遊戯王GX~ノーバディ・レコード~   作:銀猫

58 / 125
turn53 荒木の背負うモノ 命を賭けたゲーム

―???―

 

「斎王…どうして君の見た未来が…?」

「……私に分からない。どうやら私よりも強力な運命力を持つ者がいるようだ」

 

 

斎王という男性からそう聞いた時、エドは自分の事を心配している親友の顔を思い浮かべた。それと同時に彼が関わっていた「世界の矛盾」という存在――

 

 

「(……まさかユウが…?)」

 

 

 

「…む、エド。今度はアカデミアに向かい、遊城十代と戦ってもらいたい」

 

 

斎王の言葉にエドはアカデミア教頭と臨時校長という2人組が依頼をよこしてきたのを思い出した。内容も『遊城十代と戦え』というものだった。

 

それならそれを利用しようと言う考えを練り上げているうちに、エドの頭の中からユウの顔が消えていた。

 

 

―アカデミア:レッド前―

 

 

「レッドは廃寮でア~ル!!」

 

 

そう言っているのはナポレオン教頭――デュエルアカデミア‐イギリス校から転任してきた人物だ。

 

しかし昔のクロノス同様エリート意識が高く、落ちこぼれのレッドを潰すべきだと述べている。

 

 

「おいおい、いきなり来てそれはどうかと思うが、教頭…それと臨時(・・)校長も」

 

「臨時を強調して言わないでほしいノーネ!!」

 

 

何故か鮫島が長期出張でクロノスに代理を任せ、島を出たのがほんの3日前――カイザーVSエドの戦いがあった2日後だった。

 

 

「レッド生は不良が多いのでア~ル!!」

「おい、教頭。それは生徒の人権侵害じゃねーのか?」

 

 

ナポレオンの言葉にシゲルがそう言った。ちなみにナポレオンの言う不良とはシゲルと剱都の事だ、見た目的に。

 

 

「それに落ちこぼれが残っても何もできないでア~……」

「先生?それ以上言ったらどうなるか……分かります?」

 

 

『にっこり』と言う擬音が聞こえてきそうな背後に瘴気を纏ったユウの笑顔にその場にいた『ノーバディ』以外の生徒は青くガクブル震えている。

 

ちなみに4人は慣れてしまったのだ。そのことを全く知らず、「優しくて小さい先輩」と言う概念しかなかった一年と「ああ、またか」と思いながら2~3年が震えている。

そしてそのデビルスマイルを向けられているナポレオンとクロノス――

 

あ、レッドの半数気を失った。

 

 

 

「ぼぼぼ暴力反対なノーネ!!」

「教頭と臨時校長と言う立場で無暗やたらに職権乱用で生徒に無茶な事を強要させるのはどうなんですか?私達に発言権は無く、無理な要求に答えられず反抗するだけで暴力と言うのなら警察に駆け込んでみたらどうですか?こちらが暴力をふるったなんて証拠はどこにもないですよ」

 

「ぐ、ぐぬぬぬ…」

 

ツバキの言葉に懐かしくクロノスがハンカチを咥えていた。だが「フン」と鼻を鳴らしてナポレオンが得意げにツバキを見た。

 

 

「それを言うのであるのならば、こちらがそんな強要をしたと言う証拠もないのでアール!!」

「教頭、残念ながらチームノーバディ全員のデュエルディスクは特注品でメンテナンスは私がするんですが…実はこのデュエルディスク、録音機能が付いてるんですよ」

 

「な、なんだと!?」

 

 

そう、5色のディスクは録音機能がついていた

 

 

 

「「「「「(まあ、嘘だけどね)」」」」」

――わけではない。

 

全部紫苑のハッタリだった。ちなみにこの作戦は元々対管理局の為に発案されたのだが、それを今使うなんて誰も思っていなかった。

 

しかし、これでネタバレされない限り向こうサイドが大きく動けるはずもない。

 

 

 

「ぐぬぬぬ…!!な、ならば代表選でアール!!そちらの代表とこちらで用意した代表で戦ってもらうのでアール!!」

 

「面白そうだな~!!」

 

 

とやる気満々の十代。そしてナポレオン教頭の示した日時が3日後――それまでにレッド代表を決めなければならなかった。

 

そして厳選な話し合い(と言う名のくじ引き)で十代に決定した。

 

 

 

―3日後―

 

 

 

―イヤァァァァァッホォォォォォォォォォォ!!!!!!―

 

 

エド、スカイダイビングなう

 

 

 

―購買部―

 

翌日から発売されるパックが陳列棚に並べられていた。それはシンクロ関系のカードが豊富で人気により混雑が予想され、パックを前日の夜から大量に並べていたのだが――

 

 

「……………………」

 

 

そこに一人の男性がいた。この時間だと購買は閉まっておりその上購買の店員はご存知のトメさんとセイコさん、そしてカミューラの3人しかいないはずだった。

 

 

男性は持っていたボストンバックにあす発売されるはずのパックをぎっしりと、そしてその横にあった人気パックも入れていた。それを担ぐと男性は走り出した。

 

彼はイエロー生だが実力は入学当時の翔や隼人よりも下と言う御世辞にもいい成績ではない。

 

それに焦ったのか、窃盗を働く事にしたのだ。

 

 

―校門―

 

「はぁ、はぁ、はぁ…」

 

 

男性はボストンバックを抱えて周囲を見渡した。もしかしたら警備員が巡回してるかもしれないからだ。

 

だが誰もおらず、そのことに安心して口元を緩ませると寮へ向かって走り出した。

 

 

「たぁっ!!」

「グォッ!?」

 

 

突然背後から誰かに蹴られた。その勢いのまま近くの石に頭をゴチン!と音を立てて気を失った。

 

 

そこに立っていたのは――

 

 

 

 

 

「なんだ!?さっき叫びが…っ!?」

「え、エド・フェニックス!?」

 

 

エドだった。それを発見したのは十代と翔、剣山それに遅れてツバキと紫苑に荒木という少々異色な面々だった。

 

ちなみにユウ達はいまだにレッド寮にいる。一足先に十代達がやってきて、ツバキ達はレッド寮に向かっている最中だった。

 

 

「(エド…そしてそこに倒れてる男……間違いない。原作は変わって無いはずなんだ…)」

 

「ど、どうしてプロが此処にいるっス!?」

 

 

荒木の気持ちとは裏腹に翔がそう驚きの声を隠せないでいた。亮の様なOBが来るのなら分かるがエドとアカデミアに直接のかかわりは無い。

 

しかしその横で落ち着いてる声が響いた。

 

 

「久しぶりです、エドさん」

「お久しぶりです」

 

「ああ、久しぶり…というほど経ってませんがね」

 

 

ツバキと紫苑がエドに軽く会釈をしていた。エドも微笑みながらそう返すのに十代達は更にパニックになっていた。

 

 

「え?!紫苑、お前エドと知り合いなのか!?」

「ツバキちゃんも知ってるっす!?」

 

「十代は覚えてると思いますが、カリーヌ教会で貴方とジュンコさんが先に戻った日、来たんですよ」

 

ちょうどと言っていいほどの確率で十代がいなかったのだ。するとエドはまるで虫を見るような目で先程の男性を見下ろしていた。

 

 

「この(クズ)はどうやら窃盗を働いたようだ…校長にでも引き渡して退学にした方がいい」

「お、おう…」

 

 

荒木は何処からかロープを取り出すと男性をグルグル巻きにした。

だが女子3人はレッド寮に残っている男子と少し用事があるのだ。だからのそロープの先を剣山に持たせると急いでレッド寮へ向かった。

 

 

―レッド寮―

 

「なぁ、大事な話って何だろうな?」

 

 

剱都がそう言って寛いでいる2人に聞いた。さかのぼる事20分前、十代達と共にデュエルリングへ向かおうと準備をしていた5人だったが、何故かノーバディの3人だけ荒木からメールが届いたのだ。

 

 

『大事な話がある。レッド寮で待ってくれませんか?』

 

 

そう書いてあり、またアドレスを確認するとツバキと紫苑にも送られていた。その後紫苑から3人一緒に来るとメールが届き、十代達を見送って静かに待っているわけだ。

 

 

「俺達だけにメールするってことはノーバディか…あの事(世界の矛盾)か……」

「もしかして、荒木さん…管理局の一員ってことも…!!」

 

 

ユウの考えも十分考えられていた。5人の共通点と言えばそれ関連だったが、それにしては回りくどい様な気もした。

以前までなら潜入するにしても隠密に、そしてできる限り余計な接点を持たない様にしていた。

 

だが荒木は入試試験からシゲルを通じて全員に関わりを持っていた。それは潜入・隠密とはかけ離れていた。

 

 

「皆~待った?」

 

「お、来たか」

 

 

ツバキが扉を開けて入ってきた。その後ろには荒木と紫苑もいた。

 

 

「…すいません。急に呼びとめて」

「構わねぇよ。てか、喋りにくいなら敬語止めても良いぞ」

 

 

剱都の言葉に荒木は「じゃあ」と言って口調を元に戻した。

 

 

「で、十代の勝負も気になるからあまり余談する気は無い。単刀直入に聞くが、なぜ俺達『チーム・ノーバディ』を残したんだ?」

 

「……………先輩達は……『転生者』か?」

 

「転生者?」

 

 

あまりにも聞き慣れない言葉に全員がキョトンとしていた。それを見た荒木は何かに安心したようにもう一つ付け足した。

 

 

「…信じてくれるか?」

「何をですか?」

 

 

沸々と呟いた荒木の質問に紫苑がなんなのか聞き返した。

 

 

 

「『異世界』」

「「!!!?」」

 

 

それは――あの日ユウとシゲルが高町なのはに聞かれた質問と全く同じだった。

 

 

 

― 一年前 ―

 

「…2人は異世界って信じる?」

 

ユウと万丈目が戦った日。それがユウ、シゲルそしてツバキの人生の分かれ目だった。

 

 

 

「ここは巡行艦『アースラ』の訓練室…まあ平たく言えば宇宙船の中だ」

 

 

 

3人が連れてこられたのは宇宙空間に漂ってる宇宙船――アースラに連れて行かれた。そこで聞く『ロストロギア』と『世界の矛盾』という名前。

 

 

 

「俺達は協力する義理も義務も無い」

 

 

 

シゲルの判断で時空管理局と決別した。

その後はじまった『世界の矛盾』VS『時空管理局』の戦い。

 

―回想終了―

 

もしも協力してたのなら――今の5人はおらず、紫苑も助け出せなかっただろう。

 

 

 

「…いきなり異世界なんて言われてもピンと来ねえよ…どういうことかしっかり説明してくれ。俺達にいきなりそんな事を言った理由も含めて説明してくれないか?」

 

「………(懐かしいね、その台詞)」

 

 

1年前と全く同じ応えでシゲルが言い放った。それにユウがしみじみしてるとその後、アースラに飛ばされたのを思い出した。

 

だが今回はあの時みたいな魔法陣の様な物が無い。

 

 

「…『輪廻転生』って信じるか?」

「輪廻転生?」

 

 

「ヒンドゥー教や仏教などが信じている死んであの世に行った魂でもこの世に生まれ変わってくると言う教えです。簡潔に言うと『死んで生まれ変わる』みたいなものです」

 

 

 

ツバキの質問に紫苑が補足を入れながら簡単に説明した。それに一瞬荒木が目を丸くしたが「その通り」と言う感じで頷いた。

 

 

「それがなんだ?悪いが俺は無神論者だ。宗教の御布施なら他でやってもらいたい」

 

 

「「「「(てかお前神見ただろ、魂と戦いと海に時の4神)」」」」

 

 

 

剱都の言葉に4人が一斉に突っ込んだ。と言うか剱都の「エンシェントモンスター」も時の神「アイオーン」の力の一部だ。

 

ちなみに精霊界で好青年が何故か膝をついて泣いていたそうだ。

 

 

 

 

 

「じゃあ…神は信じなくても、俺が『生まれ変わった』って言うのは…信じるか?」

 

「「「「「は?」」」」」

 

 

荒木の質問が理解できなかった。

 

 

―半年前―

 

 

とある世界にとある少女がいた。普通の中学生――ではない。

 

 

「ひ、ひぃぃぃぃ!!!」

「何処にいる!!!」

 

 

とある廃屋で不良達が怯えている先に少女――荒木キリエがいた。

 

昔から問題事を多く起こしていた荒木は次第に孤立し、離れて行った。だがそんな彼女には一人の大親友がいた。

 

それがクラスの人気者だった吉屋美弥(よしや みや)だ。

 

 

孤立していた荒木に手を差し伸べ、暗く荒んでいた彼女の心を明るくしてくれた親友だ。

だが彼女は唯一の親友である吉屋が自身を目の敵にしている不良グループに拉致されたのを聞き、単身乗り込んできたのだ。

 

 

待ちかまえていた20人余りの不良を殴り、蹴り飛ばし、中には骨を折って、立ち塞がる敵を排除し彼女は突き進んでいた。

 

 

 

「吉屋ァ!!」

「あ、荒木さん!!」

 

 

そして見つけた親友はロープで芋虫みたいにぐるぐる巻きにされ、宙吊りになっていた。その下には不良グループのリーダー格の木田芳樹(きだ よしき)がニヤニヤしながら荒木を見ていた。

 

 

 

「ようこそ、荒木。残念ながら持て成す茶なんて用意できなくてね…」

 

「いらねぇよ!!そんな事より吉屋を返しやがれ!!」

 

 

そう言って荒木は木田に向かって殴りかかろうとするが、その木田の手には謎の赤いボタンが握られていた。

 

 

「いいのか?俺が『うっかり』このボタンを押すとお前の大事な親友はケチャップへと早変わりするぞ」

 

「なっ…!!」

 

 

今吉屋がいるのはおよそ20mほどの高さ、しかも落下地点と思われる場所には砕けた瓶のかけらやガラス片が散らばっている。

バランスを取る事が出来ない吉屋がそのまま落下すれば――ただでは済まない。

 

 

「っ……!!」

 

「ふふ、懸命だな。だが嫌われ者のお前が誰かの犠牲になるなんて……似合わねぇな!!」

 

 

「ガッ…ぁ…!!」

 

 

木田はそう言うと荒木の腹にボディブローをかました。元ボクシング部と言う肩書もある木田のパンチは確実に荒木の内蔵にダメージを与えた。

 

 

「ゲホッ…!!ゲホッ、ゲホッ!!ぅ…―――――」

 

 

突然の出来事に荒木は胃の中にあった物をブチまけてしまった。そこを中心に腐乱した卵の様な匂いが立ち込める。

 

 

 

「あ~あ、汚ねェな…吐いたもんは自分で掃除するんだな!!」

「ぐっ、ァ…!!」

 

 

 

木田は荒木の頭を思いっきり踏みつけた。先程モドシタ事によって荒木の頭が正常に働くのに時間がかかった。

 

 

「荒木さん!!」

「ハハッ!!こりゃ傑作だな!!あの嫌われ者の不良少女が自分とは立場も人気も違う女のために身を削るなんてな!!」

 

 

「ぐっ……」

 

 

木田はそう言って吉屋を見上げた。クラスの人気者という評価もさることながらその優しさに誰もが嫉妬すると言う話だ。

 

 

「ハッ、心配する振りはやめたらどうだ?どうせテメェみたいな女はこいつみたいな出来そこないを見下してるんだろ!?」

 

「そ、そんなことはしません!!荒木さんは…荒木さんは、私の親友ですから!!」

 

「!!」

 

 

一方的に荒木が吉屋の事を親友と思っているだけだった。吉屋は荒木に付きまとうが彼女には彼女の友人もいた。

自分は「おまけ」なのだと――そう思っていた事もあった。

 

 

「っ…!!虫唾が走るんだよ!!そういう友情ごっこにはよ!!……そうだ、いい事を思いついた…!!」

 

 

そう言って木田は持っていた赤いボタンをちらつかせた。押せば一瞬で吉屋が落下してしまう。

 

 

「さっきこの女を『親友』と言った事を取り消せ」

「っ!!い、嫌です!!誰が何と言おうとも荒木さんは――」

 

 

そう吉屋が拒否すると木田はニヤニヤしながらボタンに手をかけた。

 

 

 

「よし…や…取り消せ………テメェ…なんて……友達(ダチ)でも……なんでも……ねぇよ……」

 

「荒木…さん……?」

 

 

 

恐らく木田は吉屋がさっきの言葉を取り消さないとボタンを押して落下させるだろう。そう判断した荒木はそう言い放った。

 

 

「俺も…こいつと一緒だよ……テメェ……みたいな優等生に…お友達なんて……気持ち悪い…」

 

「テメェは黙ってろ!!」

 

「ガッ……あ……」

 

 

木田は自分の思惑通りいかないのが面白くないらしく、荒木の腹をけり飛ばした。だが吉屋はさっきの発言を真に受けてるのか、顔が白くなっていた。

 

 

 

「ハッ、さっきまでの威勢はどうしたんだ?まさかテメェは自分が誰からも好かれる存在とでも思ってたのか?」

「………………荒木さん」

 

「……ぁ…?」

 

 

息も切れ切れに荒木は吉屋を見上げた。吉屋は――

 

 

 

 

 

「ひっぐ…ごめんな…ぐす…さい…」

 

 

 

泣いていた。大粒の涙をを流し、そしてグルグル巻きにされている後ろ手でごそごそと何かをしていた。

 

 

 

「私の所為で…こんなことになって…!!」

「吉屋…!!」

 

 

「ハッ!熱い友情だな!!それで?テメェは何するんだ?この女の代わりに俺をぶっ飛ばすのか?」

 

「それは…荒木さんの出番です。ですが……」

 

 

その時、荒木は吉屋の手に握られている物が見えた。いつも荒木が喧嘩で服を破く事が多いため、持ち歩いていた――

 

 

 

 

 

 

 

「私は……荒木さんの足かせになりたくありません」

 

「「!!!」」

 

 

ポケットサイズの裁縫セットを常に持ち歩いている吉屋はその中の鋏をロープに突き刺していたのだ。

 

やがて吉屋の体重に耐えれなくなったロープは音を立ててちぎれる――

 

 

 

「よ…よし…や…?」

 

 

 

落下した吉屋。フラフラになりながらその彼女に近づいた。

彼女は人形のように動かない――

 

 

「よ…しや……なんで…こんなところで寝てるんだよ…」

 

 

荒木は膝を折り、吉屋を抱きかかえた。

 

 

「起きろよ…なあ、起きろよ…!!」

 

 

吉屋を中心に、赤い血溜まりが広がっていた。

 

 

「ふざけんじゃ…ふざけてんじゃねぇよ!!」

 

 

荒木は必死に吉屋の体を揺さぶった。だが吉屋の体から流れ出る血が支えている手を濡らすだけに終わった。

 

 

「チッ、勝手に死にやがったか。まあいい」

「…………………」

 

 

木田の言葉に荒木は固まった。すると木田はポケットからナイフを取り出した。

 

 

 

 

 

 

「死n「ガァァァァ!!!!」!?」

 

 

 

ナイフで切りかかろうとした瞬間荒木は振り返りながら顔面に殴りを入れた。

 

しかし、その時聞こえた声は彼女特有の男性言葉の女性声ではなく、獣の様な雄叫びだった。

 

 

「ウガァァァ!!グルアアアアア!!!グァアアアアアアア!!!!!」

 

「ァっ!!ァアァァァ!!!アアアアアアアア!!!!」

 

 

 

 

尻もちをついていた木田にさらに荒木は馬乗りになって頭を押さえつけ、鼻を殴り、口元を殴った。

 

 

それで木田の鼻が折れ、前歯の何本か抜けてしまった。しかし、それでも荒木は止まらない。

 

その手には鈍く光る――

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「っ!!!!!」

 

 

 

吉屋の持っていた鋏が握られていた。それが木田の胸――気管を貫いた。

 

肺に入るはずの空気が鋏であけられた穴から外に漏れていた。

 

 

「クルしんデ……死ネ」

 

「ッ…ァ……!!」

 

 

何かを叫ぼうとしていた木田だが、口からは空気が漏れるだけだった。それに荒木は興味を失くした狂犬のように立ち上がると吉屋の元へ向かった。

 

 

 

「吉屋…おきてくれ…たのむ…」

「………………」

 

 

だが吉屋は起きる気配は全くない。それこそ、人形のように――綺麗に笑って――

 

 

 

「吉屋……よしやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

―回想終了―

 

「……これが、俺の起こった事だ」

 

「「「「「…………………」」」」」

 

 

あまりにも重すぎて、そして哀しすぎる話に誰も何も言えなかった。

 

 

 

「……その1週間後…木田を殺した罪で刑務所にいた俺は……自殺した」

 

「「「っ…」」」

 

「ど、どうして……自ら命を…」

 

 

そう、木田を――吉屋が死んで1週間の時間があった。

もしも死ぬ気ならその時間、どうしてそこまで空いてしまったのか――

 

 

 

「取引…したんだ」

「取引?」

 

 

 

 

 

 

 

「神様に、荒木を…生き返らして貰えるゲームに参加する事を」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

 

神――そして5人の馴染で生命の神(カルマ)がいた。だが――彼がそんな『ゲーム』をやるだろうか。

 

 

「この世界…俺の世界でアニメとして存在する世界の住人として生き残る、それがルールなんだ…」

 

「ここが…アニメの世界で…ゲームの舞台…!?」

 

 

剱都は信じられないように言った。確かにそれなら自分達はアニメの存在と言うことになる。

 

 

 

「だが…なぜか俺の覚えてる中で先輩達はいなかったんだ……」

 

「どういうこと?」

 

「俺が覚えている限り、アニメの世界で…十代達がアカデミアにいる間にチーム・ノーバディなんて……いや、そもそもこの学園に先輩達やチーム科は存在しないはずなんだ」

 

 

それを聞いた5人に心当たりがあった。それは一年前に知り、自らのチーム名の由来となった――

 

 

「それは…ボク達も知ってる。ボク達が元々この世界に存在しない――『世界の矛盾』だってことは」

「世界の矛盾…?」

 

 

 

ユウ達は世界の矛盾の事を簡潔に説明した。管理局や精霊界、5人の過去などは知らなくても良い情報だと思いそこだけ適当に流して。

 

それに荒木は納得したような顔をしていた。

 

 

 

「じゃあ先輩達は…『転生者』じゃないのか…」

 

「ん…転生者?どっかで聞いたような……」

 

 

荒木の言葉にシゲルは何かを考えていた。だが彼は、荒木と戦った日に戦った宮本の事をすっかりと忘れていた。

 

 

「じゃあ転生者ってのは何人もいるってことか?」

 

「ああ。その転生者同士で戦うのも、手を組むのも好きにしろってさ」

 

「え…?生き残りのゲーム…ですよね?それなのに戦い合うんですか?」

 

 

紫苑の考えも尤もだ。だがゲームをやるには『(エネミー)』も存在するハズだった。

 

 

 

「…転生者のゲームクリアを妨害する転生者(イレギュラー)もいるらしい。そいつの妨害を切り抜けるためにチームを組んでその妨害をかいくぐる、もしくはその転生者に寝返るのかので切り抜ける…それがこのゲーム」

 

「……なるほどな。だから転生者だと思って俺達に近づいたのか」

 

 

 

恐らく手を組もうとして、話しかけてきたのか。

 

 

「ちなみに聞くが、その神様の特徴とか覚えてるか?」

 

「あ?えーっと……結構綺麗な女の人だったな。少し茶色みのかかった髪で…始終目を閉じていたな…そうそう、右目にモノクルってのか?片目眼鏡みたいなあれをしていた。やけに俺や吉屋の事に詳しくて、俺がガキの頃に使ってたデッキを渡してきたんだよ」

 

「子供の頃に?すでにそちらの世界では昔にシンクロモンスターが出たのですか?」

 

 

「あ、ああ…言い忘れてたけどよ……俺がそのアニメを見たの、10年も前なんだ。シンクロモンスターはしばらくしてからだけど…その所為かこの世界の出来事がなんかあやふやなんだよ……十代が戦って勝つかどうかも覚えてないし…」

 

「…まあ、しょうがねぇな。俺も10年前の事なんて………嫌な思い出がある」

「奇遇だね」

「似たようなものだね」

 

 

シゲルは自分の世界(ニズ)から飛ばされ、ユウは両親を失い、ツバキは記憶喪失になった。

 

 

「まあ、これからは周りの様子を監視した方がいいだろう。(いざとなればAWの力で転生者を洗い出す事も視野に入れた方がいいな)ところでな…一つだけ、俺的に気になる事がある」

「奇遇だね、私も」

「私もです」

「俺もちょっくらな」

「ボクもね…」

 

 

そして全員はユウの持つ白紙のカードを見ていた。それを見た荒木は首を傾げていた。

 

 

「そういえば先輩…入試の時に似たような『精霊の』白紙のカード使ってましたよな?」

 

「貴女も…精霊見えるんですか?」

 

 

そう言って紫苑の前にウルクリボーが降り立った。その愛くるしい姿を見た荒木は少し頬を染めながら頷いた。

 

 

「まあ、これはその精霊の更に上の存在のカード…って感じかな」

「その上…?」

 

 

「「「「「『神』」」」」」

 

「…え?」

 

 

―デュエルリング―

 

「バトル!!ドレッドガイで攻撃!!プレデター・オブ・ドレッドノート!!」

「くっ…!!!」

 

 

十代/LP150→0

 

「「「十代!!」」」

 

「「兄貴!!」」

 

 

エドと戦っていた十代――だが、彼の自分のフィールドに存在するD-HEROの攻撃力の同等の攻撃力を持つ強力なD-HEROドレッド・ガイの攻撃がサンダージャイアントに直撃し、爆散した。

 

そして、それにより十代のライフが0になった。

何よりその戦いの最中に聞いたエドの過去――そしてユウすらも知らない彼の抱えている闇が十代のデュエルの意欲を蝕んでいた。

 

それは精神的に彼へのプレッシャーへともなった。

 

 

ライフが0になり、それでプレッシャーが解かれたが十代は気を失ってしまった。それと同時に十代のデッキホルダーのロックが外れてしまった。

 

 

「…消えろ、雑魚が」

 

 

十代のデッキが舞う中、そう言い残してエドは立ち去った。

 

 

―レッド寮―

 

「むぅ…転生者のゲーム…聞いた事が無いのう」

 

「そう…やっぱり何か気になるね」

 

 

ユウと、ユウと同じぐらいの年寄りの喋りの少年――生命の神である『カルマ』だ。

 

その名の通り、生命の神(カルマ)だとそう言う転生者について何か知っているかもしれなかったから呼びだしたのだ。

 

 

「けど…どういうことだ?転生者は確かだ。俺は現に転生者の証しをもっているし……」

 

「証し?」

 

 

ツバキの言葉に越えるように荒木は首からかけていたビー玉サイズのアクセサリを取り出した。

荒木の髪と同じ薄い赤色の綺麗な色をしていた。

 

 

「転生者は証しを必ず一つ所持してるんだ。それを壊されると…ゲームオーバー…俺は死ぬ」

 

「「「「「!!!!」」」」」

 

「まあ、どうして知ってるかは……試した」

 

「た、試したって…誰かを…」

 

 

「ああ、例の転生者のを妨害する転生者を…な。幸いプレイングミスをついて勝てた。で、壊したら…跡形もなくな」

 

「………(そこの女子(おなご)が言っていた神……見た事が無いが…)………むう、少し気になるのう。儂は儂で少し調べてみるの」

 

 

そう言ってカルマは精霊界へ戻って行った。

 

 

 

その数分後、十代が倒れたと連絡が入った。




ユウ「転生者のゲーム…」
剱都「そんなうまい話はあるか。絶対なにか裏がある…」
まあ本人はそれに乗るしかないからね。
そしてシゲル本人は忘れているが宮本も転生者だね
シゲル「誰だ、それ?」
そして以下が吉弥のプロフィール。

名前:吉屋美弥
没年:15歳
デッキ&フェイバリットカード:無し
身長:165cm
体重:???kg
髪の色:黒いロングヘアー
眼の色:黒色
クラスの委員長でもあり学年の中心人物の一人だった少女。
誰にも平等に接し、明るく振舞う性格。旧家の出身でお嬢様なのだが本人はそのことを言われるのを嫌う。その為半ば家出状態で普通科の中学に通っていた。
入学当初から孤立していた荒木が唯一心を許した人物でもある。
しかし関わっている所を木田に見られ、人質となった。
荒木を助けるために自ら犠牲となって死亡した。
遺体は実家に戻され、埋葬された。


紫苑「あれ?デッキとフェイバリットカードが…」
吉屋はデュエリストではない。ポジション的には無印の杏やゼアルの小鳥の様な物。一応知っているが詳しくは分からないと言うレベル。
荒木の世界は現実の「遊戯王」みたいなものでカードゲームの一種っとして認識されてる。

ツバキ「裏だと十代がエドさんに負けたんだ…」
此処は原作通り、それからしばらくいろんな出来事があるけどこの作品だと飛ばすかもね。
剱都「現にいくつかの話すっ飛ばしてるしな」

次回予告
―十代が行方不明になった―
その一報を聞いた紫苑はショックで倒れてしまった。ハネクリボーの話から島にはもういない可能性が高いが手掛かりを探して島を調べていた。

けどユウと万丈目の前に謎の男――斎王が現れた。
エドのマネージャーと名乗った彼は万丈目に勝負を挑んできた。

しかし、ユウがそれを黙っているはずもなく――

「お前…タロット分かるのか?」

「貴方ですね?」

「亮さんに無責任な役割を押しつけたのかもしれない」

turn54 運命を操る男 VS斎王
最強カードは『アルカナフォースⅣ-THE(ジ)ENPEROR(エンペラー)』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。