超絶短編!ネプテューヌ おーばーえくすとらどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です。
新生活でバタバタしながらもようやく書き上げたネプえく最新話!

今回のテーマは突撃!
宗谷達は汚染された聖杯の意志の目的を知り、聖杯の元へと!

それではお楽しみください、どうぞ!


Fate/stage,9 ゲイムギョウ界、聖杯戦争勃発~突撃~

人の手によって歴史が作られる。

歩んできた時間と積み上げてきた結果、それが未来という時代においての過去に起きた出来事として残される、輝かしい栄光、人々の起こした奇跡、困難を乗り越えて物にした産物。

それらはすべて長い時間をかけて作り上げられた物、それに至るまでの過程は果てしなく長く苦労と時間をかけて作られるからこその価値がある。

 

だが、それらの栄光が、過去の積み重ねの過程の中でそれが崩れるとどうなるか?

 

言わずともわかる者達はたくさんいるのではないだろうか?

 

そう、それらすべては………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ゼロになる」

 

 

 

 

 

 

 

夜よりも深い、真黒な漆黒に覆われた空を見上げてそう言った人物がいた。

自身の立つ地面の周りに難解な文字や図形によって形どられた魔方陣が描かれており、その中央で暗闇の中、二つに結んだ怪しげな夜色の髪をなびかせるその人物は、言葉の後に、静かに口元に笑みを浮かべた。

 

「そう、ゼロ、何もかもなかったことになる………失態、事故、戦争、ちょっとした行動で突かれただけで積み上げられてきた歴史という積み木はバラバラに崩壊して、後は何も残らなくなる………長い年月と苦労を掛けて作りげられた物が、壊れるときは一瞬だ………簡単で、されど壮観だ………潔くて、清々しい………そうだろう?」

 

振り返り、問いかける。

その先にいたのは魔方陣の外で腕を組みながら木に凭れ掛かり、葉巻を噴かせていたエドモンだった。

彼は閉じていた目を静かに開けると、今は静まった小さな種火のような印象を受ける瞳をその人物に向ける。

 

「………果たしてそうかな、かつて復讐を果たさんと近い、己の生涯を台無しにした者達に復讐を誓い、そのために長い年月と苦労とやらを掛けた者もいた………もっとも、貴様にそれが理解できるかはわからないがな」

 

「分かるよ、アヴェンジャー……お前はその一瞬のために計画を練り、実行に移すのに細心の注意を払った……その結果が相手側の思惑をゼロにした……オレも同じさ」

 

不敵な笑みを浮かべて自身の手を開き、見つめるとどういうことか、何もないはずの手の平から何やら得体のしれない物がどろり、とあふれ出てきた。

泥とも汚水とも取れないような不気味なそれは手の平に溜まっていくように満ちていき、そして………ぼたり、と手の平から滑り落ちた。

 

それに反応したかのように地面に描かれていた魔方陣が赤く発光し始める。

脈動をはじめたかのように輝きを徐々に強くさせていく魔方陣の上でその人物はその手の平からもう一つ、ある物を生み出した。

どろりとしたものに包まれながらではあるが、それは形を成していた……。

 

底の方に自立のための支柱を備えた椀型の物……いうなればその形は、“杯”。

 

やがてその禍々しい何かに包まれた杯をその人物は天に捧げるかのように掲げる。

 

すると、杯は一人でに空に浮かび上がりどんどん上昇していくとやがて動きを止め、次の瞬間、まるでいきなり膨らませた風船のように“膨れ上がった”。

 

 

 

「………オレも、奴らの思惑通りにはさせないさ………オレという“黒歴史”を忘れさせはしない………オレがいる限り、ゲイムギョウ界にこれ以上の未来は作らせない………すべてをゼロにする………人理を焼却しようとした“魔術王”の真似事にもならないが………オレは破壊というもっとも単純で、簡単すぎる思考でそれを成しえてみようか……」

 

 

 

そう言った人物の真上の空には、まるでそこだけ何もない虚無のような空間が……空にぽっかりと穴が開いたかのような穴が浮かび上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、アヴェンジャーたちを召喚した聖杯を汚染した意識の目的はゲイムギョウ界の人々の闘争本能を昂らせて、戦争を起こし、所かまわずしっちゃかめっちゃかにしようってこと!?」

 

ネプテューヌがディルムッドからの説明を受けて驚嘆の声を上げた。

傷つきながらも情報を手に入れてきてくれた彼のおかげで俺達が倒すべき存在の目的がはっきりと見えた。

その意志というのは要するにこの世界を破壊しようと、そう考えているらしい。

 

「単純ではありますが、厄介なことこの上ないですわね……その意志というのは聖杯を取り込んでいるのでしょう? 爆発的な魔力を貯蔵している聖杯でそのようなことを本当にされたら……」

 

「……わたしたちが締結した条約も何もあったものじゃなくなるわ……」

 

わざわざ聖杯なんか持ち出してきただけでもとんでもない事なのに、それを使ってやることが人間同士の争いを引き起こすなんて……いったい、本当に何を考えているんだ……極端すぎて逆に理解に苦しむ。

ゲイムギョウ界という縁もゆかりもないこの世界で聖杯戦争というあまりにもスケールの大きい戦いを仕掛けておきながら……これなら、かつて“冬木”の街で“英雄王”と呼ばれた英霊が行おうとしたことの方がまだ理由として成立していると思える。 それでも正しい事かどうかと言われると正直いいこととは言えないが…。

 

ともかくこの聖杯の意志がやろうとしていることは見過ごすことはできない、人間同士が争い合う世界なんて……させてたまるか……!

 

「急いで止めよう、手遅れになる前に」

 

「ええ、賛成よ、私もできるだけバックアップはするわ、せっかく復活したんでしょ? 思う存分やってきなさい」

 

「もちろん、わたし達も行くよ! ね! ベール、ブラン!」

 

「ええ、わたくしたちの国……いえ、今はゲイムギョウ界のため、守護女神としての役目は一つ、ですわね」

 

「世界を守る……なんて、いつからそんなありきたりなこと言えるようになったのかしらね……どこかの誰かさんのせいかしら」

 

他のみんなも俺と思っていることは一緒なのか協力してくれる気は満々な様だ。

ちらりとブランが俺の方を見て皮肉気に笑ったように見えた……さっきまでブチ切れてたのに……。

でも、何はともあれ心強い仲間はいる、みんな一緒ならきっと…。

 

「ちょいと待ちな……まだ動くには焦りすぎだぜ、マスター、坊主」

 

そこにクー・フーリンが待ったをかけた。

長いからキャスターの槍ニキってことで略して“キャスニキ”と呼ぶことにするが緊張感がないとかそんなんではない。

ともかく、キャスニキは俺達に待ったをかけると空の方を見上げながら杖を地面に突き立てた。

 

すると………。

 

 

 

―――ざわざわ…。

 

 

 

遠くの方で木が風に揺られた時のような音が聞こえた気がした。

普段なら何も感じることはない音だが、辺りが静かなだけによく通って聞こえてくる。

だが、その音を聞いたキャスニキはついさっきの戦闘の時にも見た鋭い眼差しを音が聞こえてきた方向に向けた。

 

「奴らは俺達の事を狙って、もう動き始めてるみたいだぜ……今動いても取り囲まれて聖杯のある場所に辿り着く前に消耗するかくたばるかが目に見える」

 

「え………なんで、向こうがもう動いているってわかって………」

 

「………なるほど、先程まで森に仕掛けに言っていたルーン魔術か」

 

「ああ、特定の領域に踏み入ると報せてくれる類のものをあちこちの木に仕掛けてきた」

 

アーチャー先輩の言葉にキャスニキはそういうと地面に突き立てた杖を肩に担ぐ様に持ち直した。

 

「忘れんな、向こうが欲しいのは聖杯に蓄えるだけの魔力の源……その持ち主でもある俺達サーヴァントだ、もしここで動いて袋叩きに会い、俺達の内誰かがやられちまったらそれこそ向こうの思う壺だ、奴らの目的が早まる」

 

「でもでも! 相手は三人だよ? 僕達よりも強いサーヴァントだとしても取り囲まれるってことにはならないと思うけど……」

 

警戒していったのだろうキャスニキの言葉にアストルフォが割り込んで入ってきた。

彼の言う通り、俺達が直面した相手はアヴェンジャーのエドモン・ダンテス、ランサーのスカサハ、そしてバーサーカーのランスロットの三人が主な戦力として立ちふさがっている。

袋叩きというにはいささかに少ない人数に思うのは確かだ。

 

「………本当に三人ならの話だ」

 

………だが、それに対してキャスニキは静かにそう返答した。

 

「それはどういう………っ!」

 

俺がその言葉の意味を再度問いかけようとした瞬間だった。

森の奥の方から足音がこちらに向かって近づいてきていることに……。

咄嗟に視線を足音のする方へと目をやった俺は森の奥の方へとじっと目を凝らす、すると闇に包まれたこの森の中で不気味なほど静まり返ったこの空間に更なる不安を煽るかのように、奥の方の草木が揺れている。

 

がさ、がさがさ、がささ、たたた……たたたたた……。

 

いくつもの音が重なり合うようにして響いてくる……いやでも、待て? こんなにも音が重なるのは可笑しくないか?

だって、この森に………“こんなにたくさんの足音がするほど人が集まっていたか”?

 

 

 

『――――――!!』

 

 

 

暗闇の森を掻き分けて、何かが俺達の方に向かって飛び出してきた。

一体、二体、三体………そんな中途半端な人数じゃない、十、二十、どんどんとそいつらは姿を現してくる。

闇の中に紛れるような漆黒の姿、まるで影そのものが実体化したかのようなそいつらは人の物とは思えないような、冷たく、底から響いてくるような声を上げながら俺達に襲い掛かってきた。

突然の奇襲に俺達は反応速度が遅れた、いや、何よりも得体のしれない影のような何かに襲われるという突然の事態に思考が追い付かずに、反応が自信をその危機から防御するという反応を機能させなかったのか……目の前まで接近してくる黒い影が何かを振り上げるのと、俺が赤剣を取り出そうとしたのはほぼ同時だった。

動き出しが早かったのは向こうだった、このままでは俺が防御する前に向こうが武器を振り下ろすのは目に見えて明らかだ。

 

やられる……!

 

そう感じた次の瞬間、俺の目の前で何かがヒュン、という軽い音を立てて横薙ぎに通っていくのを感じた。

その後、時間差で黒い何かが霧散するのを目の当たりにした俺の目の前に立っていたのは……白と黒の刃を持つ夫婦剣を手に俺に背を向けている、アーチャー先輩だった。

 

「常に気を張っておけ、でなければ次はこうはいかないぞマスター」

 

「ご、ごめん、アーチャー先輩……助かった……でも、こいつらはなんなんだ? 人みたいに見えるけど真っ黒だし」

 

「………こいつらは“シャドウサーヴァント”だ」

 

「シャドウ……?」

 

聞きなれない単語に俺は首を傾げた。

いや、単語自体は至極単純でわかりやすいものだ、シャドウ、つまりまんま“影”という意味、それならこいつらは“影の英霊”ということだ。

ただ、通常の英霊とどう違うのか……。

 

「なに、難しく考える必要はない……奴らはできそこない、英霊に必要とされる霊基を模した紛い物だ、それこそ本来の英霊に比べて力も性能も劣るが……」

 

説明してくれるアーチャー先輩を他所に、森の奥から俺達が集まっているこの場所へと次々にシャドウサーヴァントたちが集まってきている。

その数は………もう数えるのも嫌になってきたぞ………こいつら、一体どれだけ湧いて出て来るんだよ!

 

「さすがにこの数は厄介か……」

 

「奴さんたち、どうやら英霊だけじゃなく紛い物まで使ってでも俺達を潰してぇらしいな……」

 

「囲まれた………洞窟に戻ろうにも、これじゃ袋のネズミじゃない!」

 

シャドウサーヴァントたちはそれぞれが手にしている武器と思われる物や、拳、杖などあらゆる攻撃手段の準備をしている。

かくいう俺達もそれに対して反撃の準備を整えようとするが……くそ、時間がない……! こんな所で足止めを喰らっている暇はないっていうのに!

はやく聖杯のあるところに向かって聖杯を汚染した意志を止めないと、この世界は……!

 

「来るぞ!」

 

キャスニキがそう言った瞬間、シャドウサーヴァントは我先にと言わんばかりに俺達に向かって殺到してきた。

剣のような物、槍のような物、斧のような物、棍棒のような物、握り拳、魔法の光、ありとあらゆるものが俺達に向かってきた。

 

俺はがむしゃらに赤剣を呼び出すと向かってきたシャドウサーヴァントの内一体の攻撃を凌ぎ、弾き返すと反撃に刃を横薙ぎに振るって切り裂いた。

赤剣の刃が漆黒の体に食い込み、シャドウサーヴァントは霧のように霧散した。

だが、その一体に終わらず攻撃は次々と迫ってきた、俺はそれを赤剣で何とか防ぎ反撃を繰り出しながらふと周りのみんなの事が気になり周囲を見た。

 

「こうなったら! ごり押しだよみんな!!」

 

「ストレートな作戦ですわね、でも今はそれしかないのなら!」

 

「無理やりにでも、押し通るわ……!」

 

ネプテューヌの掛け声を合図に女神の三人は正面突破で迫ってきているシャドウサーヴァントを次々に蹴散らしている。 ネプテューヌが手に持った刀を袈裟懸けに振り下ろした後、体を捻りながら後ろ回し蹴りで背後からの攻撃を弾き、刃を翻して横一閃、シャドウサーヴァントをまた一体霧散させる。

ベールも槍を振り回してシャドウサーヴァントを寄せ付けず、隙をついて正確に槍先で貫き、ブランも静かにではあるが気迫のあるハンマーによる一撃怒涛の攻撃を次々に繰り出していく。

 

「ほお、さすがはこの世界の女神と言った所か……あの戦いぶり、セイバー、ランサー、バーサーカーとしても通用しそうだな」

 

「当たり前でしょ、ネプ子たちはね今までこの世界を守ってきた正真正銘の女神なのよ」

 

ネプテューヌ達の奮闘ぶりを見て感心した様子のアーチャー先輩にアイエフがそういうと、両手に装備したカタールを突き出してシャドウサーヴァントの腹部を貫いた。

その後、そのシャドウサーヴァントに蹴りを叩きこんでカタールを抜くと、次は腰のホルスターにしまってあった銃を取り出してトリガーを引く。

 

「確かに普段はちょっとあれだけど……そこは保証するわ!」

 

アイエフも女神三人に負けずの奮闘ぶりを見せる、英霊の紛い物とはいえさすがに近代兵器の銃は少々効果が薄いようだが、正確な狙いと無駄のない連射による弾幕で一切シャドウサーヴァントたちを寄せ付けようとはしない。

 

「へえ、そうかい……ならこの先の世界の歴史で、マスターや嬢ちゃんたちが神話クラスの女神になるかもしれねぇな!」

 

そこに手を貸すかのようにしてキャスニキが手に持っていた杖を振りかざして炎で出来たルーン文字を空中に浮かび上がらせ、それを火球へと変化させてシャドウサーヴァントたちに繰り出す。

燃え盛る炎の塊は次々に直撃、爆散し、その威力をこれでもかと物語らせている。

 

「だが、そうなる前に早いところあれを何とかしない事には先はないだろうがな…」

 

それぞれがシャドウサーヴァントを相手に奮闘する中、ふとアーチャー先輩がそう言いながら空を見上げた。 目の前に向かって来ていたシャドウサーヴァントを一体蹴り飛ばした俺は何を見ているんだろうと気になり、その視線をアーチャー先輩が見ている方向と同じ方角へと向けた。

 

するとその先にある光景を見た時、俺は反射的に息を飲んだ。

というより、何が起きているのか理解が追い付かなかった。

 

真っ暗な暗闇に包まれた空の中心、そこにぽっかりと………なにもない“穴”が広がっていたのだ。

 

夜の時よりも暗い空の中でもはっきりと見て取れる、何もない、底が見えない真黒な穴……じっと見ていたら吸い込まれるんじゃないかと思うくらいのその穴は少しずつ、ゆっくりとその大きさを広げていっている。

だが、その穴をしばらく見つめていた時、俺の中であの穴が初めて見たものではないということに気が付いた。

たしか、あの穴はアーチャー先輩が重要キャラとなってた“UBW”の最後の方にも出てきた……。

 

じゃあ、あれってまさか……!

 

 

 

「あれって……もしかして、あそこから呪いの泥が溢れて来るんじゃ……!」

 

 

 

本来のFete/の物語の終盤、話の系列の中では今回のように汚染された聖杯が“人の悪性”と呼ばれるものを純粋且強力な呪いとして溢れさせることがあった。

かつて冬木という街を一夜にして火の海にしたのもそれが原因だ、あれが溢れ出もしたら本当に大変なことになってしまう、ここだけならまだ被害は少ない……でも、それがもしプラネテューヌや他の国にまで達してしまったら……下手をしたらこのゲイムギョウ界中を飲み込んでしまったら……!

 

「まずい! ネプテューヌ! みんな! 急いであそこに向かうぞ! もう時間がない!!」

 

「そうは言っても! あとからあとから出てきてキリがないよー! これ絶対無限わきとかのトラップだよ!!」

 

手遅れになる前に何とか行動しようにも、シャドウサーヴァントに周りを囲まれているこの状況ではまともに身動きも取れない。

くそ……せめて、この場を切り抜けることが出来れば……!

 

 

「ねえ、アーチャーのマスターさん」

 

 

その時、突然俺の後ろで声が聞こえた。

咄嗟に聞こえてきたその声に反応して俺は振り返ってみると、そこには腰に帯刀した剣の柄に手を当てているアストルフォの姿があった。

一見すると女の子と本当に見分けのつかない顔立ちに、何やらさっきまでとは違う表情を浮かべながら彼は俺の前に出た。

 

「時間、ないんだよね? あそこに早くいかなくちゃいけないんでしょ?」

 

「あ、あぁ……たぶん、もうあまり時間は残されてないと思う……」

 

「そっか……てことは、こいつらみんな邪魔なんだよね……」

 

俺に問いかけた後、アストルフォはそういうと腰の剣を抜いて、胸の前でその刃を垂直に立てると静かに息を吐いて、目を見開いた。

 

 

 

「みんな! ボクが何とかして道を切り開く! ここは任せて………聖杯の方に向かって!」

 

 

 

いつにもない気迫を感じさせるその一斉にシャドウサーヴァントと対峙していたみんなは一瞬、その動きを止めてアストルフォの方へと目を向けた。

だが、その言葉はあまりにも無謀で、余りにも危険な賭けになる言葉だった。

 

「そんな……ライダー! あなた、そんな無茶が許されると思っていますの! いくらあなたでもこの数をなんて……狩りに道が出来たとしてもあなた一人でなんて!」

 

「マスター、大丈夫……ボクはまがいなりにも、サーヴァント ライダー……だけどそれ以前に………ボクは騎士だから!」

 

手に持っていた剣を振るい、その切っ先を今も尚こちらに向かって来ようとしているシャドウサーヴァントたちに向ける。

銀色に輝く刃が闇の中でもきらりと輝き、屈することのない力強い輝きを放っている。 そして、その輝きは彼自身の目にも……。

 

 

 

「我が名はシャルルマーニュ十二勇士が一人、アストルフォ! 遠からん者は音にも聞け! 近くばよって目にも見よ! ボクはかの者達とこの世界の剣となりて……道を開く!!」

 

 

 

威風堂々と、己の意志を声に乗せてそう言い放ったアストルフォ、その姿は今まで見てきた彼とは違っていた。

そこにいるのは一人の騎士、誇り高き英雄の一人であるアストルフォという騎士の姿だった。

 

そう……彼も……アストルフォも英霊なんだ。 ここにいるサーヴァントとして選ばれた英霊たちと寸分たがわない、その名を人の記憶の中に刻み込み、その名を後世へと残した本物の英雄……。

どんな人物であろうと、彼という存在の本質は変わらない。

彼が戦うというのなら戦うのだろう、守ると誓ったもののために……己の剣を振るうに値するもののために……。

 

その瞳に宿している力強い意志と共に……。

 

「みんな、チャンスは一瞬だからね! 道が出来たらまっすぐ聖杯の方に!」

 

「ちょっと待てライダー、貴殿は……まさか……」

 

その強い意志に込められた覚悟を見抜いたのかディルムッドが何かを言いたげに血が滴る腹を抑えながら立ち上がった。

彼が言おうとしていることは……俺にもなんとなくわかる……。

この数をたった一人で引きつけるというのはあまりにも無謀なことだ、本当なら誰しも躊躇して一人でその役割を担うとは言えない。

だけど、自分からそう宣言したアストルフォは………つまり、その覚悟の元で名乗り出たんだろう。

 

 

………玉砕覚悟で、俺達が進む道を作ることを………。

 

 

それなのにアストルフォは不安とか、嫌そうな顔は全くと言っていいほどしていなかった。

むしろ清々しいほどの笑みを浮かべている、死ぬかもしれない………それなのに、なぜあんな風に笑えるのか……。

 

「気にしなくてもいいんだよ、だってしょうがない事だから」

 

「しょうがない……?」

 

「うん、だって……ボク、楽しそうなこの世界の事が好きだから」

 

………いっている意味がどうにも支離滅裂な気がした。

 

「まだこの世界に召喚されて長くはないし、過ごした時間もあっという間だったけど……それでもこの世界はボクがいた世界とは違う、楽しくて、愉快な物で溢れてる、そんな面白そうな世界を守ろうとしているマスターを……ボクは助けたい」

 

その言葉に秘められた心意はどこか軽くて、深く考えていないような印象だった。

 

 

「だからこそボクは戦うぞ! 何と言われても、何が何でも!! だからマスター、みんなも……頑張ってね」

 

 

だけど、そのまっすぐで純粋な心と決意は固く、頑強な物だった。

理性が蒸発していると言われているアストルフォだけど、その揺るぎない覚悟を曲げることは許されない……俺は反射的にそう感じた。

アストルフォの想い……アストルフォが好きになったこの世界を滅ぼさせはしない……何としてでも聖杯の元に辿り着く……彼の覚悟を無駄にしないためにも……!

 

俺の中での覚悟は決まった、俺はアストルフォの方をじっと見つめるとその視線に気づいたのか彼は俺の方を見ると微笑みながら……。

 

「………後は頼んだよ、赤い弓兵のマスター♪」

 

ぱちり、と可愛らしいウィンクをした。

この場面でそれは少々不釣り合いな気がするが……チクショウ、不覚にもかわいいと感じてしまった……。

って、そうじゃないそうじゃない!

俺は慌てて頭を振って思考を整えると、ふと今度はベールの方へと目を向けた。

彼の言葉を聞いてベールも少々複雑な表情を浮かべていたものの、ある決意を固めるとじっと彼の方に凛とした雰囲気の中に力強さを感じさせる目を向けた。

 

「……ライダー、マスターとして命じますわ……簡単に果てることは許しません……最後の最後まで、諦めないでくださいまし」

 

その言葉を言った瞬間、彼女の右手の甲が一瞬だけ光り輝いた。

 

あの光は……もしかして……。

 

それを聞いたアストルフォも一瞬不意を突かれたようなきょとんとした表情を浮かべたが、すぐに満面の笑みを浮かべるとこくりと頷いた。

 

ベールの想いを、“令呪”という形として受け取ったアストルフォはまるで思い残すことはなく思う存分と言いたげに天高く剣を空へと掲げた。

 

 

 

「“この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)”!!」

 

 

 

空に響き渡らせるようにその名を呼んだ。

そして、次の瞬間アストルフォの背後に再び、俺達の事も背中に乗せてくれたあの鷲と馬の体を持つ幻獣がどこからともなく姿を現した。

馬のようないななきと鷲の甲高い雄叫びが混ざり合ったような声を上げ、背中の翼を雄々しく広げた幻獣の背に素早くアストルフォが飛び乗る。

 

「さあ、行くよ! 道を切り開く!!」

 

剣の切っ先を真正面へと向け、そう言い放った。

するとその意志を感じ取ったかのように幻馬は地面を踏みしめた後、体をぐっと低く伏せ、力を溜めるような体制に入った。

 

そして、ぶわっ! とその大きく広がった翼をはためかせ…。

 

 

一人の騎士を乗せた幻馬は風をも超える速さで駆け出した。

 

 

猛烈な突風と共に、真正面にいたシャドウサーヴァントたちの陣形が次の瞬間、まるでその部分だけをえぐり取られたかのようにしてまとめて吹き飛んだ。

有無を言わせない強烈な突進、これにより俺達のいく先を阻もうとしていたシャドウサーヴァントたちの軍勢に一筋の“道”が生まれた。

 

「今だ! 全員、突っ切れ!!」

 

キャスニキの合図で全員が走り出す、身軽な英霊たちは飛ぶように……女神のみんなはその隙に女神化して空を飛び、俺はマシンヴィクトラーを呼び出し、アイエフを後ろに乗せて二人乗りでアクセルを全開にして走り出す。

止まることは許されない、アストルフォの作ってくれたチャンスを……無駄にはしない。

 

すぐさま追いかけようとしてくる影の英霊たち、だが俺達の後ろに何かが割り込むようにしてシャドウサーヴァントたちの前に立ちふさがった。

気になった俺がふと後ろに目を向けると……それは幻馬に跨り、その腕に大きなランスを携えたアストルフォだった。 彼は一度俺達の方を見ると天真爛漫な笑みをもう一度浮かべて、再びシャドウサーヴァントたちと対峙した。

その背中には大勢の敵を前にしているというのに、恐怖や不安などを一切感じさせない。

俺は引き返そうとする気持ちをぐっとこらえながらアクセルを回し続け、シャドウサーヴァントたちを振り切り、俺達はそのまま目的地であるあの空の大穴がある場所へと向かった…。

 

 

 

 

 

「………行ってくれたみたいだね………それじゃあ、令呪まで使って言われちゃったし………思う存分、大暴れしちゃおうか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとかシャドウサーヴァントたちから離れることができた俺達、目的地までまだ距離はあるがこのままなら何とかたどり着けそうだ。

ただ、気を緩めることはできない……まだどこかに俺達の邪魔をしようとする奴らが潜んでいるかもしれないからだ……。

 

そんなことを考えていると………突然俺達の目の前に一人の人影が姿を現した。

 

その人影は俺達の姿を確認するや否や、手にもっていた長い槍のような物を構える。

案の定来たってことか……!

 

「ランサー………スカサハ………!」

 

アルスターの大英雄、クー・フーリンの師匠であり影の女王と呼ばれている強力な力を秘めたサーヴァント、その実力は一度対峙した時に嫌というほど理解した。

その槍と剣を交えなくても伝わってくる、静かな殺気と命を刈り取られそうになるような気迫……。

今までの英霊の中でも一線を引いている力を秘めた彼女を突破しなければ先には進めない……。

だが、彼女が持っているのは一撃必殺の魔槍………どうやって太刀打ちすれば………。

 

「おい坊主、無理にあの人を相手しようとするな……お前は聖杯を何とかする事だけを考えとけ」

 

「え………?」

 

不意にキャスニキが俺にそう告げた、すると彼は持っていた杖を振りかざしながら近くの木の枝に飛び移り高く跳躍すると、それを振り回しながら大きく振りかぶる。

すると、次の瞬間木製だったその杖に炎が灯り、杖はさながら燃え盛る炎の槍のような姿に変わった。

 

キャスニキはそのまま恐れることなく杖を振り下ろし、スカサハに先制攻撃を仕掛ける。

 

―――ガチン!

 

二人の得物がぶつかり合い、音と共に火花が散った。

真上から振り下ろした炎の杖の一撃を深紅の槍が正面から受け止めたのだ。

二人の手にしていた得物が互いを押し返さんとぎりぎりと音を立てながらせめぎ合う、そんな最中でキャスニキは………クー・フーリンは不敵な笑みを浮かべた。

 

「……よう、師匠……悪いがあんたにゃ俺の相手をしてもらうぜ」

 

「………随分と大きく出たな………お前ひとりで私を抑えられると?」

 

「あぁ、無謀でしかねぇな……でも、今はそれでもやらなくちゃならねぇ」

 

ガキィン! と甲高い音を立てて二人が一度は慣れて距離を取る、杖を振り回しながら体勢を低くし、身構えたクー・フーリンは俺達の方を見る様子もなくすぐさま魔法の準備にかかる。

 

「あんたがそっち側につくんだったら、尚更なぁ!!」

 

杖を地面に突き立てた瞬間、スカサハの周囲を囲うように地面から巨大な蔓が伸びてきた。

普通の蔓はない、木の幹のような太さと大きさを備えている、そう簡単に切れたりすることのなさそうなまさに常識外れの植物に俺は一瞬唖然とした。

 

「坊主、このまま行け! スカサハは俺が抑える!」

 

「そんな! でも!」

 

「覚悟決めたんだろ! なら止まんじゃねぇ!! それでも男か!!」

 

地面を突き破るようにして飛び出してきたその植物を魔法で操りながら、彼は俺達の方を見ることもなく告げた。

背中を向けた状態でもはっきりと伝わるその迫力に、俺は何も返答することが出来なかった。

クー・フーリンという英雄もまた、この戦いに己の覚悟と誇りをもって挑もうとしている……ここで俺が立ち止まったらあの人のその覚悟を無駄にしてしまう……。

 

アルスターの英雄のその覚悟を信じ、俺は意を決して再度アクセルを全開にした。

 

だが、その際に気付いたことがあった。

共に前を進む仲間の内……何人かが、その場に残っていったことに……。

 

 

 

 

 

 

 

「………おいおい、先に行けっつったんだぜ………なんでここでお前らが残るんだよ」

 

「悪いがな、私は他人にまかせっきりな戦いってのは性に合わねぇんだよ」

 

「………私も、この腹に受けた傷の借りがあります故………勝手ながら、フィオナ騎士団の誇りに基づき………御子殿に助太刀させていただく」

 

「………はあ………しゃあねぇな、勝手にしやがれ………マスター、二枚目………死ぬんじゃねぇぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきの場所に残ったのはブランとディルムッドの二人だったのか……!

確かにキャスニキ一人で任せるより、複数人いた方が頼りにはなると思うけど……。

胸の奥でふつふつと湧き上がる不安を感じなが後ろをちらりと見る俺に気付いたのか、横を飛行していたネプテューヌ、パープルハートが近づいてきた。

 

「………きっと、あの二人なりの考えがあったのよ………キャスター一人に任せるよりも、自分たちが残ることで勝率を上げようと考えたんじゃないかしら」

 

「………無事でいてくれると思うか?」

 

「それは私にもわからないわ……今は信じましょう、ブランたちを……」

 

そう言って再び前へと目を向ける彼女の横顔は、どこか不安げに見えた……でも、当然だ……この戦いは誰しもが不安になるのはわかりきっている。

得体のしれない強大な力を持つ聖杯と、それによって呼び出された強力なサーヴァントという存在、それを前にどれだけ立ち向かえるか考えるだけでも不安でいっぱいになる。

だけど、それでも、前に進むんだ……例え、それが強迫概念だとしても立ち止まるわけにはいかない……何かを失うよりも何かを救えるチャンスがあるなら、俺は止まらない……止まるわけにはいかない……。

 

だから俺は、前に進むんだ。

何としても聖杯を止めるために……俺がこの世界で手に入れた大切な物を……大切なこの世界を、守るために……!

 

 

 

―――Arrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!

 

 

 

突然、獣の様な叫び声が森の中に木霊した。

マシンヴィクトラーを走らせていた俺の耳に聞こえてきたその声は、ここに来るまでにも数回聞いていた。

だからこそ、この声の持ち主が誰かもすぐに理解した。

 

俺達の目の前に漆黒の鎧に身を包んだ戦士が空から降ってくるかのような勢いで降り立ち、兜の目元の赤い燐光をギラリと光らせた。

 

「バーサーカーのお出ましという訳か……聖杯までまだ少し距離がある、マスターどうする、押し切るか?」

 

「無理やりにでも!」

 

バイクのアクセルを全開にして、俺はランスロットに正面突破を仕掛ける。

今のあいつは両手に獲物を持ってらず、今まで使っていた銃器などの飛び道具も見られなかった。

それなら正面から無理やりにでも……!

 

でも、そう思った矢先……ランスロットの右腕に黒い靄のような物が集まり、それはやがて一つの形を作りながらその姿を変えた。

それは長く、分厚い刃を持つ黒い重厚な一振りの剣だった。 その剣に俺は見覚えがある……あれもランスロットの宝具の一つ……“騎士王”と呼ばれた剣使いの英霊、かつての主君だったその王の持つ“聖剣”と起源を同じくすると言われている剣。

 

宝具の名前は………“無毀なる湖光(アロンダイト)”………。

 

「あっちも本気ってことかよ!」

 

向こうはどうあってもここを通す気はないということらしい、狂戦士となっていても英霊として呼び出された騎士の決意ということか……はたまた、ただ命令を遂行しているだけなのかは理解できないが……向こうも本気というのならそれに答える、俺達もここを通る理由があるんだ!

 

だが、俺のその意志をあざ笑うかのように敵は待ってくれなかった。

 

ランスロットの背後の方から更に無数の人影が姿を現す。

あれは………シャドウサーヴァント!? まだあんなにいたのかよ!!

 

「くそ……! これじゃ無理やりにでも突破できない!」

 

「ソウヤ! 止まらないで!」

 

突然ネプテューヌが俺にそう言った、彼女は俺の前に出ると右手に得物の刀を出現させ、その柄をしっかりと掴んだ。

すると、それを見て遅れてベールも前に躍り出ると彼女も槍を手に取り、二人並んで臨戦態勢に入った。

 

「二人とも……」

 

「質問は受け付けないわ、答えはわかりきってるもの……だから言って、私達も後から行くわ」

 

「死亡フラグにしか聞こえないセリフですけど、今はそれしか言えませんものね……そういうことですので、わたくしもありきたりなセリフを言わせてもらいますわ」

 

「あら、なら私もそれに乗ろうかしら、言ってみたかったセリフがあるのよ」

 

ベールとネプテューヌがそうやり取りをした後、口元に微笑を浮かべながら槍と刀を構え、ちらりと俺の方を見る。

そして、凛としていながらも……それでいて強い意志を感じさせる声で……。

 

 

 

「ここは私達に任せて!」

 

「先に行ってくださいまし!」

 

 

 

俺は二人の言葉を受けて、しっかりと頷いた。

誰しもがどこかで聞いたことがあるだろう、定番にしてどこか言ってみたい感のあるセリフ、だけど今はそのセリフが一番心強かった。

二人が俺の背中を押してくれるような……そんな気がしたから。

 

「ごめん、二人とも………行ってくる」

 

俺は二人にそういうと、二人は微笑みながら頷き返した。

 

「あいちゃん、ソウヤとアーチャーのサポートは任せたわ……聖杯に関する知識は二人が一番持っている……だから立ち向かえるとしたら」

 

「ええ、言われなくてもわかっているわ、任せときなさいネプ子!」

 

最後にネプテューヌとアイエフの二人が言葉を交わし、残された俺とアーチャー先輩はタイミングを合わせて前へと躍り出た。

それを見て行かせはしないと言わんばかりにランスロットとシャドウサーヴァントたちは身構える、だがその瞬間俺達の後ろに移動したベールが槍を回転させ……。

 

「貫け! シレットスピアー!!」

 

「―――っ!」

 

俺達の真正面に魔方陣を展開し、そこから長大な木で出来た槍が飛び出した。

その一撃はそのままランスロットたちのいる軍勢にまっすぐに向っていき、ランスロットは反射的にそれを回避し、シャドウサーヴァントたちは数体がそれに巻き込まれ、俺達の目の前に一筋の道が出来た。

 

「ソウヤ、今よ!」

 

「うっしゃあ!! アイエフ直伝、バイクテクニック!!」

 

俺はこのチャンスを逃すまいとマシンヴィクトラーのアクセルを最大限にまで回し、近くにあった傾斜を利用してそのままバイクの車体を空中へと跳ね上がらせた。

そして、そのままベールが作り出した木の槍の上へと着地し、その上を道にして走っていく。 先端までたどり着き、再度地面に着地した瞬間には既にランスロットを筆頭とした部隊は後ろの方だった。

 

 

 

(………みんな………行ってきます)

 

 

 

ここまでの道を繋いでくれたみんなの事が頭に浮かぶ……俺はそれを実感しながら、みんなの想いを無駄にしないために……目的地へと向かって走り続ける。

 

 

 

………聖杯まで、あと少しだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………へえ、どうやらここまで来る邪魔者がいたみたいだね………シャドウサーヴァントを使ってみたけど、案外向こうも諦めが悪いみたいだ」

 

魔方陣の上に立ちながらその人物は何やら楽し気に、だがどこか不敵に微笑を浮かべる。 そして手から溢れるどろりとしたものを魔方陣に垂らし続けながら、その顔を背後にいる呼び出した先兵の方へと向けた。

 

「じゃあ、後は任せようかな………アヴェンジャー?」

 

「………ああ、手筈通りに済ませるとしよう………」

 

こちらに向かって近づいてくるバイクのエンジン音、それを耳にしながら復讐鬼の彼は口に咥えていた煙草を地面に落とすと、それを踏みしめる。 そして、その目に再び凶悪な眼光を灯し、口元に笑みを浮かべた……。

そして、その直後二人のいる魔方陣を中心にした野原にバイクのエンジン音と共に三人の人物が笑みを浮かべる復讐鬼の前に現れた。

 

現れた三人のうち、二人の人物はバイクから降り、もう一人の人物はそのバイクの前に降り立つ。

 

赤い外套を身に纏った浅黒い男性、アーチャーのクラスを持つ彼はアヴェンジャー、エドモンの前に立つと強い意志を感じさせる鋭い瞳を向ける。 それはさながら研ぎ澄まされた刃のように、光を反射させて光る屈強な剣のような印象のその瞳はぶれることなく目前に立ちふさがる復讐鬼を見据える。

 

「………宗谷、あんた………」

 

「大丈夫………アイエフは下がってて」

 

そして、その後ろから警戒するようにしながらも前に出てきたのは先程エドモンと対峙したアーチャーのマスターとして選ばれた青年だった。

エドモンはその姿を見ると、凶悪な笑みを沈めると落ち着いた様子で青年へと目を向けた。

 

「………先程とは顔つきが違うな」

 

「………正直さっきまですげービビってたけど、いつまでもそうはしてられないって思ったからな」

 

青年、宗谷はそういうと自身のベルトに手を翳してこの世界に来て直面したいくつもの苦難を共にしてきた赤い刃を持つ愛剣、赤剣を取り出すと左右に切り払うような動作をしてからその切っ先をエドモンへと向けた。

 

「どんなに自分を許せなくても……どんなに自分の中にあるこの感情が嫌いでも……それでも俺は諦めたくない、だからこうして……無理やりにでもここに来た」

 

「………残酷なことだな………己が拒否する己の狂気に無理に抗えば、余計に己をその狂気の刃で深く傷つけるというのに……なあ、そうは思わないか……無銘の守護者……いや、抑止力と言った所か?」

 

宗谷が言い放った決意の言葉、それを聞き彼は静かに視線を隣にいるエミヤへと向けた、しかしエミヤはその言葉に対し口元にいつものように皮肉気な、ニヒルな笑みを浮かべると静かに瞼を閉じた。

 

「確かにな……自分が傷つくのをいとわず、他人を優先し、前に出ようとする……その前に自分が倒れたら意味もないというのにそれでも続けようとする……まったくそんなことを考えずにより安全に、より確実に自分が生き残る手段を択べたらどれだけ楽だろうか」

 

エドモンの問いかけに対し、半ば呆れたような雰囲気を放ちながらやれやれと首を振ったエミヤ。

だが、彼はその直後その両手に自身が得意とする武器、白と黒の対比の刃を持つ夫婦剣を魔力を使って生成する。

そして、再び瞼を開けた時………その雰囲気は再び、ガラリと変わった。

 

「正義の味方なんていうものは破綻した概念だ……だがそれでも………それでも、何かを救うという想い、それは決して破綻することはない確固たる決意だ………」

 

そして、赤剣をまっすぐに構える宗谷と背中を合わせるように並び立つと、左手に握る剣を赤剣に並べる様にまっすぐにエドモンへと向けた。

 

 

 

「この世に完全無敵の完璧な英雄など存在することはない、だがそれでも……目の前の災厄から守りたい物を守る、そのために戦う者がここにいる………なら私は………俺はそれを見届けよう………かつて、同じ理想を抱いた者として」

 

「行くぜ、アヴェンジャー………いや………せっかくだ、アーチャー先輩合わせてください」

 

「……仕方がない」

 

 

 

ここにいる二人は同じ理想を追いかけたもの、一人は今も尚その理想を目指す者。 そしてもう一人はかつてその理想を追い求めた者、形は違えど二人は同じ理想の道をたどる。

そして今、二人は並び立ち、背中を合わせ、世界を脅かす強大な災厄に立ち向かおうとしている。

 

 

 

 

 

「「行くぞ巌窟王、恩讐の炎の準備は………十分か?」」

 

 

 

 

 

二人はそう言い放ち、巌窟王に問いかける。

すると彼は、しばらく間を置いた後帽子を目深に被り、その下に少しだけ覗かせる口元に微笑を浮かべた。

 

「そうか………オレという存在を前にして貴様はそう答えを出したか………ククク………クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

突然点を仰ぎ見るほどの大きな笑い声をあげたエドモン、すると彼は己の羽織る外套をばさりと翻すと、その手をまっすぐに宗谷とエミヤの二人に向けた。

その直後、彼の手に青白い恩讐の炎が燃え上がり、帽子の下から覗く凶暴な目に呼音するかのようにその火力を大きくした。

 

 

 

「ならば来るがいい!! 貴様らの信じる物! 貴様らの信じる正義とやらを持ってして悪を討たんとするならば! まずはオレを殺して見せろ………オレという復讐鬼を………決死の覚悟でなぁ!!」

 

 

 

それを皮切りにしたかのように、彼の周囲に青白い炎が舞い踊る様に広がった。

その威圧感を前に、宗谷は押し返されそうになりながらも、地面を踏みしめ剣の柄を握る手の力を強める。

 

「………アーチャー先輩、力を………貸してくれ!」

 

「存分に使え、マスター………オレは今は、お前のサーヴァントだ」

 

隣に心強い味方がいる………心強い先輩がいる………だから自分は、まだこうして戦おうとすることが出来る。

 

守るために………今度こそ、失わないために………。

 

 

 

「ああ………超ハイレベルの、強力コンビで………ゲームスタートだ!!」

 

 

 

 




いかがでしたか?
次回、巌窟王vsクロス・ヴィクトリー&エミヤタッグ!

それぞれの戦いが激化する!

それでは次回でお会いしましょう…
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