Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~ 作:明棲木親池
よし――っ。
意気込むと共に、陽太郎は勢いよく階段を降る。
こんな時、ヒカルなら――。と、自分で答えを導き出したにも関わらず、未練がましい様に陽太郎は考えた。
しかし、直後。陽太郎は含み笑いをする。
それは自分の妄想の中で出したヒカルの答えが如何にも、ヒカルらしいからであった。
多分、ヒカルの事だ。どうせ――、
『考えるより、まず行動しろ!』
なんて言うに違いない。うん、間違いない。
それが陽太郎の想い描くヒカルが出した答え。
すっと心の荷が下りた気がした。
頼まれごとだとはいえ、陽太郎にとって氷柱にお願いをことすること自体大変だ。にもかかわらず、まさか「コスプレ」のお願いをするなんて、鬼門にもほどがあった。
けれど、それが少しは楽になった。
それは多分、答えを出したヒカルの表情が笑っていたから――だと、陽太郎は思った。
*
再び廊下へと戻ってきた陽太郎は、とりあえず氷柱の部屋に向かおうとした。
注意事項に反しない様に、扉をノックし、部屋の外で話をしようと思ってのことだった。
向かう途中だった。何やら奥からカカッ、カカッ――と、音が聞こえる。
何の音だろうか……?
陽太郎はその音に、一瞬身構えたが、その音の正体がペンによる殴り書きだと分かり、ふぅぅと息を漏らした。
ゆっくりと忍び足の様に陽太郎は、その音のする元へと向かう。するとそこは、陽太郎が向かおうとしていた氷柱の部屋だった。
ノックの為に、手が伸びる。が、度重なる殴り書きの音のせいでその手を止めてしまう。
勉強の邪魔をすると――。
余計に交渉しにくい、と考えた陽太郎は一度手を引っ込める。
しかし、その直後、殴り書きの音が止んだ。
もしかして休憩?
かと思った陽太郎は慌てて、再度手を伸ばす――が、またもノックをする事は出来なかった。
しかしそれは、陽太郎の都合ではなく、扉の都合。
陽太郎はしっかりと中指を立て、手首をスナップした。けれど、それよりも、
扉が開く速度の方が上だったのだ。
そして――。
「…………なにやってんの? 下僕」
未だかつてないほどに向けられた眼光は鋭く、陽太郎は今まで考えてきた作戦が全て白紙になるほど、緊張が体全体に広がった。
「あ、いや――」
言葉が出なかった。
なんと言えばこの状況の説明が――。
そこで陽太郎は閃く。
「氷柱に帰りの事で謝ろうと――」
陽太郎が言葉を紡ぐと、途端。氷柱は一層、顔を険しくした。
「――――いいから。とりあえず、下僕。部屋に入って」
「……へ?」