遊戯王GX~ノーバディ・レコード~   作:銀猫

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turn41 獣の過去 新たな芽

剱都が秘密裏に作ったアジトが完成間近――

 

それを待ち遠しく思っていた世界の矛盾だが、6人目のセブンスターズのタイタンが明日香を攫い特待生寮で闇のゲームを行っていた。

 

一方同時刻、連絡が取れなくなったツバキを心配し世界の矛盾は捜索を開始した。

しかしユウの前に管理局の特別執務官の『アイリス・イヴ・バラスティラ』が立ち塞がった。

 

彼女は合流した仲間(ツバキ)を見て『特にシゲルとは戦う訳にはいかない』と言っていた。

そして彼は自らの――

 

 

―アジト―

世界の矛盾であるユウ、ツバキ、シゲル、剱都、紫苑の5人――そして其々の精霊であるイナ、神楽、ウリィ、ダーク、ブルースの計10人が集まっていた。

 

ちなみにスピット達チビ龍とグリ、ウルクリボーは部屋の隅でおとなしくしている。

 

 

「どうしたの?昨日は…急に明日集まれなんて」

「悪いな、色々と確かめることと話す事があるんだ…ユウ、お前が昨日戦った相手の特徴とか名前とか教えてくれないか」

 

紫苑の言葉を尻目にシゲルがユウに聞いた。一先ずそのことについての確認が必要だった。

 

 

「うん。戦った相手の名前は確かアイリス・イヴ・バラスティラだったはず。使ってたのはSinっていう特定のカードを除外して召喚するシリーズのモンスターだった…けど、正直あの時ツバキが来なかったらボクは負けてた」

 

「つまり…そいつはユウ以上の腕前ってことか」

 

 

剱都が重々しく言った。この中での強さなんて全員平均的だった。つまりユウが負けるかもしれないと言う事は自分でも勝てるかどうか分からないと言う事だ。

 

 

「カードとかは後で説明するとして…その時アイリスが言ってたんだ…――

『特に獣斬繁と戦う訳にはいかない』

――って。ただ危険視してるだけならよかったんだけど…何かあったんでしょ」

 

「…………ああ、もう何年も前だけどな。それに俺はアイリス何て名前は知らない…だが俺がこの学園に来たのも…俺がアナトを持っていたのも…そして、俺の闇も…」

 

『シゲル、話す時が気の出は無いのかのう…』

 

 

ウリィの言葉にシゲルは静かに少し頷いた。その日聞いた話をユウ達は一生忘れることは無いだろう――

 

―10年前ー

 

何処かの道場で黒髪の少年と緑の鳥人が互いに向かい合っていた。少年の場には巨大な恐竜のみ、一方鳥人は伏せカードが1枚と炎の獣人だけだった。そして互いにライフを1000切っていた。

 

 

「いっくよ!!ゲオルディアスで先生のラクエルに攻撃!!」

 

「甘い!!リバースカード、眠る魂の咆哮を発動!!場のラクエルと墓地の儂をゲームから除外しガイザレスを特殊召喚!!効果によりフィールドのカードを破壊する!!」

 

「あ!!」

 

 

黒髪の少年が攻撃を宣言した恐竜の前に鳥人が召喚した鎧を着た鳥人が立ち塞がり、巻き起こした風邪で少年の場のカードが破壊された。そして少年の手札と場のカードが全て無くなってしまった。

 

 

「抜かりおったな、先程破壊するカードを儂のベストロウリィではなく、このカードにしておれば勝っていたものを…」

 

「うっ…」

 

 

鳥人に指摘され、痛いところをつかれたように少年が俯いた。それを宥めるように同じ黒髪の男性が少年の頭を撫でた。その横には小さな女の子もいた。

 

 

「まあ、強くなったじゃねぇか。『シゲル』」

 

 

そう――黒髪の少年とは子供の時のシゲルの事だ。そしてこの男性が――シゲルの父親『獣斬霧矢(きりや)』だ。

そして女の子はシゲルの妹――『獣斬 (ひびき)』だ。だが2人の母親はいない。

霧矢が言うには響を生んですぐに亡くなったらしい。2人とも幼く顔も覚えていないのだ。

 

そしてシゲルと戦った鳥人は言うまでもなくウリィだ。

 

 

そして此処は――

―アジト―

 

「――俺とウリィはこことは違う異世界『ニズ』から来た」

 

 

重々しく口を開き紡いだシゲルの言葉――それにアジトの空気が一瞬固まった。

 

 

「シゲルが…異世界人…!?」

 

 

驚きを隠せないでいるようにユウがその言葉に反応した。同様にツバキも剱都も紫苑も驚いていた。するとシゲルは近くのコンソールのあるボタンを押した。

ディスプレイには数秒間砂嵐が流れて何かと繋がった。

 

 

『どうかしたのか…そうか、等々話す気になったのか』

 

 

男性口調の長い黒髪の女性が映し出されていた。その背後はどこかのログハウスの様な雰囲気の壁映っていた。

 

「シゲル、この別嬪(べっぴん)さん誰だ?」

 

『マリア…儂の伴侶じゃ』

 

 

ウリィが何処か恥ずかしそうにそう言った。それに剱都と紫苑に神楽以外の精霊陣は驚いている。

 

え?ユウとツバキと神楽?伴侶って意味を理解していない。

 

 

『お前…結婚してたのか?』

 

「俺の生まれるだいぶ前にな…マリア、今から俺の過去をみんなに説明するが構わないか…あの事件の事も」

 

『構わない。あの事件で苦しんでいるとしたら…私ではなくてお前の方だろ』

 

 

そう言うと今度はシゲルはウリィを見た。が、ウリィもマリアと同意するように首を縦に振った。

 

―再び回想―

 

シゲルと響、そして霧矢は小さな村で暮らしていた。またウリィとマリアは近所で家族ぐるみで交流があった。

 

ニズの事を簡単に説明すると地球の様に発展した世界ではなく、ゲームの中の様な長閑な世界だった。

デュエルモンスターズのモンスターが実際に人間達と生活していた、が、自我を持たないアンデットや悪魔等のモンスターは忌み嫌われていた。

 

 

「シゲルよ、今日の修行は休みだ。明日はあの日じゃからの」

 

「分かった」

 

 

そしてシゲルの家系は代々剣闘獣を使う一族で、またその多くは村の自警団として所属していた。

 

だが自警団に誰でもなれる訳ではない。一年に一度村の守り神であるアナトの前で行う武闘大会で成績を残さないといけない。またその参加試験も厳しいモノだった。

 

―翌日:シゲル視点―

 

「ではこれより武闘大会の参加試験を行う」

 

 

武闘大会は自警団の団員が取り仕切っているが、今年はなんと霧矢だったのだ。そして霧矢の説明が始まると周囲が静寂に包まれた。

 

武闘大会の勝者には語り継がれると言われる名誉が与えられるのだ。

その為に試験内容を頭の中に叩きこんで少しでも事を優位に運ぼうとするのだ。

 

 

「ルールはいたって簡単だ。この村の外れにある妖精の森――その中の光の泉・千年樹・三日月の岩・龍の骸のいずれかに向かい、大会の参加証をとってくるのだ。だがその途中様々なモンスターの妨害がある…下手をすれば命を落とすほどこともある。だがそれでもこの試練を越えし者だけが大会の参加を許される!!さあ、開始だ!!」

 

 

霧矢の言葉と共に参加者達は一斉に妖精の森へと向かった。妖精の森へは歩いて30分と言ったところにある。しかしその先の4つの要所は其々道が別れており、恐らくその最中のイベントはどの道を選ぶのか重要になってくる。

 

ちなみに行き先はランダムで決定された。

 

「いそごう」

 

 

―妖精の森―

 

「ラクエル!」

 

 

妖精の森で悪戯をしてくる妖精を蹴散らしながら進むシゲル。運が良く、彼の行き先は一番近い三日月の岩だった。

 

だが、三日月の岩近くに差し掛かった時に何故かパッタリと妖精のいたずらがなくなったのに首をかしげていた。

 

 

そして、どうして三日月の岩にシゲル以外の生命がいないのに気付かなかったのか。

 

 

―村―

 

「…おかしい」

「どうしたのじゃ?」

 

 

急に口を開いたマリアにウリィが語りかけた。ちなみにマリアとウリィは武闘大会中の村の警備を行っている。自警団のメンバーも結構な数が参加しているため警備が手薄になってしまうので毎年ウリィとマリアも警備の手伝いをしているのだ。

 

 

「北の警備の人の未来が見えない…」

 

「なんじゃと?」

 

 

マリアは先祖にそう言う人がいたのか、『未来が見える』のだ。

だが過去を変えれば未来も変わる。それに「趣味じゃない」ということで人の未来をあまり見ない様にしていたマリアが急にそう言いだしたのだ。さらに――

 

 

「…!?村の人の未来が…消えていく…!!?」

 

「未来が消える…ということは何者かが!?」

 

 

未来が消える――それはその人の未来が無くなるのだ。

 

未来が無くなると言う事は『死』を意味している。だが村人全員の未来が――

 

 

「何…この人…!!霧矢…!!」

 

「いったい…なにを…なにを見ているのだ!!マリア!!」

 

 

ウリィがマリアの肩を強く揺さぶった。それにハッとしたマリアは急いである場所に走り出した。

 

「マリア!!」

 

それに続いてウリィも続いた。

 

その先は――

 

 

―三日月の岩―

 

「これかな…それにしても…」

 

シゲルは三日月の岩の前に置いてあった真っ白のカードを腰のデッキホルダーに入れた。だが周囲――それどころか岩に近づいてから誰も見かけていない。

 

それどころかほかの参加者が何人か先行してたはずなのに誰ともすれ違ってないのだ。

 

 

「…嫌な予感がする…」

 

 

そう呟いたシゲルは来た時よりも速足で村へ戻った。

 

来るときは25分来ていたが、帰りは走って15分で着いた――

 

 

 

――燃え盛る自分の村に

 

「な、なんで…燃えて…!!父さん!!響!!ウリィ!!マリア!!」

 

 

自らの生まれ育った村が燃えてるのに驚きを隠せないでいたシゲルは泣き叫ぶように家族と家族と呼べる者の名前を叫び走った。

 

 

そして先程の武闘大会で霧矢がルール説明をしていた広場まで戻ってきた。そこには一人も人影が見えない――いや、人ならいた。

 

「ッ!?ウッ――――――!!!!」

 

 

燃え尽きて――髪も――肌も――体が炭化した、誰なのかもわからない死体が転がっていた。それを人と呼べるのか分からないが――それが転がっていた。

 

その光景を見て、その死体から発する焼け焦げた肉体の匂いが原因で5歳だったシゲルは朝口にした物を吐きだした。だがすぐに家族を探しに戻ろうとした。

 

 

「――(父さんは次に武闘大会を行うために……神の祭壇に行くはず…)」

 

 

一先ず居場所の分かる父親(霧矢)の元へ行こうとした。が、先程の死体を見たトラウマで足が震えてしまい動かなかった。

 

 

「「シゲル!!」」

 

「――ウリィ…マリア……」

 

 

そこへ霧矢の未来を見たマリアと、それを追って来たウリィが広場に入った。

 

 

「父さんは…!!」

 

「分かってる、霧矢の未来はもうすぐ消えるかもしれない…だが、まだ生きてる。神の祭壇に行くぞ!!」

 

 

ウリィが背負い、マリアの先導で神の祭壇へと向かった。

 

ちなみに神の祭壇とは守り神のアナトを祀っている社の事だ。武闘大会本戦は社の前で行われるため自警団のメンバーはその準備の為に神の祭壇へ集まるはずだった。

 

 

―神の祭壇―

 

『ふん…この程度か』

 

「クッ…!!」

 

 

 

霧矢と黒いローブ状の衣類を着た人物が互いに向かい合って構えていた。

 

しかし――

 

 

???

LP4000 手札4枚

???/ATK4000 ???/ATK3000 ???/ATK3800

伏せカード2枚

 

 

霧矢

LP600 手札2枚

剣闘獣ダリウス/ATK1700 剣闘獣ヴォルテックテール/ATK2200

伏せカード1枚

 

 

あまりにも状況は最悪だった。村の中では指折りの実力であるはずの霧矢でこの状況だ――

 

 

2人の周囲に転がっている人だったモノが勝てるはずがなかった。

 

 

『さあ、教えてもらおうか。神のカードはどこだ!!』

「…俺は神に使える身…教えるわけにはいかない。たとえ命に代えても!!リバースカーd「父さん!!」っ!!」

 

 

 

 

 

霧矢が決意を固めたようにうっすらと笑い、伏せてあるカードを使おうとした瞬間霧矢を父と呼ぶ声がした。霧矢をそう呼ぶのは――

 

 

「繁!!」

「そんな…!!みんな!!」

 

 

霧矢は驚いたようにシゲルを見ていた。こんなに早く試験を終えるとは思っていなかったからだ。しかし――「クックック」と目の前の人物は笑っているので気付いた。

 

 

全て仕組まれた事だと

 

 

 

『さぁて、どうするつもりだ?貴様はその伏せカードで私諸共死ぬつもりだったみたいだが…『闇のゲーム』が働いてるこのフィールドで使えば貴様の大事な子もただでは済まん!!』

 

「父さん…響は!!響はどこ!!」

 

 

 

ここに来るまでに見つける事の出来なかった響の所在をシゲルは聞いた。どうも急に未来が無くなっているため、マリアは上手く未来を見る事ができないみたいだ。

 

 

『響?ああ、あの少女か…』

「っ!!?お前、響を知ってるのか!!」

 

謎の人物がそう呟いたのを聞き逃さなかったマリアはそう怒鳴った。しかしその人物は相変わらず「クックック」と笑い、懐から何かをとりだした。

 

 

「それは…母さんの形見…!!」

 

 

常に響が身につけているはずの霧矢とシゲル、響の写真が入っているロケットがそこにあった。そう、『何があっても』『響が――』『身につけている』

 

 

「………リバース罠、破壊輪発動ゥゥ!!」

『何ィ!?』

 

 

沈黙を破ったのは霧矢の伏せカードだ。10年前までは禁止カードではないこの罠カード――そして対象は、『最大攻撃力』を持つ――

 

 

 

「貴様の場の攻撃力4000のモンスターを破壊し互いにそのダメージを受ける!!」

『馬鹿な!!貴様は自らの手で家族を――』

 

「アナト!!後は頼む!!」

 

霧矢がシゲルの方を見てそう叫んだ。すると――

 

 

 

『仕方ないな』

 

「「「アナト様!!?」」」

 

 

シゲルの腰のデッキホルダー三日月の岩で手に入れた参加証が光り出した。それと同時に3人の周囲に光の膜が現れ、包み込んだ。

 

『クソォ、クソォォォ!!!おのれぇ!!霧矢ァァァァァ!!!!』

 

 

「父さん!!?」

「シゲル、こんな父親ですまなかったな。何一つお前にしてやれなくて……」

 

 

徐々に迫ってくる霧矢自信で発動した破壊輪の衝撃波の中、霧矢は優しくシゲルに話しかけていた。

 

 

 

「だが、お前ならできる…必ずアカデミアでバラスティラを止め――」

「父さん!!」

 

そして辺りが光に包まれた――

 

 

―回想終了―

 

「――そして、気付いたらウリィはカードとなり、俺とマリアはペガサスのコテージにいた…結局バラスティラってなんなのかそんときは分からなかったが…」

 

「…ユウが戦った相手ってことか」

 

 

シゲルの過去、そして彼の目的があまりにもでか過ぎた。父親の最後の望みに、復讐――そして孤独。

 

 

 

「…俺が奴らと同じ異世界人で軽蔑しても良い。拒絶しても良い。だが俺は奴らと戦う…一人でもな」

 

 

重々しい空気の中シゲルはそう言った。こうなるかもしれないと分かっていて過去を話したのだ。しかしシゲルは――

 

 

 

 

「なぁにバカなこと言ってるんだ?」

 

「…剱都」

 

 

重い空気の中口を開いたのは剱都だった。その顔は先日のシゲルVS剱都を提案した時の様に軽いモノだった。あまりに場違いな雰囲気にユウが驚き半分で見ていた。

 

 

「たとえそれが事実だとしてもなんだ?ハッ、軽蔑?そんなのする訳ねぇよ。テメェは俺らの仲間で、親友(ダチ)だろ?それ以外に何があるんだ?」

「それにそれだけで軽蔑するなら、私はもっとひどい事になってるよ」

 

 

そう言ったのは紫苑だ。紫苑の言うとおり彼女も異世界の出身の身だ。しかも毛色が違うが彼女もシゲルと同じく孤独だったのだ。

 

 

「…管理局でのひと悶着の時に、シゲルは言ったよね?『カードがあろうが無かろうが、俺は俺、お前達はお前たちだ』って」

「そうだよ!そんな事があってもシゲルはシゲルだよ!!」

 

 

そう、そんな心配はいらなかったのだ。彼らは誰かを軽蔑したり、差別したり、孤独にさせたりすることは無いのだ。

 

「そのバラスティラって言う人は強いのですか?」

 

「瀬戸さんの持つブルーアイズや、ダークネスの使ってたレッドアイズと言ったモンスターの上位種を出してたよ」

 

「デッキから元となるモンスターを除外することで手札からそのモンスターをほぼノーコストで召喚して…パワーで攻めるのは厳しいな」

 

「第一そんな戦い方なら私やユウは結構しんどいから…」

 

 

4人はアイリスの持つSinモンスターの対策を話し合っていた。

 

 

その光景を見たシゲルは静かに涙を流していた。彼は実を言うと怖かったのだ。

本当の事を言って拒絶されるのが。

 

 

だが――受け入れてくれた事が今、何よりも嬉しいのだ。シゲルは静かに流れていた涙を拭うと4人の輪に入った。

 

 

「(…ありがとうな)パワーじゃなくて戦術で攻めるのはどうだ?破壊効果や特殊召喚無効…」

 

「無効は駄目かも…ボク達もそう言うデッキだから、封じられるとなにも出来なくなる」

 

 

 

『なら、修行してみたらいいと思うよ』

 

「なるほど、それはいい、アイデ、アだ…!!??」

 

 

 

誰かが言った言葉に剱都も賛同していた。だがよくよく考えるとさっきの口調で精霊ならイナや神楽だが声が違う――

 

 

 

「「「「「誰だ!!?」」」」」

 

 

5人が振り返った所にいたのは紫のショートカットの髪の優しそうな男性だった。が、アカデミアの生徒でもなければ教師でもない。

 

そして着ている服がアナトやカルマの様な雰囲気を醸し出していた。

 

 

『ああごめんごめん。私はアイオーンという名前だよ』

 

「アイオーン…時の神……なのか?」

 

 

シゲルの言葉にアイーオンは頷いた。パッと見は気前の良い青年の様な感じがしており、一瞬警戒したが、あまりにも敵意がなさすぎるので剱都と紫苑は身構えるのを止めた。

 

 

 

「で、その時の神がなんでここに…」

 

『アナトに頼まれてね…聖牙夕の戦いを眺めていたらここらで立ち止まるだろうって。思った通り、君はあの少女に負けた。だが君達には時間がない…だから時間を歪めて、修行できる時を与えてほしいって』

 

 

そう言った時、アイオーンの背後の空き部屋の扉が、音もなく横にスライドした。

 

 

『この扉を潜れば時が止まる部屋だよ。君達にちょうどの相手も用意してるが…それで新たな力を手に入れるかは君立ち次第だね』

 

「新たな力?」

 

 

アイオーンの言葉に紫苑が気になった様に聞いた。その言い方だと既に自分達に何かしらの力を持っていると聞こえるが、そんなものに心当たりはなかった。

 

 

『ちょっと言い方が分かりにくかったね、君達の中には新たな力が芽生え始めてるんだ。けど、それが花開くのはものすごく先なんだ。この空間で修行をして、その力を開花させるのが、私の役目なんだ』

 

「成功する見込みはあるのか?」

 

『それは人の頑張りというものだよ』

 

 

剱都の言葉に人懐っこい笑みを浮かべたアイオーン。だが、迷う理由なんて無かったんだ。

 

敵が強くなる、自分たちでは勝てなくなる、新たな力へのヒントが目の前にある。

 

それで手を伸ばさない理由なんてなかった。

 

 

『決意は固まったみたいだね』

 

 

アイオーンの言葉に全員が頷いた。

―修行室―

 

地下に作ったはずの空間は精々中学校の教室並のはずだった。そしてそこも他の所と同じ様に鉄の箱があるはずだった。

 

 

 

「「「…広!!!」」」

 

「「てか凄!!!」」

 

 

 

そう、教室並の大きさのはずの空間がまるで外にいるように広々していた。て言うか外だった。青空も見え、背後には山、遠くの方には海も見える

 

その反応に満足したのか、アイオーンは美青年の様な感じだの笑顔をしている。

 

 

「で、私達にちょうどいい相手って誰?」

 

 

紫苑はニコニコしているアイオーンに聞いた。確かに修行にはちょうどいいような環境だが――

 

 

『もうすでに目の前にいるよ?』

 

「「「「「え?」」」」」

 

 

アイオーンの言葉に全員がその方向を向いた。そこには――みたところ5人誰かいるが逆光でよく見えない。

 

「誰d――――えぇ…!!!??」

 

試しにユウが近づいてその中の一人を見たのだが驚きながら後ずさりをしていた。

それを見た紫苑が同じように近づき――

 

 

「……………」

 

 

無言で戻ってきた。だがその顔は思いっきり驚いていた。もう一人で行く必要はないのか、逃げ出したい2人の首根っこをツバキと剱都が掴んでその5人の元へ行った。

 

 

「「「………………」」」

 

 

そして3人はリアクションに迷った――何故なら――

 

 

「「「「「……………………」」」」」

 

 

そこにいたのは――

 

 

「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!??」」」

 

 

 

 

 

ユウ、シゲル、ツバキ、剱都、紫苑の5人だったからだ。説明を求むと言うように紫苑がアイオーンを睨んだ。いきなり自分が目の前にいたらそりゃあ混乱するが――

 

 

『彼らなら私よりも彼の方が詳しいよ』

『という訳じゃ』

 

「「「「なんでカルマがいるんだ!!?」」」」

 

 

精霊界でカルマに会った4人は一斉に突っ込んだ。アナトがアイオーンにこの空間の事を頼んだのならカルマがいてもおかしくないが、それとそっくりが何の関係があるのだろうか。

 

 

 

『そりゃ儂が作ったからじゃ』

 

 

地の文に反応しないでください。

 

 

「作ったって…人間をか?」

 

『そうじゃ、経験に戦術、思考と癖…更には息使いまでも完璧に再現した人間を作ったのじゃ、この者と共にな』

 

『こんなことでわらわを呼びだすではない』

 

 

そう言ったのは着物を着た老婆が杖をついて佇んでいた。心なしかカルマを睨んでいる気もするが――

 

 

「なあ、その婆さんは?」

 

『婆さんではない。わらわは阿曇磯良(あづみのいそら)ぞよ』

 

その婆さん――阿曇磯良の名を聞いて紫苑が「確か…」と思い出していた。

 

 

「阿曇磯良…日本の神話に出てくる海の神…」

 

『博識じゃな、その通りじゃ。そこのコピーはわらわが作り、そこの小童(カルマ)が魂を入れたのじゃ。ほぼオリジナルと同じじゃ』

 

「それが…修行?」

 

 

 

阿曇磯良の言葉に引っかかりを覚えたツバキが聞いた。

どうも自分と戦うのはやりにくいが、それだけで修業とは思えない。

どうせなら自身のデッキのメタデッキの方がやりにくい気もする。

 

 

『自分が相手だと思って油断するもんじゃないぞ、試しにほれ、剱都、戦ってみるがよい』

 

「俺?まあいいが…」

 

 

―sideユウ―

 

 

ボクの目の前で目の前で驚く事が起こってる――

 

説明しようにも状況が今の僕にも理解できてないんだ――

 

 

 

「なんだよ…これ…!!」

 

 

驚きを隠せないのは剱都も一緒だったみたい。自分と同じなら同じような戦いをするのかと思っていたのだけど――

 

 

剱都(コピー)のメインフェイズ1―

 

剱都

LP1000 手札3枚

クロック・ゴールド・ドラゴン/ATK2300

伏せカード無し

 

 

「バトルフェイズ」

 

 

剱都のコピーは無表情にそう宣言した。カルマ曰く本人の癖や特徴といったもの以外は真似ていないからこうなっているらしい。

 

 

剱都(コピー)

LP2000 手札2枚

マシンナーズ・バーサーカー/ATK3500 マシンナーズ・フォートレス/ATK2500

伏せカード無し

 

 

「マシンナーズ・フォートレスでクロック・ゴールド・ドラゴンに攻撃」

『グルァァァァァァァァァ!!』

「クロック!!」

 

 

剱都/LP1000→800

 

 

戦車の砲撃でクロックが打ち抜かれてしまった。自らのライフが無くなる事よりもその――自分のモンスターが自分のモンスターを破壊することに違和感を感じていた。

 

 

「マシンナーズ・バーサーカーで直接攻撃、バーサーカークラッシュ」

「グッ…あああああああ!!!!!」

 

「剱都!!」

 

剱都/LP800→0

 

 

この修行部屋では死んだり怪我をすることはないが、擬似的に実際のダメージを受けるようになっている。

 

 

『分かったじゃろ?ただ自分のコピーだからと言っても自らより劣るとは限らん。自らを越える事じゃの』

 

 

カルマの言葉に全員が口を閉じた。自分自身との戦いとはよく言ったものだが――

 

 

「…ヘッ…おもしれぇ…!!!」

 

 

そう言ったのは、吹き飛ばされて倒れていた剱都だった。倒れたまま、面白い玩具でも見つけたように笑った。

 

 

「自分自身の戦い…ちょうどこのデッキで出来る事もいっぱいいっぱいになってきたんだよ。自分に何が足りないか、何が必要なのか知りたかったんだよ」

 

『…面白いね、君』

 

 

その剱都を見て同じように面白いものを見つけたようにアイオーンが笑っているのに誰も気づかなかった。

 

「…うん、やるよ。カルマ。ボク達はボク達を越えて見せる!!」

 

 

―一方:アースラ―

 

 

「フェイトさん、はやてさん、少しいいかしら?」

 

 

訓練室から戻ってきた2人にリンディはデバイスルームへと2人を呼んだ。

 

「どうかしたんですか?」

 

「2人に渡したいものがあるんです」

 

 

そう言ってリンディが取り出したのは3枚のカードだった。




ユウ「シゲルが…異世界の住人…!?」
剱都「まさかだと思うが、シゲルの『特異的な体質』ってただ単にそれだからとかじゃないよな?」
近いものがあるけど、シゲルの体の構造はユウ達の世界の人間と全く同じだからね。
紫苑「それにしても…予想外ですね。彼にそれほどまでの闇があるとは…」
父親の死、故郷の消滅、異世界、多分抱えてる闇が一番でかいと思う。
ちなみにマリアはI2で働いている。
一応シゲルが小中学生の頃はマリアが保護者だった。

シゲル「アイリス・イヴ・バラスティア…」
ツバキ「彼女の狙いはなんなのかな…ユウと戦ってたと思ったら私を見て撤退するし…」
まあ、彼女のに関しては結構あとだろうね。
今は管理局:アースラとの戦いの決着が目前。

剱都「で、修行な…」
長くなるから修行の内容はバッサリカット。
後日談としてこの修行は『一年修行』と呼ばれるね。
ユウ「『一年修行』?なんで?」
ただ単に一年間修行をしたから。ただ現実世界だと数日ぐらい
シゲル「なんだその『精神と時の部屋』みたいなものは…」


次回予告
『一年修行』を終えた5人は新たな力を手に管理局との全面対戦へと向かう。
かつてツバキ達に近づいて、そして裏切ったはやてに剱都が挑んだ。

「欲望を持つ愚者に傲慢な悪魔の囁きが聞こえる」

「強く支える者に吹き荒れる幸運の追い風となれ」


ぶつかり合う力、すれ違う気持ち、背負う思い

そして、最後の一瞬――

次回turn42 古の魔法 剱都VSはやて
最強カードは『古の対価』
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