超絶短編!ネプテューヌ おーばーえくすとらどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です!
今回はゲイムギョウ界聖杯戦争編第三話!

戦いを続けるエミヤとディルムッド、だがそこへ暗殺者の影が迫り…!

さらに今回は新たなるサーヴァントが登場!
それではお楽しみください、どうぞ……。


Fate/stage,3 ゲイムギョウ界、聖杯戦争勃発~奇襲~

 

―――ガィイン! ガキィン!

 

 

 

真夜中の人気がない廃工場に鳴り響く金属同士の衝突音、霧が周囲に立ち込める中で断続的に鳴り響くその音と、時折飛び散る火花。

それらの音が鳴り響くのと線香花火のような小さな火の種が散る様子は今行われている戦いの凄まじさを物語るには十分な物だった………いや、それ以上という方が正しいか。

 

「ふっ!」

 

「………はぁ!」

 

今まさに激突している二人の英雄、この二人の戦いの壮絶さは宗谷が見てきた戦いの中でも常軌を逸した者の部類に入るものだった。

二本の長さの違う槍を巧みに駆使して赤い外套の男を攻め立てる、槍兵の英霊、ディルムッド・オディナ、柄の下部の方を握りリーチを長くした赤い槍で牽制しつつ、時折鋭い突きを放っては対峙する敵を追い立てる姿はフィオナ騎士団の一番槍の異名に相応しい実力と言えるだろう、相手を寄せ付けず付け入らせる隙を与えない、己の武器のリーチをよく理解した戦い方だ。

 

対する赤い外套に浅黒い肌が特徴の男、宗谷が契約したサーヴァント、弓兵のクラスの英霊、エミヤ。

彼もまたディルムッドに負けず劣らずな動きで彼が両手に握っている槍の攻撃に迎え撃っていた。

本来のクラス通りならばリーチの差では圧倒的に有利に立っている遠距離からの攻撃を得意とするアーチャーであるエミヤ、だが彼は今敢えてなのかそれとも考えがあるのか両手に握った黒と白の刃を持つ二本の刃、それを持ってしてディルムッドの攻撃に真っ向から対峙しているのである。

 

突き出されたディルムッドの赤い槍の刺突、それを右手の剣で受け流したエミヤは一気に距離を縮めて左手の剣を振り下ろそうとする、だがディルムッドはそれよりも早くもう一本の槍の黄槍を振るって牽制、その刃を気にしてか接近をやめ一度後ろに跳んだエミヤを追跡し、身の捻りを加えた横薙ぎの攻撃で追撃する。

 

ディルムッドがその一撃を振り抜いた瞬間に再び鳴り響いた甲高い金属質の音、それと同時に大きく後ろに吹き飛ぶように飛んだエミヤ。

地面を滑るようにして失速しながら後退した彼は両手の剣を交差させるようにして構えている。

どうやら今の一撃を咄嗟に両手の剣で防いでやり過ごした様だ。

 

しかし、そこにディルムッドの更なる追撃が繰り出される。

 

「………てぇあ!」

 

後ろに後退したエミヤと再び距離を詰めたディルムッド、彼はそのままリーチの長い赤い槍で刺突を繰り出す。

 

「………!」

 

だがその瞬間、エミヤが鋭い眼差しでディルムッドの動きを真正面から見据える。

そして、槍の矛先との間合いがぎりぎりまで近づいた瞬間、エミヤは素早く身を屈める。

 

「なに!」

 

「見切った…!」

 

そして、槍の刺突を免れたと同時に両手の剣を下から上へと跳ね上げるようにして振るい、赤い槍を押し返した。

赤い槍を押し返され、体を仰け反らせたディルムッド、エミヤはそこに更なる反撃を掛ける。

距離を詰め、剣の間合いへとディルムッドを捉えた瞬間に彼は片手に持っていた刃を袈裟懸けに振り下ろした。

咄嗟にディルムッドは後ろに回避しようとするが、僅かに刃がディルムッドの肩をかすめる。

 

「ぐっ………」

 

肩に切り傷を受けながら、一度間合いを開けたディルムッドは剣を振り下ろした体制でいるエミヤへと再び視線を向ける。

それに対し、顔を上げながらじっとディルムッドを見据えたエミヤはその口元にまるで余裕を見せるかのようなニヒルな笑みを浮かべた。

 

「……見事だ、まさかこれほどとは思ってもみなかったが……同時に不思議な物だ、アーチャーの身でありながらセイバーにも通ずるその剣気……お前は一体どこの英霊か……」

 

「……さあ、それに関しては私の口から言う必要もないし、自身の口から言うほど気の抜けたサーヴァントは早々いないだろう……もっとも、そちらはこちらのマスターに真名を当てられたようだが」

 

ディルムッドにとって、今目の前にいるアーチャーのサーヴァントはまだ未知の存在、真名を露わにされた彼にとっては大きな差がここで出来てしまっている。

そして、それをアドバンテージにしたかのようにエミヤは余裕を感じさせる表情を浮かべながら両手の剣を持ち直すと再び身構えた。

 

「聖杯戦争において、サーヴァント同士の戦いは本物の命のやり取りと変わらない、よもやそれを忘れたわけではないだろう、ランサー?」

 

「ふっ……まさか……それがサーヴァントとして召喚された我が指名、我が主のために聖杯を捧げる……その役目のため、槍を振るう……そのために俺は今ここにいる」

 

互角のやり取りを交わし、互いに一歩も譲らない闘志を見せる弓兵と槍兵、二人の英霊は互いに口元に微笑を浮かべたまま互いの武器を構え、再び対峙する。

闘いは、まだ始まったばかりだと言わんばかりに………。

 

そして、その様子を見ていた宗谷達もまたそれを反射的に感じ取っていた。

 

離れていても肌に感じる、ぴりぴりとした闘志……宗谷達は二人の戦いから目が離せないでいた。

 

「……どっちもどっち……今の所、勝負がつきそうな感じはないわね」

 

「……あぁ、確かにな……でも、勝負が動き出すとしたら、多分ここからだ」

 

どこか緊張した面持ちを浮かべるアイエフに宗谷は同意しながらそう説明した、その言葉が何を意味するのかアイエフはあまり理解していなさそうな表情を浮かべるが、宗谷はそれに付け加える様に更なる説明を加える。

 

「……互いに持ってる武器、相性的にはランサーのディルムッドがどちらかと言えば有利だ……だけど、弓兵であるアーチャーが本領を発揮したら愛称は一気に逆転する、それは向こうも理解しているはずだ」

 

エミヤは今現在、彼が得意とする魔術である“投影魔術”によって生み出した白と黒の刀剣、干将・莫耶を使っているが、あれは彼の戦い方の内の一つにしかすぎないということを宗谷は知っている。

アーチャーとして現界した彼が本来どのような役割を持ってして戦いを熟すのかは、宗谷自身もよくわかりきっていることだった。

彼にはまだ、他に戦い方があるのだ………“弓兵が最も得意とする戦い方”が………。

 

故に、相手をアーチャーと見抜いているディルムッドも同じ考えを持っていることを宗谷は見抜いていた。

彼の本筋である戦い方が干将・莫耶による剣術なら、彼は剣士であるセイバーのクラスとして召喚されたはず、だがサーヴァントとしての本能が彼がアーチャーであると告げているのをディルムッドは嫌が応にも感じ取っているはずなのだ。

そうなってくるとこの状況で相手方がどのような動きを見せてくるのはおのずとわかってくる………相手が本領を発揮し、不利な状況に陥る前に“勝負を賭けて来る”………。

 

 

 

「だからこそ、こちらも本領発揮と行かせてもらおう……丁度今、我がマスターから“許可”が出た」

 

 

 

その言葉で、宗谷は自分の中で予想していた向こうの次の一手が現実となったことを悟った。

 

(まずい……奴は使ってくる気だ、あれを!))

 

おそらく今の状況でそれを使われては、エミヤが圧倒的に不利になる。

それを理解していたからこそ、宗谷は警戒をエミヤに促がすように対策を取らせるように指示を出す。

 

 

 

「アーチャー気を付けろ!! “宝具”を使う気だ!!」

 

 

 

自身の主人から出たその言葉にエミヤの口元に浮かんでいた笑みが消えた。

そして彼はディルムッドの動き警戒をし始め、じっと相手の出方を伺いながらその場で両足を踏みしめ、いつでも動けるような体制を作った。

一瞬でも油断すれば、向こうの宝具が放たれる……一瞬でも気を許せば、次の瞬間には自分の首が胴体から離れている、なんてことがあっても可笑しくないからだ。

それに、相手は槍兵……槍を得意とするサーヴァントの宝具なら、十中八九槍そのものが宝具である確率は高い、だとするなら槍を投擲することによる攻撃だということも予想が出来る……まあ、その場合は自身の持つ宝具の内の一つで対抗するだけなのだが……。

 

だが、サーヴァントである彼は相手の真名を理解してはいても、その方具がどのような物であるかを理解していない。

故に宗谷は若干の焦りを感じていた…。

 

「ね、ねえ、ソウヤそのほうぐってなに? 聞いた感じだと、なんかやばそうなやつみたいだけど……」

 

そんな中あまりこの状況の重大さを理解していない様子のネプテューヌが宗谷に問いかけてきた。

彼女の場合はFate/シリーズの知識がないため、知らなくても当然だが今は詳しく説明している暇はない…。

 

「簡単に言えばサーヴァントの持つ必殺技みたいなもんだ、サーヴァントはそれぞれ自分の伝説とか言い伝えになぞらえた能力とか武器がある、それを自分の力として解き放つ、それが“宝具”だよ!」

 

かなり簡潔にまとめた説明をネプテューヌにすると、宗谷は続けてエミヤにも視線を向けた。

彼は知っているからだ……エミヤの能力に対して、ディルムッドの持つ宝具は“圧倒的に相性が悪い”ものだということを……。

 

「アーチャー、ディルムッドの宝具は本当に厄介だ! 特にあんたの場合は形成が一気に逆転してもおかしくない! だから、あんたもすぐに武器を変えて……」

 

「させるか、我が槍を持って今ここで貴様を討たせてもらうぞ、アーチャー!」

 

ディルムッドが宣言した瞬間、彼の持っていた両手の槍に変化が起き始めた。

両方の槍の柄にしっかりと巻かれていた布のような物が、まるで溶けていくかのように消滅していく、そしてその下から姿を現すのはその槍の本来の姿……あるべき姿である。

片方の槍は深紅の刃と共に柄も赤く、そしてもう片方の短槍もまた刃と同じく柄も黄色だった。

ディルムッドはそのうちの一つ、左手に持った赤い槍を片手で振り回すと矛先をまっすぐにエミヤへと向ける。

 

「行くぞ、弓兵! 覚悟はいいか!」

 

そして、猛然と駆け出す狼の如く地を蹴った槍兵はまっすぐに弓兵へと向かっていく。

宗谷の指示を受け、それを実行に移すよりも早く動かれたエミヤは咄嗟に両手の剣を交差させ、防御の姿勢に入った。

 

「………?」

 

だがこの時、エミヤは違和感を感じた。

槍を向けたディルムッドの狙いはまっすぐにこちらに向いている……だが、その矛先に秘められた攻撃力が自身の肉体というよりも、まっすぐに防御に使かっている“武器の方へと向けられている”のに気付いたからである。

 

「ダメだ!! 防御するな!! “破られる”!!」

 

その様子を見て宗谷は必死に自身のサーヴァントに向けて叫んだ、だが一歩遅かった………。

 

 

 

“破魔の紅薔薇”(ゲイ・ジャルグ)!!」

 

 

 

その時、既にディルムッドの深紅の槍が、エミヤの両刀の刃に接触していたからだ。

 

そして、その瞬間ディルムッドの持つ宝具、“破魔の紅薔薇”(ゲイ・ジャルグ)の秘めたる力が発揮されることとなった。

交わる刃と刃、響き渡る衝突音、だが同時に自身の武器の刃が激しく軋むような音をエミヤは聞き取った。

 

「っ! なに…!?」

 

驚くのもつかの間、次の瞬間彼の武器でる干将・莫耶があっさりと、そしてもろく、“砕け散ってしまった”のだ。

 

何かが起きることは予見していたが、まさか自身の武器がこうもあっさり破壊されるとは予想もしていなかったエミヤは表情を困惑と驚愕が入り混じった様な物へと変えると次に来るであろう一手を素早く判断した。

武器という壁を失くした槍はその先どうなるのか、それは目に見えて明らかだ……。

遮るものを失くし、一直線にエミヤへと向かっていく深紅の槍は今度はエミヤを貫かんとするだろう。

それを予見したエミヤはすぐさま身を捻り、矛先が自身の体を穿つのを紙一重で回避するべく行動を起こした、しかし、僅かに動きが遅れたのか身を捻ったエミヤの胸部を赤い矛先が掠め、僅かに空中に鮮血が散った。

 

「もう一本が来る!! それは絶対に当たっちゃだめだ!!」

 

程なくして宗谷の危険を知らせる声が聞こえた、そしてその知らせが聞こえた直後ディルムッドが持っていたもう一方の黄槍が続けざまに振るわれた。

 

自身へと迫りくる黄色い矛先、当たってはいけないということはこれは先程の深紅の槍とは違う効果があるのか……そう判断したエミヤは自身へと迫りくるその刃に対抗するべく……。

 

「フッ!!」

 

再びその手に自身の武器を投影して、二撃目の一刺しを間一髪の所で弾き返した。

横合いから振るわれた剣による妨害を受け、起動を反らされた短槍は致命傷を与えられる位置であった首を外れ、僅かにエミヤの白髪を数本斬るだけに終わった。

 

なんとか致命傷は回避することが出来たエミヤは回避の際の動きを生かしたまますぐさまディルムッドから距離を取った。

数回地面を蹴るようにして大きく跳躍し、後退した彼は今先程自分に襲い掛かった槍兵の武器が起こした現象を見て冷静に頭を巡らせ始めた。

 

「………武器を問答無用で破壊する、というには少しばかり違和感を感じた……先程私のマスターが言っていたことを踏まえると、その赤い槍は魔術という概念そのものを貫く、と言った所か?」

 

「察しが言いなアーチャー、その通り……我が長槍、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)は魔術そのものを斬る、お前がどこからともなくその剣を生み出した時、もしやとも思ったがやはり貴殿の夫婦剣は魔術によって構成された物だったようだな」

 

そう、これが宗谷が危惧していたエミヤとディルムッドの相性の悪さを露わにする理由……。

ディルムッドの持つ二振りの槍が一つ、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)の刃は魔術的効果そのものを“無効化”する能力があるのだ。

そのため武器に魔力的な効果が付与されているのであれば、その魔力効果が打ち消され、物理的な防御力しかその武器が持てないようになってしまう。

だが、エミヤの場合はそうはいかない……エミヤは自身の武器を“投影魔術”と呼ばれる魔術を駆使して魔力によって武器を精製している、そのため彼が扱う武器は魔力そのものがあって成り立つ物であり、そこへ魔力を打ち消す力を持った刃を受ければたちまちそれはもろくなってしまうだろう……しかも、彼が投影した武器はオリジナルに劣る“贋作”であり攻撃の仕方や当たり所によってはいとも簡単に砕かれてしまう。

 

自身のマスターが危惧していたのがそれかと理解したエミヤは、もう口元に余裕を感じさせる笑みを浮かべなかった。

確かにこれは自身にとっては相性が悪すぎる、形成が一気に逆転してしまったことを彼自身が悟っているためであった。

それと同時に、さらに警戒すべき要素が増えたということもある……。

 

「だが、我が短槍、“必滅の黄薔薇”(ゲイ・ボウ)を防いだのは予想外だったぞ」

 

そう言って彼が振りかざした、黄色い刃の槍だ。

おそらくあれにはその刃で傷つけられるだけで何かしらの呪いが付与されるか、即死に至る毒のような物が仕込まれているのやもしれない…。

先程自身のマスターがあれほど強く警告したということはそれほどまでに警戒する必要のある程の物、ということだろう…。

 

ここまでこのランサーが厄介な相手となるとは予想もしていなかった、アーチャーは今現在の状況を見て、自分が置かれている状況に危機感を感じ始めていた。

 

「うわぁ……ちょっとやばいんじゃないかなこれ……なんだかアーチャーが逆転されたっぽい空気なんだけど」

 

「されたっぽいじゃなくて、されてんだよ……魔術の効果が受けられなくなるならあの人の今の戦い方は確実に不利だ」

 

この状況を見て、宗谷はこの状況をどう打開すべきか考えを巡らせていた。

ディルムッドの持つ宝具は、どちらも厄介なことこの上ない能力を秘めたものだ、それ駆使して挑まれればさすがの彼と言えどただでは済まないし、場合によっては敗北してもおかしくはないからだ。

一番有効的な反撃方法としては、彼の本来のクラスであるアーチャーとしての戦い方、“遠距離攻撃”に持ち込むことだがおそらくそれは向こうが許さないだろう……何としてでも食い下がってくるはずだ。

 

(せめて気を逸らすことが出来れば……でも、あの実力は正直言って俺一人で何とかなるような相手じゃない……俺が割り込んで何とかなるか怪しいし……)

 

先程のエミヤとディルムッドの戦いは、正直言って常軌を逸していた。

あんな戦いを繰り広げる英霊の実力を間近で見てしまった彼は今、その英霊と真正面からやり合うという決意が持てずにいる…。

場合によってはエミヤの脚を引っ張ることになるかもしれないからだ…。

 

(くっそ…! なにしてんだよ、天条 宗谷、童貞19歳! 今はなんとかこの状況を打開しなくちゃいけないんだ…!)

 

自身の中にあるオタク知識をフル導入させて、なんとか打開策を生み出そうとする宗谷。

そうでなければ、自分はまた目の前で失ってしまうことになる……そんな現実を見るのは、嫌だったから……彼自身が、拒んでいたから……。

 

なんとか、エミヤの現状を打開するべく、策を巡らせる宗谷………だが、そんな時だった。

 

 

 

「ね、ねえ、宗谷、ちょっとおかしくない?」

 

 

 

不意にアイエフが何かに気付いたのか周囲をきょろきょろと見回しながら宗谷に声を掛けた。

 

「アイエフ? なんだ、なんかアイデアがあるのか?」

 

「そうじゃないんだけど……あんたは感じないの? さっきから、変な感じがするの」

 

そう言うとアイエフは何やら周囲をきょろきょろと見回して何やら警戒しはじめた、いったいどうしたというのか宗谷が疑問を抱き、首を傾げていると……。

 

「うーん……なんか私も、さっきから変な感じがするよぉ……肌がじっとりっていうか……背筋がぞわぞわっていうか……」

 

「ネプテューヌもか? ……でも、そんなこと言われても……」

 

二人が感じるという違和感に疑問を抱いた宗谷はふと周囲へと視線を巡らせてみた、夜の闇に包まれた街並みはずれた工業地帯の一角、人気もなければ自分たち以外に気配も感じない。

周囲には自分たちを包み込むように、霧が立ち込めていて……。

 

「………あれ?」

 

この時宗谷はあることに気付いた。

自分たちを囲むこの環境の中で、大きな変化を遂げている……あることを……。

 

「………さっきまで、こんなに霧って濃かったっけ?」

そう、先程以上に徐々に霧が濃くなってきていたのだ……まるで、辺り一帯を包み込むように先程以上に……濃く、濃密な白い靄を辺りが包み込んでいることに……。

 

そして同時に、この霧がやけに普通の霧よりも嫌な感じがするということに……。

 

 

 

「………っ!! げふっ! えほっ!!」

 

 

 

それを感じ取った瞬間、宗谷は途端に自身の胸に言い知れぬ苦しさと目の痛みを感じ取った。

咄嗟に目を閉じて咳込んだ宗谷はその場に膝をつき、口を押えながら咳を出す。

 

「ちょ、ちょっと宗谷!? どうしたのよあんた!」

 

「ソウヤ!? なになに、なにがどうしたの!? 実は病気でしたっていってもいきなりすぎだよ!?」

 

「っ! ……なんだ、何が起こった……?」

 

突然苦しみ出した宗谷に、アイエフとネプテューヌは慌てて宗谷に駆け寄り、同時にこの異変に気付いたエミヤもまた彼の方へと視線を向ける。

この状況において、宗谷は苦しみながらも咄嗟にこの異常が何でおきているのか、疑問を抱き、最初はこの霧が本当は毒ガスなのではないかという考えに至ったがそれはすぐに違うという結果に行きついた。

この霧そのものが毒ガスなら、ネプテューヌやアイエフにも何らかの影響が出ているはず、だが今は自分にのみその影響が出ている。

そして、それを踏まえて考えた結果、何が原因なのかをおおよそ考えが彼の中で付き始めていた。

 

胸が焼けるようなこの苦しみ、そして目の痛み、これはおそらくこの周囲を包み込む霧のような物で引き起こされた物だ……これによく似た現象が起こる作品を、彼は知っている……。

 

(これは……! 俺の予想が正しかったら……すぐ近くに……!)

 

この状況から、その原因が何なのかを瞬時に予想した宗谷はとにかくこの状況から脱出するべく手探りでポケットの中からV.phoneを取り出しベルトから赤剣を取り出すとすぐさま連結し、自身のもう一つの姿へと変身した。

 

「けほっ! …リンク……オン!!」

 

宗谷が持つもう一つの姿、赤き勝利の勇者、クロス・ヴィクトリーの姿へと変身した宗谷は体全身を包み込んだボディースーツと装甲、そして東部全体を包み込むマスクの中で恐る恐る目を開いた。

まだかすかに目に痛みを感じるが、先程の霧に直に晒されるよりかは幾分かマシになっている、どうやら変身することで幾分かは外気の有害な毒素を遮断できる様だ。

しかし、それでもこの中にあまり長くいると危険を伴う……そう判断した宗谷は、すぐさま自身のサーヴァントに向けて警告した。

 

「えほっ、この霧だ! この霧は、サーヴァントの宝具の一つだ! ごほっ…!」

 

「なに……心当たりがあるのか、マスター!」

 

「あぁ……この場にいるみんなじゃなくて、ピンポイントで俺がこんな風になったのを考えるとたぶんこれは、十中八九……“アサシン”のサーヴァントだ」

 

そう、宗谷にはもう既にこの現象を引き起こした者の“正体”がおおよそ見当がついていたのだ。

 

“アサシン”………7つあるサーヴァントのクラスの中で、“暗殺者”の役割を担うクラスであり、気配を遮断し標的を隠密に打ち取ることに秀でたサーヴァントだ。

 

ここまで濃くなってきた霧だけでは気付けなかったが、今自分が受けた苦しみでその霧に秘められている、サーヴァントの正体に通ずる情報を自身の記憶から探り当てたのである。

彼の中にある今まで得てきたサブカルチャーの知識、その中でこの霧とそれによって引き起こされた自分へのダメージ……それを考えると、これを引き起こしたのは……。

 

「…やられる前に、見つける!!」

 

『Skill Link! Hidan no ARIA』

 

宗谷は奇襲を仕掛けてきた何者かの正体を探るべく自身の感覚を研ぎ澄ますことが出来るスキル、スキル 緋弾のアリアを発動してあたりへと気配を巡らせる。

研ぎ澄まされた宗谷の五感、その中の聴覚、視覚、それらがまるでソナーのように働き、同時に彼の中で鋭敏になった直感が自身に近づく者がないかを探り始める。

 

辺りを包み込む静寂と、奇妙な気配の中で、何か動くおかしなものがないかを……宗谷は感覚を張り巡らせて探り続ける……。

 

だが相手はアサシン、気配を遮断することに関しては他より秀でた物を持つサーヴァントだ……いつもよりも鋭く、そしてより敏感に周りを感じ取らなければ、隙を突かれる。

 

自身の感覚を更に研ぎ澄まし、霧の中に隠れる暗殺者の姿を探す……。

 

 

 

………そして、彼は………。

 

 

 

「………っ!」

 

 

 

………感じ取った………。

 

 

 

「アイエフ、ネプテューヌ! 伏せろ!!」

 

 

 

自身の背後から迫ってきていた、高速で動く凶刃とそれを持つ暗殺者から放たれる、僅かな殺気を……。

 

紙一重でそれを感じ取ったクロス・ヴィクトリーは咄嗟に両脇にいたアイエフとネプテューヌの二人を抱えてその場で身を低くした。

そして、その直後に今まで彼の首が置いてあったその空間、その場所を横薙ぎに鋭い斬撃が目にも止まらぬ速さで駆け抜けた…。

 

「っ、んなろぉ!!」

 

奇襲を受け、それを何とか回避できたクロス・ヴィクトリーはすぐさま後ろに身を返しながら右手に持つ赤剣を背後に向かって振り抜いた。

だが、その反撃をクロス・ヴィクトリーの後ろにいた暗殺者はものの見事に跳躍して回避する。

 

赤剣の横に払うような斬撃、それを跳躍して回避した暗殺者は身を翻しながら常人では考えられない程の高さまで飛び上がり、そのまま工業地帯の一角を成す近場の工場の屋根の上にすたん、と難なく着地した。

そして、突然の奇襲を仕掛けてきた暗殺者にその場に居合わせた5人は一斉に目を向けた。

 

「あ、あれもサーヴァントなの?」

 

「……なんか、すごい小さくない?」

 

「………奴がアサシンのサーヴァント……だが、あの容姿は………」

 

「……ずいぶんとまあ、小さな暗殺者もいたものだ」

 

その際にアサシンの容姿を初めて見た二人のサーヴァントを含める4人はその容姿から感じ取った一番の驚きをそのまま口にした。

霧が比較的に立ち込めていない高い位置に姿を現したアサシンのサーヴァント、それはあまりにも小柄で、一見するとその容姿は本当に幼い子供のように見えた。

 

世闇の中で浮かび上がった暗殺者の姿、空虚な印象を与えるアイスブルーの瞳、まるで幽霊を思わせるかのような銀髪に幼い顔には少々不釣り合いな生々しい継ぎ接ぎ…。

小さな体を覆うボロボロのマントが夜風になびき、その下から見える小さな体には必要最低限の衣服に何本かの“ナイフ”が備わっていて、そのナイフは小さな暗殺者の両手にも握られている……その手に握られているナイフの切っ先は今先程、クロス・ヴィクトリーに向けられて振るわれたのだ……それは近場にいたネプテューヌとアイエフ、そしてクロス・ヴィクトリーである宗谷自身がよく理解していた。

 

そして同時に、宗谷が考えていた予想は的中していた…。

 

「……やっぱり、あいつだったのか……」

 

月光の下で姿を現した暗殺者、その姿もまた彼がここに来る以前の世界で得た知識の中に存在していた。

それはFate/シリーズの中に存在するものの中でも、平行世界において行われた比較的大きな聖杯戦争、“聖杯大戦”にて“黒のサーヴァント”の内の一人として召喚された英霊の一人。

両手に握るナイフで、霧の中から奇襲をかけるその戦い方に通ずるのは霧の街ロンドンに置いて、その名を轟かせた伝説の女性殺しの“連続殺人鬼”……。

 

5人の女性をその手に掛け、ロンドンの街を恐怖に陥れた伝説の殺人鬼……その正体は結局わからず、捕まることもなかったが英霊として召喚されたこの姿を見て宗谷は見間違がうはずがなかった。

 

 

 

「………“ジャック・ザ・リッパー”………」

 

 

 

“切り裂きジャック”の異名を持つ、その名をクロス・ヴィクトリーはマスクの下で警戒の意志を込めて囁いた。

 

 

 

「………“おかあさん”が、言ってたから………やるね?」

 

 

 

夜の闇と霧に包まれたその中で、屋根に上ったジャックはそう呟くと、そのまま跳躍し再び霧が濃くなっている宗谷達の周囲へと入り込んだ。

その瞬間、クロス・ヴィクトリーは再び警戒を強めた。

 

(まずい、たぶんあいつはマスターの命令でピンポイントで俺を狙ってる……けど、あいつの能力は気配を遮断するだけでなくこの霧の能力も合わさってより厄介になってる……次に狙われたら間に合うかどうか……!)

 

アサシンのサーヴァントの中でも飛びぬけて隠密能力と、殺傷能力に秀でたスキルを持っている。

そんな相手に狙われているとなると、いつ隙を突かれて致命傷を負ってもおかしくない……スキル 緋弾のアリアの能力も100%確実に相手を捉えられるとは限らないのだ、会相手の動きや隠密能力によってはその気配を終えないこともある。

 

もし、この霧に乗じて再び奇襲を掛けられたら今度も助かるかどうかは、かなり怪しい……。

 

幸いなのは、ジャックの持つ宝具の条件が自分では“完全には揃わない”ことだが……それでも危険は伴うのに変わりはない。

しかも、それはあくまで自分に対して今現在ジャックが狙いを定めているからいいが、もしそれが“ネプテューヌかアイエフ”へと向いたらそれこそ大惨事になってしまう…。

何せ向こうの宝具は“女性が相手だった場合、恐ろしいまでの能力を発揮する宝具”を持っているのだから…。

 

エミヤが劣勢に立たされたと同時に、姿を現した強力無比な能力を持つアサシン…。

 

不利な状況がさらに不利になってしまった……マスクの下で宗谷は苦々しい表情を浮かべながら周囲に視線を巡らせる。

このままではエミヤや自分だけでなく、ネプテューヌやアイエフにまで危険が及んでしまう、そう危惧したクロス・ヴィクトリーとにかくまずはこの霧を何とかするべきだと考えた。

だが、この霧を吹き飛ばそうにもそんな能力を持つスキルは今のところ持っていない、スキルチェインを行おうにも今はイストワールが傍にいない…。

それに、あまり長い事この場にいるのも危険だ……何とか変身のおかげで持ちこたえているが、それもいつまでもつかはわからない……下手をすれば再び霧の影響で危険な状態にい陥るやもしれない。

こうしている間にもジャックは次の一手を打たんとしているのに……クロス・ヴィクトリーの中に焦りの感情ばかりが募っていく……。

 

「ちっ……厄介な相手が来たものだ……!」

 

エミヤ自身もまた、ディルムッドを相手取っている最中に厄介な能力を使うアサシンが乱入してきたことに動揺を感じている様だ。

 

この状況をどうすれば打開できるか……クロス・ヴィクトリーが周囲を警戒しながら、考えを巡らせていると………。

 

 

 

「っ、ソウヤ! 来るよ!!」

 

 

 

ネプテューヌがこちらに迫ってくるアサシンの存在に気付いた、それを聞きクロス・ヴィクトリーが咄嗟にネプテューヌの示した方向へと目をやると……斬りを掻き分けるようにして、相手が迫ってきているのが見えた……。

 

「くっ!」

 

ネプテューヌの指摘もあり、紙一重でそれに気づくことが出来たクロス・ヴィクトリーは素早く赤剣を翻すとナイフを振りかざしてきた暗殺者に対抗した。

ナイフよりも長いリーチを持つ赤い刃とジャックの怪しげに光るナイフの切っ先が交差し、火花を散らす、その後も切り結んでは離れ、切り結んでは離れを繰り返していく。

霧の中に身を隠すジャックはクロス・ヴィクトリーの死角を的確について攻撃を繰り返していく、その動きはクロス・ヴィクトリーにとっては未知の動き、完全に人知を超えたスピードとそれに匹敵する反射神経と攻撃動作だった。

 

そして、その動きがクロス・ヴィクトリーの反応速度を徐々に上回っていく…。

 

(しまった、反応が遅れた……避けきれねぇ……!)

 

この時、既にジャックはクロス・ヴィクトリーの集中を上回る速度で回避を行うにはもう遅い間合いにまで接近していた。

地面を滑るような素早い動きで懐に潜り込もうとするジャック、逆手に持ったナイフがそのままクロス・ヴィクトリーの横腹に向かって、寸分の狂いなく振るわれ……。

 

 

 

「そこまでにしてもらおうか」

 

 

 

直後、クロス・ヴィクトリーの横合いから聞こえた言葉と済んでの所にまで近づいてきたジャックとクロス・ヴィクトリーの合間に一筋の黄色い一閃が駆け抜け、二人のすぐそばの地面へと突き立った。

 

「………え?」

 

二人の合間を遮るようにしてすり抜け、自身へと迫る暗殺者の動きを止めた何か、それが何なのか咄嗟にクロス・ヴィクトリーとジャックが目で追うと、そこには地面に斜めの角度で突き刺さった、黄色い柄を持つ短い槍があった。

そして、その槍の持ち主が誰なのか? それは簡単すぎる答えだ、なにせこの場にはただ一人しかいない…。

 

「……これ以上、我らの一騎打ちに野暮な真似をするのはやめてもらおうか、小さき暗殺者よ」

 

「……ディルムッド」

 

この場で唯一槍兵のクラスを得ているサーヴァント、ディルムッドだ。

彼は済んでの所でジャックの動きを止めるべく、自身の黄槍、必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を投擲したのである。

 

敵だった者の突然の手助け、それを受けたクロス・ヴィクトリーと彼を相手取っていたエミヤはこの行動に驚きを隠せずにいた。

 

「……何のつもりだランサー、あのまま放っておけばお前の敵が一人減っただろうに」

 

「……お前こそ、ここでマスターを見殺しにしていいのか、アーチャー? 少なくとも俺はこのような結果で終わるのを良しとは思わない……やるなら騎士として、そなたとの一騎打ちを果たし、どちらかの決着がつくまで己が武器を振るいたいのさ」

 

そう言って口元に微笑みを浮かべるランサー、ディルムッドの言葉にエミヤは何やら呆気にとられた表情を見せた、この場合はバカ真面目というかなんというか、彼なりのこだわりなのだろうか……という疑問に満ちた表情、と言った方がいいだろう。

 

だが、彼のこだわりのおかげで何とか危機は脱することが出来たのは事実……命を何とか拾ったクロス・ヴィクトリー自信を見据えて動きを止めているジャックを見て、再び警戒に入る。

命は拾ったと言えど、まだジャックは健在だ……このまま撤退、というわけにもいかないだろう……この結界となっている霧、ジャックの宝具にもなっている彼女の霧がある限り、現状はこの中でも最もジャックが有利なのは変わりないのだから。

 

その気になれば、この場にいる邪魔者となる者すべてを片付けるのも容易なはずだ……。

 

「……せめて、風でも吹いて霧が吹き飛んでくれたらな……」

 

そんな偶然が起こるはずもないが、クロス・ヴィクトリーは藁にも縋る想いからか、不意にそう呟いた…。

 

 

 

 

 

「見上げた騎士道、見事ですわ!」

 

 

 

 

 

だが、その瞬間その呟きに答える形なのかどうかは怪しいが……どこからか高らかな声が響き渡った。

 

「新手か……!」

 

「………あれ? でも、なんかこのお嬢様口調………私すっごい聞き覚えあるよ?」

 

「ネプ子も? ……実をいうと、私もなんだけど……」

 

突然聞こえた何者かの声、それを聞いて何事かと警戒を強めたエミヤ、だがそれに対して今聞こえた声に対して何か聞き覚えのような物を感じたネプテューヌとアイエフの二人。

そして、その聞き覚えはクロス・ヴィクトリーもまた感じていた。

 

この、明らかに高貴というイメージを与えてくると同時に、何か余裕差を感じる喋り方をする人物にネプテューヌとアイエフを含めて、彼の頭の中にはある“一人の人物”が浮かび上がっていた…。

 

「………まさか………」

 

その人物の大まかな検討が付いた瞬間だった………。

 

 

 

「敵との一瞬の助力、騎士道に対する信念、私もかなり燃えさせていただきましたわ! なのでこの場は私もお力をお貸ししましょう………さあ、お願いしますわ、“ライダー”!!」

 

「オッケー! 任せといてよ、マスター!」

 

 

 

そんなやり取りが、“上の方から聞こえた”と思った瞬間だった。

 

 

 

「さあ、頼んだよ…“この世ならざる幻馬”(ヒポグリフ)!」

 

 

 

突然彼らのいる工業地帯一体に猛烈な突風が吹き荒れたのである、その風は見る見るうちにジャックが発生させた霧を吹き飛ばし、周囲の視界を晴れさせていった。

まさかこんな形で呟きが現実になるとは思ってもみなかったクロス・ヴィクトリー、彼は驚きの表情をマスクの下で浮かべながら声が聞こえた方向の空を目を向ける。

 

 

 

「………なら、こっちもついでにやらせてもらうぜ? いいよな、マスター!」

 

「………ええ、構わないわ………やりなさい“キャスター”」

 

 

 

だが、その瞬間、また別の方向から二人の人物の声が聞こえた。

一人は男性の、もう一人はどこか大人し気な印象を与える少女の声だった、男性の声が言い放った問いかけに対し、少女の答えが返される。

 

 

 

「なら、少しばかり派手に行くぜ………アンサズ!」

 

 

 

そして、次の瞬間暗闇に閉ざされた夜空にいくつかの明かりが灯った、それはゆらゆらと揺らめきながら宙に浮かび、そのまま今度はクロス・ヴィクトリー達がいる方へと向かって降下してきたではないか!

 

「え、ちょっ! ちょっ、ちょっ!?」

 

明らかにそれは轟々と燃えたぎる炎の塊だ、あんなのの直撃を受ければ一溜りもない。

慌ててクロス・ヴィクトリーはその場で迎え撃つような姿勢を取るが………。

 

「………わっ」

 

「なに……くっ!」

 

「……あれ?」

 

その炎の塊たちはクロス・ヴィクトリー達ではなく、なぜかディルムッドとジャックの二人だけを狙って降り注いだのだ。

突然の攻撃に慌てて回避行動をとるアサシンとランサー、二人のサーヴァント。

一体、この状況はなんなのか、若干追いつきがつかなくなってきていたクロス・ヴィクトリーの思考、だがそれを冷ますかのように彼の耳を再び何者かの声が震わした。

 

「私たちの知らない所で、勝手にこのような催し物をするなんて……水臭いですわよ、宗谷?」

 

「………あなたも参加しているなら、ひと声かけてほしかったわね」

 

「え………は!?」

 

その声に導かれるように視線を向けた先、その先にあった光景を見て、クロス・ヴィクトリーは再び驚愕に目を見開いた。

何せそこには、予想打にしていなかった人々がいたのだから……。

 

一人は空中を羽ばたく謎の生き物、上半身は鷲、下半身は馬というあり得ない姿をした生き物に跨っている、どこかおとぎ話めいた鎧とマントに身を包んだかなり可愛らしい顔立ちをしたピンクに近い赤髪をした少女……いや、違う、その姿はとても見覚えがある……そうだ、あれは……あの人物は確かに“男”だった。

なにせ、あのあり得ない生物に跨っている人物の事をクロス・ヴィクトリーは知っているのだから………そう、彼もまたサーヴァント………ジャックと同じ、聖杯大戦で“ライダー”のクラスを得て厳戒した、“シャルルマーニ十二勇士”の一人という経歴を持つサーヴァントだ。

 

そして、もう一人………こちらは地面に足をつけているがその出で立ちは“魔術師”を彷彿とさせた。

薄い革で出来た衣服と、その上に身に着けた薄い青のローブ、そして右手に持つ木で出来た杖…。

だが、ここまで見るならクロス・ヴィクトリーにとって、このサーヴァントは“見たこともない特徴”ばかりであった………だが、そのサーヴァントの顔を見た時、それは“見たことある人物”に変わった。

どこか狂犬めいた鋭さを残す目に、青髪を持つその人物の顔はクロス・ヴィクトリーの持つ記憶の中でも特に印象深い人物の物だった。

だが、そのサーヴァントは確か“ランサーのクラス”だったはず……さらに言えば、自身のサーヴァントであるエミヤとも因縁深い相手だ……それがなぜ、あのような姿をしているのかはわからないが……クロス・ヴィクトリーは見間違うはずもなかった……“アルスター伝説の大英雄”を………。

 

 

 

そして、何よりもだ……その二人のサーヴァントを従えている二人のマスターらしき人物が何よりも彼を驚かせた。

なにせ、二人ともクロス・ヴィクトリー……いや、宗谷とネプテューヌとアイエフの三人にとってはとてもかかわりが深い人物だったからだ……。

 

 

 

その人物とは………。

 

 

 

 

 

「な、なんで………なんでベールとブランが、“アストルフォ”と“クー・フーリン”を従えてるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 




いかがでしたか?

まさかの聖杯戦争に参戦を果たしたベールとブラン、アストルフォきゅんとの兄貴キャスターを従えて乱入した二人の思惑とは!

それでは次回をお楽しみに!
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