東方夢幻魂歌 完結   作:ラギアz

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第九章第十六話「手を繋ぐ」

・・・あれから何時間、こうしていただろうか。

最早町の光もぽつぽつと消えていき、一部の店しか営業していない。

住宅街は勿論暗闇に包まれており、俺の居る小高い山の山頂からは全てが見渡せた。

そして、だからこそ俺は理解する。

 

ああ、ここは俺の居た町なんだと。

 

大きく白い病院が向こうの方にそびえ立っている。恐らくそこの窓際の一室に隔は眠っているだろう。

動かない足、動かせない体。

 

妖夢は恐らく死んだ。

霊夢と魔理沙は俺が力不足だった所為で今も意識が無い。

咲夜さんやレミリア様、フランやパチュリー、美鈴さんにもたくさん迷惑を掛けた。

爛漸苦にも勝てず、紫も倒せず。

 

・・・暁も、隔も助けることが出来なかった。

 

何も出来ない。力があっても、何も出来ない。

全ての行動で多くの人に迷惑を掛け、それでも俺は皆を助けられなかった。

 

 

・・・・もういっそ、死んでしまえば楽に成れるんじゃ無いか?

迷惑しかかけない邪魔が居ても、無駄なだけだ。

 

 

気づけば、俺の右手は桜ノ蕾を握っていた。

立ち上がり、光の消えた町を望む。

暗い街は、俺の内側を表している様で。

シャラアアン…

 

鈴を鳴らすような綺麗な音と共に、鋭利な冷たい白刃が空気に触れる。

もう、終わりにしよう。

何もかも、全て投げ捨てよう。

 

 

 

・・・・俺には、何も出来ないのだから。

 

 

 

一息、大きく息を吐く。

右手に携えた刀を上に持ち上げ、首に押し付けた。

何時もなら頼もしい冷気が、今は体を切り裂くかのように恐ろしい。

 

 

目を閉じ、一度息を吐きーーー俺は腕に力を込めた。

冷たい刃が更に押し付けられ、肌を裂く・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何勝手に死のうとしてんですか?斬りますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

事は無く、寧ろ腕が動かなかった。

 

 

 

死ねなかった。それよりも、掛けられた声に、俺は驚愕する。

俺の右手を片手で抑え、優しい笑みを浮かべている少女は。

 

「妖、夢・・・!?」

「はい、妖夢です。」

 

・・・さっき、俺が辿り着くことが出来なかった少女だった。

服は確かに破けており、頬には絆創膏等が貼ってある。

何時もの愛刀を腰と肩に付け、黒いカチューシャは風に揺れていた。

 

「何で・・・!?妖夢は、爛漸苦にボロボロにされたって・・・!!」

「ええ、まあされましたね。妖怪にも暴行されかけましたし。」

「どうやって!?あいつが動ける状態のまま放置するとは思えない。」

「赤いマフラーを付けた少女・・・暁さんが助けて下さいました。」

「暁が・・・!?」

 

桜ノ蕾を手から取られ、腰に付けてある鞘に納められる。

そこまでした妖夢は俺の肩を掴み、呟いた。

 

 

「とりあえず、お仕置きです。えいっ」

「お仕置きふぐおおおおおっっ!!!」

 

 

ゴヂンッ!!!

 

妖夢の頭が俺の頭に当たり、余りの痛みに思わず呻く。

 

額を抑えながら妖夢を見ると、妖夢は平然とした様子で俺を睨んでいた。

 

 

「まだやるべき事はあるはずです。・・・そんな簡単に、命を放り投げていいと思ってるんですか?」

「・・・俺が居なくなれば、俺が迷惑を掛ける事は無くなる。だから、俺なんて居ない方が良いんだよ。」

 

 

 

「逆に貴方しか助けることの出来ない人が死んで行くんですよ?・・・それに、真さんふざけてますか?たかが迷惑かけてる如きで命を投げ捨てる?そっちの方が迷惑です!真さんが今まで助けた人の中に、貴方が迷惑だと言った人が居ましたか?本心から、言われたことがありますか!?無いですよね?居ない方が良い?そうやって逃げてんじゃないですよ!!居なきゃ困るぐらいの人間にならないでどうするんですか!?貴方の言ってる事は、今までの全てを否定する言葉です!・・・暁さんも。隔さんも。どうだって良いんですね!?」

 

 

「そんな・・・訳、無いだろ!でも・・・幻夢も、陽炎も居ないんじゃ、俺は何も出来ないんだよ!!」

「少しは周りの人間に頼れって言ってんですよ!!!」

 

 

俺が否定した瞬間、妖夢は大きく叫んだ。

鋭い視線にはいつしか涙が浮かび、それでも妖夢は止まらない。

 

 

「一人で抱え込むな!私達が居るじゃないですか!回りが見えないんですか!?」

「そうね、少しくらい回り見なさいよ。」

「ちょっと寂しいんだぜ?」

「これは・・・買い物の量増加ね。」

 

「霊夢!?魔理沙!?咲夜さん!?どうしてここに!?」

 

 

 

「「「真を迎えに来た」」」

 

 

妖夢の後ろには、いつしか三人の恩人が立って居た。

そして、彼女たちは一糸乱れる事無く、普通で当たり前の事であると言う様に揃って口を開く。

 

 

「・・・分かりましたか?私たちは力で人を見てない。心を見て、言ってるんです。力が無い?だからどうしたんですか。ならば周りの人と手を繋げば良いんです。」

「そう言う事。私たちは真を見捨てたりしない。絶対にね。」

 

 

皆が賛同する様に頷く。

何も言えなかった俺は、その暖かさに身を包まれつつ口を開いた。

 

 

「ありがとう。・・・本当に、ありがとう。」

 

 

ここに、ごめん等のマイナスな言葉は要らない。

ただ感謝を伝えればそれだけで良い。

この暖かい空間は、たった一言で全てが伝わる様な世界が広がっている。

 

 

 

「・・・それに、策が無い訳じゃない。覚悟は良いかしら?真。」

 

 

深く頭を下げた俺の額に手を当てた霊夢は、そう呟いた後にやりと笑った。

 

 

 

 

 

「幻夢に、会いに行くわよ。」

 

 

 

 

無力な少年は、今皆と手を繋ぎ。

未来へ一歩、踏み出そうとしていた。

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