Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~   作:明棲木親池

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第20話

 

「――それで、結局蛍ちゃんからのお願いってなんだったの?」

落ち着きを取り戻した氷柱が、陽太郎に尋ねた。

「え、あ、いや――」

途端。陽太郎は氷柱から視線を逸らす。しかし、それは氷柱に見透かされ――

「……もしかして、いやらしい――お願い、とかじゃないわよ、ね?」

うぐっ……。

どうも自分はすぐに顔に出てしまう、と陽太郎は焦りを覚える。

しかし、これ以上隠してもより事態を悪化させてしまうと考え、意を決し、陽太郎は蛍から頼まれたお願いごとを包み隠さず話した。

「その、さ……蛍が、氷柱もクリスマスなんだから――一緒に、コスプレしないかって――」

「――っんな!?」

みるみるうちに氷柱の顔が真っ赤に染まるのが見て取れた。

ま、まずい――。

陽太郎は、それを氷柱が怒る前兆だと、思い謝ろうとした。

「ご、ごめ――」

「あ、貴方もそう思ってるの……?」

「へぇ?」

しかし陽太郎の言葉は氷柱に遮られてしまう。

虚を衝かれた陽太郎は氷柱の問いに反応するの事が出来なかった。

「だ、だから――」

頬を染め、上目遣いでこちらを見つめる氷柱。それだけで陽太郎は意味も分からず動揺していた。

「あ、貴方も――私にコスプレしてほしいって思ってるの?」

そう言うと、氷柱は俯く。その表情を陽太郎に見られない様に。

一方の陽太郎はというと……。

「お、俺――?」

未だ、戸惑いを見せていた。

しかし、次第に状況が読めてきた。

つまりは氷柱が自分にコスプレをした方が良いのかを訊いてきた。

という風に陽太郎は解釈し、笑みを浮かべる。

「もちろん、俺だって氷柱のコスプレ――見てみたいと思うよ」

「そ、そう……なんだ」

「うん。それに氷柱は綺麗だから衣装映えするんじゃないかな――」

この時ばかりは、陽太郎の口が滑らかに動く。

それは蛍に対しての責任感からきたものなのか、それともただそう思っての事なのか――。

それは多分、本人ですら分からない事だろう。

「ち、ちょっと――言い過ぎだって!」

そこでようやく氷柱が表を上げた。

真っ赤に染まった顔は恥ずかしさの証拠なのか、それが陽太郎にはいつもの氷柱とは違う意外な一面と思い、可愛らしかった。

「でさ、どうかな? 蛍のお願い」

陽太郎は一直線に氷柱の瞳を見つめる。

「ど、どうって……」

もじもじと仕草をする氷柱。

答えを決めかねているのだろうか?

陽太郎はそう思った。

そこで陽太郎はなんとか決めてもらおうと、追い打ちをかける。

「氷柱、頼む――もし蛍のお願いを聞いたら、俺も一つだけ何でもいうこと聞くから――」

ぴくり。陽太郎の言葉を聞いた瞬間、氷柱の耳が一瞬だけ、動いた。

「いま、言ったこと忘れないでよね――」

「え、あ……うん」

途端。、氷柱はいつもの鋭い表情へと戻る。

あ、しまった――。

陽太郎は、自分の発言の悔いが後を追った。

 

しかし、まぁ――。

 

「いいわね、約束よ。下僕。貴方のお願いを聞くんだから――私のお願いも聞きなさいよ!」

 

氷柱が納得したなら、これでもいいのか……な?

 

陽太郎に向けた氷柱の笑みは、果たして悪魔との取引だったのか、それとも聖なる天使の取引だったのか――。

それは神のみぞしるものであった。 

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