十代、そしてユウが消えてから4日後。
最強チームの『ノーバディ』のユウ、そしてカイザー亮と張り合った十代が消えたと言うことでアカデミアは別の意味で盛り上がっていた。
「俺が今のカイザーだ!!」
「いんや、俺だ!!」
現在のカイザー候補とも言えるのは遊城十代、聖牙夕を筆頭に獣斬繁、羽黒剱都や万丈目準と言ったメンバーだ。
そのうちの2人が行方不明と一人が明らかな異常になったと来たから名を上げようとする1年が多い。
2年以上の生徒は学園公認とも言える姫野姉妹の事を思って静かに静観していた。
少なからず彼女達と関わった事がある上級生は――特に紫苑の状態を聞いて心配しない生徒はいなかった。それと十代とユウは代表生徒に選ばれ、そのことを鼻にかけないという人当たりのいい人格が好かれている。
つまり、上級生達も『カイザーの座』よりも『2人の安否』の方が重要だった。
「………」
「ん?雪乃、どうかした?」
上の争っている一年を白い目で見ていた少女――藤原雪乃にその親友であるジュード・ファインがそう聞いてきた。
中等部から雪乃、ジュードは互いに知った顔――というか中等部のタッグトーナメント優勝者だ。噂では付き合っているとも聞く。
「……いいえ。ちょっと私、行くところがあるわ」
「………そう。僕はこのまま行ってくる」
そのままジュード・ファインは目的の人物がいるであろうレッド寮へと向かった。
一方の雪乃は視界の隅にいた――ウクレレを弾く青年の元へ歩きだした。
「お気に召したかな」
「…はい、ありがとうございます」
紫苑は十代がいなくなった心の傷を癒す体験の一環として音楽を聞いていた。それを聞いた吹雪は得意のウクレレ演奏で気分が明るく・楽しくなる曲を歌っていたのだ。
ちなみに紫苑の付き添いでツバキもいる。
「う~ん、今日はいい気分だ。じゃあもう一曲「少し良いかしら?」ん?」
吹雪に声をかけたのは若干の桃色がかかった紫の髪の女子生徒がいた。
それの生徒を見た吹雪はどこかで見た事がある気がした。
「どうかしたのかな?」
「失礼ですが貴方は天上院吹雪で間違いないですね?」
「そう、ボクは天!ん?JOIN!!吹雪です」
渾身の自己紹介、だが目の前の女子生徒は興味が無いようだった。
「私は回りくどいのが嫌いですので単刀直入に聞きます…私の兄…
『藤原優介』はどこですか?」
「…優介……!!?」
その名前に、吹雪は目を見開いた。
―レッド寮―
「どうだった?」
「だめだ。イナや神楽すら見つからない」
「ブルー寮の方でも2人の手掛かりは無かったわ」
「ユウ先輩…本当に何処行ったんだ」
剱都、シゲル、そしてブルー寮を調べていたジュンコと荒木はそう言ってため息をついていた。4日間、十代だけじゃなくユウの手掛かりを調べ回っていたのだが、何処にもいない。
森の奥へ踏み込んだとしても万丈目がおかしくなった理由にはならない。
「獣斬先輩!!」
「ん?」
そんな4人に一人の少年がいた。すこし灰色味のかかったショートカットに灰色の眼鏡をかけた青い目の少年――
「……誰だ?」
「やだな~忘れたんですか?4歳の時近所に住んでいた……」
「バーストブレイカー!!」
「デスサイズ・ガルシュ!!」
「「え!?」」
「!!!??」
シゲルが瞬時にヘラクレイノスを、剱都がマシンナーズ・リィアバーを召喚して瞬時にその少年に向かって攻撃を行った。
「な!?モンスターが実体化して…な、なんで俺の『能力』が聞かないんだ!?」
「ちょ、2人ともなにしてるの!?あいつってあんたの知り合いじゃ!?」
「「いや、絶対にねーから」」
ほんの一カ月ほど前にシゲルの口から話された彼の過去。それは――
『10年前まで異世界にいた』ということだ。
当時7歳のシゲルはアナトの力でシゲル、ウリィ、そしてウリィの妻であるマリアの
少なくとも目の前の少年がシゲルの幼少のころからの知り合いと言うのは絶対にないのだ。
だが2人はそのことを知らない。良く見るとその少年の目の色が虹色に輝きだした。
「てめぇ誰だ?それにその眼、確実に一般人じゃねーだろ」
「チッ……引き入れてゲームが終わるまで駒にする気だったが…仕方がねぇ…!!」
そう言ってその少年はディスクを構えた。しかし今はっきりと聞こえた――『ゲーム』と。
「まさか…」
「お前、転生者か!!」
その言葉に荒木はハッとした。ちなみに事情を全く呑み込めないジュンコはオロオロしている。
「ハッ!どうやらお前達も転生者の様だな!!こりゃあいい…ぶっ飛ばしてやるぜ!!」
「下がってな、どうやら俺指名みたいだ」
そう言ってシゲルと少年が向き合って共にディスクを「お~い!!」構えようとしたら更に誰か来た。
「シゲ兄!!」
「おい、またか?」
新たに現れた少年を見た剱都は呆れたようにそう言った。だがシゲルはそいつの顔を見て驚いていた。
「ジュード!」
「久しぶりだね!!」
どうやら今度は本当にシゲルの知り合いの様だった。するとジュードはシゲルと睨みあっていた少年を見て一瞬顔色を変えた。
「…すまないけどがこいつの相手僕がしていいですか?」
「は?ちょ、待てこいつは「「デュエル!!」」待てやテメェら!!」
シゲルの言葉を聞かずに2人はそのまま勝負を始めてしまった。
「なあ、あのジュードってのは誰なんだ?」
「俺がこの世界に来てペガサスに保護されたのは言っただろ…その時行ってたナショナルスクールのルームメイトだ。俺もあいつも編入生で学年が違うが同じ部屋だったんだ」
話しているうちに勝負が動き出していた。
―少年のターン―
「俺のターン!!グリーン・ガジェットを召喚!!効果によりレッド・ガジェットを手札に加える!!」
グリーン・ガジェット/ATK1400
フィールドに歯車の緑の体の機械が現れた。それと同時に赤い体の歯車兵が手札に入った。
「手札から融合を発動!!手札の炎帝近衛兵とレッド・ガジェットを融合!!融合召喚、
フィールドに機械の鎧を装備した不死鳥の様な鳥が現れた。すると少年の魔法・罠ゾーンにカードが3枚現れた。
「3枚カード伏せ、ボム・フェネクスの効果発動!!お互いのフィールドのカード×300ポイントのダメージを与える!!
「なっ!?」
今フィールドには少年のカードが5枚ある、つまり――
「うわぁ!!!」
ジュード/LP4000→2500
もしもジュードが先行で大量展開するデッキだった場合――そう考えるとぞっとする。
「ターンエンドだ」
少年
LP4000 手札0枚
ボム・フェネクス/ATK2800 グリーン・ガジェット/ATK1400
伏せカード3枚
―ジュードのターン―
「僕のターン!!手札のシャドウ・リチュアを捨てて効果発動!!デッキからリチュアの儀水鏡を手札に加える!!手札のヴィジョン・リチュアを捨て、デッキからイビリチュア・ソウルオーガを手札に加える!!」
魚のようなモンスターが消えると、デッキからウツボのようなモンスターが手札に加わった。さらに鏡のような絵柄の儀式カードも手札に加わった。
「儀式魔法?ってことはジュードのデッキは儀式か…?」
「なんだ、知らないのか?」
「昔はただの水属性デッキだったからな。リチュアの儀式モンスターも入っていたが…デッキコンセプトがガラリとだな。元々ソウルオーガなんてモンスターは無かった」
シゲルの知る限りジュードのデッキは水属性メインのバウンスデッキだった。
だがこの流れはシゲルの知らない儀式の流れ――
「手札からサルベージを発動!!墓地のシャドウ・リチュアとヴィジョン・リチュアを手札に加える!!」
「すげーな…あいつの動きに無駄が無いぜ」
荒木がジュードの動きに感心していた。
手札から捨てる系のサーチカードで此処までの動きをするとは誰も思わなかった。
するとフィールドに水面の様な鏡が現れ、その前にフィールドに同じような鏡が付いた魚が現れた。
「手札からリチュアの儀水鏡を発動!!手札のヴィジョン・リチュアをコストにイビリチュア・ソウルオーガを召喚!!」
イビリチュア・ソウルオーガ/ATK2800
フィールドに巨大な魚人が現れた。しかし気になったのはソウルオーガのレベルは8、ヴィジョン・リチュアはレベル2。
普通儀式召喚の為には儀式モンスターと同じになるようにリリースしなければならない。
「ヴィジョン・リチュアは儀式召喚の時にこいつ一体で代用する事が出来る。そしてソウルオーガの効果発動!!手札のリチュアと名のつくモンスター、イビリチュア・ジールギガスを墓地に送り相手フィールドの表向きのカード1体を手札に戻す。まあ、デッキに戻るんだがな…ボム・フェネクスをエクストラデッキに!!」
「しまった!!」
これで少年のフィールドはガジェットと3枚の伏せカードのみだ。だがジュードはあの伏せカードはボム・フェネクスの効果の為のカードで攻撃反応型は無いと直感していた。
「バトルフェイズ!!イビリチュア・ソウルオーガでグリーン・ガジェットに攻撃!!」
「っ!!」
少年/LP4000→2600
「モンスターとカードを伏せて、ターンエンドだ」
ジュード
LP2500 手札2枚
イビリチュア・ソウルオーガ/ATK2800 伏せモンスター
伏せカード1枚
―少年のターン―
「クソが…テメェみたいな雑魚に俺がやられてたまるか!!!俺のターン!!!リバースカード、融合回収を発動!!効果で墓地のレッド・ガジェットと融合を手札に加える!!更にリビングデットの呼び声で炎帝近衛兵を特殊召喚!!」
これで再びボム・フェネクスを召喚できる状況になった。しかし召喚した所でジュードのライフを削りきれず、ソウルオーガと相打ち、もしくはバウンスされるのがオチだ。
「目ん玉見開いて良く見やがれ!!魔法カード融合!!手札のレッド・ガジェットとフィールドの炎帝近衛兵を融合!!融合召喚!!蹂躙せよ、起爆獣ヴァルカノン!!」
フィールドに様々な兵器と融合したモンスターが現れた。するとヴァルカノンがソウルオーガの背後に回り込んだ。
「ヴァルカノンの効果!!融合召喚成功時、このモンスターと相手のモンスターを破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!!融爆しろ、ヴァルカノン!!!」
「この効果通っちまったら、あいつ負けるぞ!!」
「安心しな」
荒木の悲痛な叫びにシゲルが冷静にそう言った。いくらデッキコンセプトが変わってると言っても――
「あいつ…思わぬ伏兵を潜ませる事で相手の裏をかくのが大好きだから」
「リバース罠、儀水鏡の反魂術!!自分フィールドのイビリチュア・ソウルオーガをデッキに戻し、墓地のモンスター2体を手札に加える!!ヴィジョン・リチュアとイビリチュア・ジールギガスを手札に。そして対象がいなくなったヴァルカノンのダメージは無い!」
昔から相手がやることの裏をかいて思うように動けなくすることが大好きな性格はそうそう変わるものではない。
「クソがぁぁ!!!リバースカード死者蘇生!!出でよ、ヴァルカノン!!」
ヴァルカノン/ATK2300
「バトル、テメェの伏せモンスターに攻撃だ!!」
「セットモンスター、リチュア・エリアルの効果発動!!」
破壊された魔法使いの様な少女が残した印から一枚のカードが飛び出した。するとジュードはそのカードを手札に加えた。
「エリアルはデッキからリチュアと名のつくモンスターを手札に加える、効果でリチュア・シェルフィッシュを手札に」
「チッ…ターンエンド!!」
少年
LP2600 手札0枚
ヴァルカノン/ATK2300
リビングデットの呼び声(対象無し)
―ジュードのターン―
「僕のターン、さてと…早々に
「なっ…テメェも転生者だったのか…!?」
「おい、シゲル。あいつも転生者だったのか?」
「初耳だ」
「???????????」
未だに状況が飲み込めないジュンコであった。
「手札のシャドウ・リチュアとヴィジョン・リチュアの効果発動!!このカードを捨て、2枚目のリチュアの儀水鏡を手札に加え、ヴィジョン・リチュアの効果でイビリチュア・テトラオーグルを手札に加える。リチュアの儀水鏡を発動!!」
フィールドに再び巨大な鏡が現れた。それと同時にその前に2体のモンスターが並んだ。
「手札のリチュア・シェルフィッシュとイビリチュア・テトラオーグルを生け贄にイビリチュア・ジールギガスを召喚!!」
フィールドに現れたのは4つの腕を持ち、胸に儀水鏡を携えた巨大な魚陣だった。
『ふん…今回のエネミーズも大したことないのう』
「なっ…」
「あいつ精霊!?」
「よお、ジール。久しぶりだな」
驚いている剱都とジュンコを尻目にシゲルが親しげにそう言った。その言葉に気付いたジールギガスも同じように右下腕?を上げた。
「って、先輩!!アレなんですか?!すっごい怖いんですけど!!」
「大丈夫だ、見た目がアレだがすっごい気さくだ」
「リチュア・シェルフィッシュの効果!!カード効果で墓地に送られた時、デッキの一番上のカード3枚を確認し好きな順番でデッキの一番上か一番下に置く………一番上に、ジールギガス効果発動!!」
『さて、久々にシゲル殿とウリィ殿が見てるからのう……派手に行かせてもらう!!』
するとジュードのデッキの一番上のカードが飛び出した。
「ジールギガスの効果!!ライフを1000払い、デッキの一番上のカードをドローする。そしてそのカードがリチュアと名のつくモンスターだった場合、相手フィールドのカードを1枚バウンスする」
「そう簡単にドローできるわけねーだろ!!それこそデッキの上を確認し…て……」
そう、確認している。リチュア・シェルフィッシュの効果でデッキの上のカードを確認し、入れ替えている。
「ドロー、そして来たカードは…」
『やっほー!久しぶり!!』
そう言って白髪の少女の精霊が現れた。お淑やかというような雰囲気の少女はシゲルとウリィに手を振っていた。
『ナタリアか』
「あいつまた背が伸びたんじゃねぇか?」
引いたのはリチュアとの名のつくモンスター、ということは――
「く、クソ…!!ちくしょぉぉぉ!!!」
ジールギガスの発生させた津波でヴァルカノンは流されて逝った。
「バトル!!イビリチュア・ジールギガスで直接攻撃!!」
「ぐがあああああああああ!!!!」
少年/LP2600→0
「ナタリア、やれ!!」
『うん、じゃあ……えい!!』
リチュア・ナタリアが取り出した杖により少年から赤く濁った光を放つキーホルダーが浮かび、砕けた。
「ぐがあああああああああああああ――――――」
「「「!?」」」
すると少年はまるで初めからそこにいなかったかのように『消えた』
それにシゲル達は驚いていた。だがそれは純粋に消えた事ではなく、
その光景に見覚えがあったから――
『あの女!!!よくも!!よくも嵌めやがったな!!!』
管理局の執務官――ディラと戦った後に起こった現象とこれがあまりにも酷似していたのだ。
しかもその時ディラが言っていたのだ――『あの女』と。
「………シゲ兄?だいじょ<ガシッ>え?」
シゲル 「全部」
ジュンコ「纏めて」
剱都 「きっちりと」
荒木 「話してもらうぞ」
「……は、はい(汗)」
―一方―
「優介の…妹…!?」
「…2年前に私の兄は忽然と消えてしまった。その直前に…貴方と会っていた。教えて下さらないかしら…私の兄の居場所」
吹雪はそれを聞いて俯いてしまった。彼は答えないんじゃない――
答えれないのだ。
ダークネスとなる前、なってから――全ての出来事を思い出していると伝えた――だが一つだけ覚えてないのだ。
彼がダークネスになったきっかけを。どうしてその力に手を染めたのか
「…答えれないのなら、力づくで聞くまでです…!!」
「待ってください!!」
「紫苑!!」
もう止まらない雪乃を止めたのは紫苑だった。だが彼女は今傷心中で些細なことでもダメージを喰らうほどデリケートだ。
「ここは互いに落ちついて事情を話した方がいいと思いますが、此処にいる吹雪さんも貴方のお兄さんと同じ時期に一旦行方不明に――」
「そんな事聞いてない!!私が聞きたいの兄の居場所よ!!!邪魔をするなら…まずは貴方から…!!」
それを聞いた紫苑は近くに置いてあった吹雪のディスクを腕に嵌め、デッキホルダーからデッキをセットした。
「紫苑、無茶よ!あなたのデッキは…」
「分かってます、けど…大丈夫」
紫苑のデッキは十代と同じシリーズを用いて構成されている。
つまりデュエルするのであれば十代の事を思い出し、また心の傷が開く可能性があるのだ。
「いいわ…だったらまずあなたから!!」
「「デュエル!!」」
―紫苑のターン―
「私のターン…(……この中で相手の手を見つついい戦法は…)手札からE-エマンジェーシーコールを発動します!!効果でデッキから…っ…エアーマンを手札に加えて召喚!!」
エアーマン/ATK1800
どうも紫苑の様子がおかしい。構成カードを十代と交換する事もあってかやはり無茶をしている。
「こ、効果でデッキからE・HEROシンクロンを手札に…カードを伏せてターンエンド!!」
紫苑
LP4000 手札5枚
エアーマン/ATK1800
伏せカード1枚
―雪乃のターン―
「私のターン!!魔法カード儀式の開始を発動!!デッキから儀式魔人と名のつくモンスターを手札に加える!!効果で儀式魔人リリーサーを手札に!!」
儀式の開始
通常魔法
自分のデッキから「儀式魔人」と名のつくモンスターを1体を選択し
手札に加える。
この効果を発動したターン、自分の墓地の「儀式魔人」と名のつくモンスターはゲームから除外する事が出来ない。
「手札からエンド・オブ・ザ・ワールドを発動!!手札の儀式魔人プレサイダーと儀式魔人リリーサー、レベル・スティーラーを生け贄に破滅の女神ルインを召喚!!」
フィールドに白銀の髪と二又の斧を持った破滅と言う名の女神が現れた。だが問題はそこだけじゃない。素材にした儀式魔人は――
「(プレサイダーは戦闘破壊した時カードを一枚引き、リリーサーは特殊召喚を封じる効果…これだと私は…)」
「更に墓地のレベルスティーラーの効果発動!!ルインのレベルを一つ下げ、特殊召喚する!!」
ルイン/ATK2300/☆8→7
レベル・スティーラー/DEF0
「バトルフェイズ、ルインでエアーマンに攻撃!!」
「クッ…!!」
紫苑/LP4000→3500
「リバっ………!!」
伏せカードを発動しようとした紫苑の目に映ったのは真っ二つに切られ、苦しそうに悲鳴を上げたエアーマンだった。
それが――頭の中で
「プレサイダーの効果で一枚ドロー!!ルインの効果発動!!戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けて攻撃する事が出来る!!」
「きゃあああああああああ!!!!」
紫苑/LP3500→1200
「っ…ゲホッ!!ゲホッッ…!!ヒューッ…ヒューッ……!!!」
「え…?ちょ、どうしたの!?」
「紫苑!?」
「下がってって!!」
突然紫苑が苦しみだし、過呼吸症状に陥った。それを見た吹雪はすぐに缶ジュースが入っていたビニール袋の中身を空にしてそれを紫苑の口元へ持って行った。
「ゆっくり…落ちついて…息を整えるんだ」
「すぅ…はぁ…すぅ…はぁ…」
徐々にだが、紫苑の呼吸が落ち着いてきた。
それにホッとしているが、これは応急処置だ。まだ安心できない。
「…なにしてるんだ!早く鮎川先生に連絡!!」
「あ、は、はい!!」
―レッド寮:ユウとシゲルの部屋―
「で、全部包み隠さず言え」
「は、はい…」
剱都の尋問が開始してまだ数十秒。だが既にジュードは剱都の威圧感に呑みこまれ縮こまっている。
「えっと…転生者は…知ってますか?」
「ああ、現に俺も転生者だ」
「…えぇ!?」
荒木の言葉にジュードはすごい驚いた顔をしていた。それを見た剱都達は彼はすごい顔に気持ちが現れる性格だと理解した。
「えっと…じゃあ僕が転生者になったのは俺がシゲ兄に会う更に前…向こうの世界で生まれてすぐに僕は死んじまった。で、赤ん坊の状態でこの世界に転生した」
「おい待て、昔一度お前の両親にあった事があるが…普通転生ってこの世界に飛ばされるんじゃねーのか?」
荒木に聞いたところ、転生者は死んだ状態でこの世界にやってきたと。
「ああ…あの2人…本当の親じゃないんです。赤子の僕を引き取ってくれた人…けど、僕に取ったら本物の親ですけどね」
そう言ったジュードの顔は本当に嬉しそうだった。それに剱都は一つ咳払いをした。
「じゃあお前は神様ってのには会ったのか?」
「うっすらとしか覚えてないけどね…このゲームのルールとか敵の存在とか…あと俺の参加証はこれ」
そう言って取り出したのは勾玉の形をした黒いペンダントだった。
「じゃあさっき言ってたエネミーズってのは?」
「奴ら…『妨害する転生者』の下っ端が2年前に襲ってきてそう名乗ったんだ。『チーム・エネミーズ』ってね」
するとジュードの背後からヒョコっとリチュア・ナタリアが現れた。
『ねぇ、もう話し終わった?』
ナタリアはこういう難しい話は苦手な方だった。
待っているのも暇のようだったためシゲルは近くでじゃれているチビ龍を持ち上げた。
「まだだ、お前はこいつらと遊んでろ」
『グァ?』
『グル?』
『きゃーー!!かわいいぃぃ!!!!』
ナタリアに向けてシゲルがデフォルメソウルとデフォルメクロックを渡すと彼女は2匹を連れて何処かに行ってしまった。
ほほえましい光景だがナタリアをジーと見ていた荒木が聞いた。
「所であの精霊は?」
「ん?ああ、ナタリアね。僕が子供の頃に参加した大会で優勝したカードだ。試作品でナタリアとジール、あと儀水鏡ぐらいしかなかったが、僕がアカデミア合格したってペガサスさんが聞いて残りのカードを作ってくれたんだ」
『グァァァァァァァァ!!!!!』
『きゃあーーーーー!!!ひゃーーーーーー!!!』
窓の外に元の姿に戻ったソウルに乗り、デフォルメクロックを抱いて絶叫しているナタリアが見えた。
―pi pi pi pi―
「電話?」
部屋に備え付けてある電話が鳴った。この部屋の主であるシゲルがその受話器を取った。
「もしもし?」
『シゲル?』
電話の相手は紫苑に付き添っているはずのツバキからだった。それに一抹の不安を覚えつつも用件を聞いた。
「どうかしたのか?」
『紫苑が……倒れた』
「っ…どうしてだ?」
出来る限り平常心を抑えながら聞いた。ここには彼女の義兄の剱都もいる。もしもの場合知らせない方がいいのかもしれない。
『ちょっとしたいざこざに巻き込まれて…それでデュエルをする事になったの。けどエアーマンが破壊された時に過呼吸に……幸い吹雪さんが処置をして、いまは静かに寝てる…』
それを聞いてほっとしたシゲルは剱都に知らせても問題無いだろうと一瞬思った。だが――
「ちょい待て、いざこざって何があったんだ?」
『吹雪さんが……特待生寮で消える時に一緒にいた生徒の妹さんが居場所を尋ねてきたんだけど、それで……』
となれば紫苑は吹雪に代わってその女子生徒と戦ったと言うことになるだろう。もしかしたらその生徒を剱都が責めるかもしれない――
「……分かった、剱都達には俺が伝えとく。お前は紫苑に付いといてくれ」
『うん…』
ユウがいなくなって、紫苑と同じぐらいの傷を持っているはずのツバキだが、彼女は妹のためにと気丈にふるまっているのかもしれない。
「…さてと。剱都、保健室行くぞ」
「あ?なんでだ?」
―???―
「っ……ここは…?」
見覚えのない部屋――辺り一面真っ白な空間で目覚めたユウ。
なぜここにいるのかと記憶の糸を手繰り寄せている――
「…そう、か……あの…モンスター…に……」
覚えているのは二又の槍を構えた巨大な天使から自分を守ろうとしているイナと神楽の2人。
そして――
「っ!!」
そこでユウは意識を覚醒させた。間違いない、あの時自分の体にあの槍が突き刺さり、血を流していた。
気付いたら知らない場所――
「………(けど、あの人の背後に見えた光……純粋じゃない。少しだけ『悪意』が混ざってた…いや、そんなことは今はどうでも良い。問題は此処は何処で、ボクはどれだけ気を失っていたのか……)」
そう思いながらユウはベットから起き上がろうとするも、どうも体に力が入らない。どうやら血を流し過ぎたようだ。
「目が覚めたようだな」
「っ…!?」
―保健室―
「……………」
「……………」
「で?何か言う事があるか?」
腕を組んでギロリと見下ろす剱都の前に正座した吹雪と雪乃がいた。
事情を聞いた剱都だが雪乃を酷く咎める気はなかった――さきほどまでは
―2分前―
「おーす、大丈b……」
「一体いつになった兄の居場所を教えてくれるんですか!!」
「ボクは知らない…あの日の事はまだ思い出せないんだ…!!」
「いい加減にして!!だったら無理やり――え?」
「ん?」
吹雪に詰め寄っている雪乃、その2人はズルズルと引きずられ保健室の前廊下まで引っ張られた。
「テメェらに2つ言いたい事がある」
「な、なによ!坊やには関係な「それ以上何か言うんならその舌切り落とすぞ」っ…」
「まず一つ目、場所を考えやがれ。保健室で騒ぐな…テメェらが原因で倒れた奴もいるんだぞ」
その言葉に雪乃と吹雪は顔を俯かせた。雪乃はデュエルをして紫苑が倒れるとは思って無かったからだ。
吹雪は自分よりも年が下の女子生徒が自分を守ろうとしたのが情けなくてだ。
「2つ目…なんで紫苑が戦ったのか理解したてるか?」
「し、知らないわ!!あの子が勝手に…」
雪乃はそう言っているが剣都は大きくため息をついた。
なんか雪乃の姿が無理やりツバキを連れ戻そうとした自分と似ているからだ。
「テメェが取り返しがつかなくなる前に正しい道に導くためだ」
「!?」
その言葉に雪乃は眼を見開いた。自分が間違えかけた?どこで?どうして?そしてなぜ紫苑がそれを正そうとしていたのか?
その考えが頭の中でぐるぐる回っていた。
「一つだけ言っておこう。吹雪さんは確かにお前の兄が行方不明になる前に会っていた。だがその時の記憶が飛んでいる…つまり、本人も分かって無い」
「なっ……そん…な……」
剱都の言葉に雪乃はヘタリと座り込んでしまった。やっと捕まえた情報が空っぽだったのだ。
「……泣き叫ぶだけなら、なにもない。だがテメェが逆恨みして吹雪に掴みかかったらそれだけで色々とダメになる。学園での立場、お前の兄貴を探す手掛かり・手段・仲間、全てだ。特にお前の
「………………」
「剱都さん…いくらなんでもそれ以上言えばタダじゃおきませんよ…!!」
剱都の言葉を遮ったのはジュードだった。その眼には怒りが込められており、純粋な敵意が剱都に向けられていた。
「…話は最後まで聞け。俺が言いたいのは焦らず、慎重に行動しろってことだ。お前も知ってたんだろ?だったらこうなることも予測するべきだったんだ」
「っ……」
「だからよ……お前らもう少し俺らを頼れ」
「「……え?」」
剱都の言葉に2人はポカンとしてしまった。先程までの叱咤から急に優しい言葉にキョトンとしてしまった。
「俺達も今チームメイトやら友人やらいなくなってるんだよ。無関係だと思うが、やることが同じなら、頭数が多い方がいいだろ?」
「え…あ…手伝って…くれるの?」
その孤高な態度で彼女に優しい言葉を賭けてくれる人はジュードしかいなかった。
だが目の前の少年はぶっきらぼうながらそう言ってくれるのだ。
「ああ。だがまずは静かに、持っている状況を整理して…謝っとけ。迷惑かけたことを」
「………ええ…」
そう言われた雪乃は素直に吹雪、そして紫苑に謝る事を心に決めた。
剱都「ジュードと雪乃…か」
ツバキ「雪乃さんってTFのキャラクターの?」
そう、TFシリーズのお馴染みのキャラクター。アニメに出てこないけど苗字が同じだから関係を作ってみた。その結果、妹キャラになってしまった。
シゲル「多いな…妹キャラ」
そしてジュード・ファインは外見はテイルズオブエクシリアの主人公、ジュードだね。
シゲル「俺の後輩…ね」
いくら異世界出身と言っても小中学の経歴が無いのはアレだからね。まあユウは無いがシゲルはペガサスの勧めでナショナルスクールに通って、そのルームメイトがジュードだ。
ちなみにタッグトーナメントは最終学年で行われて、その時ジュードと雪乃が出会った。
紫苑「そして…敵の集団…」
エネミーズ。意味はそのまま「敵達」という事だね。安易に付け過ぎた感もあるが…妙に変な名前にするのもアレだからこれで良いです。
次回予告
改めて謝罪へと保健室に来た雪乃、そしてその付き添いの吹雪。
だがそんな3人をドア越しから覗くパパラッチ――
彼女の作った捏造記事をバラまかれたら迷惑がかかる。その為雪乃は力の限り彼女を叩きのめそうとするが――
「エアーマン召か…!!」
「ええ、見せますよ」
「…私がその転生者だからよ」
「あやや、お気に召しませんでしたかぁ~」
次回turn57 パパラッチ
最強カードは『終焉のカウントダウン』