偽エミヤの英雄譚 作:妄想男
「ランクA!!十年に一人の天才がこんな所に!?」
「英雄クラスの魔力だと!!?」
「魔力の値はどれくらいになっている!?」
「ダメです!この機材ではメーターが振り切っていて詳しい数値が計測できません!!」
ヘッドホン越しに白衣の男性達の声が聞こえる。
そしてヘッドホンからピーという機械音が聞こえ音声メッセージが流れる。
『目を閉じ、この後流れる音に集中してください。』
キュルキュルというテープの早送りのような音が流れると頭が冴え渡り、瞳を閉じた暗い視界が『無限の剣製』の
光景へと変わる。
荒野に突き刺さる大量の聖剣・魔剣。
古今東西の宝具が目の前に広がっている。
――― 体は剣で出来ている
血潮は鉄で、心は硝子
幾たびの戦場を越えて不敗
ただの一度も敗走はなく
ただの一度も理解されない
彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う
故に、その生涯に意味はなく
「待った!衛宮君、もうやめなさい!!やめるんだ!!」
その体は、きっと剣で出来ていた
聞こえていた音が止んだと思ったら肩を大きな手に掴まれ、揺さぶられる。
瞼を開けると目の前には大量の武具が地面に突き刺さっていた。
青い空と草原と剣が広がる剣の丘。
どうやら俺の固有結界≪無限の剣製≫
白衣を着た男性達も担任の先生やクラスメート達も誰一人、例外なく驚愕の
表情を見せている。
願いの叶って戻る事になったかつてのあの頃。
この日俺の人生は劇的な変化を遂げて、本来辿るべき未来が失われた。
今日この日、俺の人生は新しく始まる。
☆☆☆
魔力検診が終わった後は、様々なイベントが発生した。
なんと俺がテレビに映り、雑誌やネットに記載されたのだ。
『未来の剣王候補出現か!?』
『人類史最高クラスのAランク現る!!』
『総魔力量の世界記録を三十年ぶりに更新!!』
『新しい形のブレイザーが誕生か!?』
俺が有名になったのは総魔力量世界ランキング一位を乗り越え、世界記録を更新した事と
人類史初の新しい形のブレイザーであるからだ。
新しい形のブレイザーと呼ばれる理由は俺の《無限の剣製》にある。
異能・魔法・ノウブルーツとも言われる力は世界の常識だとデバイズを媒体
にして使用するのだが俺の場合は違う。
《無限の剣製》という異能からデバイスを顕現させ、顕現したデバイズの
能力を発動させる普通ではあり得ないブレイザーだからだ。
おかげで俺は東京へと引越し、魔導騎士制度の育成規則によって俺や俺の家族
は国の保護対象となった。
そして俺は魔導騎士への道を歩む為に東京にある優秀なブレイザーを育てる機関が運営している
小学校に通うことになり、勉学以上に魔導騎士としての訓練を本格的に行うことになった。
それにより、今日もこうして体育館の隣に建設された、特殊な素材で出来ている訓練所で
身体強化の授業を受けている。
「では、身体強化の魔術に関する授業を始めます。
身体強化とは己の魔力を人体に循環させ、強化する初歩の魔術です。
魔力の存在は魂を形にしたデバイズを顕現させた時に本能で感知していると
思います。
身体強化の魔術は感知した魔力を強化したい人体の一部か全身に魔力を
循環させる事で成立する初歩の魔術です。
上達すれば、全身もしくは体の一部を強化した状態で戦闘を行えるようになります。
それでは皆さん。デバイズを幻想形態で顕現させて身体強化の魔術をコントロールする為の
訓練を今から行います。
後、衛宮君は山田先生と少し離れた所で魔力を暴走させないように山田先生と訓練してください。
君に備わっている強大な魔力が暴走をしたら大変ですから。
山田先生。彼をよろしくお願いしますね。」
《幻想形態》
幻想形態とは人間に対してのみ、物理的なダメージを与えず、体力を直接削る
形態でデバイズを顕現させる状態だ。
この世界では警察官が犯人を捕らえるさいに使用するのだとか……。
なんというご都合主義。
しかし、この幻想形態は物理に関しては何故か攻撃が通り、人間は殺せないが
無機物は破壊できる。
魔導騎士の規則により、中学まではこの幻想形態で訓練を行い、日本にある
騎士学校からは完全形態で顕現して国の守護者となる為に訓練を行う。
周りのクラスメートたちは自分のデバイズを顕現して訓練を始めるなか、俺は副担任の先生
と共に訓練所の端で目の前にいる山田先生と共にクラスメートとは違う訓練を
行うことになる。
「では、衛宮君。まずは右手だけを身体強化をしてください。」
「はい」
先生に指示に返事をすると当時に右手に魔力を集中させる。
「では、この発砲スチロールで出来た長方形をジェンガのように積み上げてください」
訓練所の隅においてあったダンボールを俺の前に置く山田先生。
中には大量の小さな長方形の発砲スチロールが大量にあった。
俺は先生に言われた通りダンボールの中にある発砲スチロールをジェンガのように積み上げよう
と掴んだ瞬間、発砲スチロールはへし折れてしまう。
「身体強化は自身の力を何倍にも引き上げてくれますが強化できる力をコントロール
しなければ大変な事故に繋がる可能性があります。
地味かもしれませんが根気よく続けていきましょう」
訓練ないように思わず、しかめっ面になってしまったが先生は懐かしいものを見るような
優しい眼をして俺に話しかけてきた。
先生もこの訓練をやった事あるのかな?
俺は先生の指導に従いながら、へし折れた発砲スチロールを生産しながらも
ジェンガをゆっくりと確実に積み上げていった。
☆☆☆
「ははは、凄まじいね。まさか一日で身体強化をコントロール
出来るようになるなんて……」
口元をヒクつかせながら、詰みあがったジェンガを見る山田先生。
それはそうだろう身体強化の技術習得は一ヶ月を予定していたのに
一日の時間で課題をクリアしてしまったのだから。
手を抜いたほうがよかったのだろうか?
「いや、それでこそ世界最高のAランクの魔力を持つ天才。
魔力コントロールも直ぐにこなしてしまったのなら君専用の
特別な抗議と実技を行うとします」
いや、手は抜かない。
抜いてはいけない。
理想のエミヤになる為に……そして前のような退屈な人生では
なく何時、どんな時に死んでも満足して逝ける様に、この足で歩いていこう!!
本気で人生を楽しみたいのなら!!
二度目に小学校三年生の秋、俺は人生で始めて本気になれる生きがいを見つけた。