Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~ 作:明棲木親池
階段を独り寂しく降る陽太郎は、頭の中で必死に方法を考えていた。
何故、そうなったのか――。理由は蛍による突拍子もないお願いだった。
はぁ……。
ふとため息が出る。これで何回目だろうか――? 陽太郎は当初の目的通り、氷柱を探す。
だが、その足取りは最初とは異なり、だいぶ重く、遅かった。
それもそのはず、陽太郎はこれから氷柱に、一人で荷物を持たせてしまった謝罪と共に、コスプレをしないか、と言いに行くのだから――。
俺が自発的に言うのではないって氷柱は信じてくれるだろうか……。
陽太郎は自分の頭の中で、一つシミュレーションをする。
『や、やぁ――氷柱』
『何よ、バカ下僕』
『いやさ――買い出しの帰りに、一人で荷物持たせちゃった事を謝りたくて……』
『ふんっ――別にいいわよ。霙姉様のお願いなら仕方ないし』
『そ、そっか。なら――良かった』
『……なによ、要件はそれだけ?』
『あ、いや――その、もう一つだけ――あるんだけど』
『ん? 一体なによ』
『いやー、そのぉ……』
『はっきりしないわね――早急に済ませなさいよ』
『その、さ――――氷柱はコスプレとか、してみる気はない?』
『――――――』
そこで陽太郎の脳内妄想もといシミュレーションは強制終了させられた。
理由は簡単。自分の中で膨れ上がった氷柱が恐ろしかったからだった。
まずい。
自らの想定では確実に氷柱に怒鳴られる。
下手をしたら自分がこの家から追い出されかねない。そうなったら、このお願いをした蛍にも責任と迷惑が掛かってしまう。
そこでようやく陽太郎は、自らがすべきことが見えてきた。
よしっ――とりあえずは氷柱に遭遇する前にちゃんと会話のプラン。
そして、どうすればコスプレを快く了承してくれるかを考えよう。
そうして陽太郎は覚悟を決めた。
*
ったく――バカ下僕のくせに、霙姉様の次は蛍ちゃんだなんて――。
自室で一人机に向かい教科書を広げ、勉強をするのは氷柱。
しかし、休憩がてらトイレに行った帰り、見てしまったあの場面以降、どうも教科書の内容が頭に入ってくる気配がない。
もう――なんで私があんな下僕の事でこんなにも取り乱さなくちゃいけないのよ!
内心、陽太郎に怒りをあらわにする氷柱。
がりがりと殴り書きされた数式は酷く歪だった。だが、どれも正確に答えを導き出していた。
まったく――次に会った時は――――容赦しないんだからっ!
陽太郎本人の知らない場所で、陽太郎は前途多難な理不尽をうけるのであった。