Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~ 作:明棲木親池
霙が口を開く僅かな瞬間まで、陽太郎の焦り、緊張は続いた。
〝何を言うのか〟も、もちろん気になるが、それよりも一番はヒカルの存在だった。
ツリーから視線を外し、振り向く霙と目が合う。
その時、陽太郎は一瞬だけ、霙が何かの確認をした様な――そんな視線を自分に送ってきた気がした。
しかし、その視線はすぐさまヒカルへと向けられる。
「ヒカル、覚えているか? このツリーのことを――」
霙の問いにヒカルは、戸惑いの表情を浮かべたが、すぐさま言葉の意図を理解した。
「あぁ――もしかしてあの時の事を言ってるのか? 霙姉――」
抽象的な姉妹の会話に陽太郎は理解する事が出来ない。
――いや、あの時と言っているのだ、多分これは――俺が知らない頃の話だ。と、陽太郎は心の中で結論付けた。
すると、霙の視線は次に陽太郎を捉える。
「――まぁ、そんな顔をするな、すぐに説明してやる」
霙はそう言い切ると、ふふっ――と微笑む。
すると、ヒカルもそれに釣られ、微笑む。
「ははっ――お前、なんて顔をしてるんだ――」
「えっ――どういう……」
思わぬ二人の反応に、陽太郎は動揺を隠しきれない。
自分がどんな表情をしているのか――。多分、考えても今すぐに分かる事ではない。……鏡もないし。
けれど、少し、ほんの少しだけ、自覚があるとすれば――それは自分の知らない話をされるのは、少し……嫌なのかもしれない、と思ったに違い、ない。
「――霙姉、ここにこいつを連れて来たのはそれを言うためか?」
ヒカルが霙に尋ねる。
「あぁ――ちょうどいい頃合いだと、思ったのでな」
霙がヒカルの問いに答える。
そして、再び視線は陽太郎へと向けられた――。
陽太郎はごくりと唾を飲む。
これから――聞くのは、ヒカルの秘密……なるもの、かもしれない。
しかし、それは――。
陽太郎は視線をヒカルへと向け、目が合う。だが、当の本人は全くと言って良いほど、気にしていない様子だった。……なら、いいのか――?
本人がここにいる状況なら、別に俺が聞いてもいい――のか。
心のどこかで枷となっていたものは、ヒカルの登場により、取り除かれた。
そんな様子を伺っていた霙は、タイミング良く陽太郎へと切り出す。
「今日、お前をここに連れて来たのは、このクリスマスツリーを見るためだ」
霙は淡々と今までの状況の説明をする。
「このクリスマスツリーは私達、姉妹にとって少し特別なものなんだ」
その時、初めて見た、しおらしい表情の霙に、陽太郎は驚く。
そして、霙は告げた。
「それはな――ここで初めてヒカルが――――消えたんだ」