Baby Princess ~クリスマス・イブの聖夜~ 作:明棲木親池
「ヒカル――!?」
振り向いた陽太郎は、声の主を視界で捉えると、驚愕した。
もしかして、霙がここにヒカルを? と、疑念が脳裏に浮かび、霙の顔色を伺う。
だが、霙も陽太郎ほどではないが、驚きを隠しきれてはいなかった。
なら――――。
息を切らし、こちらに向かうヒカル。
陽太郎には何かに慌てている様に見えた。
もどかしい気持ちが陽太郎の足を前へと動かす。
「ヒ、ヒカル――どうして……」
ヒカルから見て、陽太郎の表情は困惑と怪訝の色で染まっていた。
肩で息をするヒカルは、一度落ち着くため、深呼吸をして呼吸を整える。
気持ちも一緒に落ち着かせるという意味も込めて――。
「――お前を探してたんだ……」
「お、俺を――?」
陽太郎はその答えにますます疑念が募る。
ふと浮かび上がったのは、今日、俺なんかやらかしたっけ? という何とも楽観的なものだった。
すると、
「ちょうどいい――ヒカル。お前も一緒にどうだ?」
二人の横から言葉を紡ぐのは、いつの間にか再び悪戯な笑みを浮かべていた霙だった。
一緒に……?
霙の言葉を聞いた瞬間、陽太郎の脳内にはその単語がリフレインした。
ヒカルが現れたことによって一時、会話の中断を余儀なくされた。
もちろん、その会話は霙曰く「ヒカルの秘密』というもの。
けれど、霙の今の発言は〝ヒカルが居ない状況〟の自分との会話を〝ヒカルがいる状況〟でもしようとしている。
と、陽太郎の脳は結論づけた。
確かに、ヒカルが現れたからと言って急に話題を変えるのは、少しわざとらしいし、自分はそう言ったのはあまり好きではない。でも、それは時と場合――ケースバイケースというやつなのではないか?
その時陽太郎は、先ほどとは違う意味での焦りを覚える。
しかし、すでにヒカルと霙の会話に口を挿める事も出来ず、陽太郎は成る様になれ――と、心の中で密かに祈った。
そんな事とはいざ知らず、ヒカルは霙の言葉に強く反応する。
「ちょ――霙姉!」
用があるのは、陽太郎の方――と、ヒカルは内心、焦りを覚える。
けれど、霙は、
「まぁ、いいじゃないか――それに私はこの用が終わったら、一人で向かう場所がある。だから――後は、二人の隙にすればいい」
口角をくいっと上げ、陽太郎とヒカル、両者を交互に見た。
その言葉にポカンとする陽太郎とは裏腹に、ヒカルの頬はツリーに飾られているサンタの外套の様に、真っ赤に染まっていた。
「な、なに言って――――」
動揺を隠しきれないヒカル。
それを制する様に、霙は言葉を続ける。
「まぁまぁ、そう熱くなるなヒカル――」
「熱くなんかなってない!」
陽太郎は霙の言葉に顔を真っ赤にして、勢いよく反論するヒカルを見て、驚きを感じた。
「とりあえずは、二人とも私の話を聞け」
そう言うと、霙は再びクリスマスツリーへと視線を戻した。