Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~ 作:明棲木親池
「ヒカルの――秘密?」
陽太郎は言葉を口に出した瞬間、嫌な予感がした。
それは霙の表情も、理由に含まれているが一番はそれではない。
ヒカルがいない時――。そして何故俺に――。
一番の理由。それは霙の言動の根拠の出所が不明過ぎたからであった。
陽太郎が考え得る限り、この状況で霙がそれを口に出す意図は――、
気まぐれであるか、それとも自分にとってヒカルは他の姉妹とは違うなにかを――霙が感じたのか……。
考えれば、考えるほどに疑念と不安は募る一方。
もうこのままなら――いっそう聞いてしまった方が楽なのではないか?
と、陽太郎は思った。
本当ならこんな理由抜きにでも聞きたい――聞いてしまいたい。
それほどまでに陽太郎にとってヒカルの秘密とは、蜜の様なものだった。
けれど――それがヒカルの嫌がる秘密だったら?
霙がむやみやたらに人の秘密を暴露する人間には思えない。しかも、それが自分の家族――つまりは姉妹ともなればなおの事、霙はそんな事はしないはずだ。
だったら、その秘密は大したものではない、かもしれない。
しかし、だからと言ってヒカル本人がいないこの状況で聞いていい理由にはならない。
陽太郎は葛藤の中で答えを見いだせないでいた。
その時、陽太郎の思考を遮ったのは、霙の声ではなく――背後から自分の名前を呼ぶ聞き覚えのある声だった。
*
氷柱から場所を訊いた後、閑散とした住宅街を抜け、ヒカルが向かった先はショッピングモールだった。
日頃からランニングを欠かさず続けていたため、息をきらすことなく目的の場所へと到着した。
ここって……。
場所を聞いた時は思い出せなかったが、ヒカルは小さい頃に姉三人と共に、この駅前のショッピングモールへと来たことがあった。
懐かしい記憶ついでに思い出した事がもう一つあった。
それは小さい頃に見て、それから夢にまで登場した――巨大なクリスマスツリーだった。
ヒカルと霙を探すため、ショッピングモールへと足を運んだヒカルだったが、ちょっとだけ寄り道しようと思い、巨大なクリスマスツリーを探した。
その迫力と人気から、ここの名物扱いを受けていたクリスマスツリーはすぐに発見する事ができた。
しかし、ヒカルの視線は見つけ出したクリスマスツリーに目もくれず、まっすぐとツリーの根元へと伸びていた。
今の目的とは違う、最初の目的を見つける事ができたヒカルの足は自然に前へ、前へと向かっていた。
たった数メートルにも関わらず、胸が苦しくなってくる。呼吸が乱れ、体全体が何かに焦っている様な――そんな感覚がヒカルを襲う。
焦燥感とでも表現すればいいのか、それはヒカルを苦しめ、走らせた。
けれど、それは――幸か不幸か、
陽太郎に会う、という結果をもたらせたのだった。