偽エミヤの英雄譚 作:妄想男
中学に上がると試合に勝つことが難しくなってきた。
理由は投影した宝具が相手のデバイスに破壊されるようになって来たからだ。
投影は英霊エミヤのように直ぐにでも武器を複製することが出来て、真名開放も本来のエミヤよりも魔力消費を抑えられているが、投影する時の俺のイメージと
生成する時の魔力量によって真名開放の威力や頑丈さが決定されるのは変わらない。
そして何より対人宝具以上の真名の解放を日本政府と協会に禁止されてしまった事も勝ちにくくなった原因だろう。
ゆえに俺の課題は剣をより強く、より頑丈にするためのイメージ訓練を学校で唯一使用許可された誰も居ない訓練所で仮想の敵を妄想しながら一人でやっている。
後、最近だがブレイザーとしての授業を潰して試合を上級生達と試合をしているのは剣製を行うイレギュラーな能力者である俺が何所まで強力な武器を使用できるのか?
そして、俺が世界に通用する騎士となる人材であるのか?
その二つを調べる為の実験でだったことを知った。
そして実験という名の最後の試合で、俺は元世界ランキング3位の《世界時計》と
呼ばれる女性と幻想形態による試合をした。
正直この時の俺は全戦全勝。
投影した宝具を壊されながらも、数多くの試合で圧倒的な勝利を収め、周りにも天才ともてはやされて調子にのって……いや、かなり調子にのっていた状態だった。
そんな状態で俺は元世界ランキング3位の最強の一角と戦うと知った俺はなんの準備もなく戦い、今までにない苦戦を強いられた。
《世界時計》とはよく言ったものだ。
攻撃は時を止められ避けられる。
因果の逆転を行うゲイ・ボルグを投影は邪魔をされて投影が出来ない。
おそらく時を戻してゲイ・ボルグ投影を絶妙なタイミングで阻止しているのだろう。
持久戦に焦った俺は干将・莫耶を大量に投影し、自分と相手を巻き込んでの爆破。
結果は頑丈な体である俺の勝利となった。
正直無様すぎる勝利だ。
とても理想のエミヤとは思えない醜態。
周りは『さすがだ』とか『天才』などと言ってくるがそんなものはどうでもいい。
もう二度とこんな醜態を晒すわけにはいかない。
俺は慢心を正してくれた《世界時計》に感謝をしながら今後の特訓に励んだ。
☆☆☆
《ブレイザー専門の中学校教員・視点》
衛宮 士郎。
総魔力量は世界記録を大きく更新した天才であり。
デバイスを媒体に異能を行使する通常のブレイザーとは真逆のブレイザー。
政府も彼の力を認め、協会と政府、直々に能力制限を受けた天才の中の天才。
私は正直、彼に嫉妬していた。
世界を塗りつぶす大魔術に彼の瞳で解析できる物質なら何でも複製する異能《投影》。
まさにAランクといわれるに相応しい力だ。
私が今まで見て来た才能ある生徒なら、周りにもてはやされる事で性格は歪み、己の力を誇示して周りを虐げる。
もちろん全ての生徒達がそうなるわけではない一部ではあるが、そうならない生徒もいる。
そしてその一部の生徒の中で己の才能に溺れず、努力して将来の為に高みを目指す生徒は
私の知っている限りではほんのわずかだ。
衛宮 士郎も調子に乗っていた時期もあったが、今はなりを潜めて、そのほんのわずかの中の一人だ。
彼が再び真面目に努力しているのを知ったのは学校が終わり、異能の使用を許可された訓練所の戸締り
点検をしていた時だった。
だれも居ないはずの訓練所の中心で一人佇む少年。
彼の好みなのか、模擬戦の際によく彼が使用している夫婦剣を両手に
投影しては剣を鋭く振るい、時には投げる。
そして投げては新しい武器を投影し、剣を振るう。
恐らく仮想の敵をイメージして訓練をしているのだろう。
彼の戦いは何度も見て来たが、夫婦剣の時はまるで清流のように綺麗に剣を振るい
槍を使えば獣のような俊敏さで敵を穿つ。
遠距離では弓を使い、狩人のように敵を仕留める。
………。
本来なら彼を止めて、闘技場の鍵を閉めなくてはならないのだが……。
もう少しだけ、せめて彼の特訓の区切りがつくまでは待っていようと思った。
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