超絶短編!ネプテューヌ おーばーえくすとらどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です!
今回は何となしに日常回を執筆……今回のテーマは”ブーム”!

世間ではハンドスピナーなどが流行っているようですが、今回このゲイムギョウ界に訪れたブームとは?

それではお楽しみください、どうぞ!


EX stage,7 空前絶後のチョコエッグ

 

人は誰しも、何かにハマったり夢中になったりすることがあるのではないだろうか?

例えば不思議なフレーバーのお菓子、ちょっと変わったデザインのアクセサリー、何の変哲もないただ手で回すだけなのになぜか夢中になってしまうおもちゃ。

そう、人は誰しも何かに夢中になったりすることが多い、それも個人だけの話ではなく世間的な大々的な流行……。

 

 

 

―――“ブーム”。

 

 

 

それは何の前触れもなくふとしたことをきっかけにして世間に広まっていく現象の事。

食べ物に始まり、動物、行動、衣服などのおしゃれアイテムに関しても適応されるこのブーム、その期間は長かったり短かったりと様々だが、それが当てはまるととてつもない収入と莫大な利益が生まれる経済効果も期待できる。

大手の一般企業や様々な中小企業はそのブームに乗っかって稼ごうとするのも不思議なことではない。

 

今回ここに記す日常の一ページはゲイムギョウ界で唐突に起きた一大ブームに遭遇した宗谷と、それにドハマりしてしまった者達のお話……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ふぅ、とりあえず午前のお仕事終了っと………さて、昼休み~」

 

教祖補佐の仕事は午前と午後の間に分けられ、その合間に休憩の時間を挟んでいる。

プラネテューヌ教会の教祖補佐を務める彼、天条宗谷は今日もまたいつものように教会の仕事を一通り終えて午後からの仕事に備えるために英気を養おうとしているところだった。

いつもの仕事部屋を出て向かったのはこの国を治める女神、ネプテューヌとその友人たちも利用しているリビングルーム、あそこはいわばここでの休憩場も兼ねている、仕事をした後はそこに集まってたわい話とみんなと雑談に浸るのがいつものセオリー、それが彼のライフスタイルだった。

 

いつもの如く廊下を歩いていき、部屋を開けるためにドアノブを回す宗谷………すると………。

 

 

 

「出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

部屋のドアどころか廊下を突き抜けて外にも響いてきそうな強烈な叫び声が宗谷の鼓膜を震わせて、その勢いのままに彼を後ろ倒しに転倒させた。

 

「な………なんだよ……とつぜん大声出しやがって……おーい、ネプ子さんや? ホラーゲームとかなら別の所でやってくれ……できれば俺の見えない所でな……頼むから」

 

その声の主に覚えのあった彼は声の大きさのあまりにまだくらくらとする頭を押さえながら立ち上がると、聞こえてきたフレーズからどうせいつものようにゲームで遊んでいたネプテューヌが興奮のあまりに叫んだのだろうと思い、そう言いながら部屋の中へと入ってみた。

 

しかし、部屋を覗いてみるや否や、そこには彼の予想とはまるで違う様子が広がっていた。

 

「な、何が出たのお姉ちゃん! 私にも見せて!」

 

「ネプちゃん~、もったいぶらずにみ~せ~て~、は~や~く~!」

 

「ねぷてぬみせて! みせて! み~せ~て!!」

 

「分かってる! 分かってるからちょっと待って! うわぁぁぁ……ようやく出るなんてぇ……夢の様とはまさにこれの事だねぇ……頑張った甲斐があるよ」

 

なにやら部屋の中心でネプテューヌを中心にネプギア、プルルート、ピーシェの四人が何やら異様な盛り上がりを見せていた。

中央にいるネプテューヌはなにやら感慨深そうな、感動にも満ち溢れているかのような言葉を溢し、その周りを囲んでいる他の三人はなにやら彼女を急かすようにはやし立てている。

一体何が起こっているのか、それを見て気になった宗谷はその四人に近づいてみることにした。

 

「どうしたんだよみんなして、なんかいつになく盛り上がってるみたいだけど何事?」

 

「あ、ソウヤ! 丁度いい所に来たよ! 見て見て、遂に出たんだよ、ついについについに!」

 

「おぉ……と、とりあえず落ち着け、何があったのかはちゃんと聞くから」

 

宗谷を見るなり興奮冷めやらぬと言いたげな表情で詰め寄ってきたネプテューヌ、そんな彼女の勢いに押される宗谷は何とか彼女を落ち着かせようとするが、なかなか彼女のボルテージが収まる気配はない。

これはいつものような仕事をさぼっていた時に見る焦りの様子とは違う、明らかな喜びの興奮だ。 彼女の目とその表情が何よりの証拠と言えるだろう。

 

一体何が彼女をそうさせているのか、気になった宗谷はふと彼女が持っているものに目を向けた。

 

彼女の手には何かが握られている、大きさ的には手の平に丁度ちょこんと乗るサイズのものだ。

シルエット的に言うと人型、高さは5、6㎝くらいだろうか?

検めてそれが何なのかをまじまじと見てみると………。

 

 

 

「………フィギュア?」

 

 

 

そう、それは小さな人型のフィギュアだったのだ。

四角い土台の上に立つそのフィギュアはネプテューヌの手の平の上で中名kにりりしいポーズを決めている。

そこまでなら彼も見たことのあるミニフィギュアだろう、カプセルのガチャガチャや食玩などで見るものだ。 だが、何よりも目を引く特徴がそのフィギュアにはあった……それは……。

 

 

 

「これって………女神化したお前のフィギュアじゃねぇか!? なんだこれ!?」

 

 

 

そう、そのフィギュアは何とネプテューヌが変身した姿、パープルハートを忠実に再現しているミニフィギュアだったのだ。

プロセッサユニットと呼ばれる、体のラインにぴったりと張り付くようなボディースーツ型の武装、手に持っている日本刀型の武器、背中に装備されているウィングや顔、髪、細かな部分まで忠実に再現されている。 ミニフィギュアにしてはクオリティの高い物だった。

 

こんなものがなぜあるのかと驚きを隠せない宗谷、それを見るや否やネプテューヌはにやりと得意げにほほ笑んで見せた。

 

「ふっふ~ん! いいでしょ~、なかなか出ないんだよね~」

 

「本当だ! お姉ちゃん本当に出たんだ、私まだ出したことないのに……いいなぁ」

 

「あたしも~、まだ出たことないよ~」

 

「ぴぃも! ぴぃもねぷてぬの欲しい!」

 

そしてそれに集まるようにしてネプギアとプルルート、ピーシェの三人もまじまじと彼女の手の上にあるフィギュアを覗き込む。

だが、宗谷の中にはそのフィギュアに対する驚きとは別に……ある一つの疑問があった。

 

 

 

「………ところでさ、さっきから出たとか出てないとかいうけど、これなに?」

 

 

 

率直な疑問、わからないからこそ当事者たちに聞く。

宗谷はそれの周りに集まっている四人に何気なくそう問いかけた。

 

すると………。

 

 

 

『え………?』

 

 

 

四人が一斉に宗谷の方に向くや否や、声をそろえて硬直し、何と言い現わせばいいのかもわかりにくい冷ややかな目を向けてきた。

 

ストレートに言葉で言い表すのなら……。

 

『うわ、マジで? こんなことも知らないの? やばくね? ありえなくね?』

 

と言う感じの憐れむような目だ、この四人にそんな目を向けられると思っていなかった宗谷はさすがに胸が痛かった、というよりなんか耐えがたい何かがあった。

 

「ちょ、やめて、その目やめて……なんか刺さる、心に刺さる」

 

「いや……だって……ねえ?」

 

「これを知らないっていうのは……さすがに……」

 

「そーくん遅れてるね~」

 

「おくれてる~」

 

「ちょっと待って!? 俺そんなに言われるの!? そこまでやばいの!? ねえ!?」

 

いつになく四人の反応が本気のそれだったことに軽くショックを受けた宗谷は焦りながら四人に問いかける。

どうやらこれは知っていなくてはいけない程の物らしい、それを感じ取った宗谷は慌てて四人に、必死に食い下がった。

 

「とりあえず教えてくれよ、なんかその反応されたら俺ツラい!! この先その目を思い出して夜な夜な枕を濡らしそう!」

 

「いや、それはさすがにメンタル弱すぎじゃない? ガラスのハートなのは知ってるけどさ……」

 

「でもお姉ちゃん、宗谷さんここ最近忙しくて知らなくて当然かも……お部屋に戻ってもアニメもゲームもする時間が減ったみたいだし」

 

「何気にネプギアが俺のお楽しみのプライベートタイムを知っていることにはツッコミを入れたいんだが……」

 

「だって宗谷さんのお部屋と私のお部屋割と近いですし、宗谷さんってお姉ちゃんと一緒で興奮すると何かしら声を出しますよね、“キターッ!”とか、“やばい、心が……心がぴょんぴょんするんじゃあ~!”とか……」

 

「やだ恥ずかしっ! 今後気を付けよう俺!?」

 

ネプギアの報告で自分がプライベートで出している恥ずかしい一面を自覚してしまった宗谷は咄嗟に顔を両手で覆うようにして隠した。

無理もないだろう、自分にとっては無防備な瞬間であると同時にあんまり見られたり聞かれたくもない瞬間でもあるのだから……。

 

だが今はそれは二の次だ、問題はネプテューヌが持っているこのフィギュアの正体だ。

 

「………そうだねぇ、この際だから教えちゃおう! ソウヤ、これはねぇ………」

 

「………これは………?」

 

「これはですねぇ………」

 

「………これはね~?」

 

「これはー!」

 

「………これは………なんなんだ!!」

 

いつになくもったい付ける四人、なにやら宗谷の反応を楽しんでいるような父子すらも感じるその微笑み……心なしかプルルート当たりのSっ気が移ってきたのではないのだろうかと疑ってしまう。

焦らしに焦らされ、痺れを切らした宗谷が声を大きくすると……。

 

 

 

「“チョコエッグ”よ」

 

 

 

何の前触れもなく、目の前の四人とは違う後ろの方からそう返答が帰ってきた。

それに反応した宗谷がすぐさま後ろへと向けると……。

そこにはここで宗谷達と共に仕事をしたり、何気ない会話を交わす三人の人物がいた。

 

「あ、アイエフ! コンパさん! それにシンシアも!」

 

「まったく、何意地悪してるのよ、ネプ子……ネプギアまで一緒になって」

 

「あ~、あいちゃんひどいよ~、焦らすに焦らしてドーンって発表するつもりだったのに~!」

 

「あ、あはは……つい、流れに身を任せちゃいました……」

 

やはりプルルートの秘められたSが伝染してしまったのではないのか、とこの二人の話を聞いて思ってしまった宗谷、だが何はともあれ部屋にやってきたアイエフのおかげでこのフィギュアの正体を知ることが出来た。

 

「それにしても、チョコエッグか……俺の元いた世界でもその類は会ったけど、ゲイムギョウ界でもあったんだな」

 

“チョコエッグ”。

 

至極一般では食玩として扱われているおもちゃとお菓子がワンセットになっている商品の事だ。

このチョコエッグは包みを開くと卵型のチョコがあり、それを食べると中にはおまけとなる小さなおもちゃが入っているという仕組みだ。 周りのチョコが溶けて中のフィギュアが汚れることのないように大概はその中にもう一つプラスチックのカプセルやビニールが入っていることが多い。

 

どうやらネプテューヌが持っていたのはそのチョコエッグの中身だったという訳らしい。

 

「最近これを売り出したのよ、そこにいるネプ子が考案してね?」

 

「え!? これお前が考えたのか!?」

 

「えっへん! そのとーり! アイデア提供わたし、後の事もろもろはいーすんに任せて作りました!」

 

「威張って言うことじゃないだろそれ、ほとんど押し付けてんじゃねぇか!?」

 

凹凸もない平坦な胸を張って得意げにそう言った彼女ではあるが、ほとんどの仕事はイストワールの物であるのが残念なところだ…。

 

「おかげさまでイストワールさまはそのことで大忙し……今日もその売り上げの確認と今後のシリーズ打ち合わせで出かけてるわ」

 

「かくいうわたしたちも、休憩ついでに近くのお店で買ってきちゃったです」

 

「………ぅ」

 

「どうりで見ないと思ったら、俺の知らない所でそんなことになってたとは………それで、このチョコエッグって具体的にどんな内容なんだ?」

 

両手にビニール袋を持ったコンパとシンシア、アイエフでさえも片手に持っている。

 

根はオタク気質というか一オタクとしてやはりこういうのには興味が行ってしまうのか、三人の持っているそれに目を向けた後宗谷はそう問いかける。

チョコエッグというのはその構成故に重要なのはその中身にある。

チョコはあくまで周りを隠すカプセルであり、一番人を引きつけるのはその中に隠されたおもちゃの方である。

ネプテューヌが見せてくれたフィギュアから察するにどうやら女神関連なのは何となくわかるが、やはりそのラインナップを気にするのはオタクとしての性質らしい。

 

「そこは考案者である私が説明するよ! カモン、ホワイトボード!」

 

「えっと、どこだっけ……あ、そうだこっちの部屋に……すみません、誰か手伝ってくださーい!」

 

「あ………は、はい………」

 

ネプテューヌが張り切ってそういうと、それに合わせてネプギアが動き出し隣の部屋の扉を開けるとその中に入って行った、その手伝いをしようとアイエフの後ろにいたシンシアもその部屋の中に入って行くと二人してキャスター付きのホワイトボードをよいしょよいしょとリビングへと運んできた。

 

少々段取りが悪いものの、そこにはいくつかのフィギュアのラインナップが描かれたポスターが張られていた。

 

 

「私が考案したこのチョコエッグは……その名も! “ゲイムギョウ界チョコエッグ”!」

 

 

ポスターに大文字で大々的に記されているその名前、捻りも何もない丁度ストレートなその名前に反射的に正座で聞いていた宗谷は一瞬どう反応していいのかわからない反応を見せたものの、それはお構いなしと言いたげにネプテューヌはばしん!と勢いよくホワイトボードを叩く。

 

「まあ、チョコエッグが何なのかは地の文とかが適当に説明してくれたと思うのでそこは割愛して……あ、流し見しててわからないから気になるって人は上にスクロールしてね♪」

 

「おい、そういうこと言うのやめろ」

 

「メタ~だね~」

 

………とにもかくにも、宗谷とプルルートのツッコミを無視してネプテューヌは誰もが気になるであろう核心づいた内容、チョコエッグの中身について説明を始める。

 

「要するにこのチョコエッグの中に入ってるのはゲイムギョウ界を代表するスライヌとかの5種類と、メインの私たち女神がフィギュアになって入ってるんだよ、変身前、変身後も含めて、しかも! プラネテューヌだけじゃなくて四か国の女神全員がラインナップ!!」

 

「な、なんだってぇぇぇぇえええええええええええええええええ!!」

 

反射的に叫んでしまった宗谷だが、なかなかに豪華なラインナップなのは確かだ。

このゲイムギョウ界に女神はネプテューヌを含めた四女神、そしてネプギア達女神候補生の四人を含めて合計で八人、しかもその変身前もあるとなると種類は合計で21種類という豊富なラインナップになっている。

 

「しかも、私の考案でぷるるんもフィギュア化されているんだよ!」

 

「まじかよ!? サービス良すぎじゃないか!?」

 

「さらには超超レアなシークレットもラインナップ!!」

 

「コレクター心をくすぐる所もわかってる!! ていうかそれって他の国のみんなも知ってるのか!?」

 

「もちろん! ちゃんと許可は取ってるよ! 交換条件としていくつか出されたけど、そこも考慮して今、ゲイムギョウ界の四大陸で大発売中!」

 

なんということだろう、異世界のゲイムギョウ界から来たプルルートまでフィギュア化されているとは予想外だったのだろう、宗谷は驚きを隠せずとなりでにこにことしているプルルートを見る。

しかも四大陸で大々的に発売されているとはこれは思っている以上に大きなプロジェクトになっている様だ。

 

「おかげで今ゲイムギョウ界は空前絶後のチョコエッグブームが巻き起こってるのよ? ネプ子のアイデアとはいえまさかここまでになるなんて思いもよらなかったわ……」

 

「ふっふ~ん、私だってたまにはいい仕事するんだもんね~!」

 

得意げにVサインをするネプテューヌ、だがそれよりもアイエフの言葉を聞いてから……宗谷はわなわなと体を震わせながらその場に手をついていた。

 

「お、俺としたことが………こんなサブカルの一大ブームになっている波に………しかも、その発信源の近くに居ながら気づくことが出来なかったなんて………!」

 

「………あの~、アイちゃん、宗谷さんの様子がおかしいです……状態異常です?」

 

「違うわよコンパ、あれはオタクのプライドが傷ついたことによる心のダメージだから……気にせずともすぐに治るわよ」

 

「ただいまで~す……あれ? 皆さん揃って何してるんですか?」

 

心配そうに宗谷を見るコンパと憐れむように宗谷を見ながらやれやれと首を振るアイエフ、するとそこに教祖補佐見習いとして最近この教会で働き始めたハルキとステマックスも部屋に帰ってきた。

………その手に四角い箱がいくつか入ったビニール袋を持ちながら。

 

「っ!? は、ハルキ、それは!!」

 

「え? あー、おやつのついでにコンビニで買ってきたんですよ、なんかつい……集め出したら止まりませんねこれ」

 

そう言って取り出したのは件のゲイムギョウ界チョコエッグ、しかも後ろにいるステマックスでさえも同じように持っているではないか……。

 

「そ、そういうのに疎くて、どっちかというとかわいいぬいぐるみとか集めてそうと思っていたハルキでさえ……!?」

 

「先輩、普段ボクにどういうイメージ持ってるかわかりませんけど、ボクも男だってこと忘れないでくださいね? 可愛いものは好きですけど」

 

「しかし、以外でござるな……天条殿がこのような流行に乗り遅れるなど」

 

ステマックスがそういうと、まわりの全員が確かにと言わんばかりにうんうんと頷く。

その反応がさらに宗谷の心のうちにえぐい角度のボディーブローのような衝撃となって襲い掛かってくる。

 

「ぐはっ………くっ………こうしちゃいられない……俺も早く買ってこないと!!」

 

「あー、それですけど……たぶんもう売り切れですよ、ボクが行ったらほとんど売れてましたから」

 

「チクショウ!! 遅かった!!」

 

決意するが早いか早速コンビニへと向かおうとした瞬間、ハルキの言葉にすぐさま心が折れて宗谷は甲子園の熱血野球少年がくりだすヘッドスライディングも顔負けな勢いでその場に倒れ込んだ。

 

「ただでさえ人気ですからね~、小さな子からマニアな人にまで」

 

「最近だと動画投稿サイトでレビューとか出てますからね?」

 

「それに許可をもらったノワールたちも集めてるらしいしね?」

 

「マジで!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ラステイションでは……。

 

「あむ………ん、これは………やったわ! ようやくネプギアがでた!」

 

壁に掛けられたアンティーク銃が特徴的な黒のちょっと大人を目指した部屋の雰囲気が特徴的なこの国の女神候補生のユニがチョコエッグを齧り、その中のカプセルを取り出し、中身を確認するとそれは女神化前のネプギアのフィギュアだった。

 

このチョコエッグのアソートは所謂不均一アソートであり、変身前の女神の9人はなかなかのレアでなかなか出ないのだ。

これが女神化した姿となったらそのレア度は相当なものになり、出たら大騒ぎ者だと言われるほどという…。

 

簡単にレア度を表すなら……。

 

スライヌを含めた5つが星1から3と出やすい。

 

女神化前の9人が星4で稀に出て来る。

 

女神化後の9人が星5でなかなか出て来ることはない、と言った所だろう。

 

そんな中ユニが引き当てたネプギアは当てた本人からしたら不意に頬が緩んでしまう嬉しさだ。

彼女が身に着けているセーラーワンピという特徴的な衣服と可愛らしい微笑みと立ち姿はつい見入ってしまう魅力がある。

 

「まったく……いつも仲良くしてあげてるのになかなかでないなんて、どういうつもりよ? ……べ、別にほしいわけじゃないんだけど……」

 

箱に同封されている台座にネプギアのフィギュアを立ててそう言いながら指先でツンツンとしながら、少し頬を赤らめてそう言ったユニ。

ガンマニアな自分でさえもこれにハマってしまうとはなかなかに恐ろしい魅力が秘められているなと、机の上に置かれている5つの空箱と4つの低ランクフィギュアを見つめた。

 

「そう言えば……お姉ちゃんはまたレアなのを当てたのかな? お姉ちゃんも誰かを狙ってるらしいけど……」

 

ふと気になったユニは自分の姉の部屋へと向かうべく、立ち上がり廊下に出るとこの時間帯彼女がいるであろう仕事部屋の方へと向かった。

今は休憩時間のはずだから、とこっそりとドアの隙間から中の様子を窺うと……。

 

 

 

「………違う………むぅぅ、これも違う………これも違う………あーもー!! なんで出ないのよ~~~!!」

 

 

 

次々とチョコエッグを開けては中を見て悔しがるノワールの姿があった、ここ最近はある種類を狙ってチョコエッグを買いあさっているらしいのだがなかなかそのお目当ての者が出て来なくてこんな様子が続いているのだ。

 

どうやら今日もお目当てのものが出て来ず、傍らには空き箱と狙いとはずれた低ランクのフィギュアが積まれている。

その近くのボウルにはチョコエッグの残った部分が入れられており、あれ全部を一気に食べたら虫歯どころの騒ぎじゃ済まないだろう……。

 

「………今日もあのチョコはチョコケーキにして置いておくかケイさんにでもおすそ分けかな………あれ?」

 

そんなことを考えながらふとユニが彼女の机へと目を向けると……。

 

そこには小さいがはっきりとわかるシルエットのフィギュアが2体ならんでいた。

あれは………見間違うはずもない、片方は自分の姉、ノワールが女神化した姿、ブラックハートのフィギュアだ。

凛々しい黒のプロセッサユニットと猛々しい大剣を構えるその姿は美しさを感じずにはいられない出来になっている。

そして、その隣に並んでいるのは……。

 

「………あたしだ」

 

自分が女神化した姿、ブラックシスターのフィギュアだった。

姉と同じ黒のプロセッサユニット、両手で持つ大きな銃の完成度は自分が見ても忠実な物だ。

だが、彼女が何よりも強く印象に残ったのは……ノワールの机の上にその2つのフィギュアが並んでいたこと………それが何となくだが、ユニは溜まらなく嬉しく感じたのだった。

 

「あ~~~~~~~!! 最初はそんなつもりもなかったのに……ここまで集めちゃったらもうどうしても狙っちゃうじゃないの!! 別にほしいとか言ってないけど!!」

 

狙いが出ずに悔しがるノワール、それをユニは見た後微笑んで小さな声でこうつぶやいた。

 

 

「………がんばれ、お姉ちゃん」

 

 

気付かれないようにそっとドアを閉めた後、ユニはそのまま嬉しそうに鼻歌謳いながら自室へと戻るのだった。

 

(それにしても………お姉ちゃんがあそこまで欲しがるのって、誰なんだろう?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってルウィー、ここでもチョコエッグのブームの波は直撃していた。

ルウィー教会の一角にある、女神候補生、ロムとラムの二人の部屋では休憩時間を利用してブランがその部屋で二人の妹と共に先程二人が買ってきたチョコエッグを開封しているところだった。

 

「ロムちゃん、どれにする? わたしは……これが出ると思うの!」

 

「わたしは………こっちかな……」(ドキドキ

 

「………二人はいつも慎重ね?」

 

3人で囲むようにして床に置かれた6つの箱、それをじっと見つめながらロムとラムはどれがいいかと悩みながら目移りをしている。

ロムとラムは他の女神候補生よりも見た目的には幼い、そのため甘いものの食べ過ぎは場合によっては虫歯になりやすいのではないかというブランの考慮から、チョコエッグを買う時は一人2個までという決まりを設けているのだ。

最初こそラムが不満そうにしていたものの、少ない数の中でレアを当てる楽しみを見出してきたのか、今ではこの時間を楽しんでいるように見える。

ロムもまた同じでラムと一緒になってどれにレアな物が入っているのかを探すのが楽しい様だ。

 

二人とも純粋な眼でチョコエッグを見定めている、その姿を微笑ましく見守る姉のブランは妹たちが買ってきたチョコエッグのあまりを待っている。

 

「ねえねえ、おねえちゃんはどれに入ってると思う?」

 

「迷っちゃう……教えて?」(うるうる

 

「え………えっと……そうね」

 

不意打ちでそう頼まれたブランは少々戸惑いながらもうーむと顎に手を当てて考え込み、どの箱がいいのかと目を向けていく。

できることなら期待にこたえたい、しかし不均一アソートでしかもなかなかレアが出ないとなるとこれ総てが外れという可能性もある……果たして本当に選んでいいのだろうか………。

 

そう考えながら二人を見ると……。

 

「「………」」(じ~……

 

とても真剣すぎる目で見据えられている。

この目は二人も本気という目だ、今回は自分に完全にゆだねているらしい。

こうなっては仕方ない、鬼が出るか蛇が出るか……一か八かで選んでダメなときは仕方ないで済ませるしかない。

意を決したブランは恐る恐ると6つの箱の内、丁度中央に置かれている箱を手に取った。

 

「………これはどうかしら………その、なんとなく……真ん中にあるってことはいい感じな気がするわ……」

 

「真ん中……うん! おねえちゃんが決めたならそれにしよう!」

 

「おねえちゃん……信じてる……」(わくわく

 

「うぅ……二人の期待がすごくのしかかってくる……」

 

妹から与えられるプレッシャー、それに気圧されながらも……ブランはその箱を開けていく。

 

「………そ、それじゃあ、行くわ」

 

包みを開けてそう告げる、自然とそれを見守っていたロムとラムも反射的にごくりと生唾を飲み込む。

ここまで着たら跡には戻れない、決意を固めブランは茶色のタマゴ型チョコをてっぺんから一思いに齧る。

 

そして、ドキドキとしながら中身を取り出すと……。

 

 

 

「………わぁ!! おねえちゃん! おねえちゃんすごーい!」

 

「すごい……大当たり……!」(ぱちぱち

 

「え………う、うそ………」

 

 

 

何と出てきたのはレア中のレアの一つ、ブランの女神化した姿、ホワイトハートだった。

 

雪と同じ真っ白なプロセッサと片手に持つ勇ましい戦斧、光を反射する氷のような美しいアイスブルーの髪と小柄な体躯からは想像もつかない力強さに満ち溢れたポージングが目を引いてしまう。

数を決めていたが故にレアが出るのは限りなく少ない中、まさか自分のレアなフィギュアが出るとは思ってもみなかったブランは呆気にとられた表情を浮かべる。

 

「よし! あとはわたしたちの女神化したフィギュアを出せば目標達成ね!」

 

「うん、がんばろ、ラムちゃん……!」(にこにこ

 

自分が当てたわけでもないのに、ここまで喜んでいる二人……それを見るとブランは自然と口元に微笑みを浮かべた。

 

「………ええ、頑張りましょう……3人、絶対揃えるまで」

 

「「うん!」」

 

ルウィーの女神達も、このブームをそれなりに楽しんでいる様だった。

 

 

 

(………できることなら、“例のシークレット”も当てたいところだけど………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに、リーンボックスでは………。

 

リーンボックス教会のベールの自室、彼女の趣味であるゲームやあれやこれやのフィギュアがディスプレイされている中でこの部屋の主、ベールはその一角でなにやら真剣な眼差しで何かと向き合っていた。

 

「………ここを……このくらいに……ああ、これでは近すぎてしまいますわ……焦らず、ちゃんとした自然な距離を意識して………」

 

ぐぬぬと言いたげな表情を浮かべながら細かに腕を動かしていく彼女、そしてしばらくすると彼女はふとやり遂げたような満面な笑みを浮かべた。

 

「はぁ……ようやくできましたわ! わたくしの努力の結晶! わたくしと妹たちの理想郷が! 遂に完成しましたわ!」

 

嬉しそうにその場で手を合わせて、改めて自分が作り上げていたその努力の結晶を見つめる彼女、その視線は妙に艶やかでまるで夢見る少女と言いたげな印象が窺える。

見た目が一番大人に近く、お姉さんという印象が強い彼女でもある部分では少女らしさというものを持ち合わせているということなのだろうか。

 

そんな彼女の目の前にあるのは………妙に作りこまれた一軒の家とその庭を忠実に再現したジオラマとその庭で仲睦まじそうに並んでいるベールを中心に左右一列に並んだネプギア、ユニ、ロム、ラムの女神候補生たちだった。

 

「あぁぁ……チョコエッグを大人買いした甲斐があったという物ですわ……ただでさえレアは出にくいため4人を揃えるのは苦労しましたもの……なのに、なぜかわたくしのフィギュアはダブりが多くて一瞬自分自身にイラつきを持ってしまいましたわ」

 

4女神の中で唯一妹である女神候補生がいないベール、そのうちに秘めたる妹への憧れは今チョコエッグでそこまでに至らしめたというのか……この情熱がどれほどのものなのかは彼女の後ろにこんもりと山積みにされているチョコエッグの空箱を見て居れば一目瞭然だろう……一体ここに至るまでチョコはどうしたのだろうか………。

 

「やっぱりネプギアちゃんはわたくしの隣にいてこそですわ……この理想郷はそれだからこそ輝くという物……うふふ、わたくしともあろうものが胸が躍ってしまいますわ……うふふふふ……♪」

 

妙に艶めかしく頬を赤らめて自分のフィギュアの隣に立つネプギアのフィギュアを見つめるベール、心なしか彼女の大きな胸が息遣いに連れてふる、ふる、と揺れているのは気のせいだろうか……それともチョコを栄養源にまた膨らんだとでも言うのだろうか? どちらにせよ、ブランには見せられない光景だろう……。

フィギュアを見つめる彼女自身も少々どこか危なげな印象を受けるが、あくまでこれは彼女の理想がそうさせているだけだ、きちんと彼女は節度こそ弁えている………と、信じたい。

 

「さあ、後は………女神化したわたくしと女神化した妹たちの分が揃えれば、完璧に……!」

 

………このチョコエッグは彼女のもう一つの、新しい扉を開かせてしまったと同時に………彼女の憧れを更に昂らせてしまったようだ。

 

 

 

「あ、でも……あれも手に入れなくてはなりませんわね……あれがあってこそ、わたくしの理想郷は完成する……そう、シークレットの2種類の……あの二人を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、場所は戻ってプラネテューヌ教会では………。

 

「………」

 

宗谷がリビングルームの椅子に座って机に顔面を押し付けるようにしてどんよりとしたオーラを放っていた。

余程流行に乗り遅れたのがショックだったらしい……。

 

「ガラスのハートにもほどがあるんじゃないかな、ソウヤ」

 

「仕方ないわよ、あいつ何気にそのあたりのこだわりが強いし、みんなが楽しそうにしているのにその輪に入れなくて悔しいんでしょう?」

 

「正論すぎて何も言えないのがツラい………」

 

か細い声でそう答えた彼は、どこか遠い目をしている。

するとその時……。

 

 

 

「ん………ぅ……あ、これ……」

 

「ほえ? ……あ~! シンシアちゃんがあたしを当ててる~!」

 

「え!? 本当だ! シンシアさん、それって女神化したプルルートさんですよね! いいなぁ、それ最高レアの中でも特に出ないんですよ!」

 

 

 

どうやらシンシアが自分のチョコエッグを開けると最高レアのアイリスハートを当てた様だ。

日ごろの行いかそうでないのか、シンシアは何気にそのあたりの幸運が高い様だ今日の様子を見るとアイリスハートを引き当てるに至るまでに女神化前のノワールとネプテューヌを当てているという幸運の持ち主だ。

 

「さすがでござるなシンシア殿……」

 

「………別にどうでもいいよ………あ、やった、パープルシスター様だ」

 

「うっそぉ!! ハルキも当てたの!? 見せて見せて! ていうかこれでプラネテューヌの女神化全員集合だよ!」

 

更には女神化したネプギアまでハルキが引き当てるという出来事にその場の空気はかなり上がって行っている。

そんな中……それに取り残された宗谷は……目も当てられない空気になってしまっている。

 

「………人気だしなぁ、次の入荷っていつになるのかなぁ………」

 

頭を抱えて思い悩む宗谷、するとそこに……。

 

「………あ、あの………」

 

唐突にシンシアが近づいてきた、人見知りでなかなか自分から声を掛けることは少ない彼女だが、この教会で仕事を始めてしばらくして徐々にだがこうして話しかけてくる回数も増えてきた。

そんな彼女は落ち込んでいる宗谷に近づくと、徐に先程自分が当てていたアイリスハートを宗谷に差し出した。

 

「………よかったら………」

 

「………え?」

 

「な、なん……だと……! 自分が引き当てたレア中のレアを、見兼ねて無条件で差し出すなんて……シンシア、恐ろしい子!?」

 

「いや、なんでそうなる……でも、シンシア……これはちょっと……」

 

恐らく彼女の性格上、落ち込んでいる宗谷がかわいそうだったからという至極単純なことからこれを渡そうとしているのかもしれない。

彼女のやさしさは本物だろう、それは何気に交流を重ねているからわかる……正直その気持ちは嬉しいし、ありがたい……だがそれでも……。

 

「……悪いけど、これは受け取れないな……これはシンシアが頑張って当てたものだ、こういうのは自分で当てたからこそ価値があるんだぜ?」

 

「で、でも………」

 

「気持ちはありがたいよ、ありがとうな? だけど何より、それはお前の友達のプルルートだろ? だったら尚更、お前が持つべきだ」

 

「あ………」

 

宗谷の言葉に呆気にとられたシンシアはハッとして手の平に乗せているアイリスハートのフィギュアに目を向ける。

彼女にとっては思い入れもあるプルルートとの出会い、その時に出会ったアイリスハートの言い知れぬ迫力とその中に秘められた妖艶さを放つフィギュア、確かに手放すのが惜しくないかと言われれば抵抗はある。

 

「それにちゃんと持ってないと……本物にいじめられちゃうかもしれないぜ?」

 

「っ………あぅ……」

 

「え~、あたし~、そこまでいじわるしないよ~」

 

「いじわる事態は否定はしないのな……うしっ、くよくよもしてられないな、売ってる店を今のうちにリサーチしないと! レッツゴー、ネットの海!」

 

シンシアなりの励ましも受けた宗谷はそう言って気合を入れ直すと、早速とばかりに自室へと戻っていった、休憩時間が終わるまでの間出来るだけ情報収取をしようということらしい。

それを見たネプテューヌとアイエフは互いに顔を見合わせるとやれやれと言いたげな表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「といったものの……やっぱり人気な物だと店で買うには相当苦労しそうだなぁ……場所によっては一人数個までって決まりもあるみたいだし」

 

そう言って部屋に戻るや否やネットを開いて画面とにらめっこをする宗谷、調べて得た情報を見て難しい表情を浮かべる。

ブームという物は恐ろしいほどの影響力がある、個数制限が設けられる当たりその人気が窺える。

一体どうしたものかと、宗谷が悩んでいると……。

 

「……宗谷さん? 休憩時間そろそろ終わりますよ?」

 

「おろ!? い、いーすん、戻ったのか……お疲れさん」

 

不意にイストワールが彼の部屋を訪ねてきた。

どうやら帰って来た直後だったらしい、手には何か手荷物を持っているようだ。

 

「ネプテューヌから聞いたけど、大変だな……お疲れ様」

 

「いえ、最初こそ処理に3日かかったりで大変でしたけど、思いもよらぬ流行に乗ったおかげでこちらとしても今回はネプテューヌさんのお手柄と言わざるを得ません」

 

宗谷のねぎらいの言葉に対し、苦笑いで返すイストワールはどうやら今回のこのブームに意外性を感じたと同時にこの結果が予想外ということもあって少々の戸惑いがあったようだ。

いつもならネプテューヌに文句の一つぐらい言いそうなものだが、今回は言えないと自覚しているらしい。

 

「あはは、でも知らなかったぜ、俺の知らない所でそんなブームが起きてたなんて……はあ、俺ももっと早く気付いてたらなぁ……」

 

「ふふ、そういうと思って………はい、これ」

 

「………ん?」

 

すると、突然イストワールが手荷物の中に手を入れるとそこから手のひらサイズの四角い箱を取り出した。

その箱のパッケージを見ると、宗谷は目を見開いて驚きの表情を浮かべた。

 

「ゲイムギョウ界チョコエッグ!! い、いーすんなんで!?」

 

「帰りによって買ってきたんです、宗谷さんがまだ気づいてないならこれを機に教えてあげようと思いまして……でも、そのお店は残り二個までだったのですけど……折角なんで、いつも頑張っている宗谷さんのチョコエッグデビューということで一個差し上げます」

 

「………いーすん………てんきゅぅぅぅぅうう!」

 

天使とはこのことなのだろうか……そう言って差し出されたチョコエッグを大事そうに手に取った宗谷は軽く泣きそうになりながらもイストワールに感謝の眼差しを向けると、すぐさま自分の服の袖で目元をぐしぐしと拭うとイストワールに近づいて反射的にその腕で彼女を抱きしめた。

 

「ひゃわぁ!? い、いきなりなにするんですか!? そ、宗谷さん……ちょっと……もう!」

 

「あ、ごめんつい……でも、嬉しいよ……ありがとう、本当に」

 

「……まったく、変なところで子供なんですから」

 

慌てて彼女を離した宗谷は純粋な笑みを浮かべる、それを見るとイストワールも無意識の内に微笑みを浮かべてしまう。

自分の愛する人の笑顔で自分もうれしくなる、そういうことなのだろうか……二人は笑顔を浮かべたまま互いにチョコエッグを手に取ると、言葉も交わさずに一度頷き合った。

 

「せっかくだし、一緒に開けようか、丁度一個ずつだし」

 

「はい、そうしましょう、何が出ても怨みっこなしですからね?」

 

互いの手にあるチョコエッグの箱、二人は部屋のベッドに互いに腰かけると箱を開封し、中の包装紙を取り出す。

包みを開けていよいよ卵型のチョコを取り出すと、宗谷とイストワールは互いに目を向け合い……。

 

「「せーのっ……」」

 

息を合わせてそのチョコにかじりついた。

ミルクチョコレート独特のまろやかな甘みと風味が口いっぱいに広がり、溶けにくいようにできているのか噛んだ瞬間に『パキっ!』と音がするのが心地いい、甘いチョコの味を楽しみながらも宗谷は待ちきれないと周りのチョコをいそいそと食べ進め、イストワールはそれをまるではしゃいでいる弟を見守る姉のような表情で見つめる。

 

そして、二人が遂に中身を取り出す。

一体何が入っているのか、少しの期待と高揚感を胸に、宗谷がイストワールと再度タイミングを合わせてそれを開けると………。

 

 

 

「………え、これって………」

 

「………あ」

 

 

 

出てきたのは、二人にとって予想だにしない物だった。

 

出てきたのは女神のうちの誰かでもなければ、スライヌのようなモンスターでもなかった………でてきたのは………。

 

 

 

「これって………いーすんのフィギュアだよな」

 

「私のは………宗谷さんです、変身した姿の………」

 

 

 

なんとそれはフィギュアになったイストワールと宗谷が変身したクロス・ヴィクトリーのフィギュアだったのだ。

あまりにも予想外な中身に二人は呆気にとられた表情を浮かべて互いに当てた中身を見る。

 

「これ……ネプテューヌさんが考案したシークレットです……不均一アソートの中でも本当に少ない、最上級レアとしてラインナップするっていって言っていた……私はともかく宗谷さんはちょっとした有名人ですから承諾したのですが……」

 

まさかこのタイミングで、しかもイストワールが買ってきた二つがシークレットとはだれが予想しただろうか……いや、誰も予想などしなかっただろう。

 

「………ふっ……ははっ……ははははははは!」

 

「……ふふ……あはは……!」

 

だからこそ、なぜか笑えてしまう……。

 

互いの思い人のフィギュアが最初のチョコエッグで出るなんて偶然、いや、奇跡にも近いこの出来事を……受け入れるとするなら笑顔でしか受け入れられないだろう。

二人にとっては、それが何となくうれしかったから……。

 

「………並べてみるか?」

 

「………そうですね、並べましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、宗谷の部屋の机には……小さなイストワールのフィギュアとクロス・ヴィクトリーのフィギュアが仲睦まじそうに並んでいたのだった。

 




いかがでしたか?

日常のお話は今のところもう一つ浮かんでいるのでそちらの方も書きあがり次第、投降します!
聖杯戦争編もお楽しみに!

それでは……
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