Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~ 作:明棲木親池
陽太郎はキッチンを離れ、リビングへと向かう。
と、言っても振り返り、数歩歩けばすぐそこがリビングで、その奥が居間となっている。
居間では、妹たちが元気にはしゃぐ姿があった。
「見てみてー立夏こんなお願い書いちゃったンダー!」
立夏は妹たちに自慢げにそう言い、一枚の紙を見せびらかす。
そこには陽太郎が一度見た、サンタのお願い事だった。
「り、立夏ちゃん――それって見せびらかせても大丈夫なの?」
小さい声で心配そうに言うのは小雨。
「ダイジョーブだって! だって、これはお兄ちゃん公認なんだもん!!」
すると、それを聞いた妹たちが一気におぉーと湧き上がる。
……俺の公認っていうのは何かあるのか?
その光景に陽太郎は、疑問に抱きながらも、微笑ましく見ていた。
「ふんっ! くだらない。アイツの公認なんてよっぽどお人好しなお願い事したのかしら? 立夏ちゃんは――」
声を荒る麗。
え、それだと俺がまるでお人好しってことに――。
麗の言葉に陽太郎が心の中で反応すると、
「ンもー!! 麗ちゃんってば――素直じゃないんだからー!」
「ちょ、ちょっと――」
立夏は麗に抱き着く。
「そういう、麗ちゃんはなにをお願いしたの――?」
抱き着いたのと同時に立夏は器用に、麗の手にあった一枚の紙をひょいと奪う。
「あっ――」
遅れて麗が声を漏らすが、その頃にはすでに立夏に内容を見られていた。
「えぇーっと、どれどれ……うわぁっ――」
立夏は麗から奪った紙を覗き込むと、わざとらしく大きく反応する。
しかしそれがどうも本当に驚いた反応だという事に、気が付いたのは――、
「どうしたの、立夏ちゃん――」
小雨だった。
「だ、だめっ――!!」
小雨の問いに立夏が答える前に、麗は立夏から紙を取り戻した。
しかし一方の立夏は、それを名残惜しむ様子もなく、ただニヤけながら麗を見ていた。
その様子に、妹たち、陽太郎――そして、小雨までもが頭に疑問符を浮かべた。
「ふふん――麗ちゃんってば、あんまし人の事言えないじゃン――!!」
その立夏の言葉を聞いて、何となくだが、その内容を――それと何故こんなにも麗がムキになっているのかを陽太郎と小雨は理解した。
「ち、違うわよ! これは――そ、そうよ! E231系をお願いしようと――」
「えっ、麗ちゃん、それ持ってなかったっけ?」
ぎろり。横から口を挟んだ小雨に、麗は鋭い眼光を向ける。
「ご、ごめんなさい――」
「小雨ちゃんが謝ることじゃナイヨー!!」
すると、立夏がフォローした。
そして、再び、ニヤニヤしながら麗を見た。
「ふふっ――でも、ほんっとに驚いたな――」
立夏がおどける。
「も、もうっ――やめてよ。立夏ちゃん!!」
大きく手を振り、立夏を制しようとする麗、
その時、陽太郎は麗が手に持っていた紙が目に入った。
そこには、
『これからも家族みんなが健康に過ごせます様に……アイツも含めて』
と、書かれていた。