Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~ 作:明棲木親池
自宅へと戻った陽太郎とヒカルを待っていたのは――、
「あ――っ! オニーチャン!」
冬の寒さにも負けず、ひらひらと面積の狭い部屋着を着ている立夏と、
「「お兄ちゃん!」」
声をそろえて玄関で叫ぶのは、いつも仲良しの星花と夕凪。
「むぅー星花が先だよ、夕凪ちゃん!」
「えーずるいよ星花ちゃん!」
互いに一歩も譲らず、お兄ちゃんの取り合い。
その光景は、外から帰ってきた陽太郎とヒカルに暖かさをくれた。
「相変わらず人気者だな、お前は――」
笑みを浮かべながらヒカルは、言った。
すると、ヒカルは繋いでいた手の温もりがまだ消えないうちに、先に自室へと向かっていってしまった。
陽太郎はその背中をただ呆然と見ていた。
*
「オニーチャン! 見て見て! リッカチョーすごくナイ!?」
徐々に人口密度を増すリビングにて、立夏は陽太郎の顔の前に一枚の紙を突きつける。
そこには、サンタさんのお願いという題名と共に、その願い事が書かれていた。
「へぇー」
陽太郎の口から声が漏れる。
それは立夏にしては意外にも、まともな事が書かれてあったからだった。
普段なら可愛いアクセサリーやお洋服だったりと言っている。別にそれ自体は年相応なため問題はない。
けれど、なんというか――陽太郎はそれを見て立夏が少し大人になったように感じた。
そこには――家族みんなでクリスマスを迎えられますよーに! と書かれていたのだ。
うっすらと目尻に浮かべる涙。そんな自分に少し年寄臭さを感じる陽太郎。
立夏にはバレないよう、さっと指で拭うと、言葉を返す。
「――うん。良いと思うよ」
「でしょ! リッカめっちゃ良いアイデアだと思ったんダー!!」
ご機嫌な立夏はその場で立ち上がると、くるりと一回転する。
すると、
「あー立夏ちゃんばっかりお兄ちゃんと、ずるい!」
「そうだよ!」
声を揃えて、立夏に言うのは、仲良しの星花と夕凪。
「私のも見てください。兄上さま――」
好きな三国志の言葉が自然と星花の口から飛び出す。
それに対抗するように夕凪は、
「あ、ずるいよ星花ちゃん! 夕凪もお兄ちゃんにマホウをかけてあげる!」
得意のマホウをかけてあげる事にした。
「じ、順番に、さ――」
諭す陽太郎の声も虚しく、二人は互いを睨み合う。
「もう! 夕凪ちゃん! マホウなんて無いでしょ!」
「そんなことないもん! 星花ちゃんこそ、いくらさんごくしが好きだからって――」
もはやその争いに陽太郎のつけ入る隙はなかった。
でも――一応は優柔不断な自分が招いてしまった、のか……?
僅かながらの自分の非を認めた陽太郎は、ただただその光景を微笑ましく見守っていたのだった。