超絶短編!ネプテューヌ おーばーえくすとらどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です。

再び投稿しました短編集、今回のテーマは“バイク”!

仮面ライダーシリーズではもはや定石と言っていいいバイクをテーマに今回は日常が待っているのか。

それではお楽しみください、どうぞ!


EX stage,2 バイクは男と特撮好きのロマン

 

 

ふとしたきっかけで現実とは異なる異世界へと迷い込んだ青年、天条 宗谷。

彼はこの世界で、ある特殊能力を手にした。

 

彼が憧れた、漫画、ラノベ、ゲーム、そして特撮の主人公達をモデルにした特殊能力、“スキルリンク”。

 

作品ごとに異なる能力を発動させる彼の特殊能力、その中の一つに一人のヒーローの力を模したスキルが存在する。

 

そのヒーローは仮面をかぶり、バイクに跨り、嵐のように現れて悪を打ち倒してきた…。

 

そう、誰もが一度は聞いたり、見たことがあるであろうヒーロー、“仮面ライダー”のことである。

 

宗谷の持つ特殊能力の中には、もちろん仮面ライダーから授かった能力、“スキル 仮面ライダー”が存在する。

 

 

その能力は、“専用のバイクを召喚する”。

 

 

発動すれば彼の愛車となる真紅のボディのバイク、“マシンヴィクトラー”が精製され、宗谷はそれに乗り颯爽と、まさに風の如く疾走することができる。

 

しかし、このスキルを始めて手に入れた時はこのマシン乗りこなすのに相当四苦八苦した。

というのも、バイク用の免許は取ったもののあまり乗っていなかったということと、そもそも金銭的な問題でバイクそのものを持っていなかったということも原因としてあげられる。

そのため、最初はうまくマシンヴィクトラーを乗りこなすことができなかったのだ。

 

 

これは、まだ彼がスキル 仮面ライダーを手に入れて間もない頃の、とある日の“日常”の一コマである。

 

 

 

 

 

 

___ブゥゥゥゥゥウウウンッ!

 

 

 

 

 

エンジン音が鳴り響き、シートに腰掛け体制を低くした彼はハンドルのアクセルを回してスピードを調節しながらコーナーを曲がるべく、体重を真ん中から右へ流しつつハンドルを切る。

 

緩やかなカーブを一台の真紅のバイクが曲がりながら駆け抜ける。

 

そのまま直線に入ったバイクは、今出ているスピードを保ちつつ、ゴールに向けてまっすぐに走り抜ける。

 

エンジン部のマフラーから響く音、回転するタイヤが車体を鉄のボディからは考えられないようなスピードで、車体を前へと進ませる。

 

 

やがて、真紅のバイクは地面に刻まれていたゴールラインを超え、それを操っていた人物はブレーキをかけてバイクのスピードを抑え、ゴールから数十mほど離れた位置に停車させた。

 

 

「………ふひぃ~」

 

緩い雰囲気を感じさせる息を吐き出しつつ、バイクに跨っていた人物が頭に被っていたシンプルなデザインのフルフェイスタイプヘルメットを脱いだ。

 

「だいぶ慣れてきたなぁ…あ~、途中で転ばないか不安だったぜ」

 

ヘルメットの中に収まっていた黒い髪を手で掻き上げる動作をした彼、宗谷は今までの緊張をほぐすように大きく胸を撫で下ろし、自身が今まで操っていたバイク、マシンヴィクトラーから降りた。

 

「やっぱり頻繁に乗っておくべきだよな、うん……まあ、乗るバイクを持ってなかったんだけど」

 

「でもブランクを取り戻すペースはなかなか早かったんじゃない?」

 

緊張の糸が切れた様子の宗谷にそう言って近づくのは深い青のコートを羽織り、長い茶髪を若葉色のリボンで横に少し纏めた少女。

プラネテューヌの女神、ネプテューヌの友人であり、プラネテューヌ諜報部の職員でもある少女、“アイエフ”である。

 

「お疲れ様、はいこれ」

 

「おう、てんきゅ」

 

彼女は宗谷にペットボトル入りのスポーツ飲料を渡す。

宗谷は例を言うとペットボトルの蓋を開けて中に入っているスポーツ飲料を喉に流し込んだ。

緊張のせいで乾いていた喉がスポーツ飲料によって潤って行く。

宗谷は満足げな表情を浮かべてペットボトルから口を離す。

 

「なにせ自分のバイクを持つなんて始めてのことだったからな、このシートにもようやく慣れてきたって感じだ」

 

「ブランクが空いていたとは言え、その乗り方すら忘れてるとは思わなかったけどね」

 

「……あれはアイエフが間違った乗り方を教えたからだろ? あの時はマジで死ぬかと思ったんだからな……」

 

「あははは…悪かったわよ、まさか本当に忘れてるなんて思わなかったんだから」

 

恨めしそうな目つきで睨んでくる宗谷にアイエフが申し訳なさそうな苦笑を浮かべる。

 

というのも、少し前に宗谷が久々にバイクに乗るための感を取り戻すためにアイエフに乗り方を教わった際に、悪ふざけで彼女が彼に教えた間違った乗り方を宗谷は疑うことなく行い、危うく事故になりかけたことがあったのだ。

 

その時は特にけが人が出ることはなかったが、かわりに“イストワールの恩人”と出会い、彼女の“予想外な秘密”を知ることになったが…。

 

「でも、こうしてちゃんとコースを貸してもらって練習したおかげで、もうだいぶ乗れるようになったじゃない、最初の時に比べるとだいぶ進歩したと思うわよ?」

 

彼女と宗谷がいるのはプラネテューヌの小さなサーキットコース。

アイエフが宗谷の練習のために知り合い頼んで少しの間使わせてもらっているのである。

 

このサーキットを使って、宗谷はアイエフと共に数日間の練習をしていたのだ。

その甲斐あってか最初こそぎこちなかったものの、僅かな期間で彼はなんとか安定した走りができるようになった。

 

「いや、さっきもカーブで転ばないか内心すっげー不安だったんだ、だからまだもう少し練習したいところかな」

 

「念入りねぇ、でもまあその心がけはいいと思うけど」

 

「千里の道も一歩から、ってな……そういえばさ」

 

宗谷はふと視線をアイエフの隣の方に向ける。

 

「アイエフっていつからバイク持ってたんだ? 運転もだいぶ慣れてるみたいだし」

 

「え? そうかしら?」

 

宗谷の視線の先にあったのは彼女がよく使用している緑色のバイクがあった。

アイエフは宗谷の言葉に首を傾げると隣に置いてあるバイクに手を掛ける。

 

「うーん、まあなんやかんやでこのバイクとも長い付き合いになるからね、諜報部に入ってから仕事で使う機会が多かったから」

 

「自分で買ったのか、そのバイク」

 

「一応はね、やすくはなかったけど」

 

彼女はそう言うとバイクのシートに跨ってハンドルの部分を撫でるように手を滑らせる。

 

「始めてこの子を見つけたのは、プラネテューヌのバイクショップだったわ、プラネテューヌでは特に目立つところのないありふれたバイクなんだけど……一目惚れってやつかしらね、すぐにこのバイクくださいって言ったのよ?」

 

その時のことを懐かしむようにアイエフが自身の愛車との出逢いを話す。

教会の中でも自身のバイクを持っているのはアイエフくらいのものだ、その愛着も人一倍あるのだろう。

 

「へぇ、なんかいいな、そういうの」

 

「ふふっ…いずれあんたにもこう言う話が出来る時が来るわよ」

 

先輩風を吹かせた返答を返すアイエフに宗谷はまだまだと言わんばかりに首を左右に振る。

 

「いや、アイエフのレベルに到達するにはまだまだかかりそうだ…」

 

「え? なんでよ?」

 

「だって……」

 

宗谷はそういうと、何処か遠い目をして言った。

 

 

 

「お手本だっつって、目の前でウィリーとかジャックナイフとか、アクロバットな運転テク見せられたらなぁ……」

 

 

 

この練習を始める前に、宗谷はアイエフにお手本と称してあるものを見せられた。

 

それはアイエフによるアクロバットな運転テクニックだったのだ。

 

前輪を上げながらバイクを走らせるウィリーと言う技や、前輪を軸にして後輪だけを浮かせるジャックナイフという技を簡単にやってのけただけでなく、ジャンプ台を使ったスタントマン顔負けのジャンプをもこなした彼女のテクニックはまさに本物だった。

 

とりあえず免許を取っただけレベルの宗谷にとってはいささかレベルが高すぎるお手本だった。

 

「あそこまでバイクを極めるとなると、そう簡単には……」

 

「あ、あれは、なんていうかその…つい、気分がよくて…!」

 

その時の事を思い出したのか、わたわたと手を振りながらアイエフは慌てた様子を見せる。

 

「それに別にあそこまで出来るようになれとは言ってないのよ? とりあえず乗れるようになれれば宗谷も満足でしょ?」

 

あくまでこの練習は宗谷がバイクに乗れるのになれるのが目標だ。

それからすると、今のレベルでももう十分に宗谷はバイクを乗りこなせてはいる。

そのため別にそこまでするのを彼に求めるつもりはアイエフにはなかった。

 

そもそも彼女のアクロバットもただカッコいいかな、と興味本意で会得したものであるため他人に強要するつもりもない。

 

しかし、宗谷は…。

 

 

「いや、アイエフ…俺はいつかあそこまでやってみせるぜ」

 

「………はぁ?」

 

 

ぐっと拳を握って宣言した。

 

「アイエフ、俺の憧れたヒーロー、仮面ライダーのことはお前にも説明したよな?」

 

「え、えぇ…そりゃあ生き生きした様子で語ってくれたわね」

 

 

「その仮面ライダーにとって、外せない大事な要素ってなんだと思う?」

 

「いや、急にそんなこと言われてもねぇ……」

 

とはいいつつも、アイエフは以前に彼から聞いた仮面ライダーについての説明を記憶の中から探り出そうとする。

すると、彼女の中である“特徴”が浮かび上がった。

 

「……もしかして、バイク?」

 

記憶の中から探り当てた、仮面ライダーの特徴の一つ。

それは、ライダー、と名前がつく要因ともなったバイクの存在だった。

 

その言葉を聞いた宗谷はこくりと強く頷いた。

 

「そう、バイクだ! 俺のこの能力のモデルになったのは仮面ライダー、彼らはみんなバイクをまるで手足のように使いこなしていた、それこそアイエフのアクロバットなんか目じゃない程にだ! ……この力を授けてくれた、“仮面ライダー1号”、“本郷 猛”さんはもしかしたら、こんな願いを込めてこのスキルを授けてくれたのかもしれない……」

 

宗谷はそういうとかなり真剣な表情を浮かべてなぜか空を見上げた。

 

 

「お前もこのマシンを使いこなしてみろって……」

 

「………あ、そう」

 

 

考えすぎではないだろうか?

 

と、アイエフは思いながらも口には出さず宗谷の話をとりあえず聞き流した。

 

彼の一番の憧れのヒーローである仮面ライダーから貰ったスキルなのだ、恐らく宗谷自身、とても嬉しい贈り物だったに違いない。

その嬉しいと言う思いの末にこのような考えにたどり着いたのだろうかのアイエフは予想を立てた。

 

「だから俺はいずれやってやるさ、アイエフのアクロバットなんか簡単ぱっと出来るようにな!」

 

「……まあ、怪我しない程度にね? 怪我しても私、責任だけは持たないから」

 

まるで無茶なスタントに挑むスタントマンのような心境を垣間見たような気がするアイエフは一応、忠告だけはしておく。

 

一応彼もそこまで無理はしないとは思うが……万が一のためだ。

 

すると、

 

 

 

「おーい、あいちゃ~ん! ソウヤ~! 頑張ってる~?」

 

 

 

サーキットの入り口から薄い紫の髪に十字キー型の髪飾りをつけた少女が二人の名前を呼びながら駆け寄ってきた。

この国の女神パープルハートこと、ネプテューヌである。

 

「ネプ子? あんたどうしてここに?」

 

「いやぁ、それがさー、いーすんが何時もの如くかくかくしかじかで…」

 

「……ようするに何時もの如く、サボっているのを見られて叱られて逃げてきたってことね」

 

「ぴんぽんぴんぽーん! さすが私の大親友のあいちゃんだね!私のことわかってくれてるよ、まさに以心伝心だね!」

 

女神なのに、怠け癖のある彼女はどうやらイストワールの説教から逃れてここに来たようだ。

今に始まったことではないため、というよりよくあることなのですでに予想はついていた。

アイエフはやれやれと息を吐く。

 

「なにが以心伝心よ、後でイストワール様に怒られても知らないからね?」

 

「大丈夫、大丈夫、気にしなくてもいいって」

 

サボり癖にすっかり慣れている当のネプテューヌは余裕綽々と言いた気な態度を見せるが…。

 

(……これは後でいーすんの説教がフルスロットルだな……)

 

正座しているネプテューヌにイストワールがガミガミと説教している様子が容易に想像できた宗谷は彼女に憐れみにも似た感情を抱いた…。

 

そんなことを考えているとは知らず、ネプテューヌはちらりと彼の後ろにあるマシンヴィクトラーに目を向ける。

 

「それで、ソウヤはもうだいぶ乗れるようになったの?」

 

「ん? まあな、だいぶ慣れてきた」

 

彼女の問いかけに得意気に答えた宗谷、何気に自分の進歩が誇らしいようだ。

 

「最初はかなりぎこちなかったってあいちゃんが言ってたからね、進歩したようで何よりだよ」

 

「あぁ、あの時の俺とは違うぜ?」

 

「そりゃあ、ヒーローを目指してます! って自己紹介した人がヒーローにとっての重要要素のひとつでもあるバイクに乗れないのは流石にやばいもんね~」

 

「お、おう……そ、そうだよ、な」

 

まさかかつて自分が言った自己紹介のことを交えられた発言が来るとは予想していなかったのか、宗谷は得意気な態度から苦笑いを浮かべる。

 

「ま、まあなにせ、バイクは男のロマンでもあるしな! 手足のように乗りこなしてこそってもんだぜ」

 

「やっと慣れて来たって感じだけどね……あ、そうだ」

 

すると、アイエフが何かを思い出したのか視線を宗谷からネプテューヌへと移す。

 

 

 

「ネプ子、あんたも運転してみる? 私のバイク貸してあげるから」

 

「ねぷ?」

 

「………え?」

 

 

 

今彼女はなんと言ったのか、宗谷はきょとんとしたままその場でフリーズしてしまった。

 

聞き間違いでなければ彼女はネプテューヌに、「運転してみる?」 と聞いたのだ。

 

「……いやいやいや、待て待てアイエフ、ネプテューヌに運転すすめるって…そもそもこいつバイクに乗れるかどうか……」

 

ネプテューヌの見た目はざっと見ても中学生くらいだ、宗谷の世界の一般常識で考えると中学生が免許証を獲得することはできない。

仮に乗っていたとしても、警察のお世話になるのが末の山である。

 

仮に経験があるとしても、ゲームで運転したとかが限界だろうと思った宗谷は取り返しのつかないことになる前にアイエフを止めようとするが……。

 

「いいの!? なにしようか決めてなかったから、せっかくだし乗っちゃおうかな!」

 

「えぇ!? ノリノリかよ!?」

 

ネプテューヌは目を輝かせた様子でアイエフのバイクに近づくとアイエフと交代する形でバイクのハンドルに手をかけた。

 

「いやいやいやまずいって! アイエフ、下手したらネプテューヌもバイクもとんでもないことになるぞ!?」

 

大惨事になる前に宗谷が慌てて止めようとするが…。

 

 

「まあまあ、見てなさいよ心配しなくてもいいから」

 

 

アイエフは心配など皆無といった様子である。

いったいどうしたのかと宗谷が反対に心配が満ち溢れた表情を浮かべる。

 

そんな二人のやりとりをよそにひょいっとバイクのシートに飛び乗ったネプテューヌは…。

 

 

「よーし! 久々にかっ飛ばすよ~!」

 

 

かなり意気込んだ様子を見せた後、彼女の体が光に包まれる。

この光は、彼女が女神としてのもう一つの姿になる兆候のような物、いわゆる“変身”の光である。

 

女神は国民からの信仰、“シェア”を“シェアクリスタル”と呼ばれる特殊な石を通して女神の力の源となる“シェアエナジー”へと変換する。

そして、そのシェアエナジーを基に女神は自身の力を増加させてその姿すらも変えることができるのだ。

 

彼女を包みこんだシェアエナジーの光が次第に小さくなっていく。

そして、光が収まるとそこにはさっきまでのネプテューヌとしての姿とは違った、彼女の“もう一つの姿”がアイエフのバイクのシートに鎮座していた。

 

 

「お言葉に甘えて久々に楽しませて貰うわ、あいちゃん」

 

 

さっきまでの子どもっぽい口調から一転、大人びた口調と声色に変化した彼女の姿はガラリと変わっていた。

紫の髪を二本の三つ編みに纏め、誰もが見とれるであろう大人っぽい顔立ちや体付きに変化した彼女のこの姿こそ…。

 

女神としての彼女の姿、“パープルハート”である。

 

「ええ、楽しんでいってらっしゃい」

 

笑顔で彼女を見送るように手を振ったアイエフに微笑みを返した後、いつもと体を覆っているボディスーツ、“プロセッサユニット”の背中のウィングを解除した状態のパープルハートはバイクのスタンドを外して片足を地に付け、エンジンを蒸す。

 

そして、地を蹴った瞬間にアクセルを回して勢いよくバイクを走らせた。

 

「い、行っちゃったよ………女神化とは考えてなかったけど……本当に大丈夫なのか?」

 

「だから、心配いらないわよ、なんせネプ子は…女神なんだから」

 

驚き半分、心配半分と言いたげな宗谷だがアイエフはそう返す。

 

そして、アイエフの考え通りになったのか、バイクに跨って走りだしたパープルハートはかなりのスピードを出してサーキットのコースを走り抜けて行った。

唸るエンジン音に合わせるようにバイクがスピードを上げていく。

しばらくすると、カーブに差し掛かった。

体重を乗せるタイミングを間違えばコースアウトしたり最悪転倒する可能性がある、宗谷も最初は不安に感じていたポイントだ。

 

「……っ!」

 

しかし、パープルハートは難なくカーブを見事なドリフトで曲がって見せた。

タイミングも体重の乗せ具合も絶妙だ、素人ではあのスピードでああも見事な曲線を描くことは出来ないだろう。

 

しかも、それだけではない。

その後のSの字にカーブを描いたコースや、ほぼ直角の角度を描いたカーブをも楽々と曲がってみせたパープルハートはそのまま風の如くサーキットを駆け抜け、あっという間に終盤のコースまで辿り着いた。

 

素人とは思えない手慣れた運転テクニックを見せるパープルハート、その姿に宗谷はいつの間にか魅入ってしまっていた。

 

しかし、ここで彼はあることに気づいた。

 

「………って、あれ!? いつの間にかジャンプ台が置かれてるんだけど!?」

 

なんとコースの終盤に大きなジャンプ台が設置されていたのだ。

 

「私が頼んだのよ、あいつこう言うの好きだから」

 

「いや好きって言ったって流石にあれは…!」

 

と言っている間に、パープルハートはもうジャンプ台の目の前まで近づいていた。

ここまで来たらすぐに止まることは出来ない、スピードを急に抑えることは出来ない。

 

そして、対に彼女のバイクのタイヤがジャンプ台の上に乗り…。

 

彼女を乗せたバイクはそのままジャンプ台を猛スピードで駆け上がっていき、鉄製のボディと彼女の体を宙へと舞い上がらせた。

 

パープルハートに焦りのような表情は見えない、それどころか…。

 

 

「はぁっ!」

 

 

なんと、ジャンプして最も高い位置に到達した瞬間、バイクごと後ろに反時計回りに一回転した。

 

そのまま引力に引き寄せられ、地面に落下していくバイクとパープルハートは、そのまま難なく着地し見事にゴール、宗谷達の前で、キキィ、とタイヤを鳴らしながらドリフトし停車した。

 

「……ふぅ、やっぱりたまにはいいわね」

 

「お疲れ様、ネプ子」

 

「………」

 

満ち足りた顔でバイクから降りたパープルハート。

そんな彼女のプロ顔負けな運転テクニックを目の当たりにした宗谷は呆然とした様子でパープルハートを見つめていた。

 

「ソウヤ、どうかしたの?」

 

「い、いや…ネプテューヌ、お前あんな運転テク…どうやって覚えたんだよ…どう見ても素人の走りじゃなかったぞ…?」

 

「…どうって言われても、教習所で基礎を習って、後は自己流よ?、」

 

「教習所!?」

 

ネプテューヌのまさかの発言に驚いた宗谷、そんな彼にパープルハートはこくりと首肯するとある物を取り出し、彼にみせた。

 

「これが、その証明よ」

 

「こ、これって……ネプテューヌの運転免許!?」

 

なんとそれは運転免許証だった。

カラーリングは彼女に合わせて紫色に施されており、しっかりと彼女の写真が添付されている。

パープルハートとしての姿の写真だが、これは間違いなく、宗谷もこちらの世界で改めて手に入れた運転免許証そのものだった。

 

「……本物、だよなこれ」

 

「ええ、正真正銘、私の免許証よ」

 

「まさかネプテューヌが免許を持っていたなんて……普通ならあり得ないだろ」

 

「あら、失礼しちゃうわね? 言っておくけど、変身前の小さい私が子どもっぽいから免許を持ってないって思ってたのかもしれないけど、私達女神にとって年齢なんてあってないような物なのよ? 普通に考えたら私達はソウヤよりも遥かに年上なんだから、免許くらい取れて当然よ」

 

空いた口が塞がらないと言った様子で彼女の免許証を見つめる宗谷にパープルハートが説明する。

 

確かに彼女達女神は人間の年齢と言う概念が存在しない。

成長スピードが遥かに遅いのか、そもそも成長が停止してるのか、どちらかについては宗谷は知らないが……確かにそれなら取れてもおかしくないのでは、と思えてしまう。

 

特にパープルハートに変身した今なら見た目的にも問題はないだろうし…。

 

「まあ、それでも一応乗り物に乗る時は変身しておくようにはしてるのだけど……世間的な意味もあるし、何より小さい私の体だとハンドルの大きさに合わないのよ」

 

「はぁ…さいでっか…」

 

すでに何回か車乗の経験があるかのようなパープルハートの発言に宗谷は複雑な顔を浮かべていた。

 

まさかネプテューヌにこんなスキルが備わっていたとは思ってもみなかったからだ。

 

(……なんか、負けた気がする)

 

彼女に先をこされたようで、妙な悔しさを感じてしまう宗谷。

なにせ宗谷はまだあれだけのテクニックは持っていないのだから。

今の自分と彼女では差がありすぎるようで、さっき自分で言った「バイクは男の浪漫」と言う言葉が恥ずかしく思えてきた。

言った本人のレベルがやっと乗れるようになったくらいなのだからなおさらである。

 

それに、どう言うわけであろうか…。

 

 

(……ネプテューヌ……女神化してバイクに乗ってると、妙にカッコ良く見えてくるな)

 

 

大人びた風貌に変化したのもあいまって、今の彼女の姿にバイクはかなり似合っていた。

 

それに見あった服装をすればかなり美系の女性ライダーそのものだ。

そのせいか、男の自分よりもさらに似合っているように見えてきてしまった。

 

「男のロマンって、いったい……」

 

「 宗谷、どうかしたの? そんなに落ち込んで」

 

「あ、別に……気にしないでくれ」

 

宗谷はここまで運転できる彼女に大見得を切ってあんなことを言っていた自分が恥ずかしくて仕方なくなってしまった。

彼は顔を片手で隠して俯く。

 

 

 

___ブルルルルルルルルルルルッ!

 

 

 

「……ん? この音は?」

 

 

突然、どこからともなくさっきから聞いていたせいですっかり聞き覚えてしまった音が鳴り響いてきた。

宗谷は一応後ろのマシンヴィクトラーのエンジンが止まってることを確認してから、ネプテューヌが跨っているアイエフのバイクに視線を移す。

 

二人のバイクはエンジンを停止しているためエンジン音が聞こえることはない。

 

では、この音は…?

 

気になった宗谷達が辺りを見回すと…。

 

「……あら? 誰か入ってきたみたいね」

 

パープルハートがサーキットの入り口から一台のバイクが入ってきたことに気づいた。

 

正面に備えられた一本角のような装飾に、屈強で強固なイメージを感じる黒に所々に見られる迷彩柄が特徴的なボディに車体の後ろの方に備えられた大きなボックスが目を引くバイクはエンジンを鳴らしながら宗谷達に近づいてくる。

 

一本角のバイクに跨っている人物は黒のライダースジャケットにフルフェイスヘルメットをかぶっていて顔は見えない。

 

そして、突然現れた謎のライダーは三人の近くにまで来るとバイクを止め、三人の方にヘルメットで包まれた顔を向けた。

 

「へぇ、本当に練習してたのね」

 

(女の人の声…? ……あれ、でもこの声なんか聞き覚えが………)

 

ヘルメット越しに聞こえて来たくぐもった声に宗谷はなぜか聞き覚えを感じた。

彼が首を傾げると、黒のライダーは顔を包んでいたヘルメットに手をかけ、上に持ち上げて隠していた顔を露わにした。

 

ヘルメットの下に収められていた、“銀色の髪”が広がる。

 

そして、露わになった素顔を見た瞬間、宗谷は驚きのあまり息を飲んだ。

 

 

「の、ノワール!?」

 

「こんにちわ宗谷、様子を見に来てあげたわよ」

 

 

突然現れた黒のライダー、その正体はプラネテューヌの隣にある国、ラスティションの女神、“ノワール”が女神化した姿、“ブラックハート”だった。

 

女神化した時に着るプロセッサユニットの代わりにライダースジャケットに身を包んだブラックハートは宗谷に挨拶をすると自分が乗っていたバイクから下りる。

 

「ノワール、どうしてプラネテューヌに?」

 

「ちょっと前から宗谷がここでバイクの練習をしてるってユニから聞いて様子を見に来たのよ、ついでに新しくうちで開発された新車の試乗をしてみたかったしね」

 

ブラックハートひそういうと自分が乗っていたバイクから下りてその場にいた三人に車体全体が見えるような位置に移動した。

 

 

 

「ラスティションで今最も利用されているバイクシリーズ、“Psシリーズ”の新型、その名も“Ps-Ⅳ MTG パニッシュド・DD”よ!」

 

 

 

自信満々と言いたげに胸を張って自分が駆っていたバイクの車種について説明するブラックハート。

 

「ボディパーツには特殊合金を使用していてどんな状況下でも傷つくことのない頑丈性、そしてどんな悪路にも対応できるタイヤのタフさ、さらに一番の特徴は何と言ってもバイクの後部に取り付けられたフルトン気球機能!これがあればいざという時にバイクを指定した場所に送ることができるという優れものよ!」

 

意気揚々と自分が乗って来たバイクの説明を始めるブラックハート、よほど自信があるようだ。

だが、確かにラスティションは産業技術が発達している国のため、その技術を使ったバイクとなれば自信があって当然と言えるだろう。

 

「いや、すごいのはわかったけどさ……それよりも」

 

しかし、宗谷はこの時、彼女が持ってきたバイクの性能よりもあることが気になっていた……。

 

それは…。

 

 

「ノワール……まさかお前も免許証持ってるのか?」

 

「え? なによ、やぶからぼうに、ちゃんと持ってるわよ免許証くらい、国の象徴である女神が無免許運転なんてするわけないでしょ」

 

 

そういうと彼女はネプテューヌと同じように黒のカラーリングが施され、女神化した彼女自身の姿を写した写真がついた免許証を見せた。

 

やはり、彼女も持っていたようだ。

 

「……まさかノワールまで持っているとは……」

 

既に慣れた様子で運転してたのを見る限り、おそらく彼女も運転には慣れているのだろう。

 

 

さらには……。

 

 

 

___ブルゥゥゥゥゥウン!

 

 

 

またもう一台が、サーキットの中に入ってきた。

今度は白のボディに前面がイカの頭のように尖っていて、マフラーが左右に一つずつついたタイプのバイクだ。

 

「また誰か来たみたいね?」

 

「この流れってもしかして…」

 

宗谷は新たに現れたバイクを見て、ある予感が頭に浮かんだ。

免許証を持っていたネプテューヌとノワール、女神の予想外の事実が発覚していく中……もし、この流れで次にサーキットに来るとするなら次は…。

 

 

「なんだよ、ノワールが先に来てたのかよ」

 

「む……なによブラン、先に来てちゃ悪いの?」

 

「やっぱりか!? やっぱりブランだったのか!」

 

 

予想は的中してしまった。

 

新たに現れた白のバイクのライダーは雪降る北国、“ルウィー”の女神“ホワイトハート”こと“ブラン”だった。

 

例によって女神化してバイクに乗って来た彼女はバイクから下りると被っていたハーフタイプヘルメットを脱いで宗谷達の方に視線を向ける。

 

「ブラン、あなたも宗谷の様子を見に?」

 

パープルハートが問いかけるとホワイトハートは首肯した。

 

「まあな、そんなところだ、ちょうど仕事に余裕ができたからなんとなくな……」

 

「そのバイクは? あんまり見たことないタイプだけど……そっちも新型のバイクなの?」

 

「いや、確かに一応新型っちゃあ新型だけど一般販売のやつとは違う」

 

「え? …どういうことよ?」

 

彼女が乗って来たバイクが気になる様子のブラックハートの問いにホワイトハートは口元に笑みを浮かべると彼女のバイクのシートに手を置いた。

 

 

 

「こいつはルウィーの警備兵用に開発したバイク、“W11-U S.P.トゥーン”だ」

 

「警備兵用? パトロールとかを想定して作ったってこと?」

 

「ああ、こいつは犯罪者を追跡するために開発したバイクなんだ、先端の部分にはペイント弾を取り付けてあるから追跡にも役立つし、走行も安定していて走りやすい。それになによりデザインがイカすだろ?」

 

 

 

先程のブラックハートのようにバイクの説明をしながら得意げにサムズアップを見せるホワイトハート。

 

しかし、なぜ一般用ではないバイクに乗っていたのか…。

 

「新開発されたこいつのテストついでにここに来たんだけどよ……しばらく宗谷にも会ってなかったし、せっかくだから挨拶ついでにって教会に行ったらここにいるってネプギアから聞いてな、それでここに来たってわけだ」

 

簡潔にここに来るまでの経緯を話したホワイトハート、どうやら直々にテストを受けたついでにここに立ち寄ったそうだ。

ルウィーからプラネテューヌまで距離はそれなりにあるはずなのに、長距離走行とはなかなか経験がないと大変そうだ。

 

しかし、宗谷の中ではそれよりも重要なことが頭に浮かんでいた。

 

もう確認せずとも彼女もバイクに乗って来たということは“そういうこと”だろう…。

 

 

「ブランまでもが免許を持っていたなんて………ていうか、ブランまで来たってことは……」

 

 

 

 

「あらあら、みなさんお揃いですのね」

 

 

 

___やっぱりか!

 

だいたい予想はしていたが、聞こえてきた声と、そしてその声に紛れて聞こえるエンジン音に反応した宗谷。

 

彼はすぐさま声のした方に振り返ると…。

 

 

 

___ドルルルルルルルルルルルルル!

 

「お久しぶりですわ♪」

 

「やっぱりベールも乗れたのねーーー!! ていうか乗ってるバイクデカッ!?」

 

 

 

そこにはここから海を越えた大陸にある国、リーンボックスを収める女神、“ベール”こと“グリーンハート”が宗谷のマシンヴィクトラーやネプテューヌ達のバイクよりもはるかに大きい大型バイクに乗っていた。

 

しかも、服装が何時ものプロセッサユニットとは違い、彼女の豊満な身体のラインがくっきり浮き出るタイプのライダーススーツという本格仕様だ。

 

(……まるで峰不◯子だな……))

 

その身体つきに合わせて身に纏ったスーツのせいもあってかまるでどこぞの大怪盗の三世の仲間である女泥棒を宗谷は思い出してしまった。

 

「ベールまで来たの?」

 

「ええ、たまにはツーリングで気分転換でもしようかと思いましたの、それにネプギアちゃんから宗谷がバイクの練習をしているということも、聞いていたので」

 

ブラックハートとホワイトハートの二人と似たような返答を返すグリーンハート。

というか、海を越えてまでバイクでくるなんて…もはや、まだ乗れない自分に対するあてつけではないだろうか、と宗谷は思ってしまった。

 

「……つーか、なんだよおめーのそのでっけーバイクは?」

 

「これですの? これは私がショップで購入したものですわ、やはり大きいのに悪いものはありませんから♪」

 

「……お前、今さりげなく胸を強調していったろ?」

 

「はてなんのことでしょう、覚えがありませんわー」

 

「棒読みで言っても説得力ねーんだよ!」

 

彼女は特にバイクについての説明をすることはなかったが自分の自慢の一つでもある胸を強調した発言にこの中で一番そのことを気にしているホワイトハートが食ってかかる。

 

 

「まったく、カリカリしてるとそのまま事故ってしまいますわよ? バイクに乗る時は風になったように豊かな気持ちを持たないと……そう、私の胸のように大きくて柔らかな」

 

「ハッキリ言ってんじゃねーか!! テメェの胸なんてせいぜいエアバックの代わりくらいの価値だろ! 安全運転で行けば使う機会なんてねーんだよ!」

 

「まあまあブラン、別に大きくても小さくてもいいじゃない? 二人ともそれなりに運転はうまいんだし、ね?」

 

「まあ、ドライバーの実力もあるけどやっぱり性能も重要だと私は思うけどね~、誰かさんみたいにデザインがいいとか、大きさとかじゃなくて、やっぱり重要なのはどれだけ運転しやすいか、どれだけ性能がいいかよ」

 

 

四女神が勢ぞろいして、一気に賑やかになったサーキット。

鳴り響くエンジン音と四人の談笑する声を聞きながら宗谷はじっと彼女達のことを見つめる。

 

「……なあ、アイエフ」

 

「なに? どうかした?」

 

「俺さっきさ、バイクは男のロマンって言ったけどさ……」

 

そこまで口にした宗谷はそれぞれのバイクの近くで談笑する女神達の姿を順に眺めていく。

 

大人びたクールな印象にバイクがよく映えるパープルハート。

 

勝気な印象に力強い見た目のバイクがよく似合うブラックハート。

 

小柄だがそれに合わせたかのようにデザインに独特差を持たせたバイクがマッチしているホワイトハート。

 

年上の女性の魅力にさらにバイクという乗り物に乗ることで印象的なかっこよさがプラスされたグリーンハート。

 

彼女達の姿は……。

 

 

 

 

「………今のあいつらの前ではこの言葉が霞んで見えてしまうんだ」

 

「……まあ、似合う男になれるように頑張りなさい、手伝ってあげるから」

 

 

 

 

とても、バイクに似合っていたのだった。

 

 

 

 

その後、彼女達に負けないように宗谷はバイクの練習に力を入れて、さらにバイクの経験がある女神達の教えもあったおかげで着実に実力を伸ばしていったのだった。




いかがでしたか?

ドライブ本編でチェイスが免許証を取っていた時になんとなく思いついていたネタです。
女神って、年齢という概念が存在しないようなもんだし……もしかしたら免許証取れるんじゃね?
という妄想からこのお話が出来ました(笑)
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