超絶短編!ネプテューヌ おーばーえくすとらどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です。

今回の短編は、ネプおばで重要な役を担う、オリジナルキャラ達、古代女神御一行が主役です!

彼女たちの日常はどんなことになっているのか!

“生活”をテーマに、彼女たちの朝の様子をちょっと覗いてみましょう!

それではお楽しみください、どうぞ。


EX stage,3 古代女神生活事情 〜朝の巻〜

 

 

 

___“古代女神”

 

 

 

 

 

 

現代のゲイムギョウ界の遥か昔、まだこの世界ができたばかりの時代、“ゲイムギョウ界創世記”。

 

この時代にも、四人の女神が存在し、四つの国を統治していた。

 

しかし、この時の女神達は現代とは違いゲイムギョウ界の覇権を手にするために戦いに身を投じ、長い時を争いの中で過ごしてきた。

互いに敵とみなし、互いに憎しみあい、互いに争いあった。

 

長い戦いの中で、四つの国は衰退していき、始まったばかりのゲイムギョウ界は長きに渡る“守護女神戦争”の影響で滅亡の危機に瀕していた。

 

 

しかし、その戦いに終止符を打ち込む者が現れた。

 

 

女神に匹敵する力を持ち、争いを続ける女神達を次元の彼方にまで飛ばし、この争いを止めたという。

 

魔神と呼ばれる者によって、争いを続ける女神達は消え去った…。

 

 

しかし、それはあくまで……そう言われているだけの話。

 

本当を真実を知る者は現在のゲイムギョウ界にはいないだろう……。

 

少なくとも、当事者である“彼ら”を除いて…。

 

 

 

これは、かつて“古代女神”と呼ばれた少女達と、“魔神”の名を持つ一人の男が送っている、“日常”の一コマである。

 

 

 

 

「………ぅ…ん…」

 

軽く、とても柔らかい布団を身体にかけて寝ていた少女がまだ眠気が残っている状態の身体を動かして寝返りをうつ。

 

ぬいぐるみやどこか柔らかな雰囲気を感じさせる内装が施されているこの部屋の主は締め切ったカーテンによって薄暗いままの部屋に置いてある一人用のベッドの上にいた。

 

時刻はもうそろそろ人が起きてもいい時間帯、それを彼女の体内時計は理解していたのか自然と彼女の身体が覚醒へと導かれていった。

 

「………んぅ………ふみゅう…」

 

寝ぼけ眼で起き上がったのは、肩より下まで伸びたまるで百合の花のように白く美しい髪を持った可憐で、それでいて触れれば散ってしまいそうな儚げな印象を持った少女だった。

 

少女はまだ眠気が残っているらしい目をこすりながら部屋に設置された壁掛け時計へと目を向ける。

 

「………起きなくちゃ………」

 

時刻を確認した少女は掛け布団を外してベッドから足を下ろし、ゆっくりと立ち上がった。

 

 

彼女の名は、“シンシア”…。

 

 

かつてゲイムギョウ界創世記に存在した四つの国の一つ、“セサン”を統治していた、“古代女神”の一人である。

 

と言っても、それはもはやかつての話、今の彼女は女神としての力の大部分を失っている、“元女神”なのだから。

 

 

「……お風呂……入ろう」

 

 

シンシアの朝は朝風呂から始まる。

朝の眠気覚ましも兼ねて、彼女は朝から入浴することを日課にしている。

いつものように彼女はクローゼットへ向かうと中から着替えのお気に入りの空色のエプロンドレスと黒猫のバックプリントが施された下着を取り出して、いつもの習慣にしたがってお風呂場に向かうべくドアの方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ふぅ」

 

四季折々、桜と青葉と紅葉と雪を枝に乗せた四本の木に囲まれた幻想的な空間に包まれた浴場で、シンシアは一人シャワーを浴びていた。

 

脱衣所でパジャマと下着を脱ぎ、裸になったシンシアは風呂用の椅子に腰掛けて頭から適度な温度に調整された温水をかぶる。

 

シャワーから出る、程よく温かいお湯が彼女の白い髪から透き通るような白い肌に控えめだが適度に発育してる彼女の身体を水滴が伝っていく。

 

流れていくお湯とともにさっきまで残っていた眠気が流れていく。

 

やはり朝のシャワーはとても気持ちいい、優しく眠気が流れていくのは安心感と心地よさを感じられる。

シンシアは一通りシャワーで身体を流し終えた後、蛇口を捻ってお湯を止める。

 

___く〜……。

 

「……あぅ……」

 

シャワーを止めると同時に、空腹を知らせる音と感覚を彼女はようやく自覚した。

そろそろ朝ごはんの時間だろうか、そんなことを考えたシンシアは椅子から立ち上がると脱衣所の方へと戻る。

 

カラカラカラと音をたてながら脱衣所へと繋がるスライドドアを開けて、中に戻ろうとシンシアが足を踏み出すと…。

 

 

 

 

ーポニョン。

 

「わぷっ…!」

 

 

 

不意に自分の顔面を暖かくこの上なく柔らかい感触が包み込んだ。

顔面にぶつかった柔らかいものに押し返されて後ろに下がったシンシアは鼻のあたりを抑えながら恐る恐ると言いたげに自分がぶつかった目の前のものに目を向ける。

 

「おや? あなたも入っていたのですか?」

 

「……!?」

 

それは綺麗に二つならんだ大きなお椀型の双丘だった。

白く、ぷるんと柔らかそうに揺れたその双丘はシンシアの姿を見つけて彼女に話しかける。

当然、いきなり目の前にそんなものが現れて喋り始めたのだから驚きを隠せないシンシア。

 

しかし、勘違いしないでいただきたい。

別に喋っているのがこの双丘というわけではない。

 

「ら、ライラ………」

 

「おはようございます、シンシア」

 

喋ってきたのはこのたわわに実った発育のよろしすぎる乳房を持つ、シンシアと同じ志を持って共に活動する、“古代女神”の一人、“トランス”のコードネームを持つ女性、“ライラ”だ。

 

「朝からいきなり私のお胸に顔からぶつかってくるとは…まさかシンシア、私のお胸が恋しくなりましたか?」

 

「っ! ……〜〜!」

 

ライラが恥じらいもなく言った突然の発言にシンシアはまるでイチゴのように顔を真っ赤にしてぶんぶんと首を左右に振る。

 

「むふふ…遠慮しなくてもいいんですよ? ほらほら恥ずかしがらなくても、赤ちゃんのように甘えてもいいんですよ〜?」

 

「〜〜〜〜!」

 

彼女のリアクションが面白く感じたのか、ライラはシンシアにそう言って詰め寄るが一方のシンシアは、もはや必死と言った感じで首をぶんぶんと左右に振り続ける。

 

「もう、冗談ですよ、そんなマジに否定されたらなんか悪いことしてる気分になって来るじゃないですか」

 

「うぅ……からかわないで……」

 

「単なるスキンシップの一環ですよ、ただでさえあなたは人見知りしやすいんですから」

 

「……あう」

 

痛い所をつかれたのか、シンシアはなにも言い返せなかった。

 

ライラの言う通り、シンシアは極度の人見知りで一定の期間が空いてしまえばたとえ身内であっても人見知りしてしまうほどの重症なのである。

なので、彼女がまた人見知りを再発しないようにこのようなコミュニケーションを定期的に行うようにしているのである。

 

しかし、いささか過激なような気もするが…。

 

「おっと、そんなことよりも…私も昨夜のアルコールを抜きたいことですし、失礼しますよ? あ、そうそう、ヤエがもうじき朝食ができると言っていましたのであなたも早く着替えなさいな」

 

「う、うん……」

 

「さてと、シャワーシャワーっと」

 

ライラはそう言うと彼女の隣を通り過ぎて風呂場に入っていった。

 

「………」

 

その際にシンシアは自分の横をライラが歩く度にぽよんぽよんと跳ねる二つの双丘に目が行ってしまう。

 

「………むぅ」

 

そして自分の胸へと目を落としたシンシアはタオルを片手に脱衣所に戻り、脱衣所に備え付けられている鏡の前に立つ。

 

鏡に写る風呂上がりの自分の姿、湿気を帯びた自分の白い髪と水滴が伝う自分の体。

その中でシンシアは自身の胸へと視線を向けてそっと両手で自分の胸を触ってみる。

 

「……やっぱり、小さいよね……」

 

ライラのものと比べるとかなり差がある小ぶりな膨らみ。

ライラのものが“メロン”なら、シンシアは“リンゴ”がいい所だろうか。

 

まったくない、と言うわけではないが平均よりも少し小さめだとシンシア自身は自覚している。

 

 

「………もう少し、大きくなったら大人っぽくなれるかな………ライラみたいに」

 

 

実は彼女は密かにライラのような大人っぽい女性に憧れを持っているのだ。

 

引っ込み事案で見た目も子どもっぽい自分とは正反対に、体も大人っぽく言いたいことをはっきりと言うライラはシンシアの密かな憧れでもあった。

 

ライラに比べれば明らかに控えめな自分の体。

少しでも彼女に近づくべく、せめて胸を大きくしたい。

そのためにはどうするべきかとシンシアは考えを巡らせる。

 

「………そういえば……こうすれば大きくなるって……」

 

彼女はここでふと、風の噂で聞いたことのあるバストアップの方法を彼女は思い出した。

 

しばらく考えこむように自分の手で包み込むような状態で収まっている己の胸を見下ろす。

そして、やがて決心がついたのか彼女は自分の両手に力を込める。

 

「んぅ………」

 

そう、彼女が聞いたことのあるバストアップ法、それは“揉む”ことだ。

 

人によってはバストアップマッサージと呼ぶこともあるのだが、単純に言えばそう言うことだ。

 

「…ぁ……ん……なんか…変な、感じ……」

 

指を動かすごとに形を変える自身の胸、そして体に響くようにわずかに走る妙な感覚。

その慣れない感覚に声を漏らしてしまうシンシア、だが彼女は自分胸を揉むことをやめることなく揉み続ける。

 

「……もっと、強くしたら……効果あるかな………っ……はぅ…んぁっ!」

 

より良い効果を期待して指の力に緩急をつける。

すると、自身の体に走る電気のように激しく、それでいて甘い感覚が強くなった。

 

ビクリと体を震わせるシンシア。

どことなく、その息遣いも変化しているような気がする。

 

本当にこれで効果があるのだろうか、若干疑問を感じるシンシアだがこれも大人っぽい女性になるための一歩だと信じて手を動かし続ける。

 

「ふ……ん…ぁ……ふぁぁ…っ、あん……!」

 

無意識のうちに内股をすり合わせて甘い声を漏らすシンシア、一糸纏わぬ彼女の体が自身の指が動くごとにビクビクと跳ねる。

 

(……なんだか……)

 

自身の心中になにやら、いけない感情が芽生えはじめていた。

そろそろやめておいた方がいい気がする、しかし、なぜかやめることができない……もっとその先を望むようになってしまっている。

 

 

 

(気持ちよく……なって、きちゃった……)

 

 

 

その感覚に酔いかけているシンシアはより強い刺激を求めようと……。

 

 

 

 

 

 

 

「………朝から…発情、期?」

 

「ひにゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!?」

 

 

した所でとんでもない状況を仲間に見られてしまい、シンシアの猫のような悲鳴が脱衣所に響くのだった。

 

 

 

 

 

 

「うぅ……ロボちゃん……いたならノックくらいしてよ……」

 

お気に入りのエプロンドレスに身を包み、脱衣所を後にしたシンシアはいつの間にか脱衣所にいた少女、“ロボティック”のコードネームを持つ“ステラ”と共に廊下を歩く。

 

ほんのりと頬を赤くしてるシンシアが前を歩くステラに目を向けながら抗議する。

 

「トイレ、じゃない……ついでに言うとあそこ、は欲求不満を発散、する場所じゃない…」

 

それに対して、ステラはシンシアの方を振り向くことなくそう言い返した。

 

「わたしは……そんな……そんなつもりは……!」

 

「でも、息遣いと声の出し方さらに体の反応を見る限り、明らかにあれは発情、してた……」

 

「だ、だから…! あれにはちゃんと理由が…!」

 

「あれ、てどれ? 誰にも見られず裸、になってさらには自分の胸を揉んで一人で興奮、してたこと……?」

 

「ふえぇ……ロボちゃん、お願いだから話を聞いてよぉ……!」

 

シンシアよりも年下で白ゴスと呼ばれる衣服に身を包んでいるステラは姿に似合わないはっきりとした毒舌を吐き続ける。

 

彼女の容赦のない言葉にシンシアは涙目になりながらもなんとか事の真実を伝えようとするがなかなかそのチャンスは訪れない。

 

「……まあ、私にとってはあなたが発情、していてもどうでもいい……間違っても私に襲いかから、なければ……」

 

「そ……そんなこと、しないもん……!」

 

「どうだか……発情期、の猫はなにをするかわからない……発情期が終わる、まであまり、近づかないで」

 

「うぅ……ぐすっ……だから違うのにぃ……ロボちゃんひどいよ……」

 

一度彼女が毒を吐けばもはやそれはマシンガンのごとき連射速度で襲いかかってくる。

たとえそれが仲間であっても、容赦はない。

 

彼女の毒舌を受け続けるシンシアはついには半ベソになってしまう。

もともと引っ込み思案な彼女には彼女の容赦のない言葉がとても強く答えたようだ。

 

「……ひっ……えぐっ……」

 

「………」

 

ついには本気で泣きそうになってしまっているシンシア、そんな彼女の様子に前を歩いていたステラは一度ため息を着くと彼女の方に振り返った。

 

「……SARUTOBI」

 

『……御意……』

 

彼女が呟くと、いったいどこから来たのか忍者型の人型ロボット、“SARUTOBI”が現れた。

SARUTOBIはステラのアイコンタクトに従い、あるものを取り出してステラに手渡す。

 

ステラはそれを受け取るとシンシアの方に歩いて行き手に持っていたものを彼女に差し出した。

 

「ひぐ………ふぇ?」

 

「………こんなこと、で泣かないで……バレたら私が、パパに怒られる……」

 

ステラが差し出したのは棒付きキャンディだった。

彼女なりにシンシアを慰めているようだ。

しかし、泣かしたのはステラ自身だが……。

 

「………」

 

「……いらない、の?」

 

ステラの行動にきょとんとした様子を見せるシンシア。

返答がないことに疑問を抱いたステラはキャンディが気に入らなかったのかと彼女に質問を返す。

 

「……ならあなたの好き、なイチゴ味……これも嫌? ……じゃあ、チョコ……だ、ダメならアイス、なら……これでも、ダメ? ……なら、なにが……」

 

返答を返さないシンシアにステラはSARUTOBIが用意したお菓子を次々に見せて彼女の機嫌を取ろうとする。

 

だがこれと言った反応を得られず珍しく彼女が焦りを見せる。

 

そんな彼女の姿にシンシアはやがて口元に笑みを浮かべる。

そして、四苦八苦するステラに近づくと…。

 

「…大丈夫だよ、気にしてない……」

 

「なっ……」

 

予想してなかった彼女の返答にステラが一瞬戸惑う。

だが、そんなステラの様子などお構い無しにシンシアはウェーブのかかった彼女の頭を撫でる。

 

「………紛らわしい、ことは……やめて」

 

「ごめんね、ロボちゃん…でも、ありがとう…」

 

「………」

 

ステラは気に入らないと言いたげにそっぽを向いてしまう。

 

シンシアにとってステラは自分があまり意識することなく会話ができる人物の一人である。

脱衣所でのライラとの会話の時のように若干の緊張を感じてしまうことがある彼女が唯一気兼ねなく話せる相手、それがステラなのだ。

 

現に先程もライラとは違ってシンシアの口数が多く感じはしなかっただろうか?

 

それほどに彼女が心を許してるのである。

 

理由としては自分よりも年下な見た目と言うのもあるのだが……。

 

「……き、気が、すんだなら……いい加減手を、離して……くすぐったい」

 

「……もう少しだけ」

 

素直じゃない彼女が見せる可愛らしさが好きだからと言うのもある。

 

普段は冷たい態度を取る彼女だが、ごく稀にこうして誰かを気遣う態度を見せる時がある。

その時に見せるステラの照れ臭そうな表情がなんとなくシンシアは好きだった。

 

それになにより、シンシアは知っている。

ステラは普段こそロボティックと言うコードネームのように鉄のように冷たげな態度を見せているが、その心中には誰かを思う気持ちがあると言うことを…。

 

 

 

彼女とは昔、自分が女神だった時代ではじめてわかりあえた人物でもあったからだ…。

 

 

 

だからこそシンシアは、その時のことを通して、ステラを気兼ねなく話せる友達のように思っているのである。

 

「………いつまで撫でてる、の?」

 

「あ……ごめん」

 

「………エネミー、が呼んでる……」

 

「………うん」

 

そんな友人と共にシンシアは廊下を進んでいく。

 

 

 

 

廊下をしばらく進むと、二人は他の部屋よりも大きな作りの扉の前に辿り着いた。

本来の目的地であるその部屋の扉を二人を先導する形で歩いていたSARUTOBIが開ける。

 

扉を開けると同時に朝を迎えて程よく空腹になった胃袋を刺激するいい香りがシンシアとステラの鼻腔をくすぐった。

 

 

 

「お、ちょうどええタイミングやな、朝ごはんもうちょっとで出来るから二人とも座って待っといてぇな」

 

 

 

そう言って二人を出迎えたのは彼女達に共通する白い髪をポニーテールに纏めていつも着ている黒コートが特徴的な、所謂関西弁という言葉を話す女性だった。

 

シンシア達と行動を共にする元女神の四人目、“エネミー”のコードネームを持つ、“ヤエ”と言う名の女性である。

 

朝食を作っているためか、いつも着ている服にエプロンを付けたヤエの姿はいつもと違って家庭的なイメージを感じさせる。

 

「おはよう……ヤエ、さん……」

 

「はい、おはようさん、お腹空いてるやろ? もうちょっと待っといてぇや」

 

「ぅ………」

 

シンシアの挨拶に答えたヤエは忙しそうに部屋に併設されたキッチンを行ったり来たりしている。

この部屋は彼女達共同の生活スペース、言わばリビングのようなものだ。

少し広めに作られた部屋にはテーブルと五人分の椅子が並べられ、十分にくつろげるスペースを確保しており、観葉植物などが置かれていたりインテリアをなかなか凝った作りになっている。

 

そんな部屋に用意されているリビングで忙しなくフライパンを握るヤエに言われたシンシアは小さく頷いてから近場の席に座った。

その隣にステラも座る。

 

「……よし、こんなもんやろ」

 

ヤエは手早く、且つ丁寧な手際でフライパンの上で焼いていた黄色いものを白い器に移し替える。

ほかほかと湯気を立てているのは、卵を解いて玉ねぎなどの野菜とひき肉を一緒に混ぜてバターで焼いた色鮮やかなオムレツだ。

 

ヤエは満足気な表情を浮かべるとすでに完成していたと思われる、もう一つのオムレツも一緒に持ってシンシアとステラが座って待っているテーブルに向かう。

 

「はい、どうぞ〜、二人ともトーストは一枚ずつでええな?」

 

「……ぅ」

 

「異論、なし…」

 

「トーストに塗るのはシンシアはイチゴジャム、ステラはピーナッツバターやな、ちゃんと野菜も食べてや? 特にステラ、ええ加減トマトくらい食べれるようになりーや」

 

「………善処、する」

 

「っていいながら付け合わせのトマトさりげなくよけへんの!」

 

表情を変えず、言っていることとは裏腹に付け合わせで用意されたプチトマトを皿のさらに端へと避けるステラに黒コートの上にエプロンを付けたヤエがたしなめる。

 

実は彼女達古代女神の食事を作っているのはヤエなのである。

 

ライラとは違った、家庭的で優しげな雰囲気のあるヤエ、彼女にも彼女なりの大人っぽさがある。

 

そんな彼女もシンシアにとっての密かな憧れだった。

 

「………いつも」

 

「ん? なんや?」

 

「………いつも、ありがと……ヤエさん」

 

「な、なんやねん藪から棒に……ほら、はよせな冷めるで?」

 

「……うん……いただき、ます」

 

ヤエに日頃の感謝を伝えたシンシアは手元の皿に乗せられたトーストを手に取り、程よい焼き色が付いた表面にイチゴジャムを塗りはじめる。

 

一通り塗った後、シンシアは口を開けてトーストを一口かじる。

イチゴジャムのほのかな酸味とすっきりとした甘さが香ばしいトーストとマッチしていて、シンシア数回咀嚼した後無意識のうちに口元に笑みを浮かべた。

 

「……♪」

 

「………こっち、も赤い……イチゴも好き、ならこれも……」

 

「押し付けんのもやめい、ちゃんと食べ!」

 

「………チッ」

 

「舌打ちした!? あんた今舌打ちしたよな!?」

 

面倒見のいいヤエは野菜の好き嫌いが多いステラに野菜を食べるように注意することがしょっちゅうある。

これもその一部始終だ。

 

「まったく…そんなんやったら、いつまでも大きくならへんままやで?」

 

「……私達が成長、することはあまり望め、ないと思うけど……」

 

「理屈やなくて倫理の話や、偏食ばかりしてると体壊す言うてんの! ただでさえあんたは体力ないねんから、なおさらのことやで!」

 

ステラをたしなめた後ヤエは彼女自身の分の朝食を持ってシンシアの向かい側の席に座った。

 

そして、まったくと言いた気にため息をついたあと、湯気がたつマグカップの持ち手を握り、一口飲む。

 

その瞬間、ヤエの表情がこの上ないほど安らいだ表情になった。

 

「……あぁ〜、やっぱり朝はホットココアやね」

 

ホットココアでここまで安らかな表情ができるものだろうか…。

いや、おそらくそんな表情ができるのは古代女神の中でも彼女だけだろう。

 

なにせ、彼女はその昔、まだ現役女神だった頃は今の姿からは考えられないほどに強烈なキャラをしていたのだ。

 

 

 

 

『……やはり、俺の心の渇きを癒してくれるのはこの飲み物だけ……珈琲はいつでも俺の相棒だ』

 

 

 

 

シンシアが覚えているかぎりでは昔はこんなセリフ回しとともにブラックコーヒーを飲んでいたはずである。

 

(……あの時のヤエさんもかっこよかったけど……こっちのヤエさんも好きだな……)

 

まあ、一口飲むごとに苦そうな顔をしていたので本心では好みではなかったのだろう…。

あの時のヤエは普通の人間で言う、難しい年頃の思春期に現れがちな所謂“厨ニ病”だったのだから仕方ないといえば仕方ないだろう。

 

そんな彼女の姿を見つつ、シンシアがトーストを齧っていると、部屋のドアがガチャリと音を鳴らして開いた。

 

 

「ふわぁっ……ん〜、おはようみんな」

 

 

眠たそうな赤い瞳の寝ぼけ眼を擦りながら、茶髪を髪に寝癖を付けた青年が部屋に入ってきた。

 

彼の姿を見た瞬間、シンシアの隣にいたステラが表情を一気に明るくさせた。

 

「パパ…!」

 

「ん……ステラ、おはよう」

 

彼女に朝の挨拶をした青年は次にシンシアとヤエの方に目を向ける。

 

「ヤエとシンシアも、おはよう」

 

「お……おは、よう…」

 

「おはようさん、あんたの分も出来たぁるで、はよ座り?」

 

「うん、いつもありがとうね、ヤエ」

 

彼はそう言うとテーブルの一番奥の席に移動し、腰掛ける。

そして、用意されたヤエお手製のオムレツにフォークで一口分切り取って口に入れる。

 

「………うん、今日のオムレツも美味しいよ、さすがヤエだね」

 

「別に褒めてもなんも出えへんよ? それに(うち)の料理ならいつも食べてるやんか」

 

「そうだけど、美味しい物に美味しいって言わないのは作った人に悪いから、やっぱり、ヤエの料理は一番だ」

 

優しげな笑みを浮かべた青年の発言にヤエは途端に頬を種に染めてそっぽを向く。

 

「な、なんやねん……わかったから、いちいちそんなん言わんと早よ食べや」

 

「……わかりやすい、照れ方……」

 

「照れてへん! それよりはよあんたはトマト食べ!」

 

「あれ? ステラ、またトマト残してるの?」

 

ヤエの発言に気づいた青年はステラの方に視線を向けると、ステラは罰が悪そうに視線をそらした。

 

「ダメだよ? 好き嫌いしてたら」

 

「う……で、でも……食感、があまり好ましくない…」

 

「あはは…相変わらず苦手なんだね、トマト」

 

「他にもあるんやけどな? ピーマンやら玉ねぎやら……」

 

青年の言葉に呟いたステラ。

どうやらトマトを噛んだ後に出てくるゼリー状の物の食感がダメならしい。

 

「んー、でもステラ、何事にも挑戦してみないと、体にも良くないし、ね?」

 

「うぅ……パパもエネミー、と似たことを言う……」

 

青年の言葉にステラが渋る。

 

いくら信頼を寄せる彼でも、嫌いな野菜を食べるのは避けたいらしい。

 

あの無表情且つ毒舌なステラやヤエが普段は見せない表情を見せる彼。

シンシアは彼の方に視線を向ける。

 

 

そう、彼こそが自分達に新たな道を指し示し、今現在彼女達と共に行動し、生活している……このゲイムギョウ界を影から見守り、ある少年を導く、“魔神”。

 

 

その名を、“魔神 ヴィクトリオン•ハート”…。

 

 

 

「あ、そう言えば変えのティッシュがもうなくなって来たんだった…」

 

「そんなら、また昼にでも買い出しに行ったらええやん」

 

「ついでに……新しい、メンテ用ドライバーが欲しい……ギガントール、のメンテに必要」

 

「うん、後で今週の家事当番を決めてから買い出しに行こうか……おっと、ハチミツハチミツっと……」

 

 

 

ゲイムギョウ界創世記に現れた、伝説の魔神、本人である。

 

 

……まあ、一見そうとは見えないほどの庶民っぷりだが……事実である。

 

 

念のためにもう一回言おう、事実である。

 

 

「……あ、シンシア、ちょっと」

 

「ふえ?」

 

唐突にトーストを齧っていたシンシアにヴィクトリオン•ハートが声をかける。

すると、そっと彼女に手を伸ばしてきた。

 

「口元にジャム、付いてるよ?」

 

「あ………」

 

口の端についていたのだろうジャムを親指で拭ったヴィクトリオン•ハートはぺろりとジャムの付いた親指を舐めてから、シンシアに優しげな笑みを向ける。

 

「……あ、ありが……とう」

 

「ん、どういたしまして」

 

ぎこちなさ気にお礼を言ったシンシアは少し照れ臭そうに視線を泳がせた後、再度トーストを齧ろうとする。

 

その時…。

 

 

「いやぁ〜、すっきりさっぱり! やっぱり朝のシャワーは格別ですなぁ!」

 

 

部屋のドアがハイテンションな声と共に開け放たれ、そこからさっきまでシャワーを浴びていたライラが部屋に入ってきた。

 

 

 

……全裸で

 

 

 

「ちょっと待たんかいぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいい!!」

 

恥ずかし気もなく、首元にタオルをかけただけのライラにすかさずヤエがツッコむ。

 

「あんたまた朝からそんな格好……ええかげんにしぃや!?」

 

「なんですか突然声を荒げて、いつも通り、これが私のデフォですが何か問題でも?」

 

全裸のライラに詰め寄ってきたヤエに対し、ライラは涼しげな顔で何を今更と言いた気に返答を返す。

 

「あんたのデフォとかそんなんはどうでもええねん! とにかく、今は男もおんのやから裸でうろつくんはやめぇ!」

 

「何を今更、今まで私は彼にこの私自慢の95cm、Gカップのバストや、このくびれたウエストに貼りのあるヒップを見せても彼はなんの反応も示さなかったんですよ? それなのに今更隠してもねぇ…」

 

「そうやなくてそれ以前に普通は多数の人が住んでる家の中で裸でおることそのものが常識ちゃうねんて私は言いたいんや!」

 

「自慢のこの体を見せることに何が問題があると言うのですか? ………あ、ひょっとして……」

 

何かに気づいたようにライラがわざとらしくニヤリとした陰湿な笑みを浮かべる。

 

 

「自分よりもお胸が大きいことに対する嫉妬ですかぁ? ごめんなさいねぇ? あなたはよくて平均サイズですからねぇ…Cカップのあなたにはわからない世界ですよ♪」

 

 

ライラは自慢のGカップを惜しげも無く晒された二つの双丘を見せつけるように胸を張る。

 

それに対し、Cカップのヤエは眉間に青筋が立ちそうな雰囲気を漂わせながらライラにさらに詰め寄った。

 

「……なんやったら、ええかげんその鬱陶しい胸を引きちぎってもええんやぞ、この露出狂がぁぁぁぁあ!」

 

「あら? あ、ちょっ!? な、なんですか急に飛びかかってきて!? って、い、いだいいだいいだい!! た、タンマタンマ!! 強く握らないで! 引っ張らないで! 捻らないで! もげるもげる! 胸もげちゃいます!! ちょ! 可愛いロボティックちゃん助けてくださいませんかね!?」

 

「……駄肉、に慈悲をかけるつもりはない……かけても無駄使い、だから」

 

「あぁんこんなに可愛いのに言うことは辛辣! でも、逆にそれがいい♡ そんなあなたが大好きです! って、いだだだだだだだだだ!? あのヤエ!? 冗談にしてもちょっとやりすぎじゃないですかね!?」

 

「ほら、ライラ、早く服を着ないと風邪引いちゃうよ?」

 

「あなたはあなたでなんでこの状況でそんなこと言えちゃうんですかねぇ!? 目の前でグラマラスな美女が風邪引く以前に荒ぶる厨二予備軍によって体の一部を引きちぎられそうになってるんですよ!?」

 

「ほんまに引きちぎったろかあほんだらコラァぁぁあああああああああ!!」

 

「ひぎぃぃぃぃぃぃいいいい!! こ、これ以上らめぇぇぇぇぇぇええええええええええええ!? 本当にちぎれちゃうぅぅぅぅぅううううう!! 本当の意味での無乳になっちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううううう!!」

 

荒ぶるヤエ、叫ぶライラ、傍観するステラに、苦笑いを浮かべるヴィクトリオン•ハート。

 

目の前で起きている騒がしい光景を目の当たりにしながらも、シンシアは特に嫌そうな顔を見せることはなかった。

 

この騒がしい日々が、彼女にとっては大事なひと時なのだから…。

 

 

最初こそ、歪みあっていた者達が今はこうして賑やかに日常を過ごしている。

 

そんなこの現状がシンシアはとても嬉しくて……幸せに感じるのだ。

 

 

 

願うなら、この楽しい日々が続いて欲しい……。

だから、今日も頑張らねば。

 

なにせ、自分達のこれからの行動が……今のゲイムギョウ界の運命を左右するのだから……。

 

そんなことを思いながらシンシアは………。

 

 

 

「………ふふっ♪」

 

 

 

小さく、笑みを浮かべるのだった。




いかがでしたか?

彼女たちの朝は意外と賑やかで騒がしいのです(笑)
さて、次回の日常はどんな一コマでしょう?

そして、次の彼女たちの日常もお楽しみに!
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