紫「気を付けなさい?一応、こんな小説を読んでくれている人が居るんだから。」
ラ「うん。・・・すみません!では、どうぞ!」
突如、木々の上から一つの影が飛び出して来た。
「・・・来た、か!!」
「きたよー!」
小太刀を逆手に構え、暁は体の捻りを最大限に生かしながら斬りつけて来る。
身を屈めギリギリで回避した俺は、すぐさま桜ノ蕾を抜刀し上に切り上げた。
体を反らす事でそれを避けた暁は、周囲を取り囲む木を利用し高速で飛び回り始める。
木を蹴る音が森中に響き、かすかに残る葉を落としていく。
バースト状態でも視認できなくなった暁は、妖力の色を俺の視界に描きながら徐々に狙いを定めていた。
・・・そして、紫電を纏った斬撃が背後から俺を切り裂く。
全力で桜ノ蕾を背に持って行き、背後で俺は刃と刃をぶつけあった。
甲高い金属音が耳を刺し、とてつもない威力が俺を襲う。
・・・が。
「まだまだ甘い・・・!!」
俺は刀に纏わせた霊力を、一瞬で爆発させる。
村正を弾き飛ばし、暁とも距離を取った俺は次いで刀を納刀した。
もう殆ど葉の残っていない木々が俺と暁の発する音を吸い込み、隙間からは太陽が俺達を照らしている。
普通に見れば、ただの良い天気。
しかしそれを消し去ってしまうほど、この場には殺気が溢れていた。
「・・・暁?」
「だれ?それ」
一応呼びかけてみるも、帰ってくるのは疑問のみ。
やはり記憶と感情、それ以外も全て魂を取られている。
一息長く吐き出した俺は、姿勢を低くし桜ノ蕾の柄を柔らかく握った。
『無駄な力を抜いて、流れる水の様に駆け抜けるんです。』
目を閉じれば、妖夢の声が脳内に木霊する。
何回も何回も足運びだけ練習し、刀を持っての練習をする時には普通に歩く時でさえその足運びになってしまっていた。体に染みつくまで練習する。その本当の意味が分かった瞬間でもあり、妖夢の長年の苦労も垣間見ることが出来る時間だった。
「纏・風」
笑みを浮かべた暁は、俺を殺したがっているように明るい声で唱える。
妖力が風に変換されると同時に、暁を突風が包み込んだ。
対して俺は、静かに目を細める。
一瞬で勝負が決まる、それを十分理解したうえで。
・・・そして、暁が地面を蹴り飛ばす。
風を推進力に、また刃に纏わせる事で通常とは段違いの破壊力を撒き散らした。
一歩踏み出すだけで枯れ果てた木々が宙に舞い、木の葉や土が巻き上げられていく。
しかし、それを見ても尚俺はそこに佇んでいた。
間合いに暁が入るまで、ゆっくりと待ち続ける。
「魂魄一刀流」
逆手に持たれた小太刀が白銀に煌めく中、俺は右足を踏み込む。
「桜花・居合」
鞘から抜き放たれた白刃が、青白い軌跡を描きながら暁に襲い掛かりーーーー
「・・・し、ん?」
突然呟かれた俺の名前に、目を見開いた。
斬撃は互いに止まらない。
それでも。
・・・暁の顔には、恐怖と驚きが滲んでいた。