Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~   作:明棲木親池

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第10話

 

霙が口を開く僅かな瞬間まで、陽太郎の焦り、緊張は続いた。

〝何を言うのか〟も、もちろん気になるが、それよりも一番はヒカルの存在だった。

ツリーから視線を外し、振り向く霙と目が合う。

その時、陽太郎は一瞬だけ、霙が何かの確認をした様な――そんな視線を自分に送ってきた気がした。

しかし、その視線はすぐさまヒカルへと向けられる。

「ヒカル、覚えているか? このツリーのことを――」

霙の問いにヒカルは、戸惑いの表情を浮かべたが、すぐさま言葉の意図を理解した。

「あぁ――もしかしてあの時の事を言ってるのか? 霙姉――」

抽象的な姉妹の会話に陽太郎は理解する事が出来ない。

――いや、あの時と言っているのだ、多分これは――俺が知らない頃の話だ。と、陽太郎は心の中で結論付けた。

すると、霙の視線は次に陽太郎を捉える。

「――まぁ、そんな顔をするな、すぐに説明してやる」

霙はそう言い切ると、ふふっ――と微笑む。

すると、ヒカルもそれに釣られ、微笑む。

「ははっ――お前、なんて顔をしてるんだ――」

「えっ――どういう……」

思わぬ二人の反応に、陽太郎は動揺を隠しきれない。

自分がどんな表情をしているのか――。多分、考えても今すぐに分かる事ではない。……鏡もないし。

けれど、少し、ほんの少しだけ、自覚があるとすれば――それは自分の知らない話をされるのは、少し……嫌なのかもしれない、と思ったに違い、ない。

「――霙姉、ここにこいつを連れて来たのはそれを言うためか?」

ヒカルが霙に尋ねる。

「あぁ――ちょうどいい頃合いだと、思ったのでな」

霙がヒカルの問いに答える。

そして、再び視線は陽太郎へと向けられた――。

 

陽太郎はごくりと唾を飲む。

これから――聞くのは、ヒカルの秘密……なるもの、かもしれない。

しかし、それは――。

陽太郎は視線をヒカルへと向け、目が合う。だが、当の本人は全くと言って良いほど、気にしていない様子だった。……なら、いいのか――?

本人がここにいる状況なら、別に俺が聞いてもいい――のか。

心のどこかで枷となっていたものは、ヒカルの登場により、取り除かれた。

そんな様子を伺っていた霙は、タイミング良く陽太郎へと切り出す。

「今日、お前をここに連れて来たのは、このクリスマスツリーを見るためだ」

霙は淡々と今までの状況の説明をする。

「このクリスマスツリーは私達、姉妹にとって少し特別なものなんだ」

その時、初めて見た、しおらしい表情の霙に、陽太郎は驚く。

そして、霙は告げた。

 

「それはな――ここで初めてヒカルが――――消えたんだ」

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