Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~ 作:明棲木親池
氷柱と別れた陽太郎と霙は駅前のショッピングモールへと足を運んでいた。
「悪いな、無理やり連れてきてしまって」
霙は悪びれた表情せず、抑揚のない言葉を掛けた。
「いや――別に――――」
それよりも、何故俺を? と、陽太郎は疑問の解消を焦る。
しかし、霙はそれを遮る様に言葉を続けた。
「ほら、見てみろ――あのクリスマスツリー」
一旦、足を止めた霙が指さす方向を陽太郎は釣られ見る。
すると、そこには高さ十メートルはある巨大なクリスマスツリーがショッピングモール内に置かれていた。
「どうだ? 大きいだろ?」
さっきまでの抑揚のない口調から一変、そのセリフはどこか陽太郎を驚かせたかったといういたずら心を含んだ声色だった。
そんな光景に陽太郎は――、ふふっっと笑みをこぼす。
「霙――姉さんもそんな顔、するんだね」
「ふんっ。君が知らないだけで私の中身は実は子供なのかも知れないぞ?」
しかし、陽太郎の返しに怯むことなく、霙は小悪魔な笑みを浮かべる。
「それにな――お前に話しておきたいと思ったのだ」
「何を?」
一呼吸の間があった後、霙は告げた。
「ヒカルの秘密を、だ――」
何かあると思わせる、いたずら心を含ませて。
*
ヒカルはリビングに行かずに、一人寂しく外をぶらついていた。
主に、自分の頭を冷やす為に――。と、言っても物理的にではなく精神的にだが。
行くあてもなく、家の近くをぶらぶらしていると背後から聞き覚えのある声がヒカルの名前を呼んだ。
「ヒカル姉様――!!」
自分をそう呼ぶ人間はこの世界にたった一人だけであった。
「――氷柱じゃないか」
振り返り、声のする方を見やるとそこには両手いっぱいに袋を持った氷柱であった。
「買い出しか?」
「そうなんだけど――あの下僕が……」
ヒカルの脳内で瞬時に、下僕=陽太郎と変換された。
「陽太郎がどうした?」
「えっ――いや、さっきまで一緒に買い出しに行ってたのに帰りに霙姉様に連れてかれて――」
霙姉だって!?
普段ならヒカルがそれを聞いたところで動揺する事はない。けれど、今日だけは――今だけはそれが気になって仕方なかった。
思い立ったら、行動。それが自分を脳筋と思っているヒカルにとって出来る唯一の手段だった。
なので、とりあえずは――。
「家まですぐそこだから、私も手伝うよ」
目の前の妹の手伝いをしよう。
そうすれば、陽太郎に説教するという――口実が出来る。
別に氷柱を出しに使っている訳じゃない。でも、少しぐらいは利己的に動いても罰は当たらないんじゃないか――。
「ありがとうヒカル姉様――」
そうして、ヒカルは氷柱の荷物持ちを手伝い、一旦、家へと帰り、そこで氷柱から陽太郎と霙の行き先を訊くと、
駅前のショッピングモールへと向かった。
胸の内にあるモヤモヤの正体を確かめる為に――――。