前からとある組織がその存在を噂されていてな…その名は――アンゲロス』
「アンゲロス?」
ウリィの言葉にユウが聞き返した。あまりにも聞き慣れない名前だったからだ。
『相当な腕を持った集団だ。人数やリーダーは不明…だが分かってる中でその組織の中に人間が精霊界に作った研究所などを破壊するアラエルと呼ばれる女性の目撃情報があった』
「…そういえばアラエルに初めて会ったのも研究所だったね」
ツバキの言葉通り紫苑がいた違法研究所にアラエルは現れた。そしてその時の研究員は何処かアラエルに怯えた様子だった。
「って、ちょっと待って。240年前って…精霊の基本的な寿命っていくつなの?」
『む?前に言わんかったか?基本的に2000年から4000年ぐらいだぞ』
紫苑の言葉にウリィがサラッと答えた。しかし2000年って…西暦と同じぐらいの寿命があるのだ、精霊は。
「で、そのアンゲロスとアラエルの繋がりは分かった。だが初めに話した天界の昔話と何の関係があるんだ?」
『おっと、話しそびれたな。奴らの目的や戦力は分からん…が何処の出身は判明している』
シゲルの言葉にダークがそう言った。しかしシゲルの疑問にその言葉で返すとなると――
「まさか…天界の出身!?」
『そうじゃ。アンゲロスは天界を追い出された者たちの集まりじゃ。天界出身者のなかの記録にアラエルなどのメンバーの名前があった。目的は分からんが様々な場所に出没し人間や精霊にも被害が出ているのじゃ』
―AW社―
「じゃあ問題はこれからの事だな」
協力するにあたって、カミューラはどうして行くのか考えなくてれば行けない。管理局が5人に接触するとしたらやはりアカデミアにいた方がいいのだが――
「名目上はどうする気なのかしら?」
「そこが問題だ」
女医や教員の免許なんてカミューラが持っている訳は無い。かと言って取得するには時間がかかり、その間に事件が起こらないとも限らない。
免許がいらず、時間もかからず、なおかつアカデミアに留まる仕事――
「ん?そういえば…一つだけあったな」
そう呟いた時、部屋に呼び出し音が響いた。剱都は近くにあった青いボタンを押した。
「なんだ?」
『海馬コーポレーションの海馬瀬戸様がお見えになりました』
海馬瀬戸――高校生でありながら言わずと知れた海馬コーポレーションの社長で現デュエルキングの武藤遊戯と唯一対等に渡り合えるライバルだ。
少なからず会社関係や大会などで顔見知りの2人だが海馬が訪ねてくるのは初めてだった。
「応接室に通せ」
『畏まりました』
ほどなく女性受付に連れてこられた海馬が現れた。
「ふうん…久しいなとでも言っておこう」
「ガラじゃない言葉だな。どうかしたのか?」
何度か戦った事もあり互いの性格などはよく知っていた。
そのため世間話の始まりの様な事を海馬が言うなんてまずありえ無かった。
すると海馬はチラリとカミューラを見た。
「この女は何だ?」
「訳ありだ。しばらくあの島で働く事になると思うがな」
「なに?」
あの島とはデュエルアカデミアの事だ。しかし海馬コーポレーションはアカデミアに深くかかわりがある。そのため剱都の言葉にピクリと海馬の眉が反応した。
「それは一体どういうことだ?」
「その前に、だ。用件を済ませろ。わざわざこの件が本題じゃないんだろ?」
それに海馬が一瞬渋い顔をしたが、持っていたアタッシュケースから一枚の資料を取り出した。
「最近、うちのメインサーバーから検出された反応だ。普段のデュエルでは必要のないほどのエネルギーが消費されている…これについて何か知っているか?」
「なになに…?日付は3日前と昨日?」
3日前はシゲルがディラと、先日は紫苑がカミューラと戦った時だ。
そしてちょうど2人の目が赤くなった瞬間の時刻――
「……(どうすっかな…海馬はオカルト嫌いだしな……精霊界や管理局の事を言っても信じないだろうし…かと言って嘘を並べてもすぐばれちまうしな…)」
「で、貴様は昨日はちょうどこの時近くにいたはずだ」
一応紫苑が5人のデュエルディスクの中の根本的な海馬コーポレーションのサーバーへのアクセス端末を取り付けたのがあだになったのか、剱都のデュエルディスクの反応があったのだ。
「どうすっかな…………っ!!?」
最早途方に暮れた剱都だが、部屋に違和感を感じた。一番この部屋にいる事が多かった剱都だから気付いた――室内の人の気配が多かったのに。
「………(一人…いや、二人…だが、姿が見えない…いや…)来い、マシンナーズブレード!!」
「「「『『!!?』』」」」
他の3人と見えない敵は突如として現れたモンスターに驚いた。あまりにも目立つ巨大な大剣を持つ機械兵士だ。
「バカな…立体映像ではない!?」
『(だ、だが俺の場所までは…)』
そう侵入者は思っていた。しかし剱都は正確に潜んでいる2人組へ指を向けた。
「マシーンズシュラッシュ!!」
『『!!!?』』
微妙にだが室内の電灯の辺りがおかしなところがあった、その的確な場所に侵入者は驚きながらも攻撃を避けた。が、しかし
「誰だ!!」
海馬達に姿が見えてしまった。どうやら魔法で姿を消していたみたいだが動いたことによりばれた様だ。青い髪の青年と黒髪の少年の2人を睨んだ海馬と剱都。
「クッ…ターゲットにばれてしまうとは…!!」
「こうなったら、やるぞ!!!」
「海馬、訳は後で話す。先にこいつらボコボコニするの手伝ってくれないか?」
「ふうん…いいだろう。我がブルーアイズの前にひれ伏すがいい!!」
―青年VS海馬―
「俺のターン!!」
まずは海馬のターンだ。海馬のデッキは相変わらずのブルーアイズデッキでシンクロ系統と共に開発されたドラゴンのサポートカードも導入されている。
「俺は手札からX-ヘッド・キャノンを召喚!!」
フィールドに両肩にキャノン砲を携えた機械が現れた。万丈目もよく使うユニオン系統のモンスターの1体だ。
X-ヘッド・キャノン/ATK1800
「そしてカードを伏せ、ターンエンド!!」
海馬
LP4000 手札4枚
X-ヘッド・キャノン/ATK1800
伏せカード1枚
―青年のターン―
「私のターン!!A・O・Jコアデストロイを召喚!!」
コアデストロイ/ATK1200
フィールドにカタストルによく似たモンスターが現れた。しかし海馬の場のモンスターよりも攻撃力が低い。
「…(攻撃力の低いモンスターを出した…ということは、あのモンスターはカード効果で俺のモンスターを破壊しにかかるはず…)」
「バトル!!コアデストロイでそのモンスターへ攻撃!!」
コアデストロイの目玉?からレーザーが伸びるとそのままX-ヘッド・キャノンが破壊された。
「コアデストロイは光属性モンスターと戦闘を行う時、ダメージ計算を行わず破壊する!!」
「…………」
W-ヘッドキャノンが破壊されても海馬は眉一つ動かさなかった。だが――
「グッ!?(なんだ…?俺のモンスターが破壊された時、実際のダメージが…まあいい)」
破壊されたX-ヘッド・キャノンの爆発に一瞬体に衝撃が走った。なんとなくなれていることなのでスルーしている海馬の顔を見て青年は怪訝そうな顔をしていた。
「…なぜ自分のモンスターを破壊されて余裕なんだ」
「ふうん…たったこれしきの事でいちいち驚いてられるほど俺は甘くないんでな…」
「クッ…!!」
青年はその答えに苛立ちながらカードを2枚伏せた。それはリミッター解除――機械族モンスターの攻撃力を2倍にするカードだ。
「そして死者蘇生を発動!!お前の墓地のモンスターを頂く!!」
X-ヘッドキャノン/ATK1800
海馬の墓地からモンスターが奪われた。しかし海馬は既にこの勝負で熱くなる事はもう無い。
青年
LP4000 手札2枚
コアデストロイ/ATK1200 X-ヘッドキャノン/ATK1800
伏せカード2枚
―海馬のターン―
「俺のターン。生憎俺は忙しいのでな…さっさとケリを付けさしてもらう」
「何をバカな…フィールドは俺の方が有利だ!!」
確かにフィールドのモンスター、そして彼の伏せカードを見れば逆に不利なのは海馬の方だった。それが並のデュエリストの場合だがーー
「俺は伏せて魔法カード、調和の宝札を発動。攻撃力1000以下のドラゴン族チューナーである
手札に加えたカードを何なのか青年が確認する前に海馬が手札から更にモンスターを召喚した。
「デブリ・ドラゴンを通常召喚。効果により墓地の伝説の白石を特殊召喚する」
デブリ・ドラゴン/ATK1000
伝説の白石/ATK300
「だが攻撃力は俺の方が上だ!!それにチューナー同士シンクロを行うことなんてできない!!」
「ふうん…シンクロだと?そんなもの……俺のデッキに必要無い!!見せてやろう、シンクロの先の戦術を!!手札からドラゴニック・タクティクスを発動!!」
そう宣言した瞬間海馬の場のモンスター2体が光に包まれた。そしてその光が一つとなった。
「このカードは、俺の場のドラゴン族モンスター2体をリリースし、デッキよりレベル8のドラゴンを召喚するカード!!」
そう言っているうちに光の中に一体のドラゴンが姿を現した。
「現れろ、我がデッキ最強にして無敵…
青眼の白龍/ATK3000
フィールドに現れた青い目の龍を見た瞬間青年は怯え出した。
「ぶ、ぶぶブルーアイズだと!?バカな!?なぜ特別執務官のカードを…!?」
「特別執務官…?一体何の事だ?」
一体何の事なのか分からない海馬。しかし青年の言葉を無視して海馬はさらにデッキを回した。
「さらにドラゴニック・タクティクスの効果で墓地に送られた伝説の白石の効果、もう一体の青眼の白龍を手札に加える!」
「クッ…(だが俺のセットカードはリミッター解除とトラップスタン…そして場には光属性には最強のコアデストロイがいる…そして次のターンシンクロを行い…私の勝ちに揺るぎは無い!!)」
そう思っていた青年。しかし言っておこう――
説明は死亡フラグだと
「手札から魔法カード、滅びの
「なんだと!?」
ブルーアイズから放たれた青白いエネルギー弾は2体のモンスターを包み込んだ。
しかし、このカードを発動したターン、ブルーアイズは攻撃する事が出来なくなる。
「クッ…!!(だが俺の手札には2体目のコアデストロイがいる!!これでブルーアイズを破壊すれば…!!)」
「更に融合を発動!!フィールドと手札の3体のブルーアイズを融合!!」
そう宣言した瞬間手札の2体のブルーアイズがフィールドに現れた。海馬お得意のブルーアイズ戦法だ。
そして3体のブルーアイズは交わり、三つ首のドラゴンがフィールドに現れた。
「来るがいい…
青眼の究極龍/ATK4500
「こ、攻撃力4500だと!?バカな!!」
―sideOut:剱都―
剱都VS少年 剱都のターン
海馬の1ターン目が終了した頃、剱都と少年の勝負も始まっていたが――
「(しまったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)」
引いた5枚のカードを見て剱都が心の中で叫んでいた。その理由は――
「(デッキ違うゥ!!!!)」
そう、カミューラへの説明のため、かつてユウが倒したクラウトのデッキを持ってきていたのだが、間違えてそのデッキをセットしていたのだ。
しかも見た事のないシリーズのカードばかり。
「俺のターン!!(…手札のカード効果から見る限りこのシリーズは破壊することで効果を得るカード…)魔法カード、スクラップ・エリアを発動!!デッキからスクラップ・ビーストを手札に加える!!」
そのカードを見た少年が眉をひそめた。
「スクラップ…まさかお前がクラウトか!!」
「いや、ちげーよ。俺は「騙されないぞ!!時空犯罪者め!!」…はぁ…」
剱都はそう言ったが少年はどうも信じていないようだ。仕方がないので剱都はそのままつづけた。
「スクラップ・リサイクラーを守備表示で召喚!!」
スクラップ・リサイクラー/DEF1200
フィールドにマシンナーズ・リサイクラーによく似たモンスターが現れた。
「スクラップ・リサイクラーの効果発動!!デッキのスクラップ・サーチャーを墓地へ送る!!」
そう宣言した瞬間ボロボロなサーチライトが墓地に送られた。一見無意味に見える――だが、このデッキは
「俺は更にカードを3枚伏せてターンエンド!!」
剱都
LP4000 手札2枚
スクラップ・リサイクラー/DEF1200
伏せカード3枚
―少年のターン―
「俺のターン!!ヘルウェイ・パトロールを召喚!!」
「え?」
昔シゲルがリアルファイトで伸したのと同じ悪魔がフィールドに現れた。ちなみにそのことは剱都は聞いた事があるだけだ。だが剱都が気になったのはそこではない。
「…A・O・Jじゃねーのかよ」
「ふん!!A・O・Jは一般支給されるカードだ!!俺のはその上のチェイスデッキ…一緒にするな!!」
つまり簡潔に説明するとA・O・Jシリーズは一般局員、その上の局員――仮に精鋭局員とでもいおう――が使うのはチェイスと呼ばれるデッキだった。
「バトル!!ヘルウェイ・パトロールでスクラップ・リサイクラーに攻撃!!」
「速攻魔法スクラップ・スコールを発動!!デッキのスクラップとフィールドのスクラップ・リサイクラーを破壊し、カードを一枚ドローする!!更にスクラップ・サーチャーの効果発動!!このカードを特殊召喚する!!」
「クッ…だが、対象を貴様に変更だ!!」
そう宣言した時、サーチャーに襲いかかっていたヘルウェイの目の前に巨大な鉄の塊が現れた。
「リバース罠、スクラップ・バリケード!!手札のスクラップ・ゴーレムを墓地に送ることでバトルフェイズを終了する!!」
スクラップ・バリケード
通常罠
相手のバトルフェイズ中、自分のフィールドの「スクラップ」と名のついたモンスターが攻撃対象時、手札の「スクラップ」と名のついたモンスターを捨てることで発動することができる。
そのターンのバトルフェイズを終了する。
そう、バリケードとなった鉄の塊はスクラップ・ゴーレムの残骸だった。
「クソ…カードを伏せてターンエンド!!(伏せたのはヘイト・バスター、手札には悪魔が多数いる…!!)」
少年
LP4000 手札4枚
ヘルウェイ・パトロール/ATK1600
伏せカード1枚
―剱都のターン―
「俺のターン!!スクラップ・キマイラを召喚!!効果により墓地のスクラップ・ビーストを特殊召喚する!!」
スクラップ・キマイラ/ATK1700
スクラップ・ビースト/ATK1600
フィールドに2体のくず鉄で出来た獣が現れた。そして剱都が取り出したシンクロモンスター――
「(まさかこれを使う時が来るとはな…)レベル4のスクラップ・キマイラにレベル4のスクラップ・ビーストをチューニング!!
棄鉄の海に眠りし怨嗟の鼓動!今瓦礫を突き破りて、壮悲の叫びを上げよ!」
☆4 + ☆4 = ☆8
「シンクロ召喚!!再動せよ、スクラップ・ドラゴン!!」
スクラップ・ドラゴン/ATK2800
フィールドにくず鉄の塊の龍が現れた。しかし少年は内心ほくそ笑んでいた。このまま剱都が攻撃を仕掛ければヘイトバスターの餌食でほぼ勝利が決定していたからだ。だが、それは死亡フラグだ――
「スクラップ・ドラゴンの効果発動!!俺とお前の場のカードを其々選択し、その選択したカードを破壊する!!俺の場のサーチャーとお前の場のそのセットカードだ!!」
「なに!!?」
スクラップ・ドラゴンの体に纏わりついたスクラップ・サーチャーの残骸が鉄の弾丸としてセットカードを破壊した。
「リバース罠、DNA改造手術を発動!!フィールドのモンスターは全て機械族に変更する!!そしてこれで終わりだ!!速攻魔法リミッター解除!!!」
スクラップ・ドラゴン/ATK2800→5600
「バカな!!ジャストキルだと!!?」
そう、5600-1600=4000だ。そしてちょうど少年のライフも4000だ。
「「ば、バカな…特別執務官の私/俺が…!!」」
「我が最強の僕の攻撃を受けることを誇りに思う事がいい…」
「思いのほかこのデッキもしっくり来るな…まあ、そんな事はどうでもいいか」
驚きを隠せない2人とは対照的に冷めた目でその2人を見ていた剱都と海馬。そして3つ首竜の口に光が、屑鉄龍の周囲に墓地に眠るモンスターの残骸が――
「アルティメット・バースト!!」
「スクラップ・バースト!!」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁ!!!!!」」
青年/LP4000→0
少年/LP4000→0
同時にライフが0になった局員。だがその時異変が起こった。
「「っああああああああああああああ!!!??」」
「「「「なっ!?」」」」
ライフが0になった管理局員の2人は苦しみだした。そのことに剱都は一つだけ心当たりがあった。
先日のシゲルVSディラで負けたディラが消滅した状況――それが今と酷似しているのだ。
「「うがぁああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!!!」」
「バカな…!!」
「消えた…!?」
その光景を見て海馬とカミューラが驚きを隠せないでいた。
―その後―
「で、先日は紫苑ってのと、このカミューラが戦った時だ」
「……ふうん。なるほど。だがその管理局とやらが本当にあるのかどうかも疑わしいな…」
腕を組んだ海馬はそう言った。あの後剱都は全部海馬から吐かされていた。
しかし剱都の話もユウや紫苑からの又聞きだったため所々説明できない部分もあった。
「あ~もう!!ユウか紫苑がいれば正確に説明できんのに!!」
苛立った剱都はそう言った、てか叫んだ。最初の方は剱都がまだアカデミアに来る前だったため説明できないのだ。
「む?ユウ…もうしかして聖牙夕の事か?」
「あ?そうだが知ってるのか?」
海馬の言葉に剱都がそう反応した。ちなみにアカデミアでユウの過去はツバキとシゲル、そしてイナしか知らない事だ。
「昔からの馴染だ。あいつが関わるということは……まあいい。それならば嘘では無かろう」
「…ずいぶん信用してるんだな」
剱都の言葉の通り海馬は自らのライバルである遊戯とその親友である城野内、自身の家族であるモクバと秘書である磯野以外の言葉をあまり信用しようとしない。
「言ったはずだ、昔からの馴染だと。あいつがどういう性格なのか知っている…それだけだ」
―アースラ―
「ば、バカな……2人のバイタルが消えただと!!?」
老人はあまりにも信じられない光景に驚きを隠せないでいた。絶対に失敗しないという自信があったため生体反応が消えたのが信じられないようだ。
「…これでお分かりでしょう。彼らの実力は本物です」
「ク、クソ!!なんたる失態だ!!アルカンシェルを用意しろ!!」
『!!!??』
老人の言ったアルカンシェル――それはその世界すらも破壊することができる殺戮兵器だ。それを使用すると言い出したのだ。
「な、何を言っているんですか!?あの世界には無関係の人たちが大勢――」
「ワシの失態を知る者など生かしておけんわ!!さっさと用意せんか!!」
この時アースラ局員は噂の――いや、なのはの報告にあった『紫苑の過去』である管理局の黒い部分――その実態を身に感じていた。
だがそんな事なんぞどこ吹く風なのか老人は速く用意するようにしか言わない。
「…できません」
「なんじゃと!?速く用意しろといっとるのが分からんのか!!」
エイミィの言葉に老人の怒りが頂点に達したのか彼女を突き飛ばし、見下し、そして罵倒しながら命令していた。だが――
「そこまでにしていただけませんか」
リンディがそれを止めた。それに老人はまだ怒り心頭という顔でリンディを睨んだ。エイミィの次はリンディを罵倒しようとしたのだが――
「私の部下に手を出して無事でいられると思いですの?」
「っ!?」
リンディの気迫――提督という年月が見た目とは裏腹に(作者「殺気!?」)長い彼女は有無を言わさず相手を黙らせるほどの気迫を持っていた。
「もしもこれ以上私の船で勝手な事をするというのであれば、それ相応の処置をとらしていただけますが」
「っ!!お、おい誰かこいつを拘束しろ!!」
老人はアースラの
「この駄目局員共め!!こ、こうなったらワシ自らが奴らを拘束してやる!!」
そう言って転送ポートに向かった老人――それを止める者はいなかった。正確には『止める気がある』者はいなかった。
剱都「なぜに俺があんな凡ミスを…」
なんとなく以前シンクロモンスターとして出したスクラップ・ドラゴンを剱都が召喚してるシーンを書いてみたかった。
ただ、エクストラはクロック+マシンナーズって決めてるからこうなった。
紫苑「私が感情を…」
感情なしで恋愛ってのは無理だろうから。
これで十代とキャッキャウフフな展開ができるぜ…
ユウ「そんな理由で!?」
ツバキ「アンゲロス…また新たな集団だね」
メンバーは一応設定上全員完成した。ただ出てくるのはだいぶあとになる。
シゲル「そーいや、昔話とかいろいろ変えたか?」
年数とか細かいところはその場で考えたやつだったんだけど、アンゲロスの設定を練り直してその部分を書き直した。
ユウ「そういえば精霊の寿命のこと言ってたけどダーク達って何歳なの?」
そうだな、そういう設定はアザー・レコードに登録しておく。
あ、あとメインメンバーが全員出たので記念話を順次全部登録しておきます。
紫苑「何の話があるんですか?」
初回投稿の時の一周年記念話とバレンタイン記念話。
バレンタインは本編に関係ある話です。
さて、デュエル解説だけど言うとしたら海馬の使ってたコンボだね。
ユウ「デブリドラゴンとドラゴニックタクティクス…すごいコンボだね」
某動画サイトであったコンボです。
シゲル「前もなかったか?」
クロノのトリシューラのシンクロ口上だね。そのネタと同じ動画シリーズからです。
次回予告
レッド寮が耐震問題によって工事を行うこととなった。
それに伴い、なぜか二階にいたユウとシゲルが一階へと移動することになった。
始まった工事に暇になった4人。そこに剱都が戻ってきたのだが彼の提案で何故か始まった力試し。
しかし、知らないところで蠢く存在――
次回turn38 剣闘VS機甲 その前に全弾発射?前編
最強カードは「凡骨の意地」