Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~ 作:明棲木親池
姉たちの騒ぎを尻目に、妹たち――吹雪、綿雪、真璃、観月は互いに互いのお願い事を考えていた。
陽太郎は、そんな妹たちの姿を見て、思わず近づき訊ねた。
「どうしたの?」
その言葉は悩める少女たちの表情をぱっと華やかにした。
「あ、お兄ちゃん――」
病弱で体の弱い綿雪は、それでも陽太郎の声で元気な反応を示す。
「ゆき――どうしてもお願いごとがおおすぎて一つにしぼれないんです」
「そっか――」
綿雪の悩みに、陽太郎はしばらく考えた後、言葉を紡いだ。
「綿雪は優しいから、多分、サンタさんもいっぱいのお願いをしても大丈夫だと思うよ」
そこには責任も、根拠も無かった。でも、それは綿雪に対しての陽太郎なりの気遣いの言葉だった。
「ありがとうございます、お兄ちゃん。ゆき――サンタさんがこまらないように、がんばって二つまでにしますね」
どうやら陽太郎のその言葉は綿雪にとって良いアドバイスとなったようだった。
あまりに素直な言葉に、思わず陽太郎は頭を撫でてあげたくなった。しかし、途端。氷柱の鬼の様な顔を思い出し。何とか思いとどまった。氷柱は綿雪にだけ、特別過保護なのだ。
過ちを悔い返すまい、と思いほっとした陽太郎の元に、
「君の助言を聞きたいのですが――」
吹雪がやってきた。
しかしそれは陽太郎にとって意外だった。
吹雪は綿雪よりも一つ上のお姉さんだが、見た目よりもはるかにしっかりとし、知能だけなら俺よりも上――なんて、情けない事を思っていたからだった。
そんな俺に吹雪は何を相談してくるのだろうか――。答えられない様なものは勘弁。
「私では決めかねているので、君に決めてほしいのですが……」
そう言うと、吹雪は紙をこちらに向けてきた。
そこには――『新しい参考資料』もしくは『優れた頭脳』の二つが書かれており、吹雪はこのどちらを選ぶのか、について悩んでいるんだと陽太郎は思った。
前者は吹雪らしい願いごとだが、後者はどうも幼稚な感じがした。
けれど、世間一般からしてみれば、これは年相応なのかもしれない。
陽太郎は自分の中で、その疑問を解決すると、答えた。
「二つ目の方が――いいかな?」
「なぜですか?」
間髪入れず、吹雪は訊いた。
陽太郎はその後の理由もしっかりと考えていたため、動揺することなく、言葉を返した。
「一つ目の願いは、別に俺でも叶えることが出来るから……かな?」
「それは一体――」
「あぁ、いやさ――俺は多分吹雪より頭が良くないから勉強を教えて、優れた頭脳をあげる事は出来ないけど、参考書なら買ってあげる事が出来るから」
一瞬。吹雪の目が見開いた様な気がした。
けれど、それは本当に一瞬の出来事。なので、陽太郎は気にも止めなかった。
そして、そんな吹雪の頬が段々と赤く染まっていくのが分かった。
「な、なら――いつか君が私のお願い事を叶えて、下さいね」
陽太郎は吹雪の体質を知っていた。
吹雪は物事を考え過ぎると、機械のようにオーバーヒートを起こすのだと。