Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~ 作:明棲木親池
氷柱との交渉を終えた陽太郎にどっと疲れが押し寄せた。
それは氷柱とのやりとりもそうだが、思わず口走ってしまった言葉。
「氷柱のお願いを何でも一つだけ聞く」
言った後、氷柱の不敵な笑みを見て陽太郎は自分の発言の愚かさに気が付いた。
そんなこともなり、こうして今でも不安が拭えないでいた。
そんな時、
「あ、おにーちゃん!」
元気よく、廊下を走りこちらに向かってくるのは、青空だった。
続いて、
「にじも、きょうもずっといい子でいたのー」
虹子が後を追う。その後ろ、やや遅れてくるのは、
「さ、さくらも――!」
お気に入りのぬいぐるみを抱えているさくらだった。
「あれ、どうして――」
陽太郎はしゃがんで、妹たちを迎えながら、呟いた。
すると、
「ただいま、陽ちゃん♪」
玄関で声がする。
「あ、海晴――姉さん」
「はい。海晴お姉ちゃんただいま帰宅しました」
妹たちに負けじと劣らず、お茶な目な海晴を見て、陽太郎は、
「うん。おかえり」
少しだけ、元気が出た。
*
リビングに行くと、家族ほとんどがいた。
いないのは……あれ? ヒカルは――。
氷柱は自室でまだ勉強をしているだろうし、霙姉さんはさっき連絡が来て、もう少ししたら戻るって言ってたけど……。
あぁ、そうかヒカルも自室にいるのか――。
陽太郎の日常には、ヒカルが欠かせなかった。
だから、いつも一番最初にヒカルの事を考えてしまう。
こんな時、本人にもそうだが、家族となった今では誰にも言えないな――と陽太郎は心の中で苦笑した。
時刻は七時を回ろうとしていた。
そろそろ晩飯だろうか……?
陽太郎は準備を手伝うため、リビングへと向かった。
「春風――姉さん、何か手伝うことない?」
くるり。
陽太郎の声に反応した春風は振り向くと、ピンクのエプロンがふわりと膨らむ。
「いいえ、王子様。ここは、春風に任せて下さい」
お玉をくいっと陽太郎の後方へと向ける。
「だから、王子様は、子供達――いえ、妹達の面倒をみていてください」
そう言うと春風は、うふふっ――と笑みを浮かべ、
「なんだか、今のやりとり夫婦の様な気がしませんか? 王子様――」
ほんのりと染まった頬と、可愛らしく胸に手をあてた仕草。
どれも春風の女の子らしさを際立たせ、魅力的だった。
「えっ――あ、いや……」
なんと答えていいのやら。陽太郎はしどろもどろになる。
「なんて、ごめんさない。――春風、王子様が可愛いからつい困ったこと言っちゃって」
自覚はあったんだ……。陽太郎は驚く。
「でも、もしこのままがいいっていうなら――」
笑みを浮かべる春風。
また何か――と陽太郎に緊張が走る。
「春風のこと見ててもいい、ですよ――」