超絶短編!ネプテューヌ おーばーえくすとらどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です!
リアルが立て込んできましたが細々と活動は続けますぞ!!

今回よりしばらくこの聖杯戦争編での更新が集中となりますが、ご了承ください……。

さて今回は!
前回登場した三人の強豪サーヴァント! その猛威に宗谷達は!?

それではお楽しみください、どうぞ……




Fate/stage,7 ゲイムギョウ界、聖杯戦争勃発~恩讐~

 

 

“アヴェンジャー”、確かに宗谷の耳にはそう聞こえた。

目の前の深い、森林の緑の木々なんかよりも深い、ダークモスグリーンともいえるような深い緑色をした外套と帽子をかぶった男性、どこか鋭さとは違う気迫を感じさせる………まるでそれを越えた強い感情をあらわにしたかのような眼差しをしたその男性が名乗った名前、そしてそれと同時に明かされたクラス……それを聞き、宗谷は愕然とする他なかった。

 

“アヴェンジャー”………その意味は、“復讐者”………。

 

「アヴェンジャーのサーヴァントだって………エクストラクラスのサーヴァントが何でもう一人!!」

 

本来の聖杯戦争では呼ばれることのない、七騎のサーヴァントとは違うクラスを持つサーヴァントはルーラーの他にも存在する。

その一つが、復讐者(アヴェンジャー)………復讐という概念を具現化した、エクストラクラス。

 

「………ルーラーの次はアヴェンジャーとは………女神がマスターをしていたりなことも踏まえてこの世界での聖杯戦争は前代未聞にもほどがあるな」

 

「落ち着いてる場合じゃないって! 既に全部のサーヴァントは召喚されてこれ以上召喚されることはないはずなのに……なんで、もう一人のバーサーカーだけでなく、もう一人のランサーまで!」

 

目の前で起こっている状況に混乱を隠しきれない宗谷、既に目前には高々と名乗りを上げたアヴェンジャーのサーヴァント、エドモン・ダンテスを筆頭に後ろにはクー・フーリンたちを奇襲した彼の師匠であり新たなランサーのサーヴァント、スカサハと既に召喚されていたもう一人のバーサーカー、ランスロットの三人が並び立つようにして集結している。

 

この状況に動揺を隠せていないのは宗谷だけではないらしく、ブラン、ベールといったマスターとなった女神、そして宗谷の付き添いであるネプテューヌやアイエフもまた状況が飲み込めず呆然としているほかなかった。

 

「な、なんかいきなり横やりが文字どおりって感じに飛んできたと思ったら……何このカオス! 何この状況! 何が正しいのあいちゃん!」

 

「私に振らないでよ! ともかく宗谷、あの新しいサーヴァント、あいつ何者なの? 自分から名乗ってくれたからすぐにわかるんじゃ…」

 

「………わからねぇ」

 

「………は?」

 

アイエフの問いかけに宗谷が返した返答、それを聞いて彼女は呆気にとられた。

唯一異世界の知識に詳しい宗谷でさえも、あのサーヴァントは知りえることが出来ない………そう言っているのである。

 

「あいつは俺の知らないサーヴァントだ………そもそも、アヴェンジャーっていうクラスのサーヴァントが珍しすぎてあんまり見たことないし、なにより………となりのアニキの師匠っているサーヴァントも初見なんだよ!」

 

無理もない、彼が知っている範囲での話はせいぜいアニメ、ゲーム、小説、漫画での物語の話である。

そのどれを取っていても今目の前にいるサーヴァントのうち二人の情報は知りえることはなかった……。

 

「そんな! それじゃあ、どうやって対抗策を考えるっていうのよ!!」

 

これでは対抗のしようもない、この状況に焦りを見せ始めるアイエフ……だが、そんな中……。

 

「なんにせよ、降りかかる火の子は払うだけよ……キャスター!」

 

「ちっ……あんまり、気は進まねぇがな!!」

 

ブランがすぐさまクー・フーリンに指示を飛ばし、前に出た彼は左腕を伸ばし、目の前の空間を横薙ぎに撫でる様に動かすと、空中に特殊な記号のようなもの、ルーン文字と呼ばれる特殊な文字が浮かび上がった。

すると、途端にそのルーン文字は赤々と、まるで炎のように燃え上がり、目の前に立つ三人のサーヴァント達目がけて火球となり殺到する。

 

やられた分はやり返すと言わんばかりに繰り出された反撃の魔術、それは狙いを定めた三人に向かって、無数の火の尾を引きながら向かっていく。

 

だが………。

 

 

 

「………真正面から突き続けるのは悪い癖だ、セタンタ」

 

 

 

その火球はどういう訳か、三人に直撃する前に何かに阻まれるようにして停止し、まるで弾けるかのようにその場で四散した。

三人に動きは見えなかった、あったとするなら直前にスカサハがクー・フーリンにむけて言葉を発したくらいだがそれだけでは説明はつかない。

火球たちはなにせ、“何かに阻まれる”ようにして散ったのだから……。

 

「今のは………」

 

「………へ、さすが師匠ってことかよ、抜け目ないねぇ」

 

「誰にものを言っている、貴様にルーン魔術を教えたのが誰か……忘れたわけではあるまい……今のも、見覚えは十分にあるだろう?」

 

冷酷に、まさに槍の矛先を思わせる鋭い眼差しにクー・フーリンは苦笑いし、理解した。

今スカサハが何をしたのかを………。

 

「あれだけの時間があれば、空間に防御系魔術のルーンを固定させるのはあんたなら造作もねえわな……」

 

彼は知っている、自分の師匠故に……その存在の大きさ、抱いている強さの大きさ、そこにある自身との実力の差……それらすべてを嫌というほど理解しているからこそ、真っ先に理解してしまった。

 

 

 

――― ………相性も、格も、強さも、なにもかも、分が悪い。

 

 

 

………そんな弱音を吐き出さないように、頭の中で………彼は理解したと同時に浮かび上がらせてしまったのだ。

未知数の実力を持つサーヴァントが三人、こちらは全員を合わせれば数では圧倒できるかもしれないがそれで確実に向こうを押し切れるかとなると、そうとはいかないのがクー・フーリンにはわかっていた。

 

「………しゃあねえ、マスター、ここは一旦退かねぇとやべぇぞ、ずいぶんとたちの悪いのを召喚してくれたなったくよぉ!」

 

「え!? 逃げるの? 数はこっちが有利なのに?」

 

「お前はねじが飛んでて気づいてねぇのかもしれねぇが少なくとも師匠は相手取るのは分が悪い、何せ向こうはいくつもの神を殺してきたホンモンの化け物だからな!」

 

「………ほお、師を化け物呼ばわりとは、ずいぶんと偉くなったな? セタンタ」

 

相手の力量をまだ理解できていないアストルフォを制したクー・フーリンだが、その際にはなった言葉がスカサハを焚きつけた様だ、彼女は再び槍を構え、投擲しようと身構える。

 

だがそれを制する者がいた、彼女の目の前にはためいた深い緑の外套……。

 

「待てランサー、影の女王よ……オレ達の目的は本能のままに無差別に襲いかかるわけではない」

 

そう言って外套を翻しながら深紅の槍を構えた彼女を制した、アヴェンジャー。

彼はそういうと先程の時とは少し違う何やら落ち着いた雰囲気を纏いながら数歩前へと歩き出した。

むき出しの敵意、殺意などの鋭い感覚を感じさせない、静かでどこか気品にも似たその歩み、誰もがその様子をじっと見ることは間違いがないだろうその歩みを対面する聖杯戦争参加者のマスターたちとそのサーヴァントたちは見据える。

 

だが、同時に警戒も最大限していた。

 

それはこの歩みによって目の前の人物がこちらに近づいてくたびに放たれる、言い知れぬ気の緩みも許されない、張りつめたまた別の感覚にあった。

 

「………諸君、改めて名乗らせてもらおう、我が名はエドモン・ダンテス………クラスはアヴェンジャーだ」

 

「………なんだか、さっきはすごい堂々とした名乗りだったのに、急に紳士的になったね」

 

行動の予測がつかないその男性を前にネプテューヌが不思議そうに首を傾げる。

確かにそれはこの男に関しては言えていることだ、突然現れた時にはまるで燃え上がる炎のような印象があったのに対し、今はどこか静かな、しんと静まり返った湖面のような落ち着きを感じさせている。

読めない、まるで予測のつかない、このサーヴァントは……。

 

宗谷はこの時、そう感じながら反射的に息を飲んだ。

 

(……わからない……この人の事が、まるで分らない……今までにあった敵とかにはないタイプだ……それ以前に、名前も聞いたことがない……いったい、何の英霊なんだ)

 

この時ほど、無知だった分野をこれほど欲しがったことはないと宗谷は感じたことだろう。

 

“エドモン・ダンテス”……“復讐者”と名乗る彼のその大本、それは一体何なのか……。

 

 

「………“巌窟王”、あなたは聖杯によって呼ばれたのですね………私が抑止力として召喚されたように、あなたは……汚染された聖杯によって……」

 

 

ジャンヌがじっとエドモンを見つめながらそう問いかける、すると彼は口元に小さく笑みを浮かべると被っているポークパイハットで目元を覆うように深く被った。

 

「………そう、お前というルーラーが召喚されたのならば………当然、既に黒く染まった聖杯はお前という存在を排除するために呼ぶのだろうよ……ルーラーと相反する存在を………俺のような、復讐者を………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だがそれでいい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、再びエドモンの放つ雰囲気が変わった。

 

静かな湖面が荒くれる海原と化したかのように、エドモンの表情が、目が、彼が纏う雰囲気が、何もかもが……先程まで見せていた落ち着きが嘘のようにがらりと変化した。

口元を凶悪なまでに吊り上がらせ、目に激しい激昂の感情を溢れさせ、すべてを押し黙らせん迫力を体全体から溢れさせた彼は、その視線を………ジャンヌだけに向けた。

 

 

 

「貴様という存在、人という存在を最も怨み! 憎悪し! 激怒し! 復讐に駆られるに値する貴様という存在が! お前のその存在が! オレという絶対に相容れない存在を呼び寄せた!!」

 

 

 

彼女を指さし、言い放ったエドモン、それを見た宗谷は実感する……彼が復讐者であるという実感を……。

 

彼はまさに、復讐というものを体現した存在……復讐者、そのものだ……。

ある物を憎んで、憎んで、その怨みを晴らさんと復讐を誓った者が放つ、言い知れぬ気迫とその感情の本流を、今宗谷は肌に強く感じ、実感した。

 

こいつは今、憎悪している………俺達の前に現れた、あの白き聖なる存在である、聖処女(ジャンヌ)を……。

 

「………あなたとこうして会い見えることになるとは、思いもしませんでした………故に、止めなければなりません………その感情も、あなたという存在も、あなたをも呼び寄せた根源も」

 

「止める? ………ははっ………はははははは……! くははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

 

「………ジャンヌ、あいつは………あのアヴェンジャーはいったい、なんなんだよ」

 

声が震えていた………ジャンヌの言葉を聞き、狂ったかのように笑っている彼を見て………自身の声が震えていたのを、感じた。

わからない……彼という復讐者を、理解することが出来ない……。

理解することが出来ないからこそ、体が彼を拒絶する……言い知れぬ疑心に、自分が押しつぶされそうになるのを、宗谷は必死に耐えていた。

耐えるのが精いっぱいなほどだった。

 

「………“巌窟王 エドモン・ダンテス”………かつてフランスの地、大きな陰謀によって無罪の罪を着せられた彼は牢獄島、“イフの塔(シャトーデュフ)”と呼ばれる島に幽閉され、長い年月をかけて脱獄を果たした、脱獄者です」

 

「脱獄者………だから、アヴェンジャー………」

 

「そう、脱獄を果たした彼は自分を陥れた有力者への復讐を誓い、その人生を恩讐に捧げた………その復讐のために、己の希望となる存在を見つけながらも………復讐に駆られた、悲しき人」

 

「慈悲などいらぬ!!」

 

エドモンが激昂し、ジャンヌの言葉を薙ぎ払うかのように言い捨てた。

 

「語らずとも、知っているだろう! 貴様はオレが何者か! 故に理解しているだろう女!! オレの中に刻まれた恩讐が!! 我が身を焦がし、滾らせたこの恩讐の黒炎が!! 救いを求めず、赦しを求めず!! オレは復讐をこの身に誓った!! オレは……人類という存在における、永遠の復讐鬼なのだからな!!」

 

途端、エドモンの周囲が青白い炎に包まれ、燃え上がった。

いや、もはやその炎は青白いなんてものではない、白さを通り越した清純の欠片など、美しさなども感じさせない畏怖の炎。

彼の感情に反応するかのように燃え上がった炎が燃え広がる、目の前に自分と相容れない存在を飲み込むかのように……。

 

まずい………本当にこの男はまずい………あの三人の中で、彼は群を抜いている何かを糧に動いている。

あれを敵に回したら、自分は………この炎に………。

 

 

 

―――ビシュン!

 

 

 

その炎を前にして、底が知れない何かに飲まれかけていた己の思考を何かが引き戻した。

自分の横を通り過ぎて行って放たれた一閃、空気を切り裂く音と空間を瞬時に駆け抜けていった感覚、それが一瞬、宗谷の思考を引上げさせた。

 

 

 

「何をしているマスター……指示を出せ」

 

「あ………アーチャー………」

 

 

 

鋭く、どんな刃よりも揺るがない一点を見据えた瞳を、揺らめく炎の中に立つ復讐者に向けた赤い弓兵が自身にそう言った。

一切の怯えを見せず、曲がりも見せない、まっすぐな瞳が……その手に持った弓の狙いを定めている。

 

「これ以上にないわかりやすい状況だ、それなのに随分と弱気じゃないか……」

 

「っ………悪い……でも……」

 

「サーヴァントにとってマスターは指示を出す司令塔、それが戦意を失ってどうする……それで、何ができる」

 

だがその狙いを定めた瞳を自身の主に向けることはないまま……その視線の奥に秘められた、その心意は別の方向に向いている………。

そして、その方向がどこに向けられているのか宗谷はすぐに理解できた。

 

 

 

「………何が守れる………」

 

 

 

………その心意が、“自分”に向けられていると………。

 

 

 

彼の胸の奥に秘められている、彼が守護者であるという本質、その大本の彼の心の内がまるで自分を見定めるかのようにして、自分に狙いを定めている。

その様な気がしてならなかった。

宗谷はエドモンの放つ言い知れぬ気迫に押され、気圧されながらも見定める……目の前の……敵を……。

 

「………随分な物言いだな、無銘の守護者よ………貴様が、ある意味では人間を見限ってもおかしくはないその輪廻に捕らわれたお前が……」

 

「ほう、その言い分だと君は私のことを知っている様だな……汚染された聖杯とやらに吹きこまれたか?」

 

エミヤはそういうと先程放った矢の元となる剣をその手に生成する、魔力を練り上げ一つの刃へと構築し、それをもう片方の手に握る漆黒の弓へとつがえる、すると生成された剣の形状がさらに鋭く、刺突に適した形状へと変化し、それはさながら矢となりエミヤはそれをエドモンに向けて放った。

 

放たれた矢が空間を切り裂き、まっすぐに向っていくがそれはエドモンの右隣に控えていたランスロットが持っていた武装を盾代わりにするかのようにして妨害したことで直撃することはなかった。

黒い騎士の持っていた重火器が矢の盾となりバラバラになった、それを見たランスロットはすぐさまその手に次の武器を握る、だがそれは今まで使用していた銃器などではない……単純にして、彼にとってのもっとも扱いなれたのであろう武器だった。

 

「なるほど、それが“アロンダイト”か」

 

伝説の騎士王に仕えた13人の円卓の騎士、その中で最強を誇ったとされる騎士ランスロットが持っていたとされる剣、それが“アロンダイト”。

 

「………aaaaa………!」

 

ランスロットがその剣先を向けて唸る、そしてそれを合図にしたかのように並んでいたスカサハも長槍を構え直した。

それを見て対面していたエミヤを含める8人のサーヴァントたちもまた臨戦態勢を作る。

 

「言ったはずだ、オレ達は狩人、狩る側だとな……いや、正確にはその狩る側によって集められた“猟犬(ハウンド)”か」

 

「狩る? どういう意味よ、聖杯戦争に狩るとか狩られるとかいうのはないんじゃ」

 

「そうなったんだよ………汚染された聖杯から抜け出した哀れな聖女が、お前たち本来の聖杯戦争の参加者を呼び集めたことでな」

 

「………どういうことだ」

 

アイエフと宗谷がエドモンに問いかける、するとエドモンは今度は静かにほほ笑んで見せた。

 

「………“生贄”だ………今回のオレの共犯者は、古めかしい生贄を求めているらしいんだよ………お前たちのサーヴァントをな!」

 

エドモンがそう言い放ち8人を指さすかのように指をさす。

共犯者………これは恐らく、彼らを召喚したのであろう汚染された聖杯の意志と見込んで間違いはない。

 

「故にオレを筆頭に呼ばれたのだ、ここにいる三人が……猟犬として選ばれたのさ」

 

「何のために……わたくしたちのサーヴァントを何故横入りしてきたあなた方に狩られなければなりませんの?」

 

「決まっているだろう………その生贄こそが、今回の聖杯戦争を仕組んだ我が共犯者の………目的だからだ」

 

「サーヴァントの命が……目的、ですって……?」

 

今回の聖杯戦争に参加するにあたって、それに関する知識を得ていたベールとブランだが彼のその言葉に疑問を抱かざるを得なかった。

聖杯はあらゆる願いを叶えるほどの魔力を秘めた願望機、だがそれが意志をもって求めるのがなぜ聖杯から選別された英霊たちなのか……。

 

「さあ、小休止も終わりだ………ここからは、狩りの………時間だ!!」

 

考えさせる余地も与えないということか、エドモンが始まりを告げるかのように宣言したと同時に左右に控えていたスカサハとランスロットの二人が飛び出した。

得物を持った二人はそれぞれに狙いを定めたのか駆け出すと同時にその手に持っていた得物を振るう。

 

「………フッ!!」

 

「ちぃぃぃ!!」

 

スカサハの長槍はクー・フーリンにむけて……。

 

「AaaaaaaaaaaaaaaSaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

「ほう、余の元に来るか! 狂戦士よ!!」

 

ランスロットの剣はネロに向けて振り下ろされた。

 

「馬鹿弟子よ、まずは貴様からだ……久々の組手と思うな、儂は最初から……本気だ」

 

「あんたは、いつでも! 本気だろうが!!」

 

繰り出される深紅の矛先をクー・フーリンは持っている杖で紙一重でさばいていく。

だが、師であるスカサハの技量は優に彼を越えるということであろうか、彼が魔術師が故に持つ木の杖ではその攻撃を捌くのに活用してはいるがそれっきりだ、反撃に転じる隙はなく、一点に狙われたその攻撃を返すチャンスを得ることが出来ない様だ。

 

「くそっ! だから言ってんだよ、俺はこっちより槍の方がいいって!!」

 

「魔術師よ! お前は他の者たちを連れて下がれ! このままではこちらが不利、体勢を立て直すがよい!」

 

「簡単に言いやがってよぉ!!」

 

ランスロットと剣を切り結びながらネロがクー・フーリンに指示を出す。

荒れ狂う最強の騎士の剣撃を防ぎながらも指示を出せるのは彼女がローマ皇帝たるゆえんだろうか、堂々たる赤き炎を宿した彼女の刃が迫りくる漆黒の長剣を切り払う。

 

「奏者たちよ! 時間は我らが稼ぐ! 一度退け!!」

 

「で、でも、あんたらだけでどうにかなるのか!?」

 

「弱気になるんじゃねぇ、俺らがいるんだからよ!!」

 

ネロに迫るランスロットを振り払うように、控えていた金時が持っていた斧を構えて参戦する。

迫ってきた黒騎士を薙ぎ払うかのように振り下ろされた雷光を纏った一撃が地面を抉る。

 

直撃を避けるべく一度後退したランスロットに掛けていたサングラスをかけ直しながら金時は向き直った。

 

「よお、散々相手してんのに相手を変えるのは道理が通らねぇだろ? ブラックナイト」

 

「Aaaaaaaaaauuuuuuuuuu……!!」

 

「押し込むぞ! 余に続け!!」

 

「応よぉ!!」

 

攻めあぐねたのを見計らい一気に攻めに転じる二人、片方はこれで押さえられた……だがまだ敵はいる。

 

「キャスター下がりなさい! 私が………!」

 

「バカ野郎! あんたがどうにかできる奴じゃねぇんだ!! それにマスターがやられたら元も子もねぇんだよ!!」

 

「そんなこと言っている場合じゃない、このままではあなたが……!」

 

苦戦するクー・フーリンにブランが前に出て加勢しようとする、だがそれを止めたクー・フーリンは振り下ろされた深紅の槍を受け止めながらむしろブランに下がる様にいう。

それでも自身と共闘することを誓った者を見捨てられないという様子のブラン、その間にもスカサハの洗礼された槍さばきがクー・フーリンを追い詰めていく。

 

 

「御子殿、後ろへ!!」

 

 

だが、その間に割って入るようにして本来召喚されていたランサー、ディルムッドが二槍を振りかざしながら乱入した。

赤と黄、二振りの槍を交差させるようにして真上から振り下ろされた槍を受け止めた彼は後ろにいるクー・フーリンを庇った。

 

「ここは私が時間を稼ぎます! そのうちに御子殿達は撤退を!」

 

「お前………」

 

「我が主が先程私にそう指示しました……“決着をつけるなら私たち自身の手で、邪魔をするなら敵”と!」

 

押し込まれそうになっている状態を持ち直そうと腕に力を籠めるディルムッド、彼のマスターはどうやらこの状況をよくは思っていない様だ。

 

そしてそこに………。

 

「しゃあ!」

 

「むっ………」

 

小柄な影がディルムッドを飛び越えるようにして邪魔者をもろとも押し込まんとするスカサハに奇襲を仕掛けた、ジャックである。

ジャックが放った逆手持ちのナイフの斬撃にスカサハは一度槍を放すと後ろに跳び退った、空を切ったナイフがそのまま地面に刺さるがジャックはそれを抜くとディルムッドの前に立ち、身構える。

 

「アサシン………」

 

「おかあさんがね、向こうに聖杯があるならあっちを先にころしちゃえって」

 

「………すまない、感謝する、小さき暗殺者よ」

 

どうやら目的は違うようだが加勢をしてくれるらしいジャックにディルムッドはそういうと、彼女の横に並び立ち武器を構えた。

 

「あ、そうだ……アーチャーのますたーに言っておけって」

 

「え………」

 

突然ジャックが宗谷に向けてそう告げた、この事態に彼女のマスターは自分に何を伝えようというのか、咄嗟に宗谷は彼女に顔を向ける。

 

 

 

「えっとね………“きさまを倒すのは私だ、その前に倒れるのは許さない、歯向かって見せろ”………だって」

 

 

 

どことなく、特定の立ち位置にいるキャラのセリフのような気もする言葉に宗谷は一度違和感を感じた。

 

(………あれ、じゃあ………俺の事を知ってる………?)

 

出なければそんなことは言わない……そんな気がした。

 

ともかく、隙は何とか作れた。

クー・フーリンは状況を把握すると後ろに下がり、その場に集まったマスターたちを集める。

 

「恩に着るぜ、後輩! 退がるなら今だ!! ライダー、宝具を出せ!!」

 

「ちょっ! さすがにこの人数は定員オーバーだってば!?」

 

「構わねぇ! 乗れねぇなら紐か何かでしがみ付いてでもいい!!」

 

「あーもー!! 無理させないであげてよ!! まあいいけど!!」

 

アストルフォが愚痴を言いながらも再び“この世ならざる幻馬”を呼び出そうとする。

それを合図にしたかのようにクー・フーリンが自身のマスターであるブランを抱え上げ、アストルフォもまたベールへと手を伸ばす。

 

「きゃっ!? な、何してんだテメェ!! どこ触ってやがる!!」

 

「文句言うな! 今は少しでも離れるのが先決だ!!」

 

「マスターも早く! よくわかんないけど、ここに居たらまずいのは何となくわかるから!」

 

「え、ええ、わかりましたわ! 宗谷! ネプテューヌ! あいちゃんも早く!」

 

ベールの声を聞き、宗谷も頷くと同時に後退しようとする、だが。

 

 

「っ! マスター、走れ!!」

 

「え……うわぁっ!?」

 

「ねぷぅ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 

突然自分たちの近くに激しい衝撃が走り、その反動で宗谷は体を弾き飛ばされたかのように投げ出され、地面を転がった。

近くにいたネプテューヌとアイエフもまたそれに巻き込まれるようにして宗谷の近くに転がる。

いち早く何かに気付いき、跳び退ったエミヤは先程もっていた弓を消滅させると、転がったアイエフとネプテューヌを素早く抱え上げる。

 

「いってぇ……!」

 

「逃がすと思ったか……狙いを定めた獲物を追いかけるのが、猟犬だろうに……」

 

そこに追い縋ってきたのは、エドモンだった。

外套をはためかせこちらに近づいてきた彼はその手を宗谷達に向けている。

どうやら今の一撃は彼が放ったもののようだ、凄まじい威力……そして同時に感じた熱さとは違う、とてつもない嫌悪感……体に駆け巡った微かながらも受け付けない感覚に宗谷は僅かに身を震わせた。

 

「犬は及びじゃねぇんだよ!!」

 

そこに先に逃げる準備を整えていたクー・フーリンが杖を向けてエドモンに向けて火球を繰り出す。

だが、彼はそれを避けるような仕草を見せることなく……。

 

「………おぉぉぉぉ!!」

 

突き出した手より放った青白い炎で瞬時にそれを掻き消した。

 

本来得意とするクラスがランサーとはいえど、魔術師となった彼が放った炎をいともたやすく、あっさりと飲み込んだ彼のあの炎の威力がどれほど強力なのがまさに、炎を見るよりも明らかだった。

 

「こんなものか………なら見せてやろう、本当の炎を………恩讐に染められた炎を!」

 

エドモンが再び体から青白く揺れる恩讐の炎を噴き出す、そしてそれを足元に集まると彼は地面を蹴り………“飛んだ”。

 

「飛んだ!? しかも……早い!!」

 

足に炎を集めたエドモンは目で追うのがやっとなほどのスピードで何と空中に飛び出したのだ、空中に青白い炎の尾を引きながら空中を駆け巡るエドモン、その速さはアストルフォの宝具、“この世ならざる幻馬”に優に匹敵するほどの速さだ。

 

そしてそのままエドモンは………。

 

「むっ! ぐっ!?」

 

「がはっ!?」

 

「くっ!!」

 

「あぐっ!?」

 

宗谷達を引かせようとするために奮闘する四人を、一瞬のうちに叩き伏せてしまった。

 

そのあまりの速さに目が追い付かない程だった…。

エドモンの動きに反応しきれなかった四人の英霊たちは弾き飛ばされ、地面に体を投げ出し、倒れ込んだ。

四人を瞬時に倒したエドモンはそのまま地面に着地すると再びその手を振りかざし、今度は彼らをその身に包む恩讐の炎で焼き尽くさんとする気なのか……。

 

「そこまでです!!」

 

しかし、それを止めようとジャンヌが立ちふさがった、地面に旗を突き立てた彼女は腰に仕えた剣を抜き放った。

 

「あなたは止める……止めなくてはならない……だからこそ、私があなたを止めてみせます」

 

「………そうか………やはり相容れぬな………お前とは!!」

 

立ちはだかったジャンヌを見て、エドモンは口元に凶悪な笑みを浮かべ、拳を握った。

再び恩讐の炎が彼を包み、飛び出した彼の拳がジャンヌに迫る……だが、ジャンヌは臆さない、まっすぐに目前の復讐者を見据え、握っていた剣を構える。

 

「ジャンヌさん!!」

 

「早くいってください! この曲げられた戦いを止めるためには、あなた達の力が必要なのです! あなたという存在と、この世界を守護する女神である、あなた達が!!」

 

ジャンヌを気遣い、赤剣を取り出した宗谷にジャンヌはそう言って叱咤する、迫りくるエドモンの攻撃を回避し、手に持った剣を振るいながら……。

彼女は守ろうとしているのだ、宗谷達という存在を………残された最後の、小さな光を守ろうとするかのように……。

 

 

 

「あなた達が………この世界の“希望”なのですから!!」

 

 

 

彼女はそれを守るために、奮闘しているのだ。

強大な復讐の化身となった、彼から……その背後にいる強大な何かから、彼らを守るかのようにして……。

 

「………希望………俺達が………」

 

「ソウヤ!! 急いで!!」

 

「………ジャンヌさん!」

 

ネプテューヌに呼ばれ、宗谷は後ろに下がる前にジャンヌを呼んだ。

そして、その彼の言葉にジャンヌは振り返ることもしないが、それでもしっかりと聞こえていた。

 

 

 

「………死なないで!」

 

 

 

ただその一言を残して、宗谷は振り返りアストルフォの幻馬に飛び乗った。

それを合図にしたかのように“この世ならざる幻馬”は背に生えた翼をはためかせとてつもない速さを出しながら空を疾走する。

その際に発生した風を背に受けながら、ジャンヌは彼の言葉をしっかりとその胸に刻み付けた。

 

「………死なないで、ですか………」

 

「………無理な話だな」

 

しかし、それを否定するかのように目の前の復讐者はその恩讐の炎を滾らせる。

 

「………奴らが希望? 違うな、希望は誰かが生み出す者でも、請うものでもない………希望は待つ物だ………遠い闇の果てで小さき光を追う、それが希望という物だ………それは作り出せはしない」

 

「………アヴェンジャー、あなたは………」

 

「話しは飽きた………もういい、纏めて飲まれろ」

 

復讐者はその希望を託した聖女を否定する……自身の存在故に、その存在理由がある故に、彼女という存在を否定する。

 

だから止まることはない……彼の身が滾らせる、その恩讐の具現である炎が、その勢いを止めることはない。

 

 

 

「………我が往くは恩讐の彼方………」

 

 

 

彼の復讐が止まることはない………。

 

 

 

 

 

「“虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)”!!」

 

 

 

 

 

彼を捕らわれた最大の監獄島を止まることなく脱獄したように………彼の復讐が、止まることはない………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程までそこは数人の英霊たちが集う戦場と化していた、だが今は静寂が支配する焼け野原と化していた。

 

残されていたのは焼けこげた草と木々が残る大地とそこに残された、旗の切れ端のような布切れ……。

 

そして、その布切れを踏みにじるようにして立つ復讐者の英霊と、その近くに立ち尽くす黒い騎士と、深紅の矛先を血に濡らした槍を持つ影の女王の異名を持つ女槍使い…。

夜の空に包まれたゲイムギョウ界という異郷の地に立つその三人の傍に、この時近づくものがいた。

夜の闇に紛れるようにしてゆらりと現れたその存在はその場に立つ三人に近づく。

 

「やあ、順調のようだね……」

 

「………まだ終わりではないさ、残りを期待しろ………共犯者よ」

 

「ああ、期待しているよ……俺は最初から、この催しごとに期待しかしていないからさ」

 

夜の闇に紛れるようにして揺れる、漆黒の二つ結びの髪……そしてどこまでも虚無のような何もない、何も感じさせない瞳。

何か大切な物を欠如させたかのような空虚で不気味なまでに静かな微笑みを浮かべるその人物はエドモンたちを見据えてそういう。

 

「やはり俺との相性が良かった様だ……君をリーダーに選んだのは正解だった、この調子で頼むよ……アヴェンジャー?」

 

「………そうだな、それに敢えて答えるとするなら………オレは貴様にこう告げようか………」

 

エドモンはそういうと、その人物から目を離し先程逃走した者達が向かっていった夜空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

「………“待て、しかして希望せよ”………とな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?

次回、ジャンヌに希望を託され戦線を一時離脱した宗谷達。
あまりにも強大な敵、巌窟王の放つ気迫に押された宗谷……果たして汚染された聖杯が生贄を求める目的とは……この世界の希望となりえる彼らはどうなるのか!

次回をお楽しみに!
それでは……
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