Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~   作:明棲木親池

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第12話

 

それはまだヒカルが小学四年――十歳の頃の話だった。

 

中学生になったばかりの海晴が、霙、春風、ヒカルを連れて駅前のショッピングモールへと足を運んだ。

裕福な家庭ではあったが、彼女らの母はしつけに厳しくお小遣いは年相応と決めていたため、あまり高価なものは買えない。それに加え、中学生と小学生三人ともなれば、周りの空気からは、やや浮いた状態だった。

しかし、彼女らはまったくそれを気にしなかった。

何故かというと、別に彼女らは気取ってこの場所を訪れた訳ではない――からだった。

むしろ、年相応の行動目的である。

 

可愛らしい歩幅は、徐々に〝それ〟に近づこうとしている。

一歩。また一歩と着実に――。

そして――。

「うわぁ~!!」

感嘆の声を漏らすのはヒカルだった。

未だ幼いヒカルにとって、その時の〝クリスマスツリー〟はどの様に映ったのか――。

都会の――しかも、駅前のショッピングモールに顕在しているこれが彼女に何を与えたのか。

しかしそれは、幼さ故にすぐ露わとなる。

「はるか! みてこれ! すっごくおっきいよ!!」

無垢な笑顔を一つ上の姉、春風に向ける。

「そうだね、ヒカルちゃん」

春風はヒカルに落ち着いた言葉を返す。

それは彼女が普段から大人しいという訳でない。自分がお姉さんという立場が――無邪気にはしゃぐヒカルが――そうさせているのかもしれない。

そんな春風にフォローを入れたのは、

「春風、あれを見てみろ――」

一つ上の姉、霙だった。

そして、春風は霙が指さす方に目を向ける。すると――

「ひゃ~~でっかいわね! さっすが!! 妹たちを連れて来た甲斐があったってもんよ!」

この中で一番の年上、である海晴のヒカルにも劣らないはしゃぎっぷりだった。

「な? 長女があれ、なんだ――だからお前も気にするな――」

やさしく微笑む霙に春風は、

「ふふっ――ありがと、霙お姉ちゃん」

と、笑みを返した。

 

しばらくツリーを堪能した後、特に買う物も無く、次第に辺りが暗くなってきたため、彼女たちは帰路に着こうとしていた。

「さて、そろそろ帰るぞ、海晴姉」

「あぁ~~んっ! もう、ちょっとだけ~!」

「甘い声を出してもダメだ」

「ちぇっ――霙のケチ」

「何か言ったか?」

「別に~」

やりとりを傍観していた春風は、どちらが姉なのか少し分からないくなった。

「まぁ、そうね――そろそろ暗くなるし――って、あれ? ヒカルは?」

海晴の言葉に、

「いや、私は見てないが――」

「私も、ヒカルちゃんとさっきまで一緒にいたけど――」

霙、春風ともに曖昧な返事をする。

三人はとりあえず、ツリーの周辺を見て回った。

だが、ヒカルの姿はどこになく――、

「どうしよう――」

春風が不安な声を上げる。

時刻は七時を回り、クリスマスムード一色のこの場所は、次第に人の入りが激しさを増していった。

「海晴姉」

霙は名前だけを呼ぶと、目で合図をする。

それに海晴も応え、頷く。

「とりあえず、春風はここで待機していてくれ。もしかしたら、ヒカルがまたツリーの元へ来るかもしれない」

霙の冷静な言葉に春風は、目尻の涙を拭きとり、

「わ、分かった!」

強く返事をした。

 

 

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