Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~   作:明棲木親池

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第26話

しばらくの家族団らんを過ごしていると、陽太郎はふとこの場にいないヒカルのことが気になった。

帰ってからこっちに来てないけど、部屋にいるのかな――?

聖なる夜を大いに楽しんでいる妹たちを姉たちに任せると、陽太郎はリビングを出た。

 

閑散としている廊下。人の気配は感じられなかった。

こんな時、携帯でもあれば――なんて思うも、天涯孤独となり、この天使家で家族としてやっかいになっている陽太郎が、そのような物を持っているはずもなく――。

仕方なく辺りを見渡していると――

「あれ?」

ある異変に気が付いた。そして、

「まさか――」

という焦燥が彼を掻き立てる。

陽太郎は考えるよりも先に扉を開けた。

それはヒカルの靴だけがない――玄関の扉であった。

 

舞い散る雪よりも、陽太郎が吐く息の方が白かった。

真冬だと言うのに、額には汗の粒が流れ、雪のように下へ、下へと降り落ちる。

陽太郎はヒカルの姿を探していた。だが、彼の意思とは反対に一向にヒカルの姿を見つけることはできなかった。

もしかして俺の勘違いなんじゃ……。

と思っている矢先であった。見慣れた河川敷のところで屋台の提灯の明かりが目に留まった。

そう言えば最初に家出をした時もここに来たっけ――。

懐かしさが陽太郎の頬を緩ませた。

それから陽太郎は、提灯の明かりの元へと向かうとそこで売っていたたこ焼きを買った。

特に周りにベンチもないため、河川敷の芝生の上にでも――というよりももはやそれは雪に覆われた雪原のようであったが――座ろうとした時、陽太郎は、一面真っ白な景色の中に立ち込める湯気を見た。

そしてその湯気の正体がわかると、一心不乱に雪を蹴りつけ、叫んだ。

「ヒカル――っ!」

それは陽太郎同様に、寒い真冬の夜空の元でアツアツのたこ焼き買って、頬張っているヒカルであった。

「ほ、ほまではんでぇ!」

口に食べ物を蓄えたまま驚くヒカル。

それをよそに陽太郎は、彼女の元へと駆け寄ると、勢いよく抱き着いた。

「よかった――」

「ちょっと――いきなりどうした――っ!?]

事態を把握しきれていないヒカルは、陽太郎が突然抱き着いてきたことにめずらしく動揺していた。

「ご、ごめん! いなくなったヒカルを探してて、それでやっと見つけたから――」

陽太郎はそこで自分の行動を理解して、顔を染めながらヒカルから離れようとする。

でも――。

「……そっか」

今度は逆にヒカルが彼を抱きしめた。

「――――ありがと」

それは寒いからなのか、それとも恥ずかしいからのか――。

どちらにしろヒカルは温もりを求めるつもりで陽太郎の胸に顔を埋めた。

「ひ、ヒカル……? ほら、みんな心配するだろうし、そろそろ……」

陽太郎がそう切り出した時だった。

不意に白い光が視界に入る。それがヒカルの携帯の明かりだということは分かったが、それでもなぜこのタイミングで……と思った。海晴姉さんたちに電話でもするのだろうか――と怪訝な顔をして、覗き込んでいると

「ふふっ――……」

「――――っん!?」

突然顔を上げたヒカルの唇と自分の唇が重なり合った。

そして――――

「……っん、陽太郎。――――メリークリスマス」

確かな熱を帯びた彼女の唇は、陽太郎の唇から離れるとそう紡いだ。

 

 

真冬のなか互いの温もりを感じた二人は、共にクリスマスイブを過ごし――そしてクリスマスを迎えたのであった。

 

                                               (了)

 

 




一応は終わりにさせていただきますが、
番外編として「氷柱の命令ごと」をやる予定です。
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