超絶短編!ネプテューヌ おーばーえくすとらどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも白宇宙です!
今回のお話は久々の番外編!
テーマは、お友達!

果たして誰と誰がお友達となるのか…

それではお楽しみください!
どうぞ…


EX stage,5 ほんわか時々どSなお友達

 

 

ほんわか時々どSな、お友達

 

おとぎ話に出てくるお姫様が怪物や悪人に追いかけられている時の心境とは、こんな感じなのだろうか?

 

 

誰にも頼れない孤独の中で、怖さと心細さを感じながら必死に走り続ける。

足を止めれば待っているのは悲惨な結末、最悪のバッドエンド、それが嫌なら逃げるしかない、どんなに疲れていても、どんなに怖くても、どんなに辛くても、足を止める訳にはいかない。

 

「はあ…はあ…はあ…!」

 

足が重い、息が苦しい、ただ足を止めたらその瞬間、どんな目に会うか……考えたくないから、走りながらその想像は思考の片隅に投げ捨てた。

短い呼吸を何度も繰り返しながら、普段は慣れないながらも走り続けるのは一人の少女。

 

儚い雰囲気を纏いながら、まるでおとぎの国の少女を思わせる彼女は白い髪を振り乱しながら必死に走り続ける。

 

どうしてこんなことになったのか、こんなことなら一人で来るんじゃなかった……そんな後悔をしながらも時既に遅し、今はとにかく逃げるしかなかった。

 

「はあ…はあ…はあ…はあ…あっ!」

 

走り続けて、走り続けて、不運なことに彼女は何かに足を取られて躓いた、前のめりに体が傾き草木の生えた地面に倒れる。

 

「うぅ……っ!?」

 

そしてその瞬間、背後に迫る気配が一気にこちらに近づいて来るのを感じた。

少女は慌てて身を起き上がらせると反射的に背後を振り返り、少女の視界が自分を追いかける者の姿を捉えた。

 

危険種に分類されるというモンスター、エンシェントドラゴン。

 

この森に住むモンスターの中でも上位に位置し、同時に遭遇するのが危険とされる危険種のモンスターである。

 

「あ…やっ……来ないで……やめて……!」

 

自分よりも遥かに大きな体躯を持つエンシェントドラゴンを前にして、少女は恐怖に体を震わせて後ずさるが、とん、と背中に硬い木の幹が当たり、後ずさる少女の退路を絶った。

エンシェントドラゴンの鋭い目と牙が少女に狙いを定め、唸り声を上げる。

一方、怯え切った様子の少女は体を小刻みに震わせながらエンシェントドラゴンを見上げることしかできない。

抗う力も何も持たない少女にとって、目の前に現れたモンスターは恐怖の象徴そのものだった。

 

そして、そんな少女の恐怖なんかは露知らず、エンシェントドラゴンは目の前の獲物に狙いを定めて、襲いかからんと爪を振り上げる。

その光景に少女は短い悲鳴をあげて目をつむり、体を縮こまらせた。

無意識のうちに涙が目に溜まり、恐怖のあまりに泣き出しながら、少女はか細い声でつぶやく。

 

 

「たす…けて……誰か……助けて……!」

 

 

両手で頭を抱えて、少女が口にした助けの声……しかし、ここは深い森の中で気付くような人も当然近くにはいない。

 

そして遂に……獲物を追い詰めたエンシェントドラゴンの爪がぎらりと光り、それが空気を切り裂くような轟音と共に振り下ろされる。

 

 

 

こんな時、おとぎ話か何かなら……怪物に襲われるお姫様を助けるために王子様が来てくれるのだろう……だけど、世の中そう都合良く出来ているわけではない。

 

ふと、少女の脳裏に浮かび上がったのは…こことは違う、遠い、遠い、とても遠い場所にいる愛しい人のことだった。

彼のことを思い浮かべてしまったのは、少しでも期待していたから……もしかしたら、目の前にいる怪物を次の瞬間倒してくれて、助けの手を差し伸べてくれるのではないのか、と……何処かで淡い期待を抱いていたから。

 

 

 

でも、人生そんな想像通りの通りにはいかない……次の瞬間に来たのは、凶悪なモンスターの爪が振り下ろされることにより発生する、風の音…。

 

 

 

 

 

ーーーガキィィィン!

 

 

 

 

 

「………なぁにぃ? さっきから楽しそうに追いかけっこ?」

 

「……ふえ……?」

 

 

 

 

そして、それを遮るかのような金属の音と誰かの声。

少女が目を開けた時、その原因がなんなのかすぐに判明した。

 

 

 

「なら、あたしも混ぜて貰おうかしら……ねぇ!!」

 

 

 

世の中想像通りにはいかない、少女の目の前に現れたのは少女を助けるために駆けつけた、愛しの王子様ではなく……。

 

 

 

怪物に追われていた少女……古代女神の一人である、少女……シンシア。

 

彼女を助けたのは………エンシェントドラゴンの爪を軽々と細身の剣で押し返し、強烈な一撃であっという間にエンシェントドラゴンを打ち倒した……“女王様”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、歯ごたえがないわねぇ、もうちょっとくらい楽しめると思ったのに…こんなのじゃ全然物足りないわぁ」

 

右手に握る自身の獲物の剣を軽く左右に振り、不満そうに今先ほど自身が打ち倒したエンシェントドラゴンを見下ろすのは、まるでボンテージという服装を意識したかのようなプロセッサユニットに身を包んだ女神、このゲイムギョウ界とはまた違うゲイムギョウ界から最近やって来た、“女神 アイリスハート”だ。

 

淡い藍色と紫の合間のような色をした長髪の毛先を左手の指先でいじるアイリスハート、既にエンシェントドラゴンは今の一撃で戦闘不能となり、彼女はあっさりと終わりすぎて逆に不満なようだ。

 

すると……。

 

「………あ、あの………」

 

「ん~? ……あぁ、そう言えばいたわねぇ、トカゲと鬼ごっこしてた子が一人」

 

アイリスハートの背後に生えた一本の木にもたれかかるようにしていた少女に気づき、彼女が後ろを振り返る。

 

「随分と臨場感のある鬼ごっこを楽しんでいたのね、泣きそうなくらいに…もしかして、そういう趣味かなにかかしら?」

 

「ふえ………!? ち、ちがっ……!」

 

まだ若干戸惑い気味のシンシアにアイリスハートは妖艶な笑みを浮かべてそう言うと、シンシアは違うという意思を込めて首を左右に振る。

 

「うふふ…… 赤くなちゃって……可愛いわねぇ」

 

「え……あっ……あの……」

 

そんなシンシアを見つめながらアイリスハートは彼女の顔のすぐ近くまで近づくとじっとシンシアの瞳を覗き込むように見つめ続ける。

 

「子犬みたいに震えちゃって……それに、さっきちらっと見たけど泣きそうになってたあなたのあの表情……すっごく良かったわ……あたし、あなたのこといじめたくなっちゃったかも……」

 

「ひっ……!?」

 

妙に熱の篭った瞳で見つめられ、急にそんなことを言われたシンシアはアイリスハートの発言に動揺し、僅かに動揺しながら短く声を漏らす。

 

というのも、彼女のこの姿と雰囲気でいじめたくなる、なんてことを言われたらそりゃあ口に言うのもはばかられるような“プレイ”的な事をを考えてしまう。

あくまで情景反射にも似た妄想だが、この場合はそう考えてしまうのが当然のことである。

 

「………なんて、冗談よ? もしかして、想像しちゃった?」

 

「………ふえ………ち、ちがっ!?」

 

しかし、からかうかのような笑みを浮かべながらそう続けた彼女にシンシアはその場で呆然としてしまう。

シンシア自身が割りかし本気にしていたのもあって余計に呆気に取られたというのもあるが……少しでもそんなことを考えてしまっていた自分が恥ずかしくなり、シンシアは顔を赤くして首を左右に振る。

 

「ふふふ……ところであなた、どこから来たの? ぱっと見ても、こんなとこに一人で来るような子には思えないんだけど」

 

すると、アイリスハートはシンシアになぜこんな所にいるのかという素朴な疑問を聞いた。

 

確かにここはシンシアのような少女が一人で来るにはかなり危険が伴う場所とされる森林型ダンジョンである。

そのため他人からしてみればどうして彼女のような少女がこの場にいるのか不思議に思うのは当然である。

 

「…ぁ……えと……その……え……えっと……」

 

「ん~? なぁにぃ? はっきり言わないとわからないわよ?」

 

アイリスハートがした質問に対してシンシアは少々言いづらいのか、口ごもる。

そして、戸惑いからなんとなしに彼女が髪の毛を手でいじり始める。

 

 

 

「………?」

 

 

 

その際に彼女はある違和感に気づいた。

 

彼女の頭の綺麗な白髪の髪、そこのある場所を手でなぞる用に撫でた瞬間、彼女はなにやら慌てた様子でそこを何度も確認するように手を動かす。

 

「………な、ない………!」

 

突然動揺した表情を見せたシンシアは途端にあたりを見回すようにキョロキョロと視線を巡らせ始める。

彼女の突然のこの動揺に、アイリスハートも何かを感じたのか僅かに片眉を上げるとそっと彼女に近づいてみる。

 

「ねぇ……どうかしたの?」

 

「……ない……」

 

「ない? …なにかなくした物でもあるの?」

 

地面をくまなく探すように視線を下に落として右往左往させるシンシアにアイリスハートは再度そう問いかける。

すると、シンシアはゆっくりとアイリスハートのことを見上げるようにして目を向ける。

 

目に、大粒の涙を溜めながら…。

 

 

 

「……っ……花…飾り…プリムラの……花飾り…ぅ……ないの……」

 

 

 

 

そう、この時シンシアの頭には彼女が“最愛の人”からもらったプレゼントである、“プリムラの花飾り”が着いてなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふーん、じゃああなたにとってその花飾りは大切な物ってわけね?」

 

「ひっ………っ……ぅ…」(こくり

 

泣きながらではあるものの彼女からなんとか事情を聞い出したアイリスハートはシンシアに問いかけると、シンシアは涙を流しながら小さく頷いた。

 

あの花飾りはシンシアにとってとても大切な宝物、“絆の証”なのだ。

それが無くなったとなったらショックも当然大きい。

しかも、どこで無くしたのも覚えてないというからどうしていいのかわからず、余計に不安に駆られるばかり……。

 

「ひぐっ……あれ……わたし……大切なっ……どうしよう……うっ……ふぇぇぇ……!」

 

泣きじゃくりながらそう言うシンシア、そんな彼女を目の前にして……アイリスハートはふとなにかを考えるように顎に人差し指をあてる。

 

「んー……なら、探せばいいじゃない」

 

「ひっ………ふえ?」

 

「ここに来て、何処かで無くしたんならまだ何処かにあるでしょ? なら簡単な話よ……探せば見つかるかもしれない、簡単な事でしょ?」

 

「……で……でも……」

 

アイリスハートの提案は当然といえば当然なのだが、この森はただでさえ広い、探すのは一苦労だ。

下手をすれば今日は見つからない、ということもあり得る。

だが、そんな不安を感じているシンシアのことを見通してか、アイリスハートは口元に笑みを浮かべると涙を流すシンシアの頭に手をおいて優しく撫で始めた。

 

「大丈夫よ、あたしも探してあげるわよ……まあ、刺激的じゃないしつまらないのは目に見えてるけど……もう少しあなたと一緒に居てみたいし」

 

「……え……?」

 

「ほぉら、だからもう勝手に泣くのはやめなさい……あたしの前で泣くならあたしがいじめた時だけにしなさい」

 

少し違う気もするが彼女なりにシンシアを慰めているのだろう、彼女の目から流れる涙を指で拭ったアイリスハートはそう言って微笑みを浮かべる。

 

「………ぅ」(こくり

 

「……ふふ、決まりね?」

 

「ふえ………あ」

 

そんな彼女の雰囲気にシンシアはついその場で頷くと、アイリスハートは満足気にそう言って、彼女の頬に掌で撫でた。

その仕草と大人っぽい表情を間近で見て感じたシンシアは反射的に頬を染める。

 

そして、その手がシンシアの頬から離れた瞬間、アイリスハートの体が光に包まれる。

その光の眩しさに咄嗟にシンシアが目を覆うと……光が止んだ瞬間、彼女の目の前には一人の少女の姿があった。

 

寝癖気味の薄い紫の髪を一本の三つ編みに束ねて、いかにもふわふわとしていて柔らかそうな雰囲気に身を包んだ彼女はシンシアにほんわかと柔らかな笑みを向けた。

 

 

 

「それじゃあ自己紹介だね~、あたしプルルート~、よろしくね~?」

 

「………シンシア………です」

 

 

 

この時、シンシアはさっきまでの雰囲気とはガラリと変わった彼女の姿に涙を流すのも忘れるほどびっくりしていたそうな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほえ~、じゃあシンシアちゃんはここには絵を描きに来たんだ~」

 

「……絵を描くの……好き、だから……」

 

軽い自己紹介と雑談をしながらシンシアが無くしたプリムラの花飾りを探すべく森の中で彼女がエンシェントドラゴンから逃げるために走ってきた道を引き返す二人。

その道中でシンシアとプルルートはいろいろな話をしながら探索を続けた。

 

好きなもの、普段どうしてるのか、どうしてここに来たのかなど、何気ない会話は弾み、気づけばシンシアはこの森に来た理由のことを彼女に話していた。

 

まあ、彼女は得意な18禁イラストの背景の参考にここに来たのだが、あながち間違ってはいないだろう。

 

「すごいね~、あたしぬいぐるみとか作るの好きだけど、絵はあんまり得意じゃなくて~」

 

「で、でも……わたし……絵以外は全然ダメで……そっちの方がすごいよ……」

 

「えへへ~、それほどでも~」

 

不思議だ。

 

この時、シンシアはこういう風にいつの間にか会話ができていることをとても不思議に感じていた。

普段の自分なら初めて会った相手なら緊張して、怖くなってまともに話すことも出来ないのに……なぜか彼女は不思議とそう感じることはなかった。

初めて会ったときから、なぜか彼女にはどことない安心感のようなものを感じた。

 

状況が状況だったから、これが所謂吊り橋効果なのだろうか、などということを考えながらシンシアはプルルートと雑談を交わしながら花飾りを探す。

 

「ねぇねぇ、シンシアちゃんの花飾りって~、宝物なんでしょ~?」

 

するとプルルートが突然そんなことを聞いてきた。

 

「え………ぅ」(こくり

 

それに対してシンシアは一回頷いて返答を返すとプルルートは興味深そうに彼女に近づく。

 

「シンシアちゃんって~、お花好きなの~? 無くしたってわかった時泣いちゃってたから~、よっぽど好きなのかな~?」

 

その質問は間違ってはいないが理由としては違う。

シンシアはその質問に対して首を左右に振ると髪飾りをしていた場所に手を当てながらどこか懐かしむような、それでいて嬉しそうな表情を浮かべた。

 

「……あれはわたしの……わたしの……大好きな人から貰ったの……だから……大切」

 

……とある出来事がきっかけで、出会うこととなった“異世界の青年”。

 

ふとした事件がきっかけで彼と知り合ったシンシアは彼のことを一度も忘れたことはなかった。

 

そして、やがてそれは自分の、シンシアにとって初めての“恋”なのだと知った…。

 

あの花飾りはその想いと、彼との絆の証。

彼女にとっては掛け替えのない大切な宝物なのだ……。

 

シンシアはそれを再確認するかのようにプルルートにそう言うが、やがてそんな大切な宝物を無くしてしまったのだという事実を思い出してか、また胸の内にふつふつと辛い感情が湧き上がって来た。

 

なんでなくしてしまったのだろう……なんでもっと早く気づかなかったのだろう……過ぎたこととは言え、情けないし、辛い……。

そんな彼女の想いが再び、涙という形になって目に溜まり始める。

 

「……ふーん、そうだったんだ~……」

 

だが、そんな彼女とは正反対の間延びしたのんびり声が彼女の背後から聞こえてきた。

 

 

 

「あたし、シンシアちゃんのパンツがお花柄だったからてっきりそう思っちゃったよ~」

 

 

 

とんでもない報告とともに……。

 

「ふえ………ふえぇぇ!?」

 

なぜ知ってるのか、驚いたシンシアはいつの間にか背後に回っていたプルルートの方に振り返った。

 

まさか、どこかで覗いたのだろうか……だとしたらいつ?

全く身に覚えのないその疑惑にシンシアは戸惑いつつもプルルートに問いただす。

 

「な、なんで……わかって……」

 

「ほえ? ……だって、丸見えなんだもん、ほら」

 

それに対してプルルートは彼女のスカートを指差す。

一体どういうことなのか、スカートを履いている以上はめくれたりしていない限り、中のパンツが見えることはないはず…そう思ってシンシアは自身のスカートへと視線を落とす。

 

前の方は以上はない………では後ろは? そう思った彼女は後ろの方を確認すると……

 

「ひにゃあ!?」

 

確かに丸見えだった。

 

彼女のピンクの花柄で彩られた、パンツが……。

 

よく見ると、スカートの端が彼女のパンツに挟まっており、それによってスカートがめくれ上がっており後ろからパンツが丸見えになっていたのだ。

 

「……い、いつから……」

 

「んー、あたしがシンシアちゃんと会ったときから~」

 

悪びれる様子もなくのほほん、と返答を返すプルルート。

しかし、だとしたら……シンシアはプルルートと会ったその時から既にパンモロしていたと言える。

 

考えられる可能性があるとしたら……それは一つ……。

 

 

 

(朝からずっと……!?)

 

 

 

そういえば今日は朝からやたらにスカートの中が涼しいと思ったら……そういうことだったのか。

 

自分がやらかしたドジにシンシアは堪らず顔を真っ赤にさせると、慌ててパンツに挟まっていたスカートを直した。

 

それにしてもこれは恥ずかしい、恥ずかしすぎる。

まさかこの森に入って来る前からパンツが丸見えの状態だったとは……しかもそれに気づいていないとは……知らなかったとはいえ、あまりの羞恥にシンシアは顔を真っ赤にしてその場に蹲る。

 

「うぅ……ていうか…気づいてたなら教えてよ……」

 

「あはは~、ごめんね~、てっきりそう言う風にするのが好きなのかな~って思って~」

 

「違うよぉ……!」

 

珍しくシンシアが声をあげて誤解を招かないように必死に首を振りながら反論するシンシア、それに対してプルルートはほんわかとした笑みを保ちながらシンシアの隣に移動する。

 

「でもどっちにしても、見つけないとね~」

 

「……?」

 

「大事な宝物だったら、尚更だよ~……絶対に見つけようね?」

 

気づけばいつの間にか、目に溜まっていた涙は引っ込んでいた。

まあ、あんなことを突然言われたら引っ込で当然なのだが……それでも、シンシアはこの時、彼女のおかげか不安は一切感じてなかった。

 

彼女は……彼女はとても……。

 

「………優しいね………」

 

変身した時の姿はあれだが、彼女はとても優しい子なのだと、シンシアはこの時思った。

 

そして、それに対してプルルートは……

 

 

 

「困ってるなら助けるのが当たり前だよ~、だって……“お友達”だもん」

 

「………え?」

 

 

 

 

シンシアの予想にしてなかった言葉をさらに加えて返して来た。

 

“お友達”………そう言われるのは、どのくらい久しぶりだろうか……。

 

一緒にいるライラ、ヤエ、ステラ以外で自分にとって友達と言える人物は少ない。

だが、そんなシンシアに向かって、屈託のない笑みでそういったプルルート……。

 

シンシアの心には、不思議と彼女に対する興味が湧いて来た。

 

でも、それゆえに彼女は戸惑う……。

友達と言われて、自分はなんて返したらいいのか……。

 

「え………えっと……あの……」

 

口ごもるシンシア。

何か返答しないと……そうは思っていても、言葉が出てこない……。

表立って、真正面から友達と言われたら、どうしたらいいのかわからない、だからあたふたと動揺することしかないでいる。

 

 

 

すると……。

 

 

 

ーーーガサッ

 

 

 

突然、シンシアの近くの草むらが動いた。

その音に彼女は驚き、咄嗟にそちらの方へと視線を向けると……。

 

「っ!」

 

突然その草むらから、一匹のモンスターが出てきた。

 

まるで猫のような、それであってリスにも見えるような生物、だがその生物は鋭い爪を持ち、顔をなにやらいかついマスクで包んでいる。

 

このモンスターの名前は“ヤンキーキャット”、ゲイムギョウ界ではよく見る動物型の悪質なモンスターだ。

 

そんなモンスターが突然現れたこともだが、この時シンシアはあることに気づき、とても驚いていた。

 

ヤンキーキャットの胸のあたり、そこにバッチをつけるかのようにシンシアの探している、プリムラの髪飾りが着いていたのである。

 

聞いたことはある、ヤンキーキャットの中には自分を強く見せるために何かしらのアクセサリーをつけることがある…と。

つまり、このヤンキーキャットは彼女の髪飾りをアクセサリーにしているのだ。

 

「か……返して……それ……わたしの……!」

 

咄嗟にシンシアがヤンキーキャットから花飾りを取り返そうとするが、ヤンキーキャットはそれを許そうとせずにシンシアを威嚇する。

 

「ひっ! あうっ…!」

 

それに驚いたシンシアがその場に尻餅を着くと、ヤンキーキャットは狙いを完全にシンシアに定めたのか鋭い爪を構えるとシンシアにじりじりと近づき始めた。

彼女に戦うすべは無い……目の前に探していた物があるのに、なにも出来ずにこのまま痛ぶられるのだろうか……シンシアは不安を隠せず今にも泣き出しそうになりながら震える。

 

そして、そんな彼女にヤンキーキャットが飛びかかろうとした………その時だった。

 

 

 

ーーーむんずっ…

 

 

 

と、突然ヤンキーキャットの頭を後ろから掴む者がいた。

 

突然のことに抵抗するヤンキーキャット、だがその抵抗はしばらくして止まることとなる……。

 

 

 

「……あなた、いい度胸ねぇ……」

 

 

 

背筋を凍らせるように耳に響く声、底冷えするような絶対零度の中だが、その中ではっきりと艶めかしさを感じる特徴的な声。

その声がヤンキーキャットにかけられた瞬間、モンスターとしての本能からかヤンキーキャットは動きを止めた……。

 

 

 

 

「……あたしのお友達をいじめていいのは……あたしだけよ?」

 

 

 

 

そこに、絶対的な“強者”がいたから……。

 

 

 

「あ………」

 

「それにぃ……あたしのお友達の宝物をネコババするなんて手グセの悪い子ねぇ……だから、あなたには……」

 

 

 

いつの間にか変身し、アイリスハートへと変わっていたプルルートは後ろからヤンキーキャットの頭を片手で掴んだまま持ち上げると、持ち前の妖艶ながらも言い知れぬ気迫のような物を感じさせる笑みを浮かべてそのヤンキーキャットを見据える。

 

まるで蛇に睨まれた蛙のようにその場で固まってしまったヤンキーキャット、それに対してアイリスハートは再度、にやり、と口角を上げるとヤンキーキャットにこう告げた……。

 

 

 

「あたしがた~っぷり、サービスしてあげる……さあ、楽しい楽しいお仕置きタイムの…は・じ・ま・り・よぉ♪」

 

 

 

 

この日、その森に一匹のモンスターの哀れな悲鳴と、一人の女神様の心底楽しそうな笑い声が木霊した………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、これだよね~」

 

「ぅ……うん……」

 

しばらくして、おいたしてしまった哀れなヤンキーキャットから花飾りを取り返したプルルートはそれを持ち主であるシンシアへと手渡した。

 

ちなみに、その後そのヤンキーキャットがどうなったのかはそれぞれの想像にお任せしてもらいたい……。

 

しかし、何はともあれ花飾りを受け取ったシンシアはそれを大事そうに手で包み込むように握ると、安心したような微笑みを浮かべた。

 

「………よかった………」

 

安堵の言葉と共に胸を撫で下ろすシンシア、そんな彼女の様子をみてプルルートは嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「見つかってよかったね~、シンシアちゃん?」

 

「………うん………」

 

そんなプルルートにシンシアはこの時、この時こそ何か言わなければと思った。

彼女に向かって、こう言う時に言う言葉とは何か……。

普段はなにを言っていいのかわからずに迷ってばかりのシンシア、だがこの時は自然となにを伝えればいいのか、浮かんで来た。

 

 

 

「……ありがとう……」

 

 

 

単純に、それだけでいいのだ………助けてくれて、一緒に探してくれて、取り返してくれた、プルルート。

引っ込み事案で人見知りで弱虫な自分とは似ても似つかない……それでも、そんな自分のことを友達と言ってくれた彼女のことを、シンシアはもっと知りたいと……そして、もっと“仲良くなってみたい”と思った。

 

だからこそ、これを言えばいいのだ。

 

友達になるなら、まずはこれから……。

 

 

 

 

「………“ぷるちゃん”………ありがとう……」

 

 

 

 

始めてシンシアに名前を呼ばれた、その時プルルートは普段と変わらないほんわかとした笑みを浮かべながら……とても、嬉しそうに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして……

 

「ん? なんやシンシア、今日もお出かけかいな?」

 

「………ぅ」(こくり

 

シンシアはあれから出かけることが多くなった。

以前よりも積極的に外へと出る姿に、ヤエやライラはとても珍しがった。

 

「……いってきます……」

 

「はいよ、いっといで~」

 

とてて、とその場を後にし外へと出て行くシンシアをヤエが見送る。

 

「………あのシンシアが最近外に出るとは、なんやあったんかな?」

 

「まあ、十中八九そうでしょうね~」

 

「わっ! ……な、なんやおったんかいな」

 

シンシアの最近の変化に驚いていたヤエ、その背後にいつの間にかいたライラはそう言うとヤエに近づき、ある物を見せる。

 

ライラがヤエに見せたもの、それは一枚の紙に描かれたイラストだった。

それをみてヤエはなにやら不思議そうな表情を浮かべる。

 

「……なんやこれ?」

 

「シンシアの部屋を探ったら出てきました……おそらく、仲のいいお友達ができたんでしょうね」

 

「……え、これでわかるん?」

 

「わかりますとも……だって」

 

ライラがそう言ってヤエに見せたイラスト、それは……。

 

 

“一人の男性を中心に、二人の可愛らしい女の子が組んず解れつ(意味深)しているイラスト”だった。

 

 

 

「人数増えてますし」

 

「……それで理解できるあんたもあんたやな……」

 

 

 

 

この日、とあることがきっかけで……一人の古代女神の少女と、異世界から来た女神の少女は……“友達”になりました。




いかがでしたか?
次回も更新は未定ですが、またちょくちょく番外編を書けたらなと思います、それでは次回もお楽しみに!
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