超絶短編!ネプテューヌ おーばーえくすとらどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です。

唐突に始まりました今回の短編集、“超絶短編! ネプテューヌ おーばーえくすとらどらいぶ!”
今作は僕こと、白宇宙が執筆中の作品、ネプテューヌ おーばーどらいぶ!の本編では描かれなかった日常を書いた短編スピンオフであり、シリアスやバトルシーンが多い向こうとは違って作者の悪ふざけや欲望がふんだんに使われています。

それでもいいよという方はどうぞ、ご覧ください!

今回のテーマは、獣耳!


EX stage,1 獣耳って重要な萌え要素

プラネテューヌ教会に備え付けられた一室、元は空き部屋だったこの部屋で生活している青年、天条宗谷。

 

異世界からこのゲイムギョウ界へと突然迷い込んでしまった彼はここ、ゲイムギョウ界に身をおいて、もうしばらく経つ。

 

その間に様々な事件や、多くの出会い、別れ、時には苦悩や試練に立ち向かってきたのだが、それはまた別の話。

 

今回、ここに記す物語は“何気無い日常”の中に起きたちょっとした“小話”である。

 

 

 

「仕事の休みをもらったわけだけど……さて、どうするかな~……」

 

この世界に来て、教会の教祖補佐という役割を擬似的に手に入れた宗谷は教会の仕事を淡々とこなす日々を送っていた。

 

ある日、宗谷は休みをもらった。

 

たまには休むことも必要だというイストワールの配慮である。

だが、いざ休みを貰ったとしてもその時になると何をして過ごそうか迷うものである。

 

そのため、この時彼は時間を持て余していたのだ。

 

「うーむ、暇だ……この前秘密裏に手に入れたエロゲはクリアしたし、ラノベもさっき読み終えた…漫画は、今はネプテューヌに貸してるし…腹も減ってない…この暇な時間をどう使ったものか…」

 

突如として体感することとなった極限の暇な時間をこれでもかと体感している宗谷はこの後をどうしたものかと悩みに悩んでいた。

 

特にこれと言ってすることもないし、やりたいことも特にない。

他のみんなは別件で居ないし、と思考を巡らせるもこの暇な時間を打破できるようなアイデアは浮かばない。

 

「何気無い休日を棒にふるのは…なんだかなぁ……あ、そうだ」

 

ふと、ここで宗谷があることを思い出した。

 

「……確かこの前ベールがオススメって言って貸してくれた妹系ギャルゲーがまだクリアしてなかったはず…」

 

宗谷はそれを思い出すと、ベッドの下に備えてあったプライベート用グッズボックスの中から貸してもらったゲームソフトを取り出す。

 

パッケージにはこれでもかとふわふわした雰囲気を表すエフェクトが使用されており、その中で数人のイラストの少女たちが華やかな笑顔を浮かべていた。

 

ちなみに、そのパッケージの少女たちにはある共通点が存在する。

 

「全員獣耳装備の妹系ヒロイン攻略のギャルゲーって……よくこんなコアなジャンルのゲームをベールは集めてこれるよな」

 

頭から犬、猫、狐、ネズミなどの動物の耳を生やした少女たちが描かれたゲームのパッケージを見て、宗谷は率直な意見を述べる。

妹という存在に強いこだわりを持つベールに対し、ある種の執念のようなものを垣間見るような感覚を感じながら宗谷はとりあえずとそのゲームソフトのパッケージを開封する。

 

「まあ、俺も獣耳は嫌いじゃないし、何より萌えるからいいんだけども、さてとどのヒロインから攻略して行こうかな~」

 

宗谷はそう言うとパッケージに導入されていた説明書を手にとってキャラクター紹介のページを開く。

パラパラと流し読んでいくこと数秒、対した厚さもない薄い説明書をめくる中で宗谷が目を止めるものがあった。

 

「おろ?…この子…」

 

それは攻略対象となるヒロインのうちの一人を指すページだった。

そこには銀髪のボリュームのあるツインテールに白い猫耳を生やした少女が描かれていた。

 

そのヒロインのイラストをじっと見つめる宗谷は無意識のうちに感じた。

 

「……なんか、いーすんに似てるな」

 

そう、そのヒロインの特徴がこの教会で長い時間を過ごし、苦楽を共にした頼れる相棒にして、実質宗谷の上司にあたるこの教会の教祖、イストワールの特徴に酷似しているような気がしたのだ。

 

「ふむ、獣耳いーすんか……なんか新鮮だな」

 

もし彼女に猫耳をつけるとしたらこんな感じなのだろうかと宗谷は率直な感想を抱いた。

 

「…せっかくだし、最初の攻略ヒロインはこの子にしようかな? これも何かの縁! おばあちゃんが言っていた…思い立ったが吉日…なんてな」

 

意気揚々と最初の攻略ヒロインを決めた宗谷は早速ゲームの準備を行おうとする。

 

 

この時、彼は予想する余地はなかった。

 

 

この後、あのような珍事に遭遇することになるとは…。

 

 

「……ん?」

 

 

宗谷はふと、あることに気づいた。

音が聞こえるのだ。

 

さっきまで静かだったはずの外の方から足音が聞こえてくる。

しかも、けっこう早いペースで聞こえてくる、おそらく走っているのだろう。

 

廊下を走るのは不謹慎だとまでは言わないが切迫詰まっているかのようなこの足音を不審に思った宗谷は視線をドアの方に向ける。

 

しだいに大きくなってくる足音、誰かが近づいて来てるようだ。

今日は誰か尋ねてくる用事はなかったはずだが…と、宗谷が考えていると、閉められていたドアが勢い良く開け放たれた。

 

 

「そ、宗谷さん!!」

 

「いーすん? どうしたんだよそんなに慌てて…」

 

 

部屋のドアを開け放ったのはボリュームのある金髪のツインテールにフリルをあしらった紫のワンピースに身を包んだ少女、件の上司件教祖件相棒のイストワールだった。

慌てた様子で部屋を尋ねて来たイストワールに宗谷は何事かと首を傾げる。

 

その際に彼はあることに気づいた。

なぜかイストワールが何かを隠すように両手を頭に乗せているのである。

 

「…なんでいーすん頭を手で押さえてるの?」

 

「……それが……」

 

「……もしかして、怪我したのか!? ちょ、ちょっと見せてみろ、コブとか出来てないか? 血は出てないか!? 誰かにやられたのか!?」

 

彼女が怪我をしたのかと思ったのか、宗谷は急いで近くに置いてあった救急箱(自前)を持つとすぐさま彼女に近づいた。

 

「い、いえそのようなものではなくて! こ、これはちょっと普通じゃなくて!?」

 

「普通じゃない怪我なのか!? なら早く手当てしないと!! と、とりあえず手をどけて!」

 

「ちょ! ま、待って…きゃ!」

 

宗谷は彼女の身を心配し、怪我をしたと思われる部分を隠している手を強引に引っ張ってどかした。

 

 

___ぴょこん

 

 

突然、彼の視界に白色の三角形が飛び出して来た。

 

「……?」

 

突如として目の前に飛び出てきた白の三角形を目にした宗谷はそれがなんなのか理解できず、無意識のうちに首を傾げた。

 

「……なんだこれ?」

 

不可思議に感じたその白の三角形を宗谷は何気無く指でつまんでみる。

 

「ふやっ!?」

 

「うおっ!?」

 

するとどうしたことか、イストワールがびくりと体を震わせて可愛らしい声をあげた。

 

「きゅ、急に触らないでください……くすぐったいんですから……」

 

「ご、ごめん…」

 

頭についた白の三角形を隠すように両手を頭に乗せたイストワールに宗谷はなんとなしに謝った。

 

どうやら、その白の三角形は急に触るとくすぐったく感じるものだったらしい。

まさか彼女にそんな部分があったとは…

 

いやちょっと待て。

 

「……て言うか、いーすん……今のなに?」

 

普通、人間の頭にはあんな白の三角形が存在することはない。

当然イストワールも今まであんなものが存在したことはない。

しかし、それは確かに存在していた、間違いなく彼女の頭についていたし、ぴょこぴょこ動いていたのを宗谷は見逃さなかった。

 

「……そのことなんですけど……」

 

宗谷に指摘を受けたイストワールはどこか恥ずかしそうに目線を泳がせながら頭に置いていた両手をゆっくりとどかした。

 

再び姿を現した“白い二つの三角形”が姿を現した時、宗谷はそれがなんなのかを改めて理解した。

 

「……え、猫耳?」

 

それは白猫の耳だった。

彼女の頭についたその二つの猫耳は彼女の恥ずかしそうな表情に合わせてか下に垂れ下がっている。

 

「……これだけじゃなくて」

 

猫耳を頭につけたイストワールは小さな声でつぶやくとくるりとその場で宗谷に背中を向けるように身を回転させて、お尻を突き出すような体制をとった。

 

「…っ!?」

 

こちらに見せつけるように突き出されたお尻に一瞬どきりとした宗谷だが、それ以上に目を引く物を目の当たりにした彼はむしろそっちに目が言ってしまった。

 

「し、尻尾!?」

 

なんと、彼女が履いているスカートの下から白い毛に覆われた細い尻尾が姿を現していたのである。

ゆらゆらと揺れるその尻尾を目にした宗谷は本物なのかどうか気になり、それを指でつついてみる。

 

「ひゃん…!」

 

すると、先ほどと同じような声をあげてイストワールがまた体を震わせた。

 

「そ…そっちもダメです…急に触らないでください」

 

「わ、悪い、つい知的好奇心と探究心が…」

 

どうやらこれも触られるとくすぐったいらしい。

 

いったい、これはどういうことなのか…。

 

ある日突然、宗谷の目の前に現れたイストワールに……。

 

「宗谷さん……これどうしたらいいんですかぁ……!」

 

白猫の耳と尻尾が生えてしまいました。

 

 

 

 

「……リアル獣耳キターーーーーーーーーーーーー!!(((o(*゜▽゜*)o)))」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、つまりはこういうことか……いつものように仕事をこなそうといーすんが外回りに出かけた時に“がすとちゃん”に出会ったいーすんは偶発的にがすとちゃんが落とした謎のアイテムを拾って渡そうとしたところ、偶発的にアイテムが誤作動、気づいたら猫耳と尻尾が生えていた…と」

 

「……はい」

 

偶然というのは恐ろしいものである。

 

いつものように仕事をしていただけなのにこの珍事。

まさに踏んだり蹴ったりである。

 

“がすとちゃん”という人物はゲイムギョウ界でも有名なアイテム職人であり、様々なお役立ちアイテムを作る反面、使いどころがよくわからない不可思議アイテムを作ることでも有名な人物である。

 

どうやらイストワールはがすとちゃんの作った不可思議アイテムの犠牲になったようだ。

 

隣に座り込んで頭には猫耳、腰からは尻尾を生やしたイストワールはしょんぼりとしながら猫耳を垂れさせ、尻尾をスカートの下からゆらゆらと揺らす。

 

「なんでも、コスチューム用アイテムとして作った新作だったらしくて……リアル感を追求したため、動くだけでなく感覚まであるらしいんです……」

 

「あ、だがらさっき触ったらあんなエロ…じゃなくて、びっくりした声を出したのか…」

 

先ほどの彼女の反応を見て納得のいった宗谷はぽんと手を叩いた。

 

「誤作動ということで、料金を取られることはありませんでしたが……」

 

彼女はそう言うと、自分の頭についている猫耳と尻尾、交互に目を向ける。

 

「こんなのを付けてたら、恥ずかしくて外に出られません…」

 

「え、そういうもんなの?」

 

「当然です!」

 

ほのかに頬を染めながら猫耳と尻尾をつけたイストワールは宗谷に反論した。

 

「えー、俺は好きだけどなぁ獣耳」

 

「……宗谷さんの好きは萌えとかそういうのに対しての好きでしょう?」

 

「当然です」

 

萌えるものと燃える展開をこよなく愛する宗谷にとってはいいものでも、イストワールにとってはそうとは限らないのである。

 

確かに常識的に考えて、猫耳と尻尾を持った人間というのはいるだけでも相当に注目を浴びてしまうのは確実だ。

変に目立てば仕事にも差し支えが出る。

 

宗谷はそのことを頭の中では理解していた。

理解はしていたのだが…。

 

「……まあ、あんまり気にするなよ、似合ってるよ? 猫耳」

 

この男にとってはそれよりも目の前の萌えが重要なのである。

 

不意打ち気味にそう言われたイストワールは反射的に頬を朱に染める。

 

「か、からかうのはやめてください……こんなの、変に決まってます」

 

「いや、全然似合ってるって、大丈夫、俺が保証する」

 

保証したところでなにかが良くなるわけではないが、これは宗谷なりの純粋な褒め言葉だった。

萌えに忠実であるがゆえにその感想は率直かつまっすぐな意思が込められている。

現に今、宗谷の目は純粋な子供のように輝いていた。

 

「……ずるいです……そんなこと言ってくれるのは宗谷さんだけです……」

 

「ん? なんか言った?」

 

「何でもありません、それよりも…これからどうするかです…」

 

「お、おう…それって任意で外れるものなのか?」

 

「がすとさんは自力では外れないって言ってました、自然になくなるらしいのですが、人によっては数週間消えなかったりするとか…」

 

「安全面で問題あるんじゃないのかその商品…」

 

かなりアバウトな作りのがすと性のアイテムに宗谷は心配を抱いた。

数週間も外れないとなったら、下手したら私生活でも影響がでてきそうだ。

 

「…ともかく、どうにかして外せられないか調べてみないとわかりませんね」

 

「具体的にはどうやって?」

 

「それは……とにかくなんとかしてです」

 

「いーすん、ちょっとヤケクソになってない?」

 

今までにない体験をしているためか、いつもの知的さと冷静さを欠いている様子のイストワール。

まあ、普通なら本物の猫耳と尻尾が生えてくるなんてありえない体験だから、仕方ないといえば仕方ないのだが…。

 

「うーん…」

 

イストワールを困らせる猫耳と尻尾、いったいどうしたものかと宗谷が頭を悩ませる。

 

ぴょこぴょこと動く猫耳、ゆらゆらと動く尻尾。

どちらも本物の猫のようである。

 

「にしてもいい猫耳だな」

 

「…いや、猫耳の感想はいいですから対策を…」

 

「ねぇいーすん、ちょっと猫っぽい仕草をしながら、にゃー、って言ってみて」

 

「人の話を聞いてましたか!?」

 

悲しきかな、この男は萌えを目にしたらどこまでもまっすぐに突き進む。

宗谷は今、リアルの猫耳というレアリティ的にはSRあるいはLRにも匹敵するリソースを前にしてそっちの方に興味津々なのだ。

 

「一回だけでいいから! この通り! 今度、密かに見つけたおいしいパフェを出してくれる喫茶店に連れて行くから、この通り!!」

 

両手を合わせて必死に頼み込む宗谷、こうなったら彼はなかなか止まらない。

人間、好きなものへの欲望には忠実である。

 

「……もう、一回だけですからね?」

 

「おっしゃ!」

 

一度思考を切り替えさせるためにも、彼の欲望を発散させるしかないと判断したイストワールは小さくため息を吐く。

そして、そのまま深呼吸をしてから……。

 

 

 

「み……みゃぁ…」

 

 

 

招き猫のようなポーズを取りながら子猫のような声を出した。

目線を横にそらし、頬をほんのりと桜色にしているのを見る限りそれなりに恥ずかしかったようだが一応言われた通りにはした。

宗谷の反応はと言うと…。

 

「……!……~~!!」

 

ベッドのシーツに自身の顔を埋めてそのまま声にならない声を上げながら悶えていた。

 

「あ、あの…宗谷さん?」

 

「……いーすん、あんたは猫耳っ子のエリート戦士ですか…?」

 

「すみません、言ってることが全く理解できません」

 

シーツから顔をあげるなりそういった宗谷に、イストワールはそう返す。

 

「だって、猫耳つけたまま鳴く声が、にゃー、ならまだスタンダードだよ、スタンダード萌えだよ! しかし、いーすんはそれに対して、みゃあ、と鳴いた……普通とは違った子猫っぽい鳴き声のせいで猫耳の愛らしさが三倍の速さでトランザムだよ!」

 

「すみません、結局本当になにが言いたいのかまったく理解できません!」

 

まあ、要するにイストワールの今の猫の真似は宗谷の萌え心を必要以上に刺激したらしい。

 

彼がなにを言いたいのかはイマイチわからないが、反応は悪くないようなので良しとしようと判断したイストワールはすぐさま話題を戻そうとした。

 

「それじゃあ、本題に…」

 

「よし、それじゃあ次はポーズ取ってみようか」

 

「えっ!? 終わりじゃないんですか!?」

 

まさかの続行発言に驚くイストワール。

まだ彼は満足していないらしい。

 

「せっかくだからいろいろ見ておきたいんだ、なにせリアル獣耳なんてめったに、ていうか一生見れないようなものだからな」

 

「なにをそんな……あぁ、もうわかりましたからそんなお菓子をねだる子供みたいな目をしないでください!」

 

どうやらまだ満足のいかない様子の宗谷にイストワールはむっとしながらも仕方ないと割り切り、宗谷に問いかけた。

 

「それで、ポーズってなにをするんですか?」

 

「そうだな……うーん、服従のポーズ?」

 

「なんですかそれ…」

 

名前からして怪しいポーズにイストワールは目を細める。

 

「いやいや、別に服を脱いだりとかしないし、そんな怪しまなくてもいいって」

 

「……じゃあ、どんなポーズなんですか?」

 

その服従のポーズがどんなものかよくわからないイストワールが彼に聞くと宗谷はうんと頷いてこほんと咳払いをした。

 

「まず、仰向けに寝転ぶ」

 

「…はい」

 

「両手を丸めて口元におく」

 

「…こうですか?」

 

「首を傾けて」

 

「傾けて……」

 

 

無防備に仰向けに倒れ、首を斜めに傾けてしたから宗谷を見上げる大勢になったイストワール。

 

無防備な危うさとつい撫でてしまいそうになる愛くるしさが体現されたかのようなその姿勢に宗谷はさらにアクセントを加える。

 

「はい、そこで一鳴き!」

 

 

 

「みゃ…みゃぁん……」

 

 

 

「ごっはぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

アクセントが効きすぎた。

もはやそれは致死量の萌えエッセンス。

口から何かを吐き出しそうなほどにのけぞった宗谷はそのままごろごろと部屋を転がりながら悶える。

 

「やばいやばいやばいやばい! 萌える萌える萌える萌える萌える! 萌え死ぬ萌え死ぬ萌え死ぬ萌え死ぬ! いーすん、君は俺を萌え殺しにするつもりか!?」

 

「うぅ……恥ずかしい……」

 

悶える宗谷とは対局的に恥ずかしがるイストワール。

宗谷的には大絶賛だがイストワールには羞恥的なポーズだったようだ。

 

ともあれこれほどのリアクションなら、宗谷も満足だろう、さっさと本題に入ってしまおうとイストワールが宗谷の方を向くと…。

 

「おし、次はなにしようかな…思い切って猫耳メイドとか? いや、ここはあえてねこじゃらし…あぁでも、猫耳装備のゴスロリ服も捨てがたいなぁ…」

 

もはや本筋の対策のことはもう頭にはないのではないかと思えて来るほど、宗谷は意気揚々と次のネタを考えていた。

 

「……宗谷さん……あなたって人は……!」

 

流石にこれにはイストワールも我慢の限界だったのか、猫耳と尻尾を逆立てて、きっ、と宗谷を睨む。

 

 

 

「もう! 宗谷さんはそればっかりじゃないですか!!」

 

「うぇい!?」

 

 

 

外れるか外れないかの対策よりも猫耳を探求しようとする宗谷に、イストワールが意義を申し立てた。

 

「こっちは真剣に悩んでるんですよ!? 人ごとだと思って…たまにはちゃんと宗谷さんも考えてくださいよ!」

 

「ちょ、たまにはって…それだと俺が普段あんまり頭使わないみたいじゃないか!」

 

「だってそうじゃないですか! 今だってこの耳のことばかり気にしてましたしどうせ頭の中で変なこと考えてたんでしょう!?」

 

「いや、別にそんなこと考えてないって! 俺は純粋に猫耳をだな…」

 

「どの口が言うんですか! エッチなゲームとか漫画とかに興味津々なくせに! 信用なりませんよ! 頭の中がピンク色の“不健全”な宗谷さんなんか!」

 

ぴっきーん。

 

その言葉に、珍しく宗谷のなにかがキレた。

 

「……ほー……不健全ねぇ……」

 

ちなみにイストワールは気づかなかったが、この“不健全”という言葉、宗谷にとっては禁句にも等しいワードだったのだ。

 

「そうかぁ、不健全かぁ……ふーん……じゃあ、脳みそピンク色の不健全な俺はこんなことしようかなぁ?」

 

そう言うと宗谷は近くで揺れていた尻尾を手で軽く掴んでみる。

 

 

「ふにゃっ…!?」

 

 

 

やはり突然触られるのは苦手なのかイストワールはびくりと体を震わせると猫のような声をあげ、プルプルと体を震わせ始めた。

 

宗谷はそのまま尻尾を手で包むように掴み片手で揉んでみる。

 

「あっ……やぁぁ…だ……めぇ、です……そ、それ…それ、やぁぁ…! そうや…しゃん…っ…やめて……くだしゃいぃ……!」

 

よほど敏感なのか、彼女はろれつも回らない様子で懇願し、頬をほんのりと赤くして、内股をもじもじとすり合わせる。

 

「……こっちは?」

 

「はにゃん!?」

 

彼女のリアクションがあまりにも良かったのか、宗谷は珍しく意地の悪い笑みを浮かべると今度はもう片方の手で彼女の猫耳をつまんでみる。

すると、イストワールは先ほど以上に体を跳ねさせてたまらずその場にへなへなと倒れ伏した。

 

「ははっ、本当の猫みたいな声だ」

 

「わ、笑ってる場合じゃ…やっ…ふにゃぁぁあ……っ!」

 

うつ伏せになったイストワールに宗谷はなおも尻尾弄りを続ける。

 

「本当に感覚があるんだな……心なしか子猫みたいに見えてきたぞ」

 

「も、もう……いい加減に……っ…して、くだひゃっ! ……はうう……! にゃ、にゃんで…にゃんでいきにゃり、こんにゃ…!」

 

ろれつの回らない口調で宗谷を問いただすイストワール、すると宗谷は真剣な顔を表情に浮かべる。

 

「いーすん、俺はな確かにゲームもラノベも漫画もアニメもついでにエロゲも大好きさ……だがな、俺はそうであっても、不健全な物は好まない…健全であるラッキースケベや純粋な愛があってこそのものなんだ! 故に俺は脳みそピンク色でも、あくまで健全であることが第一なんだぁぁぁぁぁあ!!」

 

「言ってることとやってることが違いますぅぅぅぅううううう!!」

 

健全な物を愛するが故の宗谷の暴挙に、イストワールは涙目になりながら反論する。

 

しかし、それに対して宗谷は……。

 

「違うないーすん、これはあくまでこの耳と尻尾を調べているに過ぎない、別に恥ずかしいところを触っているわけじゃないから不健全な行為ではないんだよ! 俺はあくまで猫耳と尻尾を触ってるだけだから!」

 

「そ、そんな横暴にゃ…はうっ!」

 

宗谷が行なっているのはあくまで検査の一環だ、彼の言う通り別に胸やお尻を触っているわけではない。

 

尻尾と耳を触っているだけ、あくまでそれだけなのだから。

 

「横暴かどうかはいーすんにお返しをさせてもらってから決めさせてもらおうかぁぁ!」

 

「そうやしゃんのばかぁぁぁぁ! にゃぅぅぅうっ!」

 

しかし、あまりやりすぎるのも良くはない。

度を越すとよろしくない物に見えてしまうのは当然のことであり、程よく止めるのがせめてものマナーだ。

 

だが、この時の宗谷はリアルの猫耳を間近で見たと言う体験と不健全と言われたことに対する報復で冷静さを失っていた。

 

どんどんヒートアップしていく宗谷の手つきにイストワールは限界寸前だった。

 

「やぁぁっ……もう、むりですぅ……ひぁっ…! …もう、ゆるひてくらしゃい……さっきのはとりけしますからぁ…!」

 

「ふーん、どうしよっかな~…」

 

「ふにゃっ!? やっ……らめっ……つよくしちゃらめ…おかしく…なっちゃいますぅ…!」

 

その場にうずくまるような姿勢をとってプルプルと身を震わせ、とろんとした目尻に高揚した頬と荒い息。

 

はたから見たらもう完全に不健全極まりない状態になってしまっている。

 

そして、彼女はこの後、この状況下で言ってはいけないことを口にしてしまった。

 

 

 

「お、おねがいします……もう、やめてくだしゃい……にゃ、な、なんでも…しますからぁ…!」

 

 

 

それを聞いた瞬間、宗谷の目が強くきらめいた……気がした。

 

「なんでも? 今、なんでもって言った…?」

 

「は、はいぃ…なんでも、しますからぁ…」

 

言質は取った。

ニヤリと宗谷が口元に意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「…じゃあ、そろそろやめてあげようかな?」

 

「ほ、ほんと…ですか…?」

 

ようやく解放される、イストワールは荒い呼吸を繰り返しながらも宗谷の方に視線を向ける。

 

すると宗谷は屈託のない笑顔で……。

 

「でも、やめてあげるからその代わり…」

 

宗谷はそうつぶやくとイストワールの耳、猫耳ではなく人間の方の耳の方に小さく耳打ちをした。

 

すると、その瞬間に先ほどの宗谷の暴挙によって、ほんのりとピンク色に染まっていた彼女の頬が、と言うか顔面そのものが真っ赤に染まる。

 

「な、な、な、な、なんでそんなこと…!」

 

「だって、なんでもするって言っただろ?」

 

「い、言いましたけど…だからってそんな…」

 

「じゃあ、俺は納得が行くまでいーすんの猫耳と尻尾を“検査”させてもらおうかな?」

 

「ひっ…! うぅ…」

 

そう言って宗谷はこれ見よがしに手をわきわきと動かす。

流石に苦手なあの感覚を再度味わうのは嫌なのか、イストワールは再び身を縮こませる。

 

苦渋の決断を迫られるイストワール。

 

断れば尻尾と猫耳、断らなければ今まで以上の恥ずかさを味わう。

しかし、イストワールは決断した。

 

「………もう、わかりました! だからもう、尻尾と猫耳をいじるのはやめてくださいね…?」

 

あの頭が真っ白になるような感覚をこれ以上味わったら、本当に“危ない”気がする。

それならまだこちらの方がましだと判断したのだ。

 

「OK、約束するとも」

 

「……そ、それじゃあ……」

 

イストワールは確認を取ると、宗谷の前まで近づいてきた。

恥ずかしいのか目を右往左往に泳がせ頬を赤らめながらも、彼女は意を決して行動を取る。

 

その場に腰を下ろし、両手を床につけたイストワールはそのまま上目遣いで宗谷を見上げて……。

 

 

 

「ご、ご主人……さま……もう、あんなことは言いません……だ、だから……どうか……許して、ください……」

 

 

 

湿った眼で懇願した。

まるで何かを求める子猫のように、主人の膝下で何かをねだる猫のように、イストワールは宗谷のことを“ご主人さま”と読んだのだ。

 

これこそが宗谷の最後のねらいだった。

 

彼女の普段ではみられない姿を堪能した宗谷は満足げな笑みとガッツポーズを浮かべると、優しげな笑みを浮かべた。

 

「はい、ばっちり!」

 

「うぅ……恥ずかしくて死にそうです……」

 

「あははは……ごめんないーすん、ちょっと調子に乗りすぎた」

 

「乗りすぎですよ本当に……宗谷さんのバカ……」

 

「ごめんって……もうしないから、本当に」

 

「………本当ですか?」

 

「本当本当、嘘はつきません!」

 

疑うイストワールに宗谷は精神誠意に本当であるということを告げるために、両手を上げて抵抗はしないという意思を見せる。

彼のその姿をじっと見つめるイストワール、しばらくすると彼女は、じゃあ、と小さく呟いた。

 

「……さっき言ってた喫茶店、絶対連れて行ってくださいね……」

 

「……ああ、絶対連れてくよ、約束だ」

 

「あっ……」

 

宗谷はそう言うと彼女の頭に手を乗せて優しく撫でてあげた。

 

この行為はまだ猫扱いしているのではないかと感じたイストワールだったが……。

 

(……これは、好き、かもです……)

 

何よりも安心する彼の手の感触にまんざらでもない表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

「やっほー宗谷ー! 暇してるー? せっかくだから一緒にゲームを……」

 

 

 

突然、締めていたドアが開け放たれ、この国の女神である少女、パープルハートことネプテューヌが宗谷の部屋を訪れた。

 

しかし、そこで彼女が目にしたのは…。

 

「「………」」

 

こちらを見て絶句する宗谷と、彼の前で四つん這いになり猫耳と猫の尻尾をつけ、猫のように宗谷に頭を撫でられていたイストワールだった……。

 

「………あー、お邪魔だったかな~? ご、ごゆっくり~……」

 

いったいなにをごゆっくりするつもりかはわからないが、ネプテューヌはそう言うとドアを締めて、その場を後にした。

 

残された宗谷は顔を青ざめさせ、イストワールは今まで以上に顔を真っ赤に染め上げている。

 

 

 

そしてその後……。

 

 

 

「宗谷さんの……バカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!」

 

「本当すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!?」

 

 

 

宗谷の部屋からイストワールの怒号と宗谷の悲鳴、そして遅れて鈍器で殴られるような凄まじい音が聞こえてきたのは、言うまでもない。

 

 

ちなみに、そのさらに一時間後に、イストワールを突如として襲ったがすとちゃんの白猫アクセサリーアイテムは無事に取れたそうな。

 




いかがでしたか?

今回のこの短編を機に、ネプおば本編に興味を持った方、そしてネプおばをすでに読んでいる方も、今後ともよろしくお願いします!

次回の更新は未定ですが、また気が向いたら更新します!

それではまた会いましょう!
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